- 更新日 : 2025年2月20日
60年ぶりの農協監査制度改革!全中の監査権廃止で日本の農業の何が変わるのかを徹底解説!
2015年2月8日に、政府と全国農業協同組合中央会(以下、全中と表記)の間で全中がこれまで、全国各地にある700に上る地域農協に対して独占的に有していた監査権を廃止することで合意がまとまりました。また、この他にもいくつかの改正点が合意されました。
ところで、この結果、何がどう変わるのでしょうか?
今回は、私たちの食という生活の基本にかかわるものでありながら、あまり馴染みのない農協および、全中という組織について、全中が担ってきた監査権や、監査法人の説明も交えながらわかりやすく解説いたします。
目次
全中と農協と農家の関係
全中とは
全中は、昭和29年に農協法に基づいて設立された組織です。その当時、経営に行きづまる地域農協が多くあったことから、農協の指導監督の役割を担って誕生しました。そのため全中は、それぞれの地域の農協に対して監査権や、指導権という強力な権限を有していました。
今回の改正ではこの、権限の一部が廃止されたり、新たな組織に移譲されるものです。
農協とは
農協とは、戦前から存在する農家を支援する組織です。当初は作付のアドバイスや、農業に必要な資材の販売などを通じて日本の農業を支援してきました。やがて、農家向けの保険や金融の商材を取り扱い始め、現在では非農業従事者であっても、準会員としてこれらの金融サービスを受けることができます。
かつては多くの農家が加入していました。しかし、現在は高齢化や、販売チャンネルの多様化に伴い、農協に属さない農家や、一部の資材を購入するだけなど部分的に関わるだけの農家も登場しています。
今回の合意で全中と農協の関係で変化する2つのこと
今回、政府の規制改革会議が検討し提言したJAの改革案が合意されたことにより、全中と地域農協の関係が大きく変化します。
1.監査権の廃止
全中が地域農協に対して持っていた監査権が廃止されました。そして、全中の監査部門は、新たな監査法人として独立します。
その結果、各地域の農協は自分たちの組織の監査役を、一般の監査法人からも選べることになり、選択肢が広がります。一方、全中から独立した監査法人も地域農協が選ぶ監査法人の選択肢の一つとなります。
監査法人とは何か
ところで、今回全中から新たに独立する監査法人とは通常の法人と何が違うのでしょうか。
監査法人と一般の法人の違いは、監査法人の場合は所属する社員に最低5人の公認会計士が必要な点です。
監査法人とは、昭和41年の公認会計士法の改正により創設された、組織的監査の担い手のことです。監査法人制度ができる以前の上場企業の監査は、個人の公認会計士によって行われてきました。しかし、昭和の時代の不況による倒産が相次ぐ中で、多数の粉飾決算が明るみに出ました。
そこで、監査を個人ではなく組織的に行うことで、監査業務の信用度や公正さを高めるような制度が創設されました。このような経緯があるため、監査法人を設立するには5人以上の公認会計士が必要になります。
今回の改正点は3つ
今回の改正点は監査権の廃止、指導権の廃止、準会員の利用規制の見送りの3つです。最後に、改めて何が変わるのかを振り返ってみましょう。
1.全中の農協への監査権の廃止と監査法人の設立
地域農協の監査を行えるのはこれまで全中だけでした。しかし今回の改正で、全中の監査権が廃止され、代わりに新たな監査法人が設立されることになりました。今後、地域農協は自分たちの監査を、一般企業と同様の監査法人か全中から独立した監査法人かどちらに依頼するか選べるようになります。
2.全中の農協への指導権の廃止
全中が地域農協に対して持つ指導権の廃止です。これは、農協法に根拠がある権限で、これにより全中は、農協の組織、事業、経営に対し、大きな権限をふるってきました。
この指導権も今回の合意により廃止されました。具体的には、法務、税務、会計、経営管理、内部統制、コンプライアンス等についての指導をする権利が廃止されます。
これは、全中から県ごとの団体を経て、下部の地域農協まで貫かれた指揮命令系統が見直されることを意味します。つまり、地域農協は指導を受けなくてもよくなり、今までよりも自由に活動をすることが可能になりました。
全中が指導することで、全国的に統一された行動を取ることが可能でしたが、一方で各地の農協が独自に工夫した施策を行いにくいというデメリットもありました。今回の改正では、この地域農協が独自に工夫をする自由度が上がるものになります。
3.準組合員の利用規制の見送り
今回の改正には、準組合員の利用規制をかけることが盛り込まれていました。準組合員とは、農家にその資格がある正組合員に対して、農家でない組合員を指すことです。しかし、この改正点については、今回は見送られました。
規制が検討された理由としては、農家でない人たちが農協の金融部門を利用するために準組合員となる例が多くあるためです。本来農家のための組織である農協の会員に、農家ではない人が増加することで農家のための施策が取りにくくなることなどが懸念されています。今回見送られた規制内容は、正組合員の事業利用の2分の1を超えてはならないというものです。
しかし、この規制を適用することで準組合員数が圧倒的に多い農協にとっては死活問題になりうるので、今回は見送られました。
まとめ
今回の合意は、全中の1954年の発足から数えて60年ぶりの日本の農業における歴史的な改革となります。
普段の生活ではあまり意識しない、農協と全中の関係ですが、私達の食生活に大きく影響する分野でもあります。この制度改革が、日本の農業の未来に対してどう影響するのか、今後も注目していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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