• 更新日 : 2025年2月5日

インボイス制度対応のおすすめ会計ソフトは?選び方のポイントを解説

2023年10月1日にインボイス制度が導入され、経理業務や消費税計算が複雑化しています。会計ソフトに関しては、単にインボイス制度へ準拠するだけでなく、経理業務の負担やミスの発生リスクを軽減するための機能が必要不可欠です。この記事では、インボイス対応に必要な機能や、おすすめの会計ソフトについて解説します。

そもそもインボイス制度とは

制度の概要

インボイス制度の正式名称は「適格請求書等保存方式」であり、2023年10月1日に導入されました。インボイス制度は、複数の消費税率が混在する現状において、適正な消費税計算や仕入税額控除の透明性確保を目的としてスタートしました。

インボイス制度開始後は、支払先からインボイス(=適格請求書)の発行を受けた場合に限り、仕入税額控除を行うことが可能です。

インボイスを発行するためには、事前に「適格請求書発行事業者」として登録を受ける必要があり、その登録番号など、請求書などに一定の事項を記載しなければインボイスとして認められません。

なお「適格請求書発行事業者」として登録できるのは課税事業者に限定されるため、免税事業者がインボイス登録を受けるためには、合わせて課税事業者を選択する必要があります。

特例制度や経過措置

インボイス制度では、制度導入による影響を軽減するため、いくつかの特例制度や経過措置が設けられています。

たとえば、インボイスを発行できない免税事業者などから課税仕入れを行った場合には、ただちに仕入税額控除が不可となるのではなく、経過措置として制度導入後6年間にわたって、段階的に仕入税額控除が縮小されます。

また基準期間における課税売上高が1億円以下など、一定の要件を満たす事業者に該当する場合、税込み1万円未満の課税仕入れについては、インボイスがなくても、帳簿の保存があれば仕入税額控除が可能となる「少額特例」も導入されました。

さらに免税事業者が「適格請求書発行事業者」として登録を受けるために課税事業者となった場合には、税負担の増加を軽減するために、消費税の納税額を売上税額の2割とする「2割特例」も用意されています。

インボイス制度と会計ソフトの関係性

正確な消費税区分の必要性

インボイス制度の導入により、仕入税額控除が改正され、消費税計算はより一層複雑化したといえるでしょう。

消費税計算については、会計ソフトに入力した仕訳から連動して申告書の作成や納税額の計算を行う事業者が多いため、個々の仕訳における消費税区分の正確性が極めて重要です。

たとえば課税仕入れに関しては、取引先が適格請求書発行事業者に該当するかどうかの確認だけでなく、仮に免税事業者に該当するケースでも、少額特例などの経過措置を適用できる場合もあるため、慎重かつ正確な仕訳登録が必要です。

したがってインボイス制度開始後に正確な消費税計算を行うためには、前提として会計ソフトがインボイス制度へ適切に対応していることが条件となります。

特例や経過措置のための帳簿作成

先述のとおり、インボイス制度ではさまざまな経過措置や特例が設けられていますが、なかには帳簿への記載や保存を要件とする制度も少なくありません。

適切な帳簿が作成されていなければ、最悪の場合には特例や経過措置の適用が認められない可能性もあるため、注意が必要です。

たとえば、免税事業者などから課税仕入れを行った場合の仕入税額控除の経過措置では、帳簿へ経過措置の適用を受ける旨の記載をすることが要件のひとつとされています。

また3万円未満の公共交通機関による交通費など、インボイスの交付義務が免除される特例制度についても、支払先の名称や取引内容などの一定の事項を記載した帳簿の保存が仕入税額控除の要件となります。

したがってインボイス制度における特例や経過措置の適用を受けるためには、制度に対応した会計ソフトを利用し、適切な帳簿を作成することが必要不可欠といえるでしょう。

インボイス制度対応におすすめの会計ソフト

法人向けのおすすめ会計ソフト

マネーフォワード クラウドでは、法人向けの会計ソフトとして、「マネーフォワード クラウド会計」と「マネーフォワード クラウド会計Plus」の2つのサービスを提供しています。いずれのサービスについても、インボイス制度にスムーズに対応することが可能です。

まず「マネーフォワード クラウド会計」では、連携機能を活用した自動入力や自動仕訳により、経理業務の効率化に貢献しています。

インターネットバンキングやクレジットカードとの自動連携に加え、「マネーフォワード クラウド請求書」や「マネーフォワード クラウド経費」などの他のサービスとも連携でき、バックオフィス業務全体の効率化を追求できます。

またインボイス制度に準拠した消費税区分はもちろんのこと、AI-OCRによるインボイス対応の自動仕訳機能や取引先情報の登録機能により、インボイス制度で複雑化する消費税区分の入力を自動化することが可能です。

さらに「マネーフォワード クラウド会計Plus」では、中堅企業や上場企業向けに内部統制機能を強化したサービスを展開しています。

会計情報をリアルタイムで共有することで、グループ経営の効率化に役立つだけでなく、仕訳承認機能や権限ロールの設定機能も活用できるため、組織としての管理体制の強化にも効果的です。

参考:マネーフォワード クラウド会計マネーフォワード クラウド会計Plus 

個人向けのおすすめ会計ソフト

個人事業主やフリーランス向けの会計ソフトとしては、「マネーフォワード クラウド確定申告」があります。「マネーフォワード クラウド会計」と同様に、インターネットバンキングやクレジットカードとの連携機能による取引明細の自動取得に加え、確定申告書や決算書の作成を行うことも可能です。

またインボイス制度への対応に関しても、法人向けのサービスと同様に、適切かつスムーズな経理処理ができるようにバックアップ体制を構築しています。

具体的には、AI-OCRを用いた自動仕訳機能や取引先設定により、仕訳作成時の消費税区分を自動化できるだけでなく、消費税申告機能を一体化させることによって、仕訳データをもとに消費税を自動集計でき、スムーズな納税予測や申告書作成を実現できます。

参考:マネーフォワード クラウド確定申告

インボイス制度対応の会計ソフトを選ぶ際のポイント

インボイス対応の自動仕訳機能

インボイス制度に対応した会計ソフトを選ぶ際には、請求書や領収書データをもとに自動で仕訳を生成する機能があるかどうか確認することが重要です。

インボイス制度開始後は、取引先から受領する請求書や領収書がインボイスに該当するか否かを明確に分類する必要があり、その結果によって仕訳の消費税区分も分けなければなりません。

また請求書に記載されている登録番号が適切かどうかについても、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」にて照合する必要があり、これらの処理を手作業で行うには多大な手間がかかるうえ、ミスの発生リスクも高まります。

自動仕訳機能を持つ会計ソフトを導入することで、請求書や領収書がインボイスに該当するか否かを読み取り、登録番号の照合も自動化したうえで、適切な仕訳や消費税区分を生成できるため、経理業務の大幅な効率化が可能です。

また電子帳簿保存法にも対応している会計ソフトであれば、紙ベースによる書類保管の負担も軽減できるでしょう。

取引先別のインボイス登録管理

インボイス制度では、仕訳ごとの消費税区分が煩雑であることから、仕訳入力時の工数やミスの増加が大きな課題となります。それらの経理業務における負担やリスクを軽減するためには、支払先が「適格請求書発行事業者」に該当するかどうか、取引先ごとに管理する機能があると効果的です。

取引先の管理機能がある会計ソフトでは、取引先ごとにインボイス登録の有無をあらかじめ設定することが可能です。

このような取引先の管理機能を活用することで、事前に登録した取引先情報からインボイス登録の有無を読み込み、適切な消費税区分を自動で反映できるため、仕訳のたびにこれらを手入力する必要がありません。

自動化によって経理担当者の業務負担を軽減できるだけでなく、手入力によるミスの発生リスク軽減にも役立ちます。

適正な消費税申告と税額計算機能

インボイス制度に対応する会計ソフトを選ぶ場合には、消費税の申告書作成や税額計算を行うための機能が用意されていることも大切なポイントです。

インボイス制度開始後は、取引先のインボイス登録の有無に加え、経過措置や特例制度の適用によって消費税の計算結果が異なるケースも多いため、慎重かつ正確な対応が求められます。

また免税事業者などとの取引によって、消費税納税額が増加する事業者も多いため、必要に応じて消費税納税額のシミュレーションを行い、納税予測を立てることも重要です。

したがって会計ソフトを導入する際には、消費税申告書の作成サポート機能や、正確に消費税納税額を計算できる機能を持つシステムを選択することで、申告手続きの効率化や資金繰り計画の透明性確保に役立つでしょう。

インボイス制度対応に必要な会計ソフト以外のシステム

請求書発行システム

インボイス制度に対応した請求書には、適格請求書発行事業者登録番号と適用税率、税率ごとに区分した消費税額等の記載が必要です。1つでも必須項目が欠けていると、適格請求書として認められないため、売り手側にとって請求書発行システムの見直しは重要です。

インボイス制度開始後には、売り手と買い手の両方に適格請求書の保存が義務付けられるため、請求書の保管方法も事前に検討しておく必要があります。発行した請求書の自動保存やペーパーレス保存ができるシステムが、インボイス制度に適しているでしょう。

POSシステム

POSレジシステムも、インボイス制度導入に合わせて、必要項目が記載されたレシートを発行できるようにアップデートしなければなりません。これまで手書きの領収書で経費精算をしていた場合も、今後は税率の異なる商品ごとの消費税額を把握する必要があります。

インボイス制度導入に向けて、複数税率対応のPOSシステムへの見直しが求められます。

受発注管理システム

受発注管理システムには、仕入れ先企業の課税区分や商品ごとの消費税率の識別といった機能が必要です。仕入税額控除を受けるための書類は、仕入れ先企業の情報や商品ごとの適用税率の情報を元に作成されます。

管理システム上でデータの検索や整理ができない場合、いざ書類が必要になった際に大量のデータの中から仕分けをしなければなりません。作業効率を考えても、インボイス制度に対応した受発注管理システムは必須だといえるでしょう。

EDIシステム

EDIシステムとは、企業間でお互いの取引情報をインターネットや専用回線を用いて、電子的にやりとりするシステムです。取引情報が自動化され不正やミスを防ぐ効果も期待できるEDIシステムも、インボイス制度導入に際しての見直しが必要です。

EDIシステムをインボイス制度に対応できれば、適格請求書の電子保存ができるというメリットも享受できます。

インボイス制度対応にシステムを活用するメリット

インボイス制度が企業のシステムや制度、ワークフローに与える影響は多岐にわたります。新制度への移行を効率的に、そしてスムーズに行うにはインボイス制度に対応したツールやシステムの利用が効果的です。

インボイス制度に対応したツールを活用するメリットを3つご紹介します。

  • 経理処理の負担が減る
  • 内部不正やミスを防げる
  • 国を越えた企業活動がしやすくなる

経理処理の負担が減る

インボイス制度に対応した請求書発行システムなどを使うことで、請求書の作成から仕入税額控除の計算まで自動化でき、作業にかかる時間を大幅に減らせるのが1つ目のメリットです。

適格請求書は現行の様式より記載項目が増えるため、税率や税額などの数値を1つ1つ手入力していると、かなりの時間がかかってしまいます。インボイス制度に対応したツールを利用すればデータを直接システムに取り込むことができ、経理処理の負担を軽減できます。

内部不正やミスを防げる

インボイス制度に対応したツールの導入は、内部不正やミスを減らすことにもつながります。インボイス制度導入後は、課税区分や消費税率を請求書ごとに確認して表記しなければならず、請求書作成や管理の難易度が上がります。

手作業で書類作成やデータの仕分けをする場合は、思わぬミスが発生したり内部不正に気付くのが遅れる恐れがあるでしょう。

国を越えた企業活動がしやすくなる

インボイス制度と共に注目が高まっているのが、取引情報をデータで運用する電子インボイスです。電子帳簿保存法に則り取引データを電子保管できるツールであれば、紙の書類でのやり取りが必要なくなり、海外企業とのやりとりも容易になります。

インボイス制度の開始を機会に、電子インボイスの国際規格であるPeppol(ぺポル)に対応したツールを導入するのもよいでしょう。

インボイス制度対応をスムーズにするおすすめのシステム

インボイス制度の要件を満たした請求書を作成したい

自らが「適格請求書発行事業者」となってインボイスを発行する場合には、記載要件を満たす形式で請求書などを発行しなければなりません。

従来の区分記載請求書に比べると、インボイスを発行する場合には、登録番号の記載だけでなく、消費税額の記載方法にも違いがあるため、注意が必要です。

「マネーフォワード クラウド請求書」では、インボイス制度の要件を満たした請求書のテンプレートを提供しているため、安心してインボイスを発行できます。

また作成した請求書を領収書へ変換したり、取引先マスタを作成することで次回以降の請求書作成を効率化したりすることも可能です。

参考:マネーフォワード クラウド請求書

請求書の受領から支払まで一元管理したい

インボイス制度の導入により、請求書の電子化に取り組む事業者が増加する一方で、引き続き紙ベースの請求書を利用している企業も少なくありません。

このようにさまざまな形式で請求書を受領することにより、経理担当者の業務負担が増加するだけでなく、社内における承認作業もより一層複雑化しやすくなるでしょう。

「マネーフォワード クラウド債務支払」では、郵送やメール添付、Web上でのダウンロードなど、多様化する請求書受領にも対応し、データ化することが可能です。

またAI-OCRにより、インボイスに記載された登録番号の読み取りや照合作業も自動化でき、インボイス制度への対応も効率化できます。

さらに社内の承認ワークフローやFBデータ作成、会計システムとの連携による仕訳生成をオンライン上で実行できるため、請求書受領から振込み、会計処理までを一元管理することが可能です。

参考:マネーフォワード クラウド債務支払

請求書の受領・送付に関わるあらゆる業務を効率化したい

事業規模の増加に伴い、取引先の件数も増えるため、毎月の請求書の受領や発行業務には多くの工数が費やされています。

特にインボイス制度開始後は、取引先ごとのインボイス登録の確認作業や、自社発行の請求書フォーマットの変更など、請求書の受領や送付にまつわる業務量は拡大傾向にあるでしょう。

「マネーフォワード クラウドインボイス」では、請求書の「受領」と「送付」をまとめて効率化できるうえ、電子帳簿保存法にも対応可能です。

請求書受領に関しては、請求書の一括受領やオンライン上での一元管理をサポートし、電子保存や他システムとの連携にも活用できます。

請求書の送付については、請求書をはじめとするすべての帳票データについて、ワンクリックで送付することが可能です。さらに郵送・メール・Web送付など、取引先ごとに異なる送付方法も選択できるため、得意先の要望に沿った形式で請求書を発行できます。

参考:マネーフォワード クラウドインボイス

インボイス対応の会計ソフトを活用し、業務効率化に取り組もう

2023年10月1日にスタートしたインボイス制度により、経理業務の負担は大幅に増加しています。特に消費税計算はますます複雑化しているため、仕訳作成における入力ミスも発生しやすくなります。インボイス対応の会計ソフトを効果的に活用することで、経理業務の効率化やヒューマンエラーの削減に取り組みましょう。


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