- 更新日 : 2024年8月8日
工事未払金の使い方や仕訳、未成工事支出金との関係
建設業会計では、一般の商業簿記で使われる勘定科目とは別に、特殊な勘定科目が使われます。「工事未払金」も、建設業会計で用いられる勘定科目の一種です。工事未払金はどのような場面で使われるのか、未払金、買掛金、未成工事支出金との違い、具体的な仕訳や税務上の扱いまで解説していきます。
目次
工事未払金とは?
材料を仕入れて、建設を行い、完成物を引き渡す建設業では、一般的な商業簿記とは異なる勘定科目が使われます。「完成工事高」「完成工事原価」など “工事”がつく勘定科目です。
工事未払金も建設業などにおける事業活動の中で発生する勘定科目で、該当の工事の原価に算入される未払いの労務費や材料費、外注費などを表したものです。一般の商業簿記で使われる勘定科目に当てはめると、買掛金の概念に近い科目になります。
工事未払金と未払金の違い
「未払金」は、物品は受け取ったものの、まだ支払いが済んでいない対価を表します。直接的な営業取引に該当する商品や材料などの棚卸資産には使用されず、非継続的な固定資産や消耗品の購入などで使われる勘定科目です。
工事未払金と未払金は、すでに取引を終えたものの、こちらからの金銭の支払いが完了していない点が共通しています。
両者を分ける違いは、取引内容にあります。工事未払金は建設業などでの営業取引による未払いになりますので、営業取引以外の未払いを表す未払金勘定とは前提が異なるのです。
工事未払金と買掛金との違い
「買掛金」は、一般企業での仕入(販売する商品の購入費や製品を製造するための材料費など)に対する未払額を表す勘定科目です。金銭の引き渡しが行われていない点では「支払手形」も同じですが、支払手形は金融機関を通して振り出した手形を指しており、手形を介さない営業取引における未払額を扱う買掛金とは区別されています。
工事未払金と買掛金は、営業取引による未払い分という意味では同じですが、使用される業界が異なります。買掛金は、小売業や飲食業など、幅広い業界の営業取引で使われる勘定科目です。一方、工事未払金の使用は、建設業など特定の業種に限定されます。
工事未払金と未成工事支出金との違い
「未成工事支出金」は、すでに着手している工事に計上された材料費や外注費などの費用全般を指す勘定科目です。すでに支払いが済んでいる費用だけでなく、金銭的な支出が行われていない工事未払金で計上されたものも含みます。該当の工事においてどの程度の原価が発生しているかを示す勘定科目です。一般会計では仕掛品に該当します。
一方、工事未払金は工事に関してまだ支払っていない額のみを表します。
なお、未成工事支出金は、従来の工事完成基準(現行の収益認識基準においては役務提供などの履行義務が一時にわたり充足されるもの)に該当する場合に限り使用される科目です。工事の履行義務が一定期間に充足される(従来の工事進行基準)場合は、未成工事支出金の勘定科目は使わず、完成工事原価に直接計上します。
工事未払金の仕訳例
「工事未払金」の勘定科目はどのように使用するのか、具体的な数値を使った仕訳例で説明していきます。
仕訳例1
建物建設のために、材料50万円の引き渡しを受け、全額を掛けとした。なお、当社は建設業を営んでいる会社で、注文を受けて建物を建設中である。
材料費50万円はすべて建設業者である当社の建設工事(事業活動)に関わるものです。また全額を受取時に支払わず掛けとしていることから、貸方は負債項目の「工事未払金」で処理します。
仕訳例2
建物建設のため、一部を外注した。外注費30万円のうち5万円は現金で支払い、残りは掛けとした。なお、当社は建設業を営んでいる会社で、注文を受けて建物を建設中である。
この事例では、外注費は建設業である当社の建物建設のために支出されていることから、事業活動で発生した支出と考えます。仕訳のやり方は上の材料費と同様です。異なるのは、一部現金での支払いがあること。このケースでは、外注が発生した際に支払った額を差し引いて、残りの未払い分を工事未払金に計上します。
仕訳例3
以前、工事未払金として計上した材料費のうち50万円を当座預金から支払った。
最後は、工事未払金を決済したときの仕訳です。工事未払金は、発生時に貸方で仕訳しますので、借方に仕訳することで、その分の工事未払金の残高が解消されることになります。
工事未払金の税務上の取り扱い
工事未払金に計上する当期の支出について、税務上の扱いで注目すべきポイントは、確定債務かどうか、履行義務の充足はどのように行われているかです。
ひとつめは確定債務かどうかについてです。確定債務とは、事業年度末までにすでに債務の原因となる事実が発生し成立している債務であり、かつその金額を合理的に算定することができる債務のことをいいます。工事未払金に限らず、その債務が損金に算入できるかどうかは確定債務に該当するかで判断します。工事未払金に計上する当期の支出については、材料費の未払いなど確定債務に該当するケースが多いため、例外を除いて、基本的に当期の損金に算入できると考えて問題ないでしょう。
もうひとつ、税務で気を付けたいのが履行義務の充足がどのように行われたかです。原則として、税務上は完成・引き渡しに合わせて益金に算入し、未払い分を含めた工事原価もこれに合わせて計上します。この場合、確定債務であっても、収益認識が行われない限り損金には算入しません。ただし、工事の進捗度を測定できる場合は、工事の進捗に合わせた益金や損金の算入を行います。
工事未払金は主に建設業で使用される勘定科目
工事未払金は、建設業など特定の業種において使用される勘定科目であり、小売業などの工事を伴わない業種では使われません。通常の商業簿記で使われる、買掛金と近い性質の勘定科目です。今回紹介したように、建設業で仕訳を行う際は、仕訳の形とパターンだけでも押さえておきましょう。
工事未払金に関連して建設業会計については以下で詳細を解説していますので、こちらもご覧ください。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
最後に、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料を紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
電子帳簿保存法 徹底解説(2025/10 最新版)
電子帳簿保存法は、1998年の制定以降、これまでに何度も改正を重ねてきました。特に直近数年は大きな改正が続いた上に、現在も国税庁による一問一答の追加・改定が続いており、常に最新情報の把握が必要です。
70P以上にわたるボリュームであることから、ダウンロードいただいた方から大好評をいただいている1冊です。
インボイス制度 徹底解説(2024/10 最新版)
インボイス制度は施行後もさまざまな実務論点が浮上し、国税庁によるQ&Aの追加・改訂が続いています。これを受けて、「結局どうすればいいのか、わからなくなってしまった」という疑問の声も多く聞かれるようになりました。
そこで、インボイス制度を改めて整理し、実務上の落とし穴や対応のヒントまで網羅的に解説した最新資料を作成しました。問題なく制度対応できているかの確認や、新人社員向けの教育用など、様々な用途にご活用いただける充実の資料です。
マネーフォワード クラウド会計Plus サービス資料
マネーフォワード クラウド会計Plusは、データの自動取得、自動仕訳、自動学習の3つの自動化で経理業務が効率化できる会計ソフトです。
仕訳承認フローや業務分担にあわせた詳細な権限設定が可能で、内部統制を強化したい企業におすすめです。
マネーフォワード クラウド経費 サービス資料
マネーフォワード クラウド経費を利用すると、申請者も承認者も経費精算処理の時間が削減でき、ペーパーレスでテレワークも可能に。
経理業務はチェック業務や仕訳連携・振込業務の効率化が実現でき、一連の流れがリモートで運用できます。
よくある質問
工事未払金とは?
建設業会計で使用される勘定科目で、建設工事における材料費や外注費の未払額を表します。詳しくはこちらをご覧ください。
工事未払金の税務上の取り扱いは?
確定債務にあたる場合は税務上損金として扱いますが、収益認識において履行義務が一時に充足される場合は、収益を認識するまで損金に算入しません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
未払金の関連記事
新着記事
資金繰り管理が上手くできない企業の3つの特徴
「今の従業員はモノを売ってそれで終わりと思っている。」これは私が社長から聞いた言葉です。 実際このような従業員の方が多いのが実情ではないでしょうか?売りっぱなしではだめ。 きっちり…
詳しくみる法人にかかる税金の種類一覧!税率や計算シミュレーション、赤字でも発生する税金などを解説
会社設立や決算において、経営者が頭を悩ませるのが税金です。法人税は、国に納めるものや地方自治体に納めるものなど、複数の種類で構成されています。 この記事では、法人が納めるべき税金の…
詳しくみる法人税の税率は何パーセント?最高税率や中小企業の特例、実効税率、具体的な計算まで解説
法人税の税率は原則として23.2%で、資本金1億円以下の中小企業には15%の軽減税率が適用されます。しかし、経営において重要なのは、法人税だけでなく地方税などをすべて含めた実効税率…
詳しくみる購入選択権付リースとは?仕組みやメリット・デメリット、会計処理まで徹底解説
購入選択権付リース(購入オプション付リース)は、リース期間満了後に設備や車両などの資産を、あらかじめ定められた価格で購入できる権利が付いたリース契約です。多額の初期投資を抑えながら…
詳しくみる会計基準とは?種類一覧や調べ方、選ぶポイント、近年の改正内容をわかりやすく解説
企業が財務諸表(決算書)を作成するには、会計基準という統一されたルールが不可欠です。この記事では、会計基準の必要性や種類の一覧、そして自社がどの基準を選ぶべきかまでわかりやすく解説…
詳しくみる2027年に適用開始の新リース会計基準とは?改正内容や影響をわかりやすく解説
2027年4月1日以後開始する事業年度から、日本のリース会計に関するルールが大きく変わります。今回のリース会計基準改正における最大のポイントは、これまでオフバランス処理が可能だった…
詳しくみる会計の注目テーマ
- 勘定科目 消耗品費
- 国際会計基準(IFRS)
- 会計帳簿
- キャッシュフロー計算書
- 予実管理
- 損益計算書
- 減価償却
- 総勘定元帳
- 資金繰り表
- 連結決算
- 支払調書
- 経理
- 会計ソフト
- 貸借対照表
- 外注費
- 法人の節税
- 手形
- 損金
- 決算書
- 勘定科目 福利厚生
- 法人税申告書
- 財務諸表
- 勘定科目 修繕費
- 一括償却資産
- 勘定科目 地代家賃
- 原価計算
- 税理士
- 簡易課税
- 税務調査
- 売掛金
- 電子帳簿保存法
- 勘定科目
- 勘定科目 固定資産
- 勘定科目 交際費
- 勘定科目 税務
- 勘定科目 流動資産
- 勘定科目 業種別
- 勘定科目 収益
- 勘定科目 車両費
- 簿記
- 勘定科目 水道光熱費
- 資産除去債務
- 圧縮記帳
- 利益
- 前受金
- 固定資産
- 勘定科目 営業外収益
- 月次決算
- 勘定科目 広告宣伝費
- 益金
- 資産
- 勘定科目 人件費
- 予算管理
- 小口現金
- 資金繰り
- 会計システム
- 決算
- 未払金
- 労働分配率
- 飲食店
- 売上台帳
- 勘定科目 前払い
- 収支報告書
- 勘定科目 荷造運賃
- 勘定科目 支払手数料
- 消費税
- 借地権
- 中小企業
- 勘定科目 被服費
- 仕訳
- 会計の基本
- 勘定科目 仕入れ
- 経費精算
- 交通費
- 勘定科目 旅費交通費
- 電子取引
- 勘定科目 通信費
- 法人税
- 請求管理
- 勘定科目 諸会費
- 入金
- 消込
- 債権管理
- スキャナ保存
- 電子記録債権
- 入出金管理
- 与信管理
- 請求代行
- 財務会計
- オペレーティングリース
- 新リース会計
- 購買申請
- ファクタリング
- 償却資産
- リース取引



