- 更新日 : 2025年4月23日
年会費や入会費を払った時の勘定科目と仕訳の解説
年会費や入会費を払った時によく使う勘定科目として「諸会費」があります。しかし、諸会費と同じような意味合いのほかの勘定科目もあり、どの勘定科目を使えば良いか、迷うこともあります。そこで、ここでは諸会費とそれ以外の勘定科目や消費税の処理などを詳しく解説します。
会費の勘定科目はどうすればいいか
年会費や入会費を払った時の勘定科目には、複数の候補があります。ここではそれぞれの勘定科目を使うケースや仕訳について見ていきましょう。
諸会費
会費を支払った際に使う勘定科目で、最も一般的なものが「諸会費」です。自治会への会費や商工会の会費などが、諸会費で処理する会費となります。諸会費となる会費は期間が1年間で、金額が比較的小さいものが多いです。
例)自治会へ年会費5,000円を現金で支払った。
諸経費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
雑費
諸会費と同じ意味合いのものが「雑費」です。諸会費の年間取引数や金額が少ない場合は、諸会費ではなく、雑費で処理することもあります。例えば、会費が1年間にひとつしかない場合などは、わざわざ諸会費という勘定科目を使わずに、雑費に含めて処理します。
例)自治会へ年会費5,000円を現金で支払った。弊社は雑費で処理している。
雑費 | 5,000円 | 現金 | 5,000円 |
交際費
会費という名称のものでも、交際費で処理しなければならないケースがあります。例えば、ロータリークラブやライオンズクラブのような社交団体への年会費等や、親睦が目的となっている団体の年会費などは、接待交際で使う意味合いが強くなるため、交際費で処理を行います。
法人では、限度額の範囲内でしか交際費を損金にすることができないため、交際費にあたるものは、交際費勘定で処理しなければなりません。
例)ロータリークラブの年会費20万円を普通預金から支払った。
(接待)交際費 | 200,000円 | 普通預金 | 200,000円 |
寄付金
会費という名前が付いているものであっても、実態は寄付であるケースがあります。例えば、NPO法人への賛助会費や独立行政法人への会費などです。この場合は「寄付金」として処理をします。
寄付金とは、支払いに対して見返りのない寄付行為に対して処理する勘定科目です。法人では、限度額の範囲内でしか寄付金を損金にすることができないため、寄付金にあたるものは、寄付金勘定で処理しなければなりません。
例)NPO法人の会費1万円を現金で支払った、なお、この会費は寄付に該当するものである。
寄付金 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
支払手数料
支払手数料とは、会社が経営を行ったり、外部と取引を行ったりする際に発生する手数料のことです。会費という名前であっても、実際には手数料の意味を持っているものがあります。代表的なものが、クレジットカードの年会費です。
クレジットカードは年会費を支払わないと、クレジットカードを使った取引をすることができません。そのため、手数料としての意味合いになります。そこで、支払手数料科目を使って処理します。
例)クレジットカードの年会費1万円を普通預金で支払った。
支払手数料 | 10,000円 | 普通預金 | 10,000円 |
前払費用
会費の中には、数年分を1度に支払うことができるものもあります。この場合、経費にできるのは、1年分だけです。翌年以降の分は経費にせず、「前払費用」で処理します。
例)3年分の会費3万円を普通預金から支払った。なお1年分の会費は1万円である。
諸経費 | 10,000円 | 普通預金 | 30,000円 |
前払費用 | 20,000円 |
翌年以降分の会費については、翌期首などに次の仕訳で諸会費に振り替えます。
諸経費 | 10,000円 | 前払費用 | 10,000円 |
繰延資産
繰延資産とは、支出の効果が複数年に渡る場合に、その支出を一括して経費にせず、いったん資産に計上し、複数年で少しずつ経費にしなければならないもののことをいいます。
実は、同業者団体への入会金(会員の地位を他に譲渡できる、脱退時に全額返金されるものを除く)などは、入会金という名称であっても、繰延資産で処理する必要があります。繰延資産に該当する入会金などは、「長期前払費用」などの科目で処理します。繰延資産は、内容によって償却年数が決まっており、償却年数で均等に償却します。
※20万円未満の場合は、支出時に一括して経費にすることが可能です。
例)同業者団体への入会金30万円を普通預金から支払った。なおこの入会金は5年間で償却する。
入会金支払時
長期前払費用 | 300,000円 | 普通預金 | 300,000円 |
決算時
長期前払費用償却 | 60,000円 | 長期前払費用 | 60,000円 |
消費税の区分
会費の消費税の区分は、対価があるかどうかによって判定します。一般的に、年会費などは対価性があるものではないので、「不課税」になります。
ただし、クレジットカードの年会費やセミナーや講座などの会費、実質飲食や施設の利用料となっている会費や年会費は、役務の提供といった明らかな対価があるため「課税」となります。
複数の勘定科目が混在する場合
会費の中に、複数の勘定科目が混在する場合もあります。例えば、諸会費の部分と交際費の部分などです。この場合、金額の内訳が分かるのであれば、会費の支払先にその内訳を問い合わせします。
また、合理的な割合で分けられる場合は、合理的な割合で分けることになります。合理的な割合がいくらになるか分からない場合は、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。
年会費や入会費の会計処理を理解し、正しく仕訳を行おう
年会費や入会費は、一般的には「諸会費」として会計処理を行いますが、内容によっては別の勘定科目で処理をしなければなりません。特に、交際費や寄付金、前払費用や繰延資産になるものは、処理を間違えると、納める税金の金額に違いがでる可能性があります。
年会費や入会費の会計処理を理解し、正しく仕訳を行いましょう。
よくある質問
会費の勘定科目はどうすれば良いですか
諸会費が多いですが、内容によって交際費や寄付金などで処理をします。詳しくはこちらをご覧ください。
会費の消費税区分はどうなりますか
一般的には「不課税」ですが、「課税」になるケースもあります。詳しくはこちらをご覧ください。
会費に複数の勘定科目が混在する場合はどうしたら良いですか
合理的な基準に基づいて、金額を分けます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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