- 更新日 : 2024年8月8日
固定資産税も軽減措置で減税!納期は?課税資産や納税義務者は?
税金には、所得に課税される税金(所得税、法人税など)や消費に課税される税金(消費税、酒税など)のほか、資産の所有に課税される税金もあります。この代表的な税金が固定資産税です。
本稿ではこの固定資産税について解説します。納期や減税となる軽減措置についても説明しますので、是非ご活用ください。
なお、固定資産税は地方税である特性上、自治体により取扱いが異なります。本稿では東京23区を例に解説しますので、ご自身の自治体での取り扱いの参考にしてください。
固定資産税とその納期
固定資産税とは、毎年1月1日時点で所有している土地、家屋、償却資産に課される税金です。
具体的な対象資産は、以下のとおりです。
田んぼや畑、宅地など
●家屋
住家、店舗、工場、倉庫など
●償却資産
機械、器具、備品、構築物、車両、工具、器具など
ただし、以下のものは課税対象外です。
●取得価額が20万円未満の償却資産で3年間にわけて償却されたもの
上記より、固定資産税は所得税や法人税を計算する際の必要経費や損金として処理することができます。
また、車両であっても、自動車税や軽自動車税の対象となるものは、償却資産の範囲から除かれ、固定資産税は課せられません。したがって、固定資産税の課せられる車両とは、フォークリフトなどの大型の特殊自動車などが該当することになります。
固定資産税の課税根拠となる「所有」とは、登記簿に登記されていること、または課税台帳登録されていることを指します。
納税先は市町村(東京23区の場合には東京都)となっています。納期は、原則として4月、7月、12月、2月中の市町村の条例で定める日ですが、市町村によって異なりますので、ご自身の自治体での納期の確認は必要です。
納期までに税金を納めない場合には延滞金を取られてしまいますので、必ず毎年納期を確認して期限までに納税するようにしましょう。
軽減措置による減税について
固定資産税の軽減措置には様々なものがありますが、今回は減税額の大きな土地と家屋について代表的な軽減措置を紹介します。
土地に関する軽減措置
私有地であっても、以下のような条件を満たし、不特定多数の人が通行する道路である場合には、公共性が高い土地とされ、非課税となります。
●道路幅が1.8m以上である
●公道から公道に通じている
●客観的に道路と言えるもの
上記を満たし、非課税の適用を受けるには非課税申告書を提出する必要があります。
また、通り抜けができず、行き止まりになっている道路の場合でも非課税となる場合がありますので、不特定多数の人が通行している土地を所有している方は、自治体の税事務所へ問い合わせてみることをお勧めします。
家屋(住宅)に関する軽減措置
家屋(住宅)に関する軽減措置の主なものには、「認定長期優良住宅に対する軽減措置」「耐震化のための建替えを行った住宅に対する減免」「耐震化のための改修を行った住宅に対する軽減措置」「バリアフリー改修を行った住宅に対する軽減措置」「省エネ改修を行った住宅に対する減額・減免」「耐震改修を行った既存家屋に対する軽減措置」があります。
それぞれ、以下の要件を満たした場合に、減税や減免を受けることができます。
「認定長期優良住宅に対する軽減措置」
●平成21年6月4日から平成30年3月31日までに、新築された住宅であること
●長期優良住宅の普及の促進に関する法律第10条第2号に規定する認定長期優良住宅であること
●居住部分の床面積の割合が当該家屋の2分の1以上であること
●1戸あたりの床面積が50㎡以上280㎡以下であること
●新築した年の翌年の1月31日までに減額の申請をしていること
■減免される期間・税額
新たに固定資産税が課されることとなった年度から5年度分(3階建以上の耐火・準耐火建築物である場合には、7年度分)、固定資産税額の2分の1が減額されます(1戸あたり床面積120㎡相当分までが限度)。
「耐震化のための建替えを行った住宅に対する軽減措置」
●昭和57年1月1日以前からある家屋を取り壊し、当該家屋に代えて平成21年1月2日から平成30年3月31日までの間に新築された住宅であること
●新築された住宅の居住部分の割合が当該家屋の2分の1以上であること
●建替え前の家屋を取り壊した日の前後年各1年以内に新築された住宅であること
●建替え前の家屋と新築された住宅がともに東京23区内にあること
●新築された日の属する年の翌年の1月1日において、建替え前の家屋を取り壊した日の属する年の1月1日における所有者と、同一の者が所有する住宅であること
●新築された住宅について、検査済証の交付を受けていること
●新築された年の翌々年の2月末までに減額の申請をしていること
■減免される期間・税額
新築後新たに課税される年度から3年度分について全額減免
「耐震化のための改修を行った住宅に対する軽減措置」
●昭和57年1月1日以前からある家屋で、平成20年1月2日から平成30年3月31日までの間に耐震化のための改修を行った住宅であること
●耐震改修後の家屋の居住部分の割合が当該家屋の2分の1以上であること
●耐震改修費用が1戸あたり50万円を超えていること(ただし、平成25年3月31日までに改修工事の契約を締結した場合は30万円以上)
●耐震基準に適合した工事であることの証明書を受けていること
●改修が完了した日から3ヶ月以内に減額の申告をしていること
■減免される期間・税額
改修完了日の翌年度1年度分(通行障害既存耐震不適格建築物に該当する場合は2年度分)について住宅1戸あたり120㎡の床面積相当分まで全額減免
「バリアフリー改修を行った住宅に対する軽減措置」
●平成28年4月1日から平成30年3月31日までの間に法令で定めるバリアフリー改修工事が行われたものであること
●居住部分の割合が当該家屋の2分の1以上あること
●バリアフリー改修工事費用が一戸あたり50万円を超えていること
●申告時に、以下のいずれかの方が当該家屋に居住していること
(1)改修工事完了年の翌年の1月1日における年齢が65歳以上の方
(2)要介護認定または要支援認定を受けている方
(3)障害のある方
●改修工事完了後3ヶ月以内に減額の申告をしていること
■減免される期間・税額
改修工事完了年の翌年度分に限り、固定資産税を3分の1減額(当該住宅の一戸あたり100㎡の床面積相当分まで)
「省エネ改修を行った住宅に対する軽減措置」
●平成20年1月1日以前からある住宅で、平成20年4月1日から平成30年3月31日までの間に、次の(1)から(4)までの工事のうち、(1)を含む工事を行うこと((1)の工事は必須。(1)から(4)までの改修工事により、それぞれの部位が現行の省エネ基準に新たに適合すること)
(1)窓の断熱改修工事(二重サッシ化、複層ガラス化など)
(2)床の断熱改修工事
(3)天井の断熱改修工事
(4)壁の断熱改修工事
●居住部分の割合が当該家屋の2分の1以上であること
●改修工事費用が50万円を超えていること
●改修工事完了後3ヶ月以内に減額の申告をしていること
■減税につながる措置
改修工事が完了した年の翌年度分に限り、固定資産税の3分の1が減額(当該住宅の一戸あたり120㎡の床面積相当分まで)
負担調整措置について
固定資産税は、固定資産の価格が高いほど税金が高くなるのですが、特に土地については地域によって価格差が大きくなりがちです。
固定資産税の負担が地域よって格差があっては、公平とは言えず問題です。そこで、公平な課税を実現するために負担調整措置という仕組みがあります。これにより負担水準が高い土地の税負担が低くなり、逆に負担水準が低い土地については税負担が高くなります。
負担水準は以下の計算式で求められます。
負担水準 = 前年度の課税標準税額 / 当年度の価格×100%
住宅用地の場合、負担水準が低ければ、固定資産税が高くなり、負担水準の高い人との公平性が保たれることとなります。
まとめ
今回は固定資産税の概略を確認するとともに、代表的な軽減措置を紹介しました。自治体により異なる点は注意が必要ですが、特に土地や家屋に関する軽減措置は減税額が大きいので、是非ご活用ください。
関連記事
・土地や建物にかかる固定資産税の計算方法
・固定資産税の税率が下がる?知っておきたい軽減税率や優遇措置の基礎
・マンションの固定資産税をわかりやすく解説!
よくある質問
固定資産税とは?
毎年1月1日時点で所有している土地、家屋、償却資産に課される税金です。詳しくはこちらをご覧ください。
固定資産税の納期は?
原則として4月、7月、12月、2月中の市町村の条例で定める日ですが、市町村によって異なりますので、ご自身の自治体で確認してください。詳しくはこちらをご覧ください。
負担調整措置とは?
公平な課税を実現するための仕組みで、これにより負担水準が高い土地の税負担が低くなり、逆に負担水準が低い土地の税負担が高くなります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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