- 更新日 : 2024年8月8日
未決算勘定とは?仕訳から解説
金銭の収支を伴わない取引で発生した収入について、金額が確定するまでは一時的に「未決算」の勘定科目を用いて仕訳をします。未決算勘定とはどのようなときに用いる何を指す言葉なのか、また仮勘定との違いや使い分け、具体的な仕訳例について見ていきましょう。
未決算勘定とは
「未決算勘定」とは、盗難や火災などが起こったときのように、金銭の収支を伴わない取引で発生した債権や債務につかう勘定科目です。金額がまだ確定していないときに一時的に用いる勘定科目のため、金額が確定し、実際に受け取ったときは、すぐに適切な勘定科目へ振り替えます。
未決算とは
「未決算」とは、「未決算勘定」に分類できる勘定科目のひとつです。「未決算勘定」には「未決算」以外にも、「現金過不足」などがあります。
なお、「未決算」の勘定科目を用いるときは、なぜ未決算なのか理由がわかるように勘定科目名を調整することが一般的です。例えば、火災によって被害が生じ、火災保険金の受け取りを待っている状態であれば「火災未決算」、その他の保険金の受け取りを待っているときであれば「保険未決算」などの勘定科目を用いることがあります。
火災未決算とは
「火災未決算」は、火災保険が適用されると思われる被害が発生し、火災保険金を待っている状態のときに使う勘定科目です。実際に受け取れる火災保険金の金額が未確定のときのみ使用します。また、保険金を受け取る前に金銭の収支が伴わないことも、「火災未決算」の勘定科目を用いる条件です。
「火災未決算」として帳簿に記入する金額が、資産の総額の5%以下のときは「その他流動資産」として一括して記載することもできます。
保険未決算とは
被害が発生して保険金を受け取れる可能性があるときも、火災による保険金以外は「保険未決算」の勘定科目を用いることもできます。例えば、地震、台風、盗難などの保険金対象となる災害が起こり、被害が生じたときは、「保険未決算」の勘定科目で仕訳ができるでしょう。
保険金が確定したとき、確定した保険金の額が災害等よる損失より大きいときに、その超える部分の金額は「保険差益」として帳簿に記入します。反対に保険金額のほうが被害額よりも少ないときは、「災害損失」などのように被害の原因と損失がわかるように記入することができるでしょう。
現金過不足とは
未決算勘定の一つ、「現金過不足」とは、現金出納帳の帳簿残高と実際の手許現金有高が一致しないときに用いる勘定科目です。原因がわからないときはその原因がわかるまでの間、一時的に「現金過不足」の勘定科目で仕訳をすることができるでしょう。
決算日になっても現金過不足の原因が判明しないときは、現金過不足勘定を「雑損失(雑損)」や「雑収入(雑益)」の勘定科目に振り替えます。
未決算勘定の仕訳
火災により、300万円の建物(減価償却累計額200万円)が全焼したとします。建物に火災保険をかけていた場合の仕訳例は以下のとおりです。
その後、120万円の火災保険金を受け取った場合は、実際の損失よりも多くの保険金を受け取ったことになります。差額を「保険差益」の勘定科目を使って示し、以下のように仕訳をしましょう。
損失額よりも受け取る保険金が少ないこともあります。70万円の保険金を受け取った場合は、差額を「火災損失」の勘定科目を使って示し、以下のように仕訳をすることが可能です。
未決算勘定と仮勘定の違い
取引が生じた際、どの勘定科目として仕訳をしてよいかまだ確定していない場合もあるかもしれません。あるいは、勘定科目は分かっていても金額が未確定である場合もあります。このようなときはいずれも一時的に「仮勘定」の勘定科目で仕訳をすることが可能です。
「未決算勘定」も「仮勘定」の一つとして考えますが、「未決算勘定」は火災による被害などの取引が生じていない場合に用いる勘定科目である点が異なります。
未決算勘定は後で適切な勘定科目に振り替えよう
収支が伴う取引が生じていないとき、例えば火災が起こったけれども保険金を受け取っていないときなどには「未決算勘定」を用いて仕訳ができます。金額が確定して保険金を受け取った後は、「火災損失」や「保険差益」なども用いて、適切な勘定科目に振り替えて仕訳をしましょう。
「未決算勘定」には「未決算」と「現金過不足」などがあり、「仮勘定」には「未決算勘定」も含まれることがあります。状況に応じた適切な勘定科目を選ぶようにしましょう。
よくある質問
未決算勘定とは何ですか?
収支が伴う取引が発生した債権や債務に対して使う勘定科目のことで、金額が確定する前に用います。詳しくはこちらをご覧ください。
未決算勘定と仮勘定の違いは?
仮勘定とは勘定科目が未定のときや勘定科目がわかっていても金額が決まっていないときに用います。仮払金勘定や未決算勘定なども仮勘定のひとつです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
小口現金出納帳とは?書き方・記入例、現金出納帳との違いをわかりやすく解説
日常的に現金出納帳を利用している方でも「小口現金出納帳」は利用したことがない方も多いでしょう。どちらも決算書類として利用するための重要度の高い帳簿です。 小口現金出納帳を作成する目的は、手元に残る小口現金と帳簿上の残高を一致させることです。…
詳しくみる勘定科目「採用教育費」とは?仕訳まで解説
「採用教育費」とは、従業員を採用する際に発生する費用や、従業員の教育費用などを仕訳する際に用いる勘定科目です。従業員の教育費用は別途「研修採用費」として仕訳をすることもありますが、「採用教育費」に含めることも少なくありません。具体的にはどの…
詳しくみる未払配当金の仕訳・勘定科目を解説!
未払配当金とは支払いの決議をした配当金のうち、まだ支払われていない未払金を処理する勘定科目です。配当金の計上時期は支払う旨の決議を行ったときで、実際に配当金が支払われるのは後日であるため、計上の際は負債として未払配当金勘定で処理をすることに…
詳しくみる資本連結の考え方や仕訳を基本から解説
実質的な支配関係がある会社を企業グループとし、ひとつの組織体として行う決算を連結決算といいます。連結決算では、投資と資本の相殺消去など一連の処理である資本連結を行い、企業グループ全体における正しい財務状態を表すことができます。この記事では、…
詳しくみる固定資産売却損とは?仕訳方法から消費税の取り扱いまで解説
固定資産を売却した際に発生することがある固定資産売却損。どのようなケースで発生し、会計処理はどのように行えば良いのでしょうか。 ここでは、固定資産売却損の基本的な概要や仕訳方法について解説します。 固定資産売却損の基礎知識 土地や建物、車両…
詳しくみる未払利息の仕訳とは?勘定科目や計上時期をわかりやすく解説
借入金や社債があると、月末や決算日までに発生している利息が、まだ支払われていないというケースがあります。このとき使われるのが「未払利息」という勘定科目です。実際にはまだ支払いをしていなくても、発生している利息は費用として計上し、同時に負債と…
詳しくみる