- 更新日 : 2025年4月23日
未渡小切手とは?仕訳から解説
未渡小切手とは、取引先に渡す予定で振り出したにもかかわらず、渡せないままになっている小切手のことです。本記事では、未渡小切手が見つかった場合の対処方法や、混同されがちな未取付小切手との違いについて解説しています。未渡小切手の取扱い方が分からず困っている人は、仕訳例も紹介していますのでぜひ参考にしてください。
※政府は、2026年までの約束手形の利用廃止、小切手の全面的な電子化の方針を示しております。詳しくは以下の記事をご確認ください。
未渡小切手とは
取引先などに渡す予定で小切手を振り出して待っていたにもかかわらず、先方が取りに来なかったなどの事情で、渡さないまま手元に残っている自己振出小切手のことを、未渡小切手と呼びます。未渡小切手は、決算整理を行っているときや月次点検などで発見されることが多いといわれています。
未渡小切手は必ず発生するものではありません。しかし、小切手を渡すタイミングが合わないといった事情は、どの企業でも起こり得ます。もし未渡小切手があった場合は、適切な処理を行わなくてはいけません。
具体的には、未渡小切手は支払処理を行ったにもかかわらず手元に残っているものです。自己が振り出した小切手が相手に渡されていないと分かった時点で、支払を取り消す必要があります。会計処理としては、基本的に振出時の逆仕訳で支払自体を取り消す処理が必要です。
仕訳する際の注意点としては、支払時点に計上した費用はすでに発生しているので、これを取り消すことはできないことです(費用は発生しているにもかかわらず、まだその代金を支払っていない状態)。
したがって、費用の支払に相当する部分は単純な逆仕訳でなく、未払金勘定とする必要があります。
未取付小切手との違い
未渡小切手と合わせて論点にされることが多いものが「未取付小切手」です。未渡小切手と未取付小切手は性質が異なるものの、名前が似ていて混乱してしまう人も多いので、改めて確認しておきましょう。
未取付小切手とは、小切手を振り出して取引先に渡したにもかかわらず、先方が銀行に持ち込まずまだ換金されていないものです。銀行で取得できる当座預金の残高証明書と、帳簿上の金額が合わないことで判明するケースが多くなっています。
未取付小切手は、取引先の都合でまだ換金していないだけで、こちらに支払義務があることに変わりはありません。いずれ取引先が銀行に持ち込んで換金することはほぼ間違いないので、未取付小切手があったとしても特に仕訳をする必要はないということになります。
「そのまま取引先が換金しなかったらずっと帳簿残高が合わないままなのでは?」と思う人もいるかもしれません。しかし、換金しないと支払い手段として使えず困るのは、取引先も同じです。換金されないまま放置されることは現実的に考えづらいので、安心してよいでしょう。
未渡小切手の仕訳
未渡小切手が見つかった場合、どのような仕訳で対応すればよいのでしょうか。ここでは、単純な逆仕訳で対応できる場合と、費用部分に別途対応が必要な場合の2つのパターンを紹介します。状況別の対応を理解しておきましょう。
仕訳例1:単純な逆仕訳で対応できる場合
決算日に金庫の点検をしたところ、小切手7万円が未渡しのままになっているのが見つかった。A商事あての仕入代金支払いのために発行した小切手だが、取引先の集金が決算日後に変更になったのが原因ということだった。なお、小切手振出時には以下の仕訳を行ったことが分かっている。
仕入代金 |
修正仕訳は以下の通りになります。
仕入代金 小切手の未渡し |
仕入代金の支払いに充当する部分は、上記のように単純な逆仕訳で問題ありません。
仕訳例2:費用部分に別途対応が必要な場合
金庫の点検をしたところ、B商事あての買掛金支払のために振り出した小切手10万円と、広告宣伝費5万円(C誌の雑誌広告)の2枚が見つかった。いずれも取引先が取りに来ないままだという。未渡小切手として修正処理を行った。なお、小切手振出時には以下の仕訳を行ったことが分かっている。
仕入代金 | ||||
雑誌広告 |
修正仕訳は以下の通りになります。
仕入代金 小切手の未渡し | ||||
雑誌広告 小切手の未渡し |
広告宣伝費はすでに費用が発生しているため、単純な逆仕訳で費用計上を取り消すのは不適切です。費用の支払に相当する部分は未払金として処理することに注意しましょう。
この仕訳例と同様に、費用に相当する部分以外にも商品以外の資産(備品など)の購入のために振り出した小切手も未払金として処理する必要があります。
未渡小切手が見つかったときは適切に処理することが重要
未渡小切手は、注意していても時に発生する可能性があるものです。それほど頻度が高いものではないかもしれませんが、未渡小切手が見つかった場合に適切な対応ができるようにしておくことが大切です。
特に費用科目に対応した小切手が未渡小切手となっていた場合には、修正仕訳の方法に気をつけるようにしてください。
よくある質問
未渡小切手とは?
取引先などに渡す前提で小切手を振り出して待っていたにもかかわらず、先方が取りに来なかったなどの事情で渡さないまま手元に残っている自己振出小切手のこと。 詳しくはこちらをご覧ください。
未渡小切手の仕訳のポイントは?
商品代金の支払でないもの(すでに費用が発生しているものや固定資産の購入など)は、未払金として処理することに注意が必要。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
架空外注費とは?不適切なケースや税務署の視点、ペナルティ、防止策を解説
外注費は、業務の一部を社外に委託した際に発生する経費です。しかし、存在しない取引を装って外注費を計上する「架空外注費」は、税務上の重大な問題となります。うっかりミスだけでなく、意図的に処理を誤ることで、追徴課税や重加算税などの大きなペナルテ…
詳しくみる棚を購入、設置した場合の勘定科目についてわかりやすく解説
会社に置く本棚や倉庫、工場で道具などを置くために購入した棚は、購入費を経費として計上することが可能です。本記事では、棚を購入して設置した際の勘定科目や仕訳について詳しくまとめています。ぜひ参考にしてください。 棚を購入した際の勘定科目 棚を…
詳しくみる出張費とは?相場や旅費交通費との違いを詳しく解説
経理担当者にとって出張費の精算業務は、負担の大きい業務の1つといえるでしょう。申請内容にミスがあり、確認するべき経費が多いと、時間や手間を取られるためです。 また、出張手当と旅費交通費のそれぞれを会計処理する必要があり、出張内容によっては非…
詳しくみる減価償却累計額はどんな勘定科目?考え方と仕訳のルールを解説
減価償却は建物や機械装置、ソフトウェアなどの有形・無形固定資産に特有の費用配分処理です。減価償却累計額とはこの減価償却をする際に使う勘定科目で、これを理解するためには減価償却の基本を理解しておく必要があります。 以下では減価償却の基本的な考…
詳しくみる繰延消費税の仕訳とは?費用の計上方法や会計処理を解説
消費税の処理は、日々の取引や決算業務で欠かせません。中でも「繰延消費税(くりのべしょうひぜい)」は、将来にわたって費用化する特殊な処理で、内容を正しく理解していないと会計上のミスにつながるおそれがあります。 この記事では、繰延消費税がどのよ…
詳しくみる掃除機を購入した際の勘定科目は何費?仕訳方法を解説
オフィスや倉庫掃除のために掃除機を経費で購入している会社もあります。最近は一般的な掃除機に加えて、ロボット掃除機もあるので耐用年数が分からないという方は多いのではないでしょうか。 そこで今回は、掃除機の勘定科目や仕訳方法、ロボット掃除機の耐…
詳しくみる