- 更新日 : 2024年8月8日
流動資産とは?主な種類とチェックポイント
簿記上における「資産」には種類があり「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3つで構成されています。中でも流動資産については、その意味や対象を正しく理解できている方は意外と多くないかもしれません。そこで本記事では、流動資産の概要や種類、見方のポイントなどについて解説します。
流動資産とは

流動資産とは短い期間で現金にすることが可能な資産を指します。「仕入→製造→在庫→販売→回収」といった営業サイクルの中で発生する資産や、1年以内に現金化できる資産が流動資産に含れるのです。
ただし、流動資産に含まれていた場合でも、直ちに現金になるものばかりではありません。受取手形や売掛金、在庫などは場合によっては現金化が難しい場合もあります。
貸借対照表は、左側に「資産の部」右側が「負債の部」といったように分かれています。流動資産は「資産の部」に含まれており、貸借対照表の左上に表示されます。
流動資産の主な種類
ここでは流動資産に含まれる主な種類について紹介します。
現金預金
現金や預金は流動資産に含まれます。ただし、個人として使う現金や預金は含まれず、あくまで事業目的の現金や預金のみです。ここでの現金預金は通貨や普通預金だけでなく、1年以内に満期となる預金も含むため注意しましょう。
受取手形
受取手形は債務者が債権者に対して、満期日と取引銀行を指定し、手形金額の支払いを約束した有価証券を指します。なお、受取手形の種類は次の通りです。
受取手形は満期日を迎えれることで現金化できます。営業に関連する債権であるため、流動資産に含みます。ただし、債務者の倒産などによって回収不能になるケースもあります。
売掛金
売掛金は支払いによって現金を受理する権利のことです。売掛金では販売した商品やサービスに対しての請求を後日実施します。
手形を発行しているもの以外は、売掛金として処理するのです。取引先からの支払完了で売掛金はなくなります。売掛金も受取手形と同様に、債務者の倒産などが発生すれば回収できなくなる可能性があるので注意しましょう。
商品
商品とは企業や個人事業主が通常取引において加工を行うことなく、仕入れたまま販売できる物品を指します。他の取引先から仕入れて、保有している状態の物品を処理するための科目です。製品との違いは加工されているかどうかで判断します。
製品
製品とは企業や製造業者が自社で製造や加工を行い、できあがって売れる状態のものを指します。ただし、製品には食品や車、家電などのように実際に形があるものだけなく、情報やノウハウ、サービスなどの形が無いものも含むので注意しましょう。
前渡金
前渡金とは商品や材料などの購入にともない、取引先に対して仕入れよりも先に渡した金銭の一部、または全額を指します。「前金」「手付金」「内金」といった呼び方の方が、一般的かもしれません。
有価証券
会計上での有価証券には、株券や債券などを指します。売買や満期保有を目的とする有価証券のうち、満期日が「1年以内」のものが対象です。
小切手や手形は会計上においては有価証券として処理しません。小切手は当座預金や現金、手形は受取手形として処理します。
未収入金
未収入金とは営業以外の取引で生じた債権を指します。
また、継続的にサービス提供を受けるための代金を、後払いで受け取る場合も未収入金に含みます。具体的には、家賃収入などの後払いで受け取る金銭債権が該当します。
前払費用
前払費用とは一定の契約によって継続的にサービス提供を受けるために、数カ月や年単位でまとめて先払いする費用を指します。
ただし、年度末時点で提供を受けていないサービスのみが対象です。原則的には、前払費用に含まれるものは翌期の費用だけと認識しておきましょう。
貸倒引当金
貸倒引当金とは、将来起こるかもしれない貸倒れに対して、事前に計上しておく項目です。
貸倒れとは取引先の倒産などによって、売掛金や受取手形、貸付金などが受け取れなくなった状態のことを指します。実際に貸倒れは一定の確率で発生します。売掛金や受取手形、貸付金などの債権は、法人税における貸倒引当金の計算において「一括評価金銭債権」と呼びます。一括評価金銭債権は、次の計算式により算出可能です。
多くの会社は法人税法に基づいて計算されるため、当該計算で算出した金額を貸倒引当金として計上されます。
なお、貸倒引当金は厳密には負債に属するものですが、債権に対応して計上されるものであるため、表示上流動資産のマイナス項目として表示されます。
流動資産のチェックポイント
流動資産の読み取り方については、いくつかのポイントがあります。経営を行う上で最も重要な資産は「現金預金」です。
ただし前述のとおり、流動資産には現金預金以外の「短い期間で現金にすることが可能な資産」も含まれています。この点が流動資産でもっとも気をつけるべきポイントと言っても過言ではありません。
その点を踏まえ、流動資産を見る際には、まず「在庫」に着目する必要があります。なぜなら、在庫は現金の回収までに時間がかかるからです。
在庫は製造の安定や仕入れ単価の値引きなどを理由に、いつのまにか過多状態になりやすい特性があります。しかし、健全な事業経営のためには、在庫は最小限に抑える必要があります。
在庫が増えればその分だけ現金や預金が減少し、さらには保管スペースなどの不要な固定費も発生させることになるのです。経年劣化するような品物であれば価値が低下し、最終的には廃棄することになるでしょう。対策としては、適正な在庫量と発注点を定め、過剰に在庫が増えることを防止することです。
流動資産を読み取る際は、「在庫」が適切に扱われているかを確認してみてください。
流動資産を正しく読み取れるようになろう
ここまで流動資産の概要や種類、読み取り方のポイントなどについて解説しました。さまざまな資産が表示される貸借対照表において、流動資産は正常な営業のサイクルの中で発生する資産や、1年以内に現金化できる資産を指します。
流動資産に含む科目の種類も多くあり、どれも重要なものばかりです。今回は、その中でも流動資産の読み取り方について「在庫」を取り上げ、在庫と現金預金の関係性などを説明しました。
流動資産を見る際は在庫や受取手形などの内容をしっかりと確認し、より正確に貸借対照表を読み取れるようにしましょう。
よくある質問
流動資産とは?
流動資産とは短い期間で現金にすることが可能な資産を指します。詳しくはこちらをご覧ください。
流動資産に含まれる具体的な種類は?
流動資産の具体例として「現金預金」や「受取手形」などがあります。詳しくはこちらをご覧ください。
流動資産で気を付けるべきポイントは?
流動資産には現金預金以外の「短い期間で現金にすることが可能な資産」も含まれていることです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
資産の関連記事
新着記事
購入選択権付リースとは?仕組みやメリット・デメリット、会計処理まで徹底解説
購入選択権付リース(購入オプション付リース)は、リース期間満了後に設備や車両などの資産を、あらかじめ定められた価格で購入できる権利が付いたリース契約です。多額の初期投資を抑えながら最新の設備を利用し、将来的に自社の資産として所有できる可能性…
詳しくみる会計基準とは?種類一覧や調べ方、選ぶポイント、近年の改正内容をわかりやすく解説
企業が財務諸表(決算書)を作成するには、会計基準という統一されたルールが不可欠です。この記事では、会計基準の必要性や種類の一覧、そして自社がどの基準を選ぶべきかまでわかりやすく解説します。 会計基準とは? 会計基準とは、企業が財務諸表を作成…
詳しくみる2027年に適用開始の新リース会計基準とは?改正内容や影響をわかりやすく解説
2027年4月1日以後開始する事業年度から、日本のリース会計に関するルールが大きく変わります。今回のリース会計基準改正における最大のポイントは、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースが、原則として資産・負債として貸借対…
詳しくみるリース取引の判定基準は?フローチャート付きでわかりやすく解説
リース契約は、設備投資やIT機器導入など、多くの企業活動で活用される重要な手段です。「このリース契約は資産計上すべきか」「ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いがわからない」といった悩みは、経理担当者にとって避けて通れない問題…
詳しくみるリース契約と賃貸借契約の違いは?メリット・デメリットも徹底比較
リースと賃貸借は、どちらもモノを借りるという点で似ていますが、契約内容は大きく異なります。この二つの違いを理解しないまま契約すると、会計処理、コスト、法的な責任範囲で思わぬトラブルにつながる可能性があります。 この記事では、リースと賃貸借の…
詳しくみるリース取引の消費税の取り扱いは?種類別の会計処理や仕訳、インボイス制度対応まで解説
リース取引における消費税の扱いは、経理処理の中でも特に間違いやすく、複雑なポイントの一つです。契約の種類によって消費税を控除するタイミングが異なり、インボイス制度の導入によって新たな対応も求められています。 この記事では、リース料にかかる消…
詳しくみる