- 更新日 : 2024年8月8日
法人税で中間納付方法は3種類?理解しておきたい中間申告・納付のポイント
法人税の支払いに関しては、事業年度開始から6ヵ月経過時点を「中間」とし、事業年度の始めから「中間」点までの法人税を先に納めることとなっています。
納付期限は「中間」日より2か月以内ですが、今事業年度に創業した会社や前事業年度の法人税額が20万円以下の場合には中間納付の必要がありません。
中間納付は、確定申告時に多額の法人税を支払う負担を軽減するためのものです。また、国庫の財政収入を均等にし、より確実に財源を確保する目的もあります。
中間納付額の方法は予定申告によって納付税額を割り出す方法(予定納税)と「中間」日までの期間を一事業年度とみなして仮決算に基づいた納付税額を計算する方法(中間申告)があります。
予定申告による中間納付
前期実績を基準とする中間申告を予定申告といい、前事業年度に支払った法人税額のほぼ半分を中間納付額とします。
予定申告の利点は、申告・納税が簡単なことです。この場合の中間納税額は前期基準額となります。前期基準額の計算方法は以下のとおりです。
前期基準額 = 前事業年度の確定法人税額 / 前事業年度の月数×6カ月
正しい計算例
前事業年度の確定法人税額200万円 / 前事業年度の月数12=16万6,666円
16万6,666円×6カ月=99万9,996円
中間納付額(前期基準額)は99万9,900円(百円未満切捨て)です。
誤った計算例
前事業年度の確定法人税額200万円×(6カ月 / 前事業年度の月数12)=100万円
一般的には中間申告の時期になると、税務署から予定申告書が送られてきます。この申告書に中間納付額(前期基準額)を記入して提出するだけで中間申告が済みます。
ただし、前期基準額が10万円以下のときは申告不要です。
仮決算に基づく中間納付
仮決算に基づいて中間納付額を算定するには、まず、事業年度開始から6か月たった時点で中間決算を行わなければなりません。
そこで算出された課税所得に法人税率を掛けて中間納付額を確定します。この方法は事業年度の途中で仮決算を行うため手間がかかります。
しかし、前期に比べて経営が悪化した場合など前期の法人税の半額を払うことができないときにはこの方法が有効です。
ただし、予定申告によって算出された納付額が10万円以下の場合や、予定申告による納付額より仮決算に基づく納付額の方が高くなった場合には、仮決算による申告を行うことはできません。
なお、源泉所得税の還付は確定申告時以外には行われませんので、注意が必要です。
みなし申告
中間申告は実は提出必須ではありません。中間申告期限内に、仮決算に基づく中間申告書を提出しなかった場合には、予定申告が行われたとみなされます。ただし、その後修正はできません。
中間申告書を提出しなかった場合は、税務署から送られてきた予定納税額で中間申告したとみなされ、その額面で支払う必要があります。
中間納付の具体例
例:事業年度を4月1日から3月31日とする法人の申告・納付予定
・9月30日 事業年度開始日から6カ月
・11月30日 中間申告提出期限
仮に前年の法人税額が240万円、4月1日から9月30日までの仮決算による今年度の上期の計算納税額が100万円だとすると、それぞれの申告方式による納税額は以下のようになります。
2.仮決算を選択した場合の中間納付額:100万円
3.みなし申告:120万円
確定申告時の手続き
注意しておきたいのは、中間納付で前払いした法人税分を忘れずに確定申告で精算しなければならないということです。
確定法人税額よりも支払った中間納税額が多かった場合には、もちろん超過分が戻ってきます。
中間納付は、法人が独自の判断で予定申告か仮決算かどちらか有利な方法を選ぶことができる納税手続きです。
前事業年度に比べると上半期の経営状況が落ち込んでしまったという場合には、仮決算での中間納付の方が良いかもしれません。
法人税の中間申告および納税については、次の3つを押さえておくとわかりやすいでしょう。
①事業年度開始から6月経過後、2月以内に申告すること
②前事業年度の確定法人税額の半分を中間納税額とする予定納税が原則であること
③仮決算により計算した金額を中間納税額とする方法も可能であること
消費税の中間納付はこちら
法人税の中間納付について説明してきましたが、消費税の中間納付について詳しく知りたい方は以下の記事を参考にしてください。
消費税の中間納付・中間申告が必要なのは前年の納税額が〇〇万円以上の人?!
よくある質問
予定申告とは何?
前期実績を基準とする中間申告を予定申告といい、前事業年度に支払った法人税額のほぼ半分を中間納付額とします。詳しくはこちらをご覧ください。
中間申告期限内に、中間申告書を提出しなかった場合どうなる?
予定申告が行われたとみなされますが、その後修正はできません。詳しくはこちらをご覧ください。
中間納付で気を付けるべきポイントは?
中間納付で前払いした法人税分を忘れずに確定申告で精算しなければいけません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
法人税の関連記事
新着記事
利子補給金とは?仕訳や勘定科目、消費税の扱いをわかりやすく解説
企業や個人事業主が金融機関から借入をしたあと、利息の負担を軽くする目的で「利子補給金(りしほきゅうきん)」が支払われることがあります。これは、国や自治体が利息の一部を助成してくれる仕組みです。ただし、この補給金を受け取ったときの会計処理や仕…
詳しくみる有償支給取引の仕訳とは?会計処理や消費税の扱いをわかりやすく解説
製造業や委託加工を行っている企業では、「有償支給」の取引がよく行われます。しかし、実際に仕訳をしようとすると、「どの勘定科目を使えばいいの?」「消費税はどう処理するの?」など、悩ましい場面が多いのではないでしょうか。 この記事では、有償支給…
詳しくみる役員借入金の返済方法と仕訳はどうする?現金・相殺・振替のケースをわかりやすく解説
会社のお金が一時的に足りなくなったとき、経営者や役員が自分のお金を会社に貸すことがあります。これを「役員借入金」といいます。借りたお金はあとで返す必要がありますが、その返し方や会計処理は、経理の現場で迷うポイントのひとつです。 この記事では…
詳しくみる免税事業者からの仕入れを仕訳するには?インボイス制度での会計処理を解説
さまざまな事業者から商品やサービスを仕入れることは頻繁にあります。とくに個人事業主や中小企業など、免税事業者から仕入れるケースも少なくありません。しかし、2023年10月1日に導入されたインボイス制度によって、免税事業者からの仕入れに関する…
詳しくみる外注費を売上原価に計上するには?ケース別の仕訳例を解説
外注費は、社外に業務を依頼したときに発生する費用ですが、そのすべてが売上原価になるわけではありません。売上原価として扱うには、外注作業が売上に直接関係しているかどうかが判断ポイントになります。この記事では、売上原価に該当する外注費の見分け方…
詳しくみる当期純損失の仕訳方法は?会計処理を具体例でわかりやすく解説
会社の会計年度が終わると、当期の損益が決算として確定されます。通常は「利益」を計上することが理想ですが、売上が減少したり費用・損失が増加したりした場合には、「当期純損失」として赤字を計上することになります。損失が出たときは、その金額をどのよ…
詳しくみる