• 作成日 : 2021年11月5日

超過累進税率を踏まえた所得税・相続税・贈与税の計算方法

超過累進税率を踏まえた所得税・相続税・贈与税の計算方法

所得税や相続税、贈与税の計算では、一律の税率は用いません。「超過累進税率」を使って計算を行います。所得税など一部の税金の計算に使われる超過累進税率とはどのようなものなのでしょうか。本記事では、超過累進税率の解説と、超過累進税率を用いる所得税、相続税、贈与税の計算方法をご紹介します。

超過累進税率とは

所得税のほか、相続税や贈与税では、超過累進税率が用いられています。

超過累進税率とは、課税対象額の増加に応じて、増加部分に順次、高い税率を課していくことです。所得税の場合、課税所得の増加に応じて、増加部分に高い税率をかけて所得税額を算出します。

超過累進課税は一部の税金の計算で用いられていますが、これは負担の公平を図るためです。所得税などにおける負担の公平とは、納税者が一律に税負担を負うことではなく、それぞれの担税力(税を負担できる力)に応じて負担することとされています。

つまり、所得の低い人はその所得に応じてできる範囲で、所得の高い人は担税力が高いはずなのでより大きな負担を負うという考えです。

累進課税制度

累進課税には、「単純累進課税」と「超過累進課税」の2つの考え方があります。

このうち、超過累進課税は、日本の課税制度として採用されているものです。超過累進課税では、課税額の範囲を複数に区分し、課税額に応じて、区分ごとにより高い税率を適用していくことになります。

例えば100万円まで5%、200万円まで10%、500万円まで20%と税率が定められていたとしましょう。課税額が300万円だった場合、超過累進課税では100万円までの部分を5%、100円超200万円までの部分を10%、200万円超300万円までの部分を20%の税率で計算します。

対して、単純累進課税は、課税額に応じて税率を引き上げていく制度です。上記と同じように、100万円まで5%、200万円まで10%、500万円まで20%と税率が定められていたとき、課税額が300万円であれば、単純累進課税では、300万円全体に対して20%の税率を用いて計算します。

課税所得とは

所得とは、個人の得た経済的利益のことをいいます。課税所得とは、所得のうち所得税の課税対象になる所得のことです。

課税所得には、社会政策などの見地から課税の対象とされていない非課税所得は含まれません。また、産業政策などの見地から所得税が免除される免除所得(肉用牛の売却による農業所得の課税の特例)は、課税所得から控除します。

確定申告書上は、10種類に区分された各所得の合計額から、所得控除(納税者個人の事情を鑑みて合計所得額から差し引けるもの)を行った後の残額を、「課税所得」といいます。

所得税の計算方法

超過累進税率は、区分に応じて、増加した分の課税所得に、高い税率を適用して計算すると前述しました。所得税の場合、税率は7区分ありますので、1区分ごとに税率の計算をすると、計算が複雑になるほか、計算ミスもしやすくなります。そこで、簡易的に超過累進税率の計算ができるように、国税庁では所得税の速算表を提示しています。以下の表は、平成27年以降分の所得税の速算表です。

【所得税の速算表 (平成27年以降分)】

課税所得
税率
控除額
195万円未満
5%
0円
195万円以上~330万円未満
10%
97,500円
330万円以上~695万円未満
20%
427,500円
695万円以上~900万円未満
23%
636,000円
900万円以上~1,800万円未満
33%
1,536,000円
1,800万円以上~4,000万円未満
40%
2,796,000円
4,000万円以上
45%
4,796,000円

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁の所得税の速算表をもとに作成

課税所得500万円だったとき、速算表を用いて以下のように計算して所得税額を出します。

500万円×20%-427,500円=572,500円(所得税額)


所得税の計算方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。

相続税の計算方法

相続税の超過累進税率は8区分に分類されます。以下の表は、簡易的に相続税の超過累進税率を使って計算できる、国税庁の速算表をもとに作成したものです。

【相続税の速算表 (平成27年以降分)】

法定相続分に按分した取得金額
税率
控除額
~1,000万円
10%
0円
1,000万円超~3,000万円
15%
50万円
3,000万円超~5,000万円
20%
200万円
5,000万円超~1億円
30%
700万円
1億円超~2億円
40%
1,700万円
2億円超~3億円
45%
2,700万円
3億円超~6億円
50%
4,200万円
6億円超
55%
7,200万円

参考:No.4155 相続税の税率|国税庁の相続税の速算表をもとに作成

法定相続分により按分した取得金額が1億円だったとき、速算表を用いて以下のように計算して相続税額を算出します。

1億円×30%-700万円=2,300万円(相続税額)


相続税の計算方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。

贈与税の計算方法

贈与税の超過累進税率は、相続税と同じように8区分に分類されます。以下の表は、簡易的に贈与税の超過累進税率を使って計算できる、国税庁の一般贈与財産用の速算表をもとに作成したものです。一定の要件を満たした人が、父親や母親などの直系尊属から贈与を受けるときは、以下とは別に特例贈与財産用の超過累進税率を用いて計算します。

【贈与税の速算表 一般贈与財産用 (平成27年以降分)】

基礎控除後の課税額
税率
控除額
~200万円
10%
0円
200万円超~300万円
15%
10万円
300万円超~400万円
20%
25万円
400万円超~600万円
30%
65万円
600万円超~1,000万円
40%
125万円
1,000万超~1,500万円
45%
175万円
1,500万超~3,000万円
50%
250万円
3,000万円超
55%
400万円

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁の贈与税の速算表をもとに作成

例えば、特定贈与財産に該当しない兄弟からの一般贈与610万円を受けたとき、速算表を用いて以下のように計算して贈与税額を算出します。

(610万円-110万円(基礎控除))×30%-65万円=85万円(贈与税額)


贈与税の計算方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、こちらもご覧ください。

負担の公平のための超過累進税率

超過累進税率は、納税者の担税力に応じて負担の公平を図ることを目的に取り入れられている課税制度です。国内では、個人の所得税、相続税、贈与税において、超過累進税率が適用されます。超過累進税率は、区分に応じて異なる税率を適用する方法で、複数の区分にまたがる場合、計算が少し複雑になってしまいます。簡単に税額を計算したいなら、速算表を使って計算するのがおすすめです。

よくある質問

超過累進税率とは?

課税対象額の増加に応じて、増加部分に順次、高い税率を課していく課税制度のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

超過累進税率が適用されるのは?

超過累進税率は、所得税、相続税、贈与税の計算で適用されます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談していただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事