- 更新日 : 2025年4月23日
借金返済の減額に活用できる補助金とは?資金繰りに困ったら会計事務所に相談しよう!
中小企業及び個人事業主(以下、中小企業)にとって、資金繰りは最も重要な経営課題の1つと言えます。
今回は、中小企業が借金返済の減額をしたい場合に、条件を満たせば、借金返済を減額するためのコンサルティング費用の一部が補助される制度をご紹介します。
目次
なぜ借金返済の減額に補助金が使えるの?
国も、地域経済や雇用に大きな役割を果たす中小企業の資金繰り対策は重要と考えており、政策面でも支援をしています。
特に、大企業と比べて資金的な余裕がない中小企業の経営が悪化した場合には、早い段階で事業の見直しや資金繰りの改善を行い、事業の継続を図ることが重要となります。
こうした観点から中小企業庁は、中小企業が「金融機関」、「会計事務所などの専門家」と一緒に、借金返済の減額等を織り込んだ経営改善計画を作成した場合には、専門家へのコンサルティング費用の2/3を補助する「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業(以下、経営改善計画策定支援事業)」という制度を設けています。
借金返済の減額を支えた金融円滑化法終了後の支援策
中小企業の資金繰り対策として、平成25年3月末までは中小企業金融円滑化法という法律がありました。
中小企業金融円滑化法は、中小企業が借金返済の減額等を金融機関に申し出た場合に、金融機関に対して応じる努力義務を課していました。このため、中小企業は、借金返済の減額を金融機関に相談しやすい環境下にありました。
中小企業金融円滑化法は、平成25年3月末に法律の期限到来により終了しており、これに代わる中小企業の資金繰り対策として、経営改善計画策定支援事業の制度が設けられました。
経営改善計画策定支援事業はどんな制度?
中小企業が資金繰りに困った場合、資金繰り見通しや財務の状況を適切に把握した上で、金融機関が十分に納得できる返済計画まで作成することは難しいケースが多いです。
このような中小企業を対象に、法律に基づき認定された経営革新等支援機関(以下、認定支援機関)が、経営改善計画などの作成支援を行い、事業面と資金繰り面の両輪で改善を行うという前向きな制度が、経営改善計画策定支援事業です。
中小企業庁が定期的に公表している「中小企業再生支援協議会の活動状況」という資料によると、平成29年3月末までの累計の利用申請決定件数は13,272件となっており、広く活用されている制度になります。
(引用 平成28年度第4四半期(平成29年1月~3月)
認定支援機関ってなに?
認定支援機関は、平成24年8月30日に施行された「中小企業経営力強化支援法」に基づき、税務、金融及び企業財務に関する専門的知識や中小企業に対する支援の実務経験が一定レベル以上であることを、国から認定された者のことをいい、平成29年8月31日時点で26,857機関が認定を受けています。
(引用 経営革新等支援機関認定一覧)
つまり、国としては、中小企業に対して適切な支援を行うことができる専門家の認定を行い、その専門家を通じて中小企業の資金繰り対策等を行おうとしているのです。
また、認定支援機関として、税理士や公認会計士などのいわゆる会計事務所が非常に多く認定を受けていることから、中小企業にとっては、まずは会計事務所が相談できる相手となっています。
経営改善計画策定支援事業の4つのメリット
1.借金返済の減額や新規融資などが前提
この制度は、借金の返済負担が大きいなどの資金繰り面で問題のある中小企業を支援することが目的であるため、経営改善計画には、借金返済の減額や新規融資などの金融機関からの支援策を織り込んで作成することが求められています。
逆に言えば、作成した経営改善計画に、借金返済の減額や新規融資などの金融機関からの支援策が織り込まれていなければ、補助の対象となる経営改善計画とは認められず、補助金が受け取れないという仕組みになっています。
専門家である認定支援機関が、金融機関からの支援が得られるであろうと事前に目利きをした上で取り組むので、その意味でも、まずは会計事務所が良い相談相手になると考えられます。
2.借金返済の減額等に対して同意が得られる
この制度では、借金返済の減額や新規融資などの金融機関からの支援策を織り込んだ経営改善計画を金融機関に対して説明を行い、金融機関から「同意書」という書面を入手することになります。
経営改善計画に織り込んだ借金返済の減額等も金融機関との約束事となるため、資金繰りを安定させた上で、業績の改善に向けて注力することが可能となります。
なお、金融機関への説明は、金融機関を一同に集めて説明をするケース(バンクミーティングと言われます)や、金融機関を個別に訪問し、説明を行うケースなどがあります。
金融機関への説明というと難しい印象を持ちますが、どのように進めるのがよいのかも、認定支援機関がアドバイスをしてくれます。
3.経営改善のために何をすべきかが明確になる
経営改善計画の中では、借金返済の減額等の資金繰り面だけでなく、経営改善を行うために、「誰が」、「いつ」、「何を」するのかを明確にします。
特に金融機関は、課題を抱えた中小企業の経営が改善し、将来において適切に借金が返済されるだろうという見込みを前提として、借金返済の減額等に応じてくれます。
この制度では、中小企業と専門家が一緒に経営改善計画を作り上げ、金融機関が客観的な観点から経営改善計画の検討を行うことになるため、取り組むべき課題がより明確となり、合理的な対応策を立てることが可能となります。
4.費用の2/3が補助される
この制度を利用し、金融機関から経営改善計画に対して同意を得ることで、専門家である認定支援機関に対するコンサルティング費用の2/3が補助されます。
資金繰りに困った中小企業のみでは、業績改善のために何をすべきかを見極め、その上で借金返済の減額等の案を作成し、金融機関に説明することは難しいことが多いです。
中小企業にも一定の費用負担が発生しますが、借金返済が減額等される上に、国から認定を受けたプロによるコンサルティングを受けることができるため、費用対効果は非常に高い制度になっています。
また、補助の上限となる金額は、会社規模で異なっており、売上高と有利子負債(金融機関からの借金)の金額に応じて、以下の3つの区分に分けられています。
| 区分 | 会社規模 | 補助額の条件 |
|---|---|---|
| 小規模 | 売上高1億円未満 かつ 有利子負債1億円未満 | 100万円以下のうち2/3 |
| 中規模 | 売上高10億円未満 かつ 有利子負債10億円未満 | 200万円以下のうち2/3 |
| 大規模 | 売上高10億円以上 又は 有利子負債10億円以上 | 300万円以下のうち2/3 |
例えば、年商9,000万円、金融機関からの借金5,000万円の中小企業の場合、仮に認定支援機関に支払う費用が60万円だった場合、2/3の40万円が補助され、実質的な負担は20万円となります(これに加えて、信用保証協会からの補助を受けられるケースもあり、この場合にはさらに負担額は減ります)。
まとめ
事業を行う上で、資金繰りの問題は常につきまといます。資金繰りの不安をゼロにすることはできませんが、経営課題とその対応策、さらに借金返済の減額等までを織り込んだ経営改善計画を専門家と一緒に作成することで、不安は大きく減らすことができます。
また、経営改善計画策定支援事業という制度を利用すれば、費用の2/3が補助金でカバーされるため、中小企業が取組みやすい仕組みとなっています。借金の返済負担が重く、資金繰りに不安がある場合には、まずは会計事務所に相談されることをおススメします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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