- 更新日 : 2025年2月20日
預り証とは?記載項目や書き方をテンプレート付きで解説
物品や金銭を預かった際、その証拠書類として預り証を発行します。預り証の書き方には明確なルールはないため、記載内容や書き方で迷う人も多いでしょう。本記事では、預り証に記載すべき項目や書き方を解説します。金銭を預かった場合に活用できる預り証のテンプレートも紹介するので、預り証の書き方や記載内容を理解する参考にしてください。
目次
預り証とは
預り証とは、他者の物品や金銭を一時的に預かり保管することを証明する書類です。預かった側が預り証を発行し、預けた側に渡します。預り証は、金銭や物品を預かるタイミングで渡すことが原則です。
預り証は物品を預かる場合や、現金・有価証券を預かる場合に発行します。本記事では、特に現金を預かる際の預り証について説明します。
預り証と領収書の違い
預り証と領収書の違いは、対象となる物品や金銭の所有権が移転するかどうかです。預り証の発行で所有権は移転しませんが、領収書を発行する場合は所有権が移転します。
預り証は、物品や金銭を預かった際に発行します。預り証の発行により、物品の所有権が移転していないことを双方合意したことが証明されます。この段階では物品や金銭の所有権は預けた側にあり、移転しません。
商品やサービスを購入し代金を支払うと、領収書が発行されます。領収書は、サービスや商品を提供した代金の授受を証明する書類です。領収書の発行により、代金を支払った側に商品やサービスの所有権が移転したことを表します。
預り証の種類
預り証は、手付金や内金として代金を預かる、物品を預かるといった場合に発行されます。目的や用途により、預り証は4種類に分けられます。預り証の種類は、下記のとおりです。
- 代金支払い目的の預り証
- 担保目的の預り証
- 預託目的の預り証
- 運搬・保管目的の預り証
代金支払い目的の預り証
代金支払い目的の預り証は、売上代金の一部を手付金や内金として預かった証明として発行されます。最も一般的な預り証です。物品や金銭の所有権は、全額を入金した領収書を預り証と引き換えに受け取った段階で移転します。
不動産取引のように、契約締結までに白紙解約期間がある取引の場合、白紙解約期間内に解約されると手付金を返却しなければいけません。この場合手付金は、預り証と引き換えに返却されます。
白紙解約期間が終了し代金の残額が入金されるまで、商品の引き渡しは行われません。商品が引き渡されると、預り証と引き換えに領収書を受け取り、契約は終了となります。
担保目的の預り証
担保目的の預り証は、物品を担保として預かることで融資を受けるケースで発行されます。具体的には、質屋に物品を預けて金銭を借りる、不動産で賃貸借契約を締結する際に大家に敷金を預けるといったケースです。
預かった物品や金銭は、契約終了時に預り証と引き換えに返却されます。賃貸借契約の場合、契約終了時には必要経費を敷金から差し引くため、残金がないと返却されません。返却すべき敷金がないときは、預り証は効力がなくなるため破棄します。
預託目的の預り証
預託目的の預り証は、預金の預入や積立、投資信託の預託の場合に発行されます。有価証券の積立や運用を目的として、金銭を預かったことを証明する書面です。
預金の預入は頻度が多くなりがちなので、預けるたびに預り証を発行することが省略されるケースもあります。
運搬・保管目的の預り証
運搬目的の預り証は、運搬する物品や金銭を預かったことを証明する書面です。この場合、領収書が預り証を兼ねる場合が多くありますが、本来は領収書と預り証は異なる書類である点に注意しましょう。
預り証のテンプレート
代金支払い目的の預り証として使える、エクセルで作成した預り証テンプレートをご用意しました。テンプレートのファイルは、下記ページよりダウンロードできます。
預り証の書き方
4種類の預り証すべてに共通する記載事項は、下記の4点です。
- 双方の名称と住所、押印
- 預かった旨の文言
- 預かった日付
- 預かった金銭を返却する場合は返却条件
上記に加えて、代金支払い目的、預託目的、担保目的で金銭を預かる場合は、預かった金額と理由の記載が必要です。金額の下に但し書きの欄を作り、預かった理由を記載するようにしましょう。
預り証は、署名または押印により本人の意思に基づいて作成された書類として法的効力が発生します。署名または押印がない預り証の法的効力は弱くなるため、注意が必要です。
物や金銭を預かることは、民法で定められた「寄託契約」に該当します。したがって、民法の要件に合わせた預り証の書き方が必要です。
民法657条には「寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる」と規定されています。預り証を作成する際は、民法の規定に従って、預かった金額と預かる側が金銭を保管する旨、きちんと記載しておきましょう。
預り証にまつわる注意点
預り証には注意すべき点が複数あります。紛失した場合や返却する場合など、注意すべき点は状況により変わります。
ここからは、状況別に預り証にまつわる注意点を見ていきましょう。
預り証を紛失してしまった場合
預り証を紛失してしまっても、それほど大きな問題にはなりません。多くの取引では、金銭を預かった事実を双方が認めているためです。
預り証を紛失した申し出があった場合、預り証の紛失を証明する書類を作成してもらうよう、預けた側に依頼しましょう。預り証が見つかった際に、二重に請求されることを防ぐためです。
預り証を返却する際の注意点
預けていた物品や金銭は、渡していた預り証と引き換えに返却されます。この際、預り証の種類により処理が異なる点に注意が必要です。
担保、預託、運搬・保管目的の場合は、預り証と引き換えに物品や金銭が返却されます。代金支払い目的の場合は、残額を決済し商品を引き渡したときに、総額の領収書と預り証を交換します。
現金や有価証券の預り証には印紙税がかかる
現金や有価証券の預り証を発行する際は、印紙税が必要です。「額面が5万円以上だと印紙税が必要」と覚えておくといいでしょう。印紙税は、収入印紙の購入・貼付により支払います。
印紙を貼り忘れた場合、規定額の3倍に相当する過怠税を支払わなければなりません。
決算における預り証の取り扱い
売上の一部を受け取った場合、預り証の取り扱いには注意が必要です。受け取った売上代金をいつ計上するかで、所得税や法人税を計算する際に金額が変わるからです。
物品の売買では、売上を計上するタイミングは物品の引き渡し後です。サービス提供の契約では、サービスの提供が確定した部分についてのみ売上を計上します。
預り証を発行した日付ではないことに注意が必要です。
預り証は一定の様式に従った記載を
預り証は、物品や金銭を預かった際に証拠として発行する書面です。発行の義務はありませんが、依頼があった場合は発行する必要があります。領収書との違いは、物品や金銭の所有権が移転するかどうかです。
預り証は、用途や目的により4種類に分かれます。4種類とも基本的な記載内容は同じですが、金銭を預かる場合は金額と但し書きが必要です。預り証は、署名または押印がなければ、書類としての法的効力が弱くなります。預けた側、預かった側とも、署名または押印を忘れないようにしましょう。
よくある質問
預り証とはどのような書類ですか?
預り証とは、物品や金銭を預かったことを証明する書類です。記載内容や書き方に決まりはありませんが、いつ、どこで、だれが、何を、どれだけ預けたか、客観的に見てわかるようにする必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
預り証にはどのような事項を記載すべきですか?
預り証には、次の事項を記載します。物品・金銭を預ける側、預かる側双方の名称と住所、押印、預かった旨の文言、物品の内容または金額、日付、物品・金銭を返却する場合の返却条件などです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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