- 更新日 : 2024年8月8日
法人税法で認められる貸倒引当金限度額は?
中小企業者は会社が持つ売掛金や受取手形などの再建において、将来的に貸倒の発生が見込まれる損失額を法人税では損金として算入できます。
ただし、参入することができる金額はある一定の算式から計算される繰入限度額に達するまでという上限があります。
法人税法で損金算入が認められるこの制度には、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権のそれぞれに係る貸倒引当金があり、これらに対する繰入の限度額算出のために、法人税法では異なる計算方法が用意されています。
ここでは、個別評価金銭債権と一括評価金銭債権に係る貸倒引当金について説明します。
法人税法での個別評価金銭債権と一括評価金銭債権の違いとは?
法人税法での個別評価金銭債権とは、一般的に不良債権のことを指します。
そのなかには、会社更生法が適用された企業や民事再生手続きの申し立てを行った事業主の債権が含まれています。
また、法人税法では一括評価金銭債権とは、不良債権に該当しない金銭債権になります。
回収の見込みがある金銭債権にまで一括評価金銭債権の貸倒引当金を設定する理由は、現実的には貸倒の危険性がない売掛金でも、翌期にて一定割合の貸倒が発生すると見込まれるためで、それに備えて貸倒引当金を計上します。
個別評価金銭債権の貸倒引当金の限度額とは?
個別評価金銭債権に係る繰入限度額は、法令などの事由による長期の棚上額や、長期にわたって債務超過に陥っている場合に発生する取立不能額、形式基準による相当額など、それぞれの基準により3つの区分に分かれます。
各区分によって、繰入限度額の計上金額の算定方法が異なります。
・長期棚上げ基準…決算から6年目以降に弁済予定の金額
・実質基準…取立て見込みがないと判断される金額
・形式基準…担保でカバーできない金銭債権のうち1/2
一括評価金銭債権の貸倒引当金の限度額とは?
一括評価金銭債権の貸倒引当金の額は、貸倒実績率(当該年度より前3年間の貸倒損失額の比率を債権の期末残高から算出したもの)、法定繰入率(業種ごとに国が定めた貸倒発生率から算出)の2つの算出方法があります。
貸倒実績率法とは、過去3年間に実際に発生した貸倒損失の金額に基づき、法人税法では以下の算式で貸倒実績率を算定し、貸倒引当金を求めます。
貸倒引当金=期末一括評価金銭債権×貸倒実績率
(ⅰ) 3年分の貸倒損失の合計額
(ⅱ) 3年分の個別評価分の引当金繰入額
(ⅲ) 3年分の個別評価分の引当金戻入額
(iv) 3年分の一括評価金銭債権の合計額÷事業年度の数(通常は3)
また、法定繰入率法は、中小法人のみに認められている方法となり、貸倒引当金は以下の計算式で算出します。
・卸・小売業・料理飲食業…10/1000
・製造業(電気業・ガス業・水道行など)…8/1000
・割賦販売小売業…13/1000
・金融・保険業…3/1000
・その他事業(サービス業・不動産業など)…6/1000
一括評価金銭債権に該当する金銭債権について
一括評価金銭債権に該当する主な金銭債権は以下となっています。
・売掛金、貸付金、受取手形
・譲渡代金や請負料、地代家賃などのうち益金として算入した未回収金
・他人のために支払った立替金(例外あり。詳細は法人基本通達11-2-18の(4)を参照)
・益金として算入したにもかかわらず、まだ受け取っていない損害賠償金
・保証人として債務の弁済をした場合における求償権
・割引手形、裏書手形(既存債権と関連のないものを除く)
・一括評価金銭債権に含めた売掛金等の債権に係る先日付小切手
・延払基準を税務処理として採用した場合の割賦未収金等
なお、「仕入割戻しの未収金」や「保証金、敷金、預け金その他これらに類する債権」など、一括評価金銭債権に該当しないものもありますので、法人税計算の際は注意してください。
関連記事:
・売掛金のトラブルを未然に防ぐ!貸し倒れを避けるための正しい対処法とは?
・損金の処理をマスターしよう!
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
法人税の関連記事
新着記事
購入選択権付リースとは?仕組みやメリット・デメリット、会計処理まで徹底解説
購入選択権付リース(購入オプション付リース)は、リース期間満了後に設備や車両などの資産を、あらかじめ定められた価格で購入できる権利が付いたリース契約です。多額の初期投資を抑えながら最新の設備を利用し、将来的に自社の資産として所有できる可能性…
詳しくみる会計基準とは?種類一覧や調べ方、選ぶポイント、近年の改正内容をわかりやすく解説
企業が財務諸表(決算書)を作成するには、会計基準という統一されたルールが不可欠です。この記事では、会計基準の必要性や種類の一覧、そして自社がどの基準を選ぶべきかまでわかりやすく解説します。 会計基準とは? 会計基準とは、企業が財務諸表を作成…
詳しくみる2027年に適用開始の新リース会計基準とは?改正内容や影響をわかりやすく解説
2027年4月1日以後開始する事業年度から、日本のリース会計に関するルールが大きく変わります。今回のリース会計基準改正における最大のポイントは、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースが、原則として資産・負債として貸借対…
詳しくみるリース取引の判定基準は?フローチャート付きでわかりやすく解説
リース契約は、設備投資やIT機器導入など、多くの企業活動で活用される重要な手段です。「このリース契約は資産計上すべきか」「ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いがわからない」といった悩みは、経理担当者にとって避けて通れない問題…
詳しくみるリース契約と賃貸借契約の違いは?メリット・デメリットも徹底比較
リースと賃貸借は、どちらもモノを借りるという点で似ていますが、契約内容は大きく異なります。この二つの違いを理解しないまま契約すると、会計処理、コスト、法的な責任範囲で思わぬトラブルにつながる可能性があります。 この記事では、リースと賃貸借の…
詳しくみるリース取引の消費税の取り扱いは?種類別の会計処理や仕訳、インボイス制度対応まで解説
リース取引における消費税の扱いは、経理処理の中でも特に間違いやすく、複雑なポイントの一つです。契約の種類によって消費税を控除するタイミングが異なり、インボイス制度の導入によって新たな対応も求められています。 この記事では、リース料にかかる消…
詳しくみる会計の注目テーマ
- 勘定科目 消耗品費
- 国際会計基準(IFRS)
- 会計帳簿
- キャッシュフロー計算書
- 予実管理
- 損益計算書
- 減価償却
- 総勘定元帳
- 資金繰り表
- 連結決算
- 支払調書
- 経理
- 会計ソフト
- 貸借対照表
- 外注費
- 法人の節税
- 手形
- 損金
- 決算書
- 勘定科目 福利厚生
- 法人税申告書
- 財務諸表
- 勘定科目 修繕費
- 一括償却資産
- 勘定科目 地代家賃
- 原価計算
- 税理士
- 簡易課税
- 税務調査
- 売掛金
- 電子帳簿保存法
- 勘定科目
- 勘定科目 固定資産
- 勘定科目 交際費
- 勘定科目 税務
- 勘定科目 流動資産
- 勘定科目 業種別
- 勘定科目 収益
- 勘定科目 車両費
- 簿記
- 勘定科目 水道光熱費
- 資産除去債務
- 圧縮記帳
- 利益
- 前受金
- 固定資産
- 勘定科目 営業外収益
- 月次決算
- 勘定科目 広告宣伝費
- 益金
- 資産
- 勘定科目 人件費
- 予算管理
- 小口現金
- 資金繰り
- 会計システム
- 決算
- 未払金
- 労働分配率
- 飲食店
- 売上台帳
- 勘定科目 前払い
- 収支報告書
- 勘定科目 荷造運賃
- 勘定科目 支払手数料
- 消費税
- 借地権
- 中小企業
- 勘定科目 被服費
- 仕訳
- 会計の基本
- 勘定科目 仕入れ
- 経費精算
- 交通費
- 勘定科目 旅費交通費
- 電子取引
- 勘定科目 通信費
- 法人税
- 請求管理
- 勘定科目 諸会費
- 入金
- 消込
- 債権管理
- スキャナ保存
- 電子記録債権
- 入出金管理
- 与信管理
- 請求代行
- 財務会計
- オペレーティングリース
- 新リース会計
- 購買申請
- ファクタリング
- 償却資産
- リース取引