- 更新日 : 2025年2月19日
先日付小切手とは?小切手との違いや仕訳方法まで解説!
金融機関との当座預金契約を結んだ企業のみが振り出すことのできる小切手ですが、そのなかでも「先日付小切手」は企業の信用力が試されるものです。今回は「小切手」と「先日付小切手」の違いと「先日付小切手」を振り出すことのメリット・デメリットについて解説します。
目次
先日付小切手とは?小切手との違いは?
小切手とは何か?
「先日付小切手」とは簡単にいうと超短期的な資金調達のために振り出す小切手のことです。
「先日付小切手」を解説する前に、まずは「小切手」の仕組みを説明しましょう。
企業が持つことができる預貯金口座のなかでも、当座預金は金融機関による審査を経て初めて開設できる特別な口座です。
金融機関と当座預金契約を結んだ企業は「小切手」を振り出すことができるようになります。
「小切手」を使う最大のメリットは利便性です。
普通預金が実際に口座を操作して現金の引き出しや振り込みを行うのに対し、当座預金は口座内に十分な預金残高があるという前提で、口座を操作することなくいつでもどこでも小切手を振り出して代金決済ができます。
映画のワンシーンで、金額の書いていない小切手を振り出し「君の好きな金額を書きなさい」というのがありますが、このようなセリフは口座の残高に自信があるからこそ言えることです。
また、多額の現金を持ち歩く必要がないので盗難や紛失等のリスクをなくすことができるのもメリットに挙げられます。
小切手を受け取った相手は振り出された日(振出日)以降、いつでも金融機関に取り立てに出して現金化できます。
小切手は受け取った時点で現金とみなされ、簿記会計においても小切手は「現金同等物」として取り扱われます。
便利な小切手にもデメリットはある
一見便利な小切手ですが、デメリットもあります。
小切手を振り出したものの、口座残高が不足していて取り立てに出した小切手が引き落とし不能になった場合、約束手形と同じく「1号不渡り」となります。
不渡りが2回発生すると金融機関との取引が全て停止となり、以降の企業間取引に多大な制約を受けるのです。
小切手取引は便利である反面、潤沢な資金力に裏打ちされた企業でなければ扱いづらいリスキーなものであることがお分かり頂けたでしょう。
先日付小切手とは何か?
では「先日付小切手」とは何でしょうか?
前段で説明しましたが、一般的に企業は当座預金に十分な残高があるという前提で小切手を振り出します。
しかし「今日は残高不足だが5日後には多額の入金がある」という状況で小切手を振り出し代金決済しなければならないとします。
「振出日」を今日としてしまうと、受取人は即座に取り立てに出すことができますので、当然小切手は不渡りとなってしまいます。
そこで受取人と申し合わせて、多額の入金がある5日後に取り立てに出してくれ!!と依頼するわけです。
その際、小切手の振出日を先の日付である「5日後」として記入することから「先日付小切手」と呼ばれています。
上記の例の場合、「先日付小切手」を振り出すことで5日間ではありますが、借入を行わずに代金決済を引き延ばすことが可能です。つまり超短期的な資金調達ができるというメリットがあります。
先日付小切手の仕訳方法!勘定科目は何を使う?
では「先日付小切手」の仕訳処理を例示してみましょう。
<例示:仕入の掛代金 2,000,000円を先日付小切手で決済した>
1.先日付小切手」の振り出し
小切手を振り出した側 | 小切手を受け取った側 | ||
---|---|---|---|
買掛金 2,000,000円 | 支払手形 2,000,000円 | 受取手形 2,000,000円 | 売掛金 2,000,000円 |
「先日付小切手」は約束手形と同じく信用証券です。したがって代金決済時には手形同等物として処理します。
2.「先日付小切手」の取り立て
小切手を振り出した側 | 小切手を受け取った側 | ||
---|---|---|---|
支払手形 2,000,000円 | 当座預金 2,000,000円 | 現金 2,000,000円 | 受取手形 2,000,000円 |
受け取った側は、小切手に記載された先日付の振出日に取り立てに出します。金融機関は当座預金契約に基づき、振り出した側の当座預金から代金を引き出し受取人に渡します。
先日付小切手の会計処理ってどうするの?不渡りになる可能性も
先日付小切手と約束手形の違い
前段のとおり「先日付小切手」は信用証券の一つであり、約束手形と同等物として取り扱われます。しかし「約束手形」と「先日付小切手」では決定的な違いがあります。それは「支払期限」です。
「約束手形」は振り出した時点で「支払期限」を双方承諾のうえ予め記載しておき、受け取った側は支払期限が到来するまで取り立てに出すことは出来ず、仮に取り立てに出したとしても金融機関は支払期日まで手形の決済をしてくれません。
これに対して「先日付小切手」には「支払期限」を記載する箇所がありません。
「振り出した時点でいつでも取り立てが可能」という小切手の性質上、「支払期限」を券面に記載できないのです。
したがって「振出日」を、双方が承諾した先日付の「支払期限」で記載せざるを得ません。
先日付小切手の振出日には法的拘束力がない
ここで問題となるのが「先日付小切手」に記載された「振出日」には何ら法的拘束力がないということです。
約束手形の「支払期限」と違い、小切手法では先日付の小切手を金融機関に取り立てに出しても金融機関はこれを拒絶できない、とされています。
受け取った側が、先日付であるのをすっかり忘れて取り立てに出してしまうこともあります。ともすれば意図的に取り立てに出して不渡りに追い込む…という最悪のシナリオも想定されます。
結果、口座残高が準備でき出来ていない場合、たちまち不渡りとなってしまいます。
先日付での小切手決済は受取人との間で交わしたいわば口約束でしかありません。
振り出す側がいくら相手を信用していても防ぐことのできない「先日付小切手」最大のデメリットと言いえます。
先日付小切手を使う時は相手先との信頼関係が重要
単純な小切手取引であれば、振り出す側が口座残高をしっかり管理しておけば不渡りという事態は起きません。
しかし「先日付小切手」は取り立てのタイミングを合わせる必要があるため受け取った側の協力が不可欠です。
ハイリスクな「先日付小切手」を振り出す際には、相手先との信頼関係を充分に築いてから行いましょう。
よくある質問
先日付小切手とは?
超短期的な資金調達のために振り出す小切手のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
先日付小切手の会計処理ってどうするの?
「先日付小切手」は信用証券の一つであり、約束手形と同等物として取り扱われます。詳しくはこちらをご覧ください。
先日付小切手の振出日には法的拘束力はある?
ありません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
買掛金とは?未払金との違いや仕訳例をわかりやすく解説
買掛金とは、企業の営業活動において、仕入における掛取引の処理で用いる勘定科目です。支払義務がある仕入にかかわる科目であることから、仕入債務にも区分されます。 この記事では、買掛金の概要や買掛金と未払金や未払費用との違い、買掛金の仕訳、残高確…
詳しくみる創立費と開業費の会計処理について
会社の創立と開業準備にかかる費用である創立費と開業費は、繰延資産として資産計上でき、償却方法としてはいつでも必要経費として償却することができる、任意償却が適用されます。創立費、開業費、繰延資産についてとその償却方法を説明します。 繰延資産と…
詳しくみる個別法とは?原価法の棚卸資産評価方法のひとつ!仕訳例までわかりやすく解説
商品や製品などを取り扱っている事業者は、期末になると商品や製品などの棚卸しをする必要があります。棚卸しとは、簡単にいうと、期末に事業者が所有している商品などがいくらなのかを評価することです。 実は、棚卸資産の評価方法には、さまざまなものがあ…
詳しくみる贈答品を経費にする場合の仕訳と勘定科目まとめ
取引先などに感謝の意を表するため、好印象を持ってもらうためなど、事業の中で贈答品やプレゼントを送ることは良くあります。基本的に、得意先などに渡した贈答品は経費になりますが、どの勘定科目で会計処理すれば良いのでしょうか。 ここでは、贈答品の勘…
詳しくみる制服代や作業服代は経費になる?仕訳と勘定科目まとめ
業務で制服や作業服を着用する会社では、従業員に支給した制服・作業服代を経費に計上します。その際、勘定科目は消耗品費にするか福利厚生費にするかが迷うところです。また、制服・作業服のクリーニング代や、スーツを支給した場合の扱いも問題になります。…
詳しくみる助成金や補助金、支援金・協力金の仕訳に使える勘定科目まとめ
助成金や補助金、支援金・協力金を受け取ったときは、雑収入の勘定科目で仕訳をします。また、協賛金を受け取ったときも雑収入として仕訳ができますが、協賛金収入や事業収益の勘定科目を使って仕訳をすることも可能です。 補助金を受け取ると課税所得が増え…
詳しくみる