- 更新日 : 2025年4月23日
繰り越しヘッジ損益とは?デリバティブの定義から解説!
繰延ヘッジ損益勘定は、先物取引やオプション取引といったデリバティブについて、期末時点での時価評価による差額を翌期以降に繰り延べるときに使用する勘定科目です。
財務諸表では、貸借対照表の純資産の部の評価・換算差額等として表示されます。
目次
デリバティブとは
デリバティブは金融派生商品ともいい、先物取引やオプション取引などをさします。これらの取引は、特定の金利や有価証券・商品の価格、外国為替相場などの変動によって価値が変動します。
企業がデリバティブによる取引を行う場合には、次の目的があります。
・少ない額の投資から多額のリターンを得る。
・市場価値に比べて割安・割高である金融商品の売買を通じて利益を得る。
デリバティブは期末で時価評価する
デリバティブは期末で時価評価を行い、原則として評価差額を当期の損益に計上します。
ただし、ヘッジ会計を適用する場合は評価差額を翌期以降に繰り延べることができます。具体的には、特定の金利や有価証券・商品の価格、外国為替相場などの変動による損益を相殺する取引において評価差額を繰り延べることができます。
ヘッジ会計およびデリバティブの評価差額の繰り延べについては、次の章でご紹介します。
繰延ヘッジ損益はデリバティブの評価差額の繰り延べに使用
デリバティブのうちヘッジ会計の要件を満たしているものは、ヘッジ会計を適用することで、デリバティブの評価差額を翌期以降に繰り延べることができます。
ヘッジ会計とは、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益の計上のタイミングを合わせるための会計処理のことです。
ここでヘッジ対象とは、特定の金利や有価証券・商品の価格、外国為替相場などをさします。ヘッジ対象の価格変動による影響を抑えるため、ヘッジ対象とは逆方向の価格変動をする金融商品を取引することがあります。
この金融商品をヘッジ手段と呼び、デリバティブはヘッジ手段として広く活用されています。
ヘッジ手段であるデリバティブは毎期時価評価を行いますが、ヘッジ対象である有価証券・商品などについては毎期時価評価が行われるとは限りません。
そこで、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益の計上のタイミングを合わせることを目的に、ヘッジ手段であるデリバティブの評価差額を翌期以降に繰り延べる会計処理(ヘッジ会計)が行われます。
繰延ヘッジ損益は、ヘッジ会計の要件を満たすデリバティブの時価評価の評価差額を翌期以降に繰り延べるための勘定科目です。
商品先物取引の例
繰延ヘッジ損益について具体的にイメージしやすいように、商品先物取引を例にあげて説明します。
(例)A社は01年度に商品を購入しました。同時に、商品の価格変動による影響を抑えるため、商品とは逆方向の値動きをする先物取引の契約を締結しました。02年度に商品を販売し、同時に先物取引を決済しました。
01年度の取引開始時、01年度末および02年度の商品販売時における、商品と先物取引の価格は次のとおりとします。
ヘッジ会計を適用しない場合
■01年度末
商品は時価評価を行いません。一方、先物取引は時価評価して評価損30を当期の損失として計上します。
■02年度商品販売時
商品については取引開始から商品販売までの累計の利益60を計上します。一方、先物取引は02年度において発生した損失10を計上します。
| 01 年度取引開始時 | 01 年度末 | 取引開始時からの増減 | 02 年度商品販売時 | 01 年度末からの増減 | |
|---|---|---|---|---|---|
| ヘッジ対象:商品 | 300 | 350 | 50 | 360 | 10 |
| ヘッジ手段:先物取引 | 300 | 270 | △ 30 | 260 | △ 10 |
ヘッジ対象である商品とヘッジ手段である先物取引の損益計上のタイミングは合っていません。
ヘッジ会計を適用する場合
■01年度末
商品は時価評価を行いません。先物取引は時価評価しますが、評価損30は繰延ヘッジ損益として繰り延べ、損益計上はしません。
■02年度商品販売時
商品と先物取引の双方について、取引開始から商品販売までの累計の損益(商品は利益60、先物取引は損失40)を計上します。01年度に計上した繰延ヘッジ損益は戻し入れます。
ヘッジ会計を適用することで、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益計上のタイミングが一致します。
上記の計上方法のほか、ヘッジ対象である商品について毎期時価評価を行う方法がありますが、繰延ヘッジ損益勘定とは関係がないため、ここでの説明は省略します。
ヘッジ会計を適用するための要件
ヘッジ会計を適用するためには、事前テストと事後テストを行い、それらの両方をクリアしなければなりません。
事前テストでは、主にヘッジ会計を適用するための業務体制が整っているかをチェックします。事後テストでは、ヘッジ取引の値動きとヘッジ対象の値動きが相殺されて、リスクを低下させているかどうかを継続的にチェックします。
事後テストの結果、ヘッジ会計が有効に機能していないと判断された場合は、ヘッジ会計を中止します。ヘッジ手段の評価差額は毎期の損益として計上し、繰延ヘッジ損益として繰り延べることはできません。
ただし、ヘッジ会計を中止するまでに計上していた繰延ヘッジ損益の残額は、売却などによってヘッジ対象の損益が認識されるまでそのまま繰り延べます。
まとめ
繰延ヘッジ損益は、デリバティブの期末時点での評価差額を翌期以降に繰り延べるときの勘定科目です。
デリバティブは特殊な金融商品であり、取引を行うときには専門家のアドバイスを受けることが欠かせません。また、期末の評価差額を繰り延べて繰延ヘッジ損益を計上する場合も高度な判断が必要となるため、公認会計士や税理士など会計の専門家の助言を得るようにしましょう。
関連記事
・法人税の課税対象と時価会計の関係
・譲渡所得の改正の内容は?
・繰延税金負債
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
権利金とは?計算方法や仕訳方法、税務上の取り扱いをわかりやすく解説
新しい事務所や店舗などを賃貸借する場合に、敷金や保証金、さらには仲介手数料など、様々な支払い項目が発生します。その中でも特に経理として注意しておくべきなのは、権利金の処理方法ですね。 今回は、権利金とは何かという基本的な事から、権利金に関す…
詳しくみるリース満了後の買取仕訳は?税務・会計処理をわかりやすく解説
会社でリース契約していたコピー機やパソコンなどを、リース期間の満了後にそのまま買い取るというケースはよくあります。業務に慣れた機器を継続して使いたいときや、新たな投資を抑えたいときに有効な方法です。ただし、会計処理としては「リース取引」と「…
詳しくみる前期損益修正益・前期損益修正損とは?仕訳から解説
法人の決算は文字通り「一年間の計算を決する手続き」であり、専門部署の方々が時間と労力をかけてじっくり精査するものです。それでもなお、処理の間違いが起こるケースがありますが、修正を要する場合に登場するのが「前期損益修正益」「前期損益修正損」で…
詳しくみるサブスクリプションを経費にする時の仕訳に使う勘定科目まとめ
事業で使用するものに関するサブスクリプション費用は、経費に計上できます。仕訳では、商品やサービスの内容に応じて適切な勘定科目を選ぶことが大切です。また、利用料を一括で前払いする場合は、前払費用として処理する必要がある点にも注意しましょう。本…
詳しくみる配当金の勘定科目は?税金や仕訳方法についてもわかりやすく解説!
受け取った配当金を仕分ける際の勘定科目は、配当金の種類によって異なります。株式の配当金であれば勘定科目は受取配当金となりますが、保険の配当金であれば、勘定科目は雑収入です。 また、配当金の仕訳方法は、法人か個人事業主が対象か、配当金を受け取…
詳しくみる不動産取得税の勘定科目は?仕訳方法や取得価額に含めるかを解説
土地や建物を取得する際にかかる不動産取得税の勘定科目は、「租税公課」とするのが妥当です。償却できない土地や、耐用年数が長期となる建物の取得価額に含めて資産計上してしまうと、経費になるまでに長い期間がかかってしまいます。損金算入時期は納税通知…
詳しくみる会計の注目テーマ
- 勘定科目 消耗品費
- 国際会計基準(IFRS)
- 会計帳簿
- キャッシュフロー計算書
- 予実管理
- 損益計算書
- 減価償却
- 総勘定元帳
- 資金繰り表
- 連結決算
- 支払調書
- 経理
- 会計ソフト
- 貸借対照表
- 外注費
- 法人の節税
- 手形
- 損金
- 決算書
- 勘定科目 福利厚生
- 法人税申告書
- 財務諸表
- 勘定科目 修繕費
- 一括償却資産
- 勘定科目 地代家賃
- 原価計算
- 税理士
- 簡易課税
- 税務調査
- 売掛金
- 電子帳簿保存法
- 勘定科目
- 勘定科目 固定資産
- 勘定科目 交際費
- 勘定科目 税務
- 勘定科目 流動資産
- 勘定科目 業種別
- 勘定科目 収益
- 勘定科目 車両費
- 簿記
- 勘定科目 水道光熱費
- 資産除去債務
- 圧縮記帳
- 利益
- 前受金
- 固定資産
- 勘定科目 営業外収益
- 月次決算
- 勘定科目 広告宣伝費
- 益金
- 資産
- 勘定科目 人件費
- 予算管理
- 小口現金
- 資金繰り
- 会計システム
- 決算
- 未払金
- 労働分配率
- 飲食店
- 売上台帳
- 勘定科目 前払い
- 収支報告書
- 勘定科目 荷造運賃
- 勘定科目 支払手数料
- 消費税
- 借地権
- 中小企業
- 勘定科目 被服費
- 仕訳
- 会計の基本
- 勘定科目 仕入れ
- 経費精算
- 交通費
- 勘定科目 旅費交通費
- 電子取引
- 勘定科目 通信費
- 法人税
- 請求管理
- 勘定科目 諸会費
- 入金
- 消込
- 債権管理
- スキャナ保存
- 電子記録債権
- 入出金管理
- 与信管理
- 請求代行
- 財務会計
- オペレーティングリース
- 新リース会計
- 購買申請
- ファクタリング
- 償却資産
- リース取引