- 更新日 : 2024年8月8日
連結決算の対象となる株式保有率は?子会社と関連会社の違いも解説
子会社の株式保有率によって連結決算の対象となるケースが異なりますが、一般的に重要性の高い子会社が連結決算の対象となります。
本記事では、連結決算の対象となるケースや子会社・関連会社・関係会社の違いについても解説します。株式保有率別の連結決算の対象となる場合について詳しく知りたい方は、ぜひ最後までお読みください。
目次
持分法適用会社とは
持分法適用会社とは、親会社が議決権の20%以上50%未満を保有する子会社のことです。持分法適用会社は、親会社が子会社の経営に支配的な影響力を有しているとは認められないものの、財務情報に重要な影響を与えていると認められる場合に、親会社は子会社の純資産および損益の一部を連結財務諸表に反映させます。
持分法適用会社は、連結子会社と異なり、連結財務諸表に資産や負債を計上しません。また、持分法適用会社の純資産や損益は、親会社の連結財務諸表に「投資有価証券」の項目で計上されます。
以下では、持分法適用会社と連結子会社の違いについて解説していきます。
連結子会社との違い
連結子会社とは、親会社が株式の過半数を所有し、子会社の経営に対して支配している会社を指します。親会社が子会社の経営方針や業績に直接的な影響を及ぼせる状態を表しています。
一方、持分法適用会社とは、親会社が20%以上50%未満の株式を保有しているなどにより、一定の影響力を持つ会社のことです。親会社は完全な経営権を持たないものの、投資先企業の経営に対して一定の影響力を有しています。
これら二つの会社形態は、財務諸表の取り込み方において大きな違いを示しているといえるでしょう。連結子会社の場合、親会社が子会社の経営に対して直接的な影響力を持つために、親会社は子会社の全ての収益と費用を自社の財務諸表に取り込む必要があります。
一方、持分法適用会社の場合、親会社は自社の財務諸表に、持分法適用会社からの収益のみを取り込みます。親会社が持分法適用会社の経営に対して間接的な影響力を持つためです。
連結決算や連結財務諸表について詳しく知りたい方は、以下のリンクを参照してください。こちらの記事では、連結決算や連結財務諸表の基本的な知識について詳しく解説しています。
【株式保有率別】連結決算の対象となるケース
本章では、株式保有率別の連結決算の対象となるケースを3つ紹介します。
- 株式保有率が50%を超えている場合
- 株式保有率が40〜50%の場合
- 株式保有率が0〜40%の場合
株式保有率の値によって子会社に与える影響は異なります。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
株式保有率が50%を超えている場合
株式保有率が50%を超える場合、その会社は連結子会社となります。親会社が過半数の議決権を所有し、子会社の経営方針や業績に対して直接的な影響力を持つことを意味しているといえるでしょう。
この状態では、親会社は子会社の全ての収益と費用を自社の財務諸表に取り込まなくてはなりません。
しかし、株式保有率が100%でない場合、つまり親会社が全ての株式を所有していない場合、その差分については特別な取り扱いが必要となります。
100%から親会社の保有株式比率を引いた分だけの損益を、非支配株主持分として財務諸表に反映させなくてはなりません。
仮に、親会社が80%の株式を保有している場合、20%の株式を保有する非支配株主がその分の損益に対する権利を持っているため、損益の20%は非支配株主持分として計上されます。
なお、詳細は省きますが、株式保有率が50%超えている場合にでも持分法適用会社とする場合もあります。
株式保有率が40〜50%の場合
株式保有率が40〜50%の場合、原則として関連会社、すなわち持分法適用会社となります。
親会社が一定の議決権を所持し、投資先企業の経営に対して一定の影響力を持つことを意味しているといえるでしょう。
この状態では、親会社は自社の財務諸表に、持分法適用会社からの収益のみを取り込みます。
しかし、特定の条件下では、株式保有率が40〜50%であっても連結子会社となることがあります。その条件は以下の通りです。
- 親会社が実質的に子会社の経営を支配している場合
- 親会社が子会社の財政や業績に大きな影響を及ぼせる場合
- 親会社が子会社の経営方針を決定する権限を持っている場合
これらの条件が満たされている場合、親会社は子会社の全ての収益と費用を自社の財務諸表に取り込まなくてはならないので、注意しましょう。
株式保有率が0〜40%の場合
一般的に株式保有率が20%以上の場合、その会社は持分法適用会社となります。親会社が一定の議決権を所有し、投資先企業の経営に対して一定の影響力を持つことを意味しているといえるでしょう。
この状態では、親会社は自社の財務諸表に、持分法適用会社からの収益のみを取り込む必要があります。
しかし、株式保有率が0〜40%の場合でも、特定の条件下では連結子会社となることがあります。その条件は以下の通りです。
- 親会社が実質的に子会社の経営を支配している場合
- 親会社が子会社の財政や業績に大きな影響を及ぼすことができる場合
- 親会社が子会社の経営方針を決定する権限を持っている場合
これらの条件が満たされている場合、親会社は子会社の全ての収益と費用を自社の財務諸表に取り込まなくてはなりません。
子会社・関連会社・関係会社の違い
子会社・関連会社・関係会社の違いは以下の通りです。
- 子会社:ある会社が株式の過半数を保有するなどにより、経営上の決定権を有する会社のことを指します。ここで言う、ある会社のことを親会社といいます。
- 関連会社:ある会社が一定の割合(通常は20%以上)の議決権を保有し、経営に影響を及ぼすせるが、親会社と子会社の関係にはない会社のことを指します。
- 関係会社: ある会社にとって親会社、子会社または関連会社の関係にある会社のことを指します。
次は、子会社・関連会社・関係会社以外で、名称が似ていて混同しやすい名称を紹介します。
その他の間違いやすい名称一覧
本章では、子会社・関連会社・関係会社以外で、名称が似ていて混同しやすい企業形態を紹介します。
- 完全子会社:親会社が100%の株式を保有している子会社のことを指します。親会社は完全子会社の経営に対して全面的な影響力を持ちます。
- 特定子会社: 子会社のうち、資本金が親会社の10%以上あるなど企業グループにとって重要な位置を占める会社のことを指します。
- 持株会社:他の企業の株式を保有し、それらの企業の経営を統括する会社のことを指します。持株会社自体は通常、商業活動を行わず、子会社の経営を行うことに注力します。
- 連結子会社: 連結決算書上で子会社として資産負債、費用収益を合算している会社のことを指します。
- 特例子会社:特定の法律に基づいて設立された子会社のことを指します。特例子会社の設立や運営には特別な規定が適用されます。
上記の名称の違いを理解することは、企業の財務状況を正確に把握するために重要な要素です。
まとめ
本記事では、連結決算の対象となるケースや子会社・関連会社・関係会社の違いについて解説しました。会社の株式保有率によって連結決算の対象となるケースが異なるので、注意しましょう。なお、関係会社は関連会社を含む、より広範な会社のことを指します。
連結決算を円滑に進めるためには、親会社・子会社間でシームレスに使える連結会計システムを導入がおすすめです。「マネーフォワード クラウド連結会計」は各子会社・関連会社の経営状況がクラウド上にリアルタイムで可視化することが可能です。
よくある質問
連結決算の対象となる株式保有率は?
連結決算の対象となる株式保有率は、企業の財務状況を理解する上で重要な要素です。株式保有率は、親会社が子会社の株式をどれだけ保有しているかを示す指標であり、それによって子会社の経営に対する親会社の影響力が決まります。 以下に、株式保有率を複数の段階に分けて、それぞれの条件を説明します。
- 株式保有率が50%以上の場合:子会社は連結子会社となります。親会社は子会社の全ての収益と費用を自社の財務諸表に取り込む必要があります。
- 株式保有率が20%以上50%未満の場合:子会社は持分法適用会社となります。親会社は自社の財務諸表に、持分法適用会社からの収益のみを取り込みます。
- 株式保有率が20%未満の場合:子会社は非連結子会社となります。親会社は自社の財務諸表に、非連結子会社からの収益を取り込むことはありません。
子会社と関連会社の違いは?
子会社と関連会社の違いは主に親会社が持つ株式の割合と、それに伴う影響力の度合いにあります。
- 子会社:親会社が子会社の株式の過半数(50%以上)を保有している場合、その会社は子会社となります。親会社は子会社の経営方針を決定する権限を持ち、子会社の業績は親会社の連結決算に全額反映されます。
- 関連会社:親会社が子会社の株式の20%以上50%未満を保有している場合、その会社は関連会社となります。親会社は関連会社の経営に一定の影響力を持つものの、経営方針を直接決定する権限はないことが一般的です。関連会社の業績は親会社の連結決算に持分法に基づいて反映されます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
後発事象とは?監査上の取り扱いや重要な後発事象の開示および修正について
決算書には、対象となる事業年度についての内容が記されています。 しかしながら、決算の翌日に財務諸表の内容を大きく変えるようなできごとが発生したときはどうしたらよいのでしょうか? 決算日の翌日から監査報告書の発行までに発生した事象で、財務諸表…
詳しくみる予実管理とは?目的、予算管理の進め方、エクセルでの作成方法のポイント
企業経営にぜひ役立てたいプロセスの一つに予実管理があげられます。予実管理とは、経営管理のための手法の一つで、あらかじめ設定した予算と実際の業績を比べて原因を分析・改善していく予算管理手法の一つです。予実管理を活用することで組織の課題と改善ポ…
詳しくみる営業外損益とは?営業損益や特別損失との違いを解説
損益計算書で見る「営業損益の部」「営業外損益の部」「特別損益の部」の項目。この3つの項目の特徴とそれぞれの違いを正確に理解できると、経営への貢献度の高い経理担当者になれるかもしれません。この記事では、営業外損益の特徴と営業損益や特別損失との…
詳しくみるキャッシュフロー計算書の分析方法
手元にキャッシュがなければ黒字でも倒産する可能性があるため、会社にとってキャッシュの状況を把握することは非常に重要です。この記事ではキャッシュフロー計算書の概念や見方、キャッシュフローの分析方法についてわかりやすくご紹介します。適切なキャッ…
詳しくみるキャッシュフローを改善するためのポイント
事業を継続していると、会社にはお金が出たり入ったりします。キャッシュフローとは、一定期間の活動の結果として会社に出たり入ったりするキャッシュということになり、実際に手にする現金の流れのことを指し、健全な事業の運営を継続するためには、これが重…
詳しくみる決算書と財務諸表の違いは?目的や読み方のポイントをわかりやすく解説
一般的に決算書という用語は、財務諸表とほとんど同じ意味で使われます。なぜ決算書の他に、財務諸表や計算書類などと呼ばれるのでしょうか。この記事では、決算書と財務諸表の違いの他、財務諸表の作成目的や読み方のポイントなどを解説します。 決算書と財…
詳しくみる