- 更新日 : 2025年12月11日
内装工事の耐用年数は10年?15年?減価償却の方法や勘定科目をわかりやすく解説
内装工事の耐用年数は、10年から15年の範囲で設定されることが多いですが、なぜそのような幅があるのでしょうか。それは、自社所有物件か賃貸物件(テナント)かによって、適用すべき会計ルールが異なるためです。
この記事では、内装工事の耐用年数の基礎知識から、ケース別の具体的な年数の判断基準、減価償却の仕組み、そして耐久年数との違いまで詳しく解説します。
目次
そもそも内装工事の耐用年数とは?
内装工事の耐用年数には、会計・税務上の「法定耐用年数」と、実際の寿命である「物理的耐用年数」の2種類があり、明確に区別する必要があります。
1. 税務上の「法定耐用年数」
法定耐用年数とは、国税庁が「主な減価償却資産の耐用年数表」で定めた、資産の経済的価値が持続すると認められる期間(年数)です。
企業や個人事業主が内装工事などの高額な固定資産を取得した際、その費用を一度に経費にするのではなく、法定耐用年数にわたって分割して費用計上(=減価償却)するために用いられます。これはあくまで税法上のルールであり、この年数を過ぎたら使えなくなるという意味ではありません。
2. 実際の寿命である「物理的耐用年数(耐久年数)」
物理的耐用年数(耐久年数)とは、その内装材や設備が実際に使用に耐えうる物理的な寿命の目安です。素材の品質、使用頻度、メンテナンス状況、設置環境(湿度や日照など)によって大きく変動します。
例えば、法定耐用年数が15年とされる内装であっても、汚れやすいオフィスの床カーペットは5年〜10年で交換が必要になることがあります。逆に、法定耐用年数が6年のエアコンも、丁寧に使えば10年以上稼働することがあります。
法定耐用年数と物理的耐用年数は一致しないことを理解し、税務上は「法定耐用年数」、修繕計画は「物理的耐用年数」を基準に考えることが重要です。
内装工事の法定耐用年数は10年?15年?
内装工事の法定耐用年数は、物件によって適用される税法上の区分が大きく異なります。
内装工事の耐用年数としてよく比較される「10年」と「15年」ですが、これは税法上の区分や実務上の扱いが異なるためです。
- 10年:主に賃貸物件(テナント)で、賃貸契約期間が10年である場合 や、契約期間が不明確な場合に実務上採用されることがある「簡便的な耐用年数」 です。
- 15年:自社所有物件・賃貸物件問わず、多くの内装工事が該当する「建物附属設備」の法定耐用年数です。
以下、それぞれのケースを詳しく見ていきましょう。
1. 自社所有物件の場合
自社で所有する建物の内装工事は、その工事が「建物本体」への資本的支出なのか、「建物附属設備」の新設なのか、または「器具備品」の設置なのかによって分類されます。
内装工事の多くは「建物附属設備」に該当し、法定耐用年数は15年が適用されます。国税庁の「耐用年数表(別表第二)」では、「建物附属設備」の多く(給排水・衛生設備、電気設備、空調設備、内部造作など)が一律15年に分類されています。
- 間仕切り(パーティション)の設置
- 床、壁、天井の造作工事
- 給排水・衛生設備(トイレ、洗面台)の設置
- 照明などの電気設備工事
参考:別表第二 機械及び装置の耐用年数表(新旧資産区分の対照表)|国税庁
例外1. 器具備品として処理するケース
建物と一体化しておらず、取り外しが容易なものは「器具備品」として、より短い耐用年数が適用されます。
- 壁掛けエアコン(ダクト工事なし):6年
- デスク、棚、応接セットなどの家具:8年または15年
- 可動式のパーテーション(簡易なもの):3年
例外2. 建物本体の耐用年数が適用されるケース
工事内容が建物本体の価値を高める資本的支出とみなされる場合、建物本体の耐用年数が適用されることがあります。
例えば、新築時に建物と内装が一体として取得された場合や、大規模なリノベーションで建物全体の構造に関わるような内装工事を行った場合です。
- 鉄筋コンクリート(RC)造:47年
- 重量鉄骨造:38年
- 木造:24年
通常の「内装の張り替え」や「間仕切り設置」が、これらの長い耐用年数に該当することは稀です。多くは「建物附属設備(15年)」として処理されます。
2. 賃貸物件(テナント)の場合
賃貸物件の基本的な考え方は自社物件の「建物附属設備」と同じで、原則として15年が適用されます。
例外1. 賃貸契約期間で償却できるケース
テナントが施した造作(B工事・C工事など)は、その賃貸契約期間を耐用年数として償却することが認められています。
賃貸契約が終了すれば造作の価値はなくなるため、法定耐用年数(15年)よりも短い契約期間で償却することが、経済的実態に即していると認められています。
例外2. 契約期間が不明確な場合
契約期間が不明確な場合や、自動更新などで実質的な期間が定まらない場合は、合理的な年数を見積もる必要があります。
この場合、実務上は「簡便的に10年」を採用したり、あるいは貸主(大家)の建物耐用年数の40%〜50%程度を耐用年数としたりするケースが認められることがあります。この判断は税務リスクを伴うため、税理士など専門家への相談が必須です。
内装工事の減価償却と会計処理
法定耐用年数(10年、15年など)が決定したら、その年数をもとに減価償却を行います。
減価償却の仕組み
減価償却とは、内装工事の取得費用を、法定耐用年数にわたって分割し、毎年少しずつ経費として計上する会計処理です。
支出した年に全額経費にすると、その年だけ利益が極端に変動するため、資産の使用期間(耐用年数)に応じて費用を配分し、経営実態を正しく把握するために行います。
- 内装工事費:1,500万円
- 法定耐用年数:15年
- 年間の減価償却費:1,500万円 ÷ 15年 = 100万円/年
※厳密には耐用年数に応じた「償却率」を用いて計算します。
資本的支出と修繕費の判断基準
すべての内装工事が減価償却の対象(資産計上)となるわけではありません。
- 資本的支出
新たな機能の追加、資産価値の向上、耐久性の向上のための支出です。資産として計上し、耐用年数(10年、15年など)で減価償却します。 - 修繕費
壊れたものの修理や、原状回復など、資産の維持管理や原状回復のための支出です。支出した年の経費として一括計上できます。
少額減価償却資産の特例
取得価額が10万円未満の場合は「消耗品費」として、中小企業者等であれば30万円未満の場合は「少額減価償却資産の特例」として、一括で経費計上できる制度もあります。
参考:No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例|国税庁
内装工事の主な勘定科目・仕訳例
内装工事の会計処理では、その内容に応じて適切な勘定科目に仕訳する必要があります。「資本的支出」に該当する場合、以下の勘定科目が一般的に用いられます。
- 建物附属設備:減価償却の対象となる内装工事の多くが該当します。間仕切り工事 、給排水設備 、空調設備 、電気設備 など、建物と一体となって機能する設備です。法定耐用年数は原則15年です。
- 器具備品:建物と一体化しておらず、取り外しが容易なものです。例として、壁掛けエアコン(6年) や可動式パーテーション(3年) などが挙げられます。
- 建物:工事内容が建物本体の価値を高める大規模な資本的支出とみなされる場合に稀に使用されます。
原状回復や資産の維持管理のための支出で、「資本的支出」に該当しない場合には、修繕費として資産計上せず一括で経費とします。
具体的な仕訳例
実際の会計処理では、以下のように仕訳を行います。
例1. 間仕切り設置工事(500万円)を現金で支払った
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 建物附属設備 | 5,000,000円 | 現金 | 5,000,000円 |
例2. 取り外し可能なカウンター(80万円)を購入した
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 器具備品 | 800,000円 | 未払金 | 800,000円 |
例3. 応接室の椅子セット(25万円)を購入した
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 250,000円 | 現金 | 250,000円 |
※「少額減価償却資産」として処理
例4. 汚れたカーペット(40万円)を張り替えた
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 修繕費 | 400,000円 | 現金 | 400,000円 |
内装の物理的寿命(耐久年数)と費用相場
税務上の法定耐用年数(10年、15年)とは別に、実際の修繕計画のために物理的な寿命(耐久年数)と費用相場も把握しておきましょう。
内装材・設備の物理的耐用年数
内装材や設備は、法定耐用年数より早く劣化することが一般的です。
- 壁紙(クロス)、床(カーペット):約5年〜10年
汚れや摩耗が目立ちやすいため、オフィスの美観維持のために早めの交換が推奨されます。 - 床(フローリング、Pタイル):約10年〜20年
耐久性は高いですが、傷やへこみが蓄積します。 - 水回り設備(トイレ、給湯室):約10年〜15年
本体よりも先にパッキンや水栓金具が劣化(7年〜10年)し、水漏れの原因となります。 - 電気・空調設備:約10年〜15年
10年を過ぎると部品供給が停止し始め、故障時の修理が困難になることがあります。
用途別の内装工事の費用相場
内装工事のコストは、用途やデザインのグレードによって大きく変動します。
| 用途 | 坪単価の目安 | 主な工事内容 |
|---|---|---|
| オフィス(改装) | 10万円~30万円 | 間仕切り、床、壁、電気工事が中心 |
| 飲食店 | 20万円~60万円以上 | 厨房設備、防水、排煙、給排水工事の比重が大きい |
| 物販店 | 20万円~50万円 | デザイン、造作什器、照明計画がコストに影響 |
内装工事の耐用年数の判断は税理士への相談が必須
本記事では、内装工事の耐用年数について解説しました。
内装工事の耐用年数は、一律ではなく、10年から15年の範囲で判断が分かれます。特に、自社所有物件か賃貸物件(テナント)かによって、適用される税法上のルールが大きく異なる点が重要です。法定耐用年数の決定、賃貸契約期間の適用、修繕費との区分けは、専門知識を要します。
誤った会計処理は税務リスクに直結するため、内装工事の見積もりが出た段階で、工事内容と契約形態がわかる資料を揃え、必ず税理士などの専門家にご相談ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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