- 更新日 : 2025年4月23日
営業外支払手形と営業外受取手形を仕訳から解説
手形を活用すれば、資金を準備できないときでも、仕入や有価証券の購入などを行うことが可能です。企業が扱う手形は、取引の事由に応じて、支払手形(受取手形)と営業外支払手形(営業外受取手形)に分かれています。
今回は営業外支払手形、および営業外受取手形の特徴や仕訳の方法を紹介します。
※政府は、2026年までの約束手形の利用廃止、小切手の全面的な電子化の方針を示しております。詳しくは以下の記事をご確認ください。
営業外支払手形とは
備品や有価証券、車両のように営業外の取引を起因とする手形債務のことをさします。手形は期日まで支払いを猶予してもらえるため、預金残高に不足が生じている時に便利な制度です。約束手形や為替手形などの種類がありますが、営業外支払手形で使用されるのは約束手形です。
手形の場合、支払期日が半年や1年先になる場合もあるため、手形帳による管理が必要です。営業外支払手形の期限が1年を超える場合、長期営業外支払手形に振り替える必要があります。
会計処理上、前回の決算から1年を超えて期限が到達するものを固定負債として扱うルールがあるためです。
支払期日を過ぎたのにも関わらず、手形の決済が行われないと、不渡りになります。不渡り手形を出すと、取引先や顧客からの信頼低下につながりかねません。
営業外支払手形の仕訳例
例:備品30万円を購入し、代金を手形で支払った
例:手形を決済して、購入代金を振り込んだ
負債がなくなるため、手形を振り出した時と同額の金額を借方に記載します。口座から引き落とされるため、対応する貸方の勘定項目は当座預金です。
支払手形は、支払いが遅くなることで利息が発生する場合があります。この場合、備品本体と利息を区分して、処理する必要があります。
利息を表す勘定は「前払利息」であることに注意しましょう。利息は時間の経過とともに生じるため、「支払利息」を手形振り出しと同時に計上する必要はありません。
例:100万円の備品を購入したのに、110万円の手形を発行した
決済代金を分割して支払う場合、利息も案分して対応する金額を出さなくてはなりません。例えば、110万円を年4回(3月、6月、9月、12月)に分けて支払う場合、その都度ごとに行う仕訳は以下の通りです。
営業外受取手形とは
有価証券や固定資産の売却をはじめ、売上高以外の未収分は営業外受取手形勘定で処理します。営業外支払手形と同様に1年基準があり、手形の期日が前回決算の翌日から起算して1年を超える時は、固定資産として扱われます。
受取手形は満期が訪れる前に、金融機関で手続きを行うことで現金化が可能です。ただし、期日前となるため、額面から金利相当額を控除した金額しか受け取れません。これを割引手形と呼び、控除額を含めて仕訳する必要があります。
営業外受取手形の仕訳例
例:事業の運転資金とするために、備品(帳簿価格2万円)を3万円で売却した
例:上記の受取手形期日が到来し、指定の口座に入金を受けた
受取手形には支払期日や金額以外にも、支払場所が設定されています。通常の場合、支払場所に設定されているのは銀行です。
しかし、銀行と事業所が離れている場合があるため、支払期日に銀行へ出向くのは非効率です。そのため、取り立てを銀行に依頼し、支払期日に決済が行われた時点で仕訳を行います。
次は手形割引の会計処理を紹介します。
例:約束手形30万円について手形割引を行う。割引額は3万円。支払いは預金口座へ。
手形割引により生じた利息は、手形売却損勘定で処理してください。手形は支払い余力がない会社には助け舟になりますが。受け取る側は売掛金をなかなか回収できないため、ストレスを感じる恐れがあります。
実際に支払いを受けるまで数ヵ月以上経過することもあるため、期日までに資金不足に見舞われる恐れもあります。手形割引は、売掛金の弁済を待つ企業の資金不足を防げる便利な制度です。
通常の手形との違い
建物や備品、土地など営業外の事象が原因で手形を使用する場合は、「営業外支払手形」「営業外受取手形」勘定を用います。一方、本業の仕入で使用する場合は「支払手形」「受取手形」勘定で処理します。
会計処理上は営業取引とそれ以外の取引を明確に区分して処理しなくてはなりません。そのため、同じ手形であっても、別々の勘定を使用します。取引の種類に応じて、扱う手形も使い分けると覚えましょう。
また、営業取引に関する保証金を手形で支払ったときは、「差入支払手形」という勘定項目を使用します。
営業外支払手形は通常の手形と分けて会計処理を行う
主たる営業活動で生じた手形は支払手形、営業活動以外が原因の手形を営業外支払手形と区分して仕訳を行います。受取手形も同じ考え方・処理方法です。
仕訳の方法自体は、営業外支払手形か支払手形かによって違いはありません。営業外支払手形は利息の処理を行う場合、手形の決済回数に応じて利息額も案分して計上することに注意が必要です。
営業外受取手形の場合、割引を行うことで期日の到来前に現金化が可能です。手形割引では、利息分を手形売却損で計上することを忘れないようにしましょう。
よくある質問
営業外支払手形とは?
土地や備品など、営業外の取引が原因の手形債務です。詳しくはこちらをご覧ください。
営業外受取手形とは?
土地や備品など、営業外の取引が原因の手形債権です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
引っ越し費用や事務所移転費の仕訳に使える勘定科目まとめ
事務所を移転するときなどには、引っ越し費用を経費計上できます。引っ越し費用を経費計上する場合は、雑費や荷造運賃、支払手数料などの勘定科目で仕訳をすることが一般的です。新しく事務所を借りる際の敷金や礼金、また火災保険料などをどの勘定科目で仕訳…
詳しくみる法人が投資信託している場合の仕訳と勘定科目まとめ
投資信託とは、運用の専門家などが投資家から資金を募り、集めた資金を株式や債券などに投資して運用する金融商品です。 投資信託は、法人でも証券口座を開設するなどして取得できます。ただし、法人が取得した投資信託は、会社の資産として認識しなければな…
詳しくみる出資金はどんな勘定科目?組合や信用金庫へ出資した場合の仕訳例まで解説!
「出資金」という勘定科目を使用するケースは、法人、個人事業主を問わず発生します。この勘定科目が使われるのは、信用金庫から融資を受けるとき、株式会社以外の会社や組合に加入するとき、ゴルフ会員権を取得するときなどです。 しかし、これらの取引は頻…
詳しくみるパソコンやマウス購入時の勘定科目と仕訳例まとめ
IT関連の企業をはじめとして、事務処理などのためにパソコンやマウスを購入する会社や個人事業主は多いでしょう。パソコンの購入は金額によって勘定科目が異なり、その後の会計処理も変わってきますので、しっかりポイントを押さえておきたいところです。今…
詳しくみる配当金の勘定科目は?税金や仕訳方法についてもわかりやすく解説!
受け取った配当金を仕分ける際の勘定科目は、配当金の種類によって異なります。株式の配当金であれば勘定科目は受取配当金となりますが、保険の配当金であれば、勘定科目は雑収入です。 また、配当金の仕訳方法は、法人か個人事業主が対象か、配当金を受け取…
詳しくみる会社経費を個人のクレジットカードで立替えた場合の仕訳・勘定科目は?
法人の場合、クレジットカードでの支払には、通常その法人名義のカードを利用します。しかし、急な支払いなどで担当者が個人名義のクレジットカードで会社の費用を立て替えることがあります。これはあくまで「立て替え」であるため、会計上の問題はありません…
詳しくみる