- 更新日 : 2024年8月8日
商品を仕入れた時の仕訳方法、勘定科目について解説
小売業者や飲食業者などの場合、商売をするにあたって商品の仕入は必須です。では、商品を仕入れた場合、どのような勘定科目を使って仕訳をするのかご存知でしょうか。また、商品仕入の仕訳で使う三分法の意味もチェックしておきたい部分です。
今回は、三分法や商品仕入れ時の勘定科目や仕訳について詳しく解説していきます。会計処理を行う際に迷うことがないよう、この機会にきちんと確認しておきましょう。
目次
商品を仕入れた場合の仕訳方法の種類
仕入の仕訳には複数の方法が存在します。代表的なのが、三分法、分記法、五分法、総記法です。
三分法
三分法は広く知られている方法で、「仕入」「売上」「繰越商品」の3つの勘定科目で仕入に関する仕訳をします。期末時に実地棚卸をし、当期首の「繰越商品」を「仕入」に算入し、当期末の「繰越商品」を「仕入」から差し引くことで当期の売上原価を把握します。シンプルで理解しやすい方法です。
分記法
「商品」と「商品売買益」の勘定科目により仕訳する方法です。仕入の際には「商品」が増え、売上の際には「商品」が減って「商品売買益」が生じたものとして仕訳します。帳簿上の商品と取引の流れが一致しているため商品の残高を把握しやすく、利益を都度確認できるのが特徴です。
五分法
五分法は、三分法の「仕入」「売上」「繰越商品」に「仕入値引・戻し」「売上値引・戻り」の勘定科目を加えて仕訳する方法です。仕入値引・戻しや売上値引・戻りを、仕入や売上勘定と分けて管理できるのが特徴です。値引きや返品がよく発生する業種の仕訳に向いています。
総記法
「商品」の勘定科目のみを使って仕訳する方法です。分記法と同じように実際商品の流れと帳簿上の商品の流れが一致していることから、すぐに商品の残高を把握できます。しかし、仕入と売上を分けて管理しないため、売価と原価をすぐに導き出せないというデメリットもあります。
仕入計上の基準
「仕入をどの段階で認識するか」には基準が設けられています。仕入の計上基準は、出荷基準、入荷基準、検収基準、支払基準の4つです。
出荷基準
商品が出荷されたときに仕入に計上します。4つの計上基準の中で、仕入の認識が最も早い計上基準です。入荷を確認する前に計上するため、不具合がある場合は修正が必要です。
入荷基準
商品を入荷した日に仕入に計上します。受取基準とも呼ばれ、商品とともに届いた納品伝票で仕入数量などを確認します。
検収基準
入荷後に商品が検品された段階で仕入に計上します。商品に問題がないか確認してから計上するため、品質に重点を置く業界などでよく用いられます。
支払基準
商品の引き渡しを受けて、対価として支払いを行った時点で仕入に計上します。仕入の計上基準の中で、仕入の認識が最も遅い計上基準です。
商品を売買した場合の仕訳のやり方
商品売買の際の仕訳のやり方について、分記法、三分法に分けてご紹介します。なお、実際の経理処理では三分法を使うことが一般的です。日商簿記3級の試験でも三分法についての問題が出ています。
分記法での仕訳
分記法の仕訳では商品と商品売買益の2つの勘定科目を用いて仕訳を行います。
【商品を仕入れた場合】
50,000円で商品を仕入れた
【商品を売った場合】
50,000円で仕入れた商品を55,000円で売った
この取引の場合、利益が5,000円出ています。分記法を使うことで、ひとつの取引で利益がいくら発生したのかが確認できます。
分記法についてはこちらに詳しく記載しています。
三分法での仕訳
三分法の仕訳では仕入、売上、繰越商品という3つの勘定科目を用います。
【商品を仕入れた場合】
50,000円で商品を仕入れた
【商品を売った場合】
50,000円で仕入れた商品を55,000円で売った
分記法とは異なり、この時点ではどのくらい利益が出ているかが把握できません。利益は決算整理時に把握できます。
【決算整理時】
期首の商品棚卸高が100,000円、期末の商品棚卸高が200,000円の場合
三分法を使うと、ひとつの取引でどの程度の利益が出るかが分かりにくくなるという注意点はあります。また、決算整理時の負担が大きくなるという点もデメリットといえるでしょう。しかし、取引ごとに利益を計算する必要がないため、日常の業務の中では負担が少なくなるという点はメリットといえるでしょう。
三分法についての詳しい説明はこちらをご覧ください。
期末商品棚卸高の仕訳
三分法では決算整理時に繰越商品の仕訳も必要です。その際、会計年度の始まった時点(この時点を「期首」といいます)および会計年度が終わった時点(この時点を「期末」といいます)での商品在庫の額を確認します。この商品在庫額のことをそれぞれ「期首商品棚卸高」「期末商品棚卸高」といいます。
決算整理時には期末商品棚卸高を把握しないといけませんが、会計期間中に在庫の商品の数量や価格が変動する場合もあります。棚卸資産をどのように評価するのかも知っておきましょう。
- 個別法:個別に単価を見て評価する手法
- 先入先出法:先に仕入れたものから払い出したとみなして期末の棚卸商品を評価する手法
- 総平均法: 期首商品棚卸高の価額と会計期間中の仕入額とを合計し、これを期首商品棚卸高の数量と会計期間中の仕入数量の合計で割って平均取得単価を算出し、この平均取得単価に期末商品棚卸高の数量を乗じて期末の棚卸商品を評価する手法
- 移動平均法: 仕入の度に直前の商品の評価額と仕入額を合計し、これを直前の商品の数量と仕入数量で割った金額がその時点の商品の単価(平均取得単価)とみなして、これに基づき平均取得単価を算出し、これに期末商品棚卸高の数量を乗じて期末の棚卸商品を評価する手法
- 売価還元法: 値入率などの類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、そのグループの原価率を乗じて取得価格を算出して、これに基づき期末の棚卸商品を評価する手法
- 最終仕入原価法:値入率などの類似性に基づく棚卸資産のグループごとの期末の売価合計額に、そのグループの原価率を乗じて取得価格を算出して、これに基づき期末の棚卸商品を評価する手法
なお、三分法では期末時の決算仕訳残高で以下のような仕訳が必要です。
期首の商品棚卸高が500,000円、期末の商品棚卸高が600,000円の場合
期末商品棚卸高についての詳しい説明はこちらをご覧ください。
商品仕入時の仕訳や勘定科目をしっかり把握しておこう!
商品を仕入れ、売買した際の仕訳ですが、分記法と三分法では多少異なります。分記法では取引の都度、利益を算出し仕訳でも記載しますが、三分法では利益を期末時点で算出することになります。また、勘定科目も分記法では「商品」と「商品売買益」を用いますが、三分法では「仕入」「売上」「繰越商品」です。
なお、三分法の場合、利益については期中に算出は行いません。この点が分記法での仕訳とは異なるところです。ただし、決算時までどの程度の利益が出ているかが分かりにくい点、棚卸資産の評価方法を把握しておく必要がある点については留意しておくべきといえるでしょう。
よくある質問
分記法と三分法の大きな違いとは?
分記法では取引ごとに利益を算出しますが、三分法では決算整理時に利益を算出して仕訳に記載します。詳しくはこちらをご覧ください。
売買の仕訳を分記法と三分法それぞれで行う際の勘定科目は?
分記法は「商品」「商品売買益」の2つ、三分法は「仕入」「売上」「繰越商品」の3つです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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