- 更新日 : 2025年2月20日
地方法人税はなぜ創立された?その理由と申告・納付方法について解説
地方法人税とは、平成26年施行された税制度です。
この税制度の創設の理由と申告方法、納付の仕方について、基礎知識をご紹介します。
地方法人税はどんな税制度?
地方法人税と聞くと、地方に納める税金のように聞こえますが、この税金は国に納めるものです。法人が地方法人税創設以前に地方公共団体に収めていた法人住民税法人税割のうち、その一部を国に納税するように変更されました。
地方法人税として徴収した税金を国から各自治体に分配する地方交付税の財源にし、自治体間で税収にバラつきが生まれないようにする目的で設置されました。
地方法人税が創設されたものの、あくまで法人住民税法人税割の一部の納付先が地方公共団体ではなく国に変更されただけにすぎません。トータルでは創設以前と変わらない税金を支払うことになり、法人の税負担が増えることはありません。
ベースはどちらも法人税額を基準としていますので、プラスマイナスして納税額は変わりません。
その後、地方法人税の税率改正によって、地方法人税の税率が5.9%引き上げられ10.3%となり、法人住民税法人税割は税率が5.9%引き下げられました。改正後の税率は、令和元年10月1日以降に開始する事業年度から適用されています。
地方法人税はいつ、いくら納めるのか
地方法人税は、基準となる法人税額の10.3%です。地方法人税額を算出するには、法人税額の計算が必要です。
以下は、地方法人税の計算のもとになる普通法人(株式会社など)の法人税の税率です。
【計算例】
資本金300万円で大法人と完全支配関係のない中小企業の課税所得が2,000万円だった場合。(法人税額控除などは特に発生していないものとする。)
法人税額:800万円×15%+(2,000万円-800万円)×23.2%=3,984,000円
地方法人税額:3,984,000円×10.3%=410,300円(100円未満切り捨て)
地方法人税は税務署に確定申告書を提出して納付する
地方法人税は申告納税方式であるため、事業者が地方法人税の額を計算して確定申告を行い、確定申告書に記載の地方法人税額を納付します。
地方法人税の確定申告書は、法人税申告書の別表一や別表六の下部にあります。そのため、企業が法人税の確定申告を行ったら、同時に地方法人税の確定申告も完了する仕組みです。
法人税と地方法人税は確定申告書が同一のため、確定申告書の提出期限も、確定申告書に記載の税額の納付期限も同じです。原則として、事業年度終了の日から2カ月以内に、確定申告書を提出して納付を済ませます。地方法人税は、税務署や金融機関の窓口のほか、インターネットバンキングなどからも納税できます。
地方法人税の勘定科目
地方法人税の勘定科目は、「法人税等(損益計算書の表示科目は「法人税、住民税および事業税」)」です。地方法人税の計上をした時点で未払いの場合は、借方(振替伝票の左側)に費用項目である「法人税等」、貸方(振替伝票の右側)に負債項目である「未払法人税等」をもってきて仕訳行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
法人税等 | ×××円 | 未払法人税等 | ×××円 |
地方法人税の申告と納付について正しく知ろう
地方法人税は、地方税ではなく国税です。税金が創設された意義については、知っておく必要があるでしょう。税金は国民や地域の住民のために使われるものです。どこに納める税金で、何に使われる税金なのか、納める者として、仕組みを理解してしっかり納付したいものです。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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