- 更新日 : 2024年8月8日
コンテナの耐用年数と減価償却費計算を解説
荷物を運搬する用に使用されていたコンテナも、運搬だけでなく、さまざまな用途で使用されるようになってきました。活用事例のひとつとして近年増えているのが、レンタルルームや倉庫としての利用です。
一般的に、コンテナの取得価額は高額になることが多いため、資産計上と減価償却が必要になります。コンテナを取得した場合、どのような仕訳が必要になるのか、会計処理や減価償却の計算、コンテナの法定耐用年数について解説していきます。
目次
コンテナは減価償却が必要
コンテナは、大きさや素材(鉄やアルミなど)、付属する機能(温度管理やシャッター付きなど)などによって価格が異なります。商品によっては1点で100万円以上の値がつくようなものも少なくありません。
少額減価償却資産として一括で費用として計上できるのは、取得価額10万円未満のもの、または使用可能期間1年未満の固定資産に限定されます。そのため、コンテナは基本的に資産として計上するものと考えてよいでしょう。
ただし、中古のコンテナなど、取得価額が30万円未満の減価償却資産については、青色申告書を提出する中小事業者に限り、少額減価償却資産の特例を受けることができます。この場合は、合計300万円を限度に、一括で費用計上することも可能です。
なお、ここでいう減価償却とは、資産計上した固定資産の取得費用を、耐用年数に応じて費用計上することをいいます。
減価償却については以下の記事でも取り上げていますので、こちらも参照ください。
コンテナの耐用年数
資産計上するコンテナは、主に「器具備品」と「建物」に区分されます。
「器具備品」に該当するコンテナは、すぐに移動できるようなコンテナです。主に物品を保管するために所有し、土地や建物に固定されていないコンテナが該当します。器具備品に該当するコンテナの法定耐用年数は次の通りです。
【容器・金庫に分類されるコンテナの耐用年数(一部抜粋)】
参考:「耐用年数(器具・備品)(その1)|国税庁」をもとに作成
「建物」に分類されるのは、建築基準法に基づく確認申請が必要なコンテナです。継続して倉庫として使用しているようなコンテナなど、随時移動できないようなコンテナが該当します。
「建物」に区分されるコンテナは、構造や用途によって耐用年数が変化します。例えば、コンテナを設置して第三者に貸し出す倉庫事業に使用する場合は、次の耐用年数を用いて減価償却を行います。
【建物(倉庫業用の倉庫用)に分類されるコンテナの耐用年数(一部抜粋)】
鉄骨鉄筋コンクリート造・ 鉄筋コンクリート造 | ||
金属造 (骨格材の肉厚4mm超) | ||
参考:「減価償却資産の耐用年数等に関する省令|e-Gov法令検索(別表第一 機械及び装置以外の有形減価償却資産の耐用年数表)」をもとに作成
なお、中古のコンテナを取得した場合の耐用年数は、合理的な見積もりによる個別の算出が行われます。しかしそれが難しい場合には、国税庁「貨車を倉庫等として使用する場合の耐用年数」に基づいた中古資産の耐用年数等の取り扱いに準じた算式で求める必要があります。
コンテナの減価償却費計算と仕訳例
コンテナ取得時の仕訳と減価償却時の仕訳を、「器具備品」に分類されるコンテナと「建物」に分類されるコンテナに分けて説明します。
「器具備品」に分類されるコンテナの場合
(取得時仕訳例)
一時的に事業用の備品を保管するために、2022年10月1日に50万円の金属製コンテナを小切手を振り出して取得した。なお、継続的に倉庫としての利用を想定したものではなく移動ができるものである(当社の会計期間は4月1日から翌年3月31日)。
取得価額50万円で資産計上が必要なこと、移動ができ、かつ継続的にトランクルームなどとして利用しないことから「器具備品」で仕訳をします。
(減価償却仕訳例)
決算日2023年3月31日を迎えたため、当期に50万円で取得した金属製のコンテナの減価償却を行うこととした。コンテナの長さは6m未満のものである。法定償却方法により定率法で、間接法(減価償却累計額または器具備品減価償却累計額の勘定科目を使用)により減価償却費を計算するものとする。
(※償却率は下部の償却率表を参照)
※減価償却の定額法は、毎年一定の額を減価償却する方法のこと。減価償却の間接法は、器具備品などの資産科目から直接的に減価償却費を控除するのではなく、減価償却累計額という科目に減価償却費を累積させて、間接的に資産から減価償却費の累計額を控除する方法のことをいいます。
(減価償却費の計算)
333,500×6/12=166,750円
2012年4月1日以後に取得した資産で定率法を採用するものは、未償却残高に償却率と保証率を乗じて比較し、保証率を下回らない場合は償却率により減価償却を行います。今回のケースでは期中にコンテナを取得していますので月割りでの減価償却が必要です。
【2012年4月1日以後取得の減価償却資産 定率法の償却率等表(抜粋)】
参考:「減価償却資産の償却率等表|国税庁」をもとに作成
「建物」に分類されるコンテナの場合
(取得時仕訳例)
レンタル倉庫として、2022年10月1日に200万円の金属造(骨格材の肉厚4mm超)のコンテナを小切手を振り出して取得した。当社の会計期間は4月1日から翌年3月31日である。
購入したコンテナをトランクルームとして運営する事業が見られるようになってきました。このようなコンテナの利用は、任意に移動できないコンテナであるとして、「建物」に該当するものとの課税当局から指摘を受けるケースが増えています。倉庫レンタルのために取得したコンテナは、基本的に「建物」に該当するものとして仕訳を行うことになるでしょう。
(減価償却仕訳例)
決算日2023年3月31日を迎えたため、当期に200万円で取得した金属造のコンテナの減価償却を行うこととした。コンテナは冷蔵倉庫用のものではない。間接法(減価償却累計額または建物減価償却累計額の勘定科目を使用)により減価償却費を計算するものとする。
(※償却率は下部の償却率表を参照)
(減価償却費の計算)
仕訳例のコンテナは金属増で冷蔵倉庫用ではないため、耐用年数26年の償却率を使って計算します。
【2007年4月1日以後取得の減価償却資産 定額法の償却率等表(抜粋)】
参考:「減価償却資産の償却率等表|国税庁」をもとに作成
コンテナは利用状況などで減価償却の耐用年数が異なる
同じような造りのコンテナでも、利用状況(随時移動できる状況かどうか)によって器具備品と建物に分類されるため、耐用年数が大きく異なることがあります。
特に注意が必要なのは、取得したコンテナをトランクルームなどとして長期間貸し出す場合です。このケースでは、随時コンテナを移動できないものとして、「建物」で処理しなければならない可能性が高まります。利用状況をよく確認したうえで耐用年数を確認し、減価償却をするようにしましょう。
よくある質問
コンテナは減価償却が必要?
一般的にコンテナは、1つ100万円以上などの高額なものが多く、時の経過とともに価値が減少する固定資産に該当するため、資産計上と減価償却が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。
コンテナの耐用年数は?
器具備品に該当するコンテナは2~7年、建物に分類されるコンテナは26年など構造や用途などによって耐用年数が異なります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
法人が減価償却を行うメリットは?節税や経営の観点から解説
法人の減価償却は任意とされていますが、デメリットよりもメリットの方が多いため、できる限り活用するべきしょう。本記事では、法人に減価償却をおすすめする理由をわかりやすく解説します。 法人は減価償却を行うか任意で決められる 減価償却とは、時間の…
詳しくみるファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いをわかりやすく解説!
ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いがよくわからず、どちらを利用するべきなのか悩んでいる方も多いでしょう。 どちらもリース契約ではありますが、それぞれに特徴があります。本記事ではそれぞれのメリットやデメリット、会計基準での判…
詳しくみる外壁塗装の仕訳に使える勘定科目と減価償却まとめ
建物の外壁の劣化や建物の改装などで外壁塗装を施すこともあります。外壁塗装は必要経費として費用に計上できるのではと思われるかもしれませんが、資本的支出として資産計上や減価償却が必要になるケースもありますので注意が必要です。この記事では、外壁塗…
詳しくみる消費税の税込経理と税抜経理で少額減価償却資産の判定は違う?
消費税を入れて会計処理をするか、税抜きで会計処理をするかによって少額減価償却資産の判定が異なることがあります。 例えば、取得価額が9万8,000円のものであれば、税込みでは10万円以上、税抜きでは10万円未満です。この場合、税込経理において…
詳しくみる特定資産の買い換えによる圧縮記帳の仕訳例を手法・パターン別にわかりやすく解説
特定資産を譲渡して新たな資産を取得する場合、一定の要件を満たせば「圧縮記帳」によって譲渡益の課税を繰り延べられます。 資金繰りの改善や税負担軽減を行える処理ですが、仕訳の方法や計算のルールには注意が必要です。 本記事では、特定資産の買い換え…
詳しくみる国庫補助金は圧縮記帳できる?適用要件や対象資産・会計処理を解説
国庫補助金を活用して設備投資や事業拡大を行う際、「圧縮記帳」を正しく理解することで、税負担を軽減できます。圧縮記帳の仕組みや、対象となる国庫補助金を把握することで、税負担を抑えつつ補助金を事業投資に回せるでしょう。 本記事では、圧縮記帳の対…
詳しくみる