- 更新日 : 2024年2月20日
不動産の減価償却とは?計算方法や仕組み、耐用年数についても解説!
不動産とは、土地や建物などの「動かすことのできない資産」であり、減価償却できるものとできないものがあります。この記事では、不動産の減価償却について、法定耐用年数や定額法・定率法などの償却方法から、中古不動産を取得したり、土地やマンションを売却したりした場合の注意点まで一通り解説をします。
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目次
不動産の減価償却とは?
減価償却は、発生主義会計になくてはならない考え方です。現代の会計においては、原則として取引を「発生主義」で捉え、この代表的な例が減価償却とされます。
固定資産を取得した場合、発生主義の考え方に従い、その固定資産の取得価額を耐用年数にわたって一定の方法で費用として配分します。さらに、減価償却の際、貸借対照表における固定資産の価額をその減価償却費の分だけ減少させます。これが減価償却です。
さて、もう少しわかりやすく、実際の例を挙げながら減価償却を見ていくことにしましょう。
そもそも減価償却の仕組みとは?
そもそも減価償却とは、時間の経過や使用とともにその価値が減るという前提に立っています。したがって、土地などのように時間の経過と価値が関係ないものは、減価償却はしません。この土地などの減価償却しない固定資産を「非減価償却資産」と呼びます。
一方、建物などは事業に利用することにより時間の経過とともに資産としての価値が目減りすると考え、この目減り分を「減価償却費」として捉えます。これら建物など減価償却する固定資産を「減価償却資産」と呼びます。わかりやすく言うと、減価償却資産は何年も使うので何年かに分けて費用にするということです。
【建物の減価償却イメージ図】
上の図は減価償却のイメージを年ごとの棒グラフで示したもので、時の経過や使用による摩耗とともに、固定資産の価値が減ることを表しています。
建物を取得したときにはその取得価額が貸借対照表に計上されますが、決算時に減価償却費を計算し、その償却費分だけ目減りしたものが貸借対照表に計上されます。減価償却費は費用や原価として、損益計算書や製造原価報告書に記載されます。
建物を事務に利用している場合には、損益計算書の「販売費及び一般管理費」などに計上されますが、その建物が商品の製造工場などである場合には、製造原価を構成するため製造原価報告書などの構成要素となります。
なお、減価償却についての詳細は以下の記事をご参照ください。
法定耐用年数との関係は?
減価償却費の計算にあたって、いくつか重要な要素があり、その一つとして「耐用年数」が挙げられます。減価償却資産の取得価額は、その固定資産の使用可能期間の全期間にわたり、一定の方法で分割したものが経費となります。この使用可能期間の全期間を耐用年数と言います。
通常の維持補修をする場合、その減価償却資産の本来の用途・用法により予定される効果をあげられる年数が耐用年数となります。
この耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に個々の固定資産について定められており、所得税法や法人税法などの計算で使用する耐用年数を「法定耐用年数」と言います。
なお、耐用年数についての詳細は以下の記事をご参照ください。
不動産の減価償却の計算方法は?
減価償却費を求めるためには、固定資産の取得価額と耐用年数の他に、「償却方法」と呼ばれる費用の分割方法が必要となります。原則的な償却方法としては、大きく分けて定額法と定率法があります。
この記事では、平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産について、原則的な償却方法である定額法と定率法について見ていきましょう。
定額法による計算方法
定額法とは、毎期一定(定額)の費用化をする償却方法です。
定額法によりますと、原価償却費の額は毎年同額となります。建物、建物付属設備及び構築物の法定償却方法については、所得税でも法人税でも同じで、定額法となっています。
ただし、平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産には旧定額法を採用し、上記の計算方法とは異なります。
参考:No.2105 旧定額法と旧定率法による減価償却(平成19年3月31日以前に取得した場合)|国税庁
定率法による計算方法
定率法とは、毎期一定の率(定率)を未償却残高に乗じて費用化をする償却方法です。定額法に比べ、定率法は早期に多くの減価償却費を計上できるため、節税の観点から有利とされます。
上記の減価償却費が償却保証額*より小さくなった年分以後は次の式で計算します。
※償却保証額とは、取得価額にその資産の対応年数に応じた保証率を乗じて算出した金額を言う。
したがって、定率法では償却率以外に保証率及び改定償却率が必要となります。法人税の計算においては、建物、建物付属設備、構築物などは所得税と同様、定額法が法定償却方法とされますが、機械装置、工具器具備品などは定率法が法定償却方法となります。
なお、法定償却方法以外の償却方法を選択したい場合には、税務署への届け出が必要となります。
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中古不動産を取得した場合の減価償却の計算方法は?
建物などの不動産の場合は中古での取得もよくあります。耐用年数はあくまでも建物の減価償却の計算に使うためのものであるため、建物自体の利用に問題がない場合がほとんどです。
中古の建物などを取得し、事業として利用した場合には、事業用に供したとき以後の使用可能期間として見積もられる年数を耐用年数とできます。しかしながら、使用可能期間の算定が難しい場合には、簡便法により耐用年数を求められます。
- 法定耐用年数の全部を経過した中古資産
…法定耐用年数の20%に相当する年数例:法定耐用年数10年の固定資産を新品から12年経過後に中古で取得したときの耐用年数
10年 × 20% = 2年 - 法定耐用年数の一部が経過した中古資産
…法定耐用年数から経過した年数を引いた年数に、経過年数の20%に相当する年数を加算した年数(年の端数切捨て)例:法定耐用年数10年の固定資産を新品から3年経過後に中古で取得したときの耐用年数
(10年 ― 3年) + 3年 × 20% = 7.6年 → 7年(端数切捨て)
不動産の減価償却の節税メリットは?
減価償却資産である不動産を取得した場合には、耐用年数にわたって減価償却費を経費として計上できます。減価償却費の計上は実際の支出のない費用であるため、税務上のメリットとなります。
アパート・マンションなどの減価償却費
アパート・マンションなどの不動産収入から減価償却費を差し引いて所得を計算するため、減価償却費には節税効果があります。
不動産収入の必要経費には、実際にその期に支払った固定資産税や損害保険料、修繕費などがありますが、減価償却費は支出のない経費として差し引けます。中古の建物などで耐用年数が短いものは減価償却費が多額になりますので、節税効果が高いと言えます。
建物売却時の減価償却費の節税効果
同じ価額の建物でも中古物件と新築物件では、その耐用年数が異なります。所得税の場合は、売却まで考えると耐用年数の短い中古物件のほうが節税効果が高くなります。つまり、所得税においては短期間に減価償却によって経費を出しておいたほうが結果的に有利となります。
たとえば、同じ4,000万円で取得した中古建物Aと新築建物Bがあったとします。そして、20年後に建物Aも建物Bも3,500万円で売却できたとします。(この例では売却時の手数料はないものとし、住民税も考慮しないものとします。)
減価償却累計額 | 帳簿価額 | ||||
---|---|---|---|---|---|
4,000万円×0.05×20年=4,000万円 | 3,500万円-0万円≒3,500万円 | ||||
4,000万円×0.02×20年=1,600万円 | 3,500万円-2,400万円=1,100万円 |
建物利用中は、建物Aは1年あたり200万円の減価償却費を20年間、すなわち計4,000万円分の経費を計上できるのに対し、建物Bは1年あたり80万円で計1,600万円の減価償却費しか計上できません。
そして、売却時において建物Aは売却益3,500万円に対して課税され、建物Bは1,100万円について課税されます。したがって、売却時の譲渡所得に対してかかる所得税は建物Aのほうが大きいと言えます。
ここまでは、取得価額4,000万円を建物利用期間に経費とするか、売却時に経費とするかの違いであることがわかります。
ところが所得税においては、建物を所有し、利用している期間においては、事業所得や不動産所得として申告します。建物の利用中の事業所得や不動産所得の所得税率は累進課税であるため所得税は高率となります。これに対して、建物売却時においては譲渡所得として課税され、所得税率は15%(所有期間5年以上)と一律です。
節税額 | 節税額 | 取得から売却までの 節税額 | |
---|---|---|---|
20年償却 | による所得税率 | による所得税率 | |
50年償却 | による所得税率 | =360万円 | による所得税率 +360万円 |
累進課税による所得税率は330万円を超えると20%となりますので、建物利用期間中の20年間については、多くの場合売却時の15%より高くなると考えられます。
以上のことから、建物A、Bの課税前までのトータル費用は4,000万円で同じですが、売却する場合は耐用年数の短いものが税率の差に影響し、節税できる結果となります。
不動産の減価償却の注意点は?
不動産を譲渡する場合には、建物だけの場合もありますが、土地及び建物を一括で取得したり、譲渡したりすることが多いため、どのように考えるとよいでしょうか?また、減価償却資産である建物を事務所用から店舗用などに用途を変更した場合にも気をつけましょう。
土地と建物の不動産価格を分ける
一括契約であっても、土地は非減価償却資産であり、建物は減価償却資産であるため、取得価額や譲渡対価を分けて考える必要があります。
たとえば、土地と建物の一括取得においては、取得総額を建物の取得価額と土地の取得価額に分け、建物の取得価額については毎期減価償却をすることになります。
このとき、売買契約書にそれぞれの価額が記載されている場合には、原則としてその価額を使用しますが、土地と建物の内訳が不明な場合には、時価(固定資産税評価額)の比率などで按分することになります。
按分の考え方にはいくつかあり、ここでは割愛しますが、按分時の計算根拠はその不動産を保有している間は保管しておきましょう。
建物の用途を変えた場合による減価償却の計算
建物の耐用年数はその利用方法によって変わってきます。減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一などを参照してわかるように、同じ構造の建物でも事務所用では50年ですが、店舗用では39年などと設定されています。
たとえば、事務所用として利用していた建物を店舗用に変更(転用)した場合には、原則として利用を変更したときから利用後に定められた耐用年数で減価償却することとなります。ただし、年の中途で転用した場合には年初から転用後の耐用年数により減価償却費を計算できます。
不動産の減価償却を正しく算出し、税金対策をしましょう
減価償却を途中で間違ってしまうと、損益計算書だけでなく貸借対照表にも影響が出ます。定額法の場合、減価償却の計算において間違うことは少ないように思われますが、取得価額の間違いや耐用年数の考え方の間違いがあった場合、遡って修正申告ということもあり得ます。
したがって、取得価額が大きくなる建物などの減価償却資産については固定資産の登録時に計上漏れはないかを慎重にチェックしましょう。
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ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
もっと読むよくある質問
減価償却とはなんですか?
建物などは事業に利用することで時の経過とともに資産としての価値が目減りすると考え、この目減り分を「減価償却費」とする考え方です。詳しくはこちらをご覧ください。
耐用年数とはなんですか?
減価償却資産の取得価額は、その固定資産の使用可能期間の全期間にわたり、一定の方法で分割したものが減価償却費となります。この使用可能期間の全期間を耐用年数と言います。詳しくはこちらをご覧ください。
減価償却による節税メリットとは?
アパート・マンションなどの不動産収入から減価償却費を差し引いて所得を計算するため、支出のない経費である減価償却費には節税効果があります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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