- 更新日 : 2025年2月20日
資本効率とは?代表的な指標や資産効率との違いを解説
資本効率は、企業が資本を活用してどのくらい稼ぎを生み出しているかを表す概念です。この記事では、資本効率の意味や代表的な指標、資本コストとの関係、資産効率との違い、資本効率を高める方法について解説します。
目次
資本効率とは
資本効率とは、企業が株主や銀行等から調達した資金を効率的に利用して儲けが出ているかを評価する概念のことです。資本効率が高いほど、株主からの出資金や金融機関からの融資を活用して利益を出せていることになります。
資本効率を表す代表的な指標
資本効率は、さまざまな数値を利用して測定できます。資本効率を測る代表的な指標は、ROE、ROA、ROCE、ROICです。
ROE(自己資本利益率)
ROEはReturn on Equityの略で、日本語では自己資本利益率といいます。以下の計算式によって算出できます。
ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
自己資本とは、株主などから調達した返済の必要がない資本のことです。上場企業などの場合、以下の計算式からもROEを求められます。
ROE(%)=一株あたりの利益÷一株あたりの純資産×100
ROEからは、株主などから出資を受けた額をどのくらい効率よく運用できているかがわかります。ただし、ROEの計算式には負債の金額が含まれていないため、負債額が大きい場合は資金効率がよいとはいえない場合もあることに注意が必要です。
ROA(総資産利益率)
ROAはReturn on Assetsの略で、日本語では総資産利益率(または総資本利益率)といいます。ROAは以下の計算式により算出できます。
ROA(%)=当期純利益÷総資産×100
総資産とは企業の現預金や売上債権、棚卸資産、固定資産、繰延資産など、貸借対照表の資産の部に分類される額の合計額のことです。
ROAからは、投下した資産を活用して、どれだけ効率良く利益を上げているかがわかります。ただし、投下している資産が少ないときや一時的に当期純利益の額が高く計上されているときはROAが高くなることもあるため、前期との比較や決算書の額との比較が必要です。
ROCE(使用資本利益率)
ROCEはReturn on Capital Employedの略、日本語では使用資本利益率となります。ROCEは以下の計算式により算出できます。
ROCE(%)=EBIT÷使用資本×100
EBITとは、利息および税金控除前利益のことです。損益計算書の税引前当期純利益の額に利息を加減(支払利息を加算、受取利息を減算)した金額を指します。使用資本とは、貸借対照表の自己資本の額に有利子負債の額を加算した金額のことです。
ROCEからは、企業が調達した資金(自己資本の額+有利子負債の額)をどれだけ効率良く利益につなげられているかがわかります。
ROIC(投下資本利益率)
ROICはReturn on Invested Capitalの略で、日本語では投下資本利益率といいます。ROICは以下の計算式で算出できます。
ROIC(%)=税引後営業利益÷使用資本×100
(税引後営業利益とは、本業の儲けである営業利益から法人税等を控除した金額のこと)
ROICは、ROCEと同じように自己資本と有利子負債の投下資本に注目した指標です。ただし、ROCEと異なり、ROICは営業利益に注目した資本効率を測定する指標です。
資本効率と資本コストの関係
資金調達にかかるコストを資本コストといいます。資本コストは、負債コスト(他人資本コスト)と株主資本コストに分けることができます。負債コストは、企業の信用リスクを考慮した借り入れや社債の発行などにかかるコストのことです。株主資本コストとは、株主の期待収益を考慮した剰余金の配当などのコストを指します。
資本効率と資本コストの関係は、経済産業省が日本再興戦略の一環として公表した2013年の伊藤レポートで言及されました。レポートでは、資本効率の指標の一つであるROEが資本コストを上回ることが提言されています。つまり、資本コストを考慮した十分な利益の確保は、資本効率にも影響を与えるということです。
資本効率と資産効率の違い
資本効率が資本に注目した概念であるのに対して、資産効率は企業のあらゆる資産に注目した概念です。資産効率の資産の中には、企業が投下した設備だけでなく、人材などの資産も含まれます。資産効率は、企業が投下した資産がどれだけ利益につながっているかを表す概念です。
資本効率を高めるには
資本効率は、企業の利益と投下資本により測定できます。資本効率を高める方法は、利益を上げる方法、投下資本を縮小する方法、リソースを無駄なく活用する方法の3つに大別できるでしょう。
利益を上げて資本効率を向上させるには、利益率に注目します。利益額が向上しても、利益額と比例してコストも増加すれば、資本効率の向上につながらないことがあるためです。利益率を向上させる方法として、マーケティングを強化する、収益性の低い事業の削減を検討するなどが考えられます。
投下資本の縮小も、資本効率の向上につながります。方法としては、自己株式取得による純資産額の減少、剰余金の配当による純資産額の減少、借入金の繰り上げ返済による負債の減少などが検討できるでしょう。
リソースを無駄なく活用するとは、企業のあらゆる資産を見直して適切に配置するということです。使用していない資産の除却や使用頻度の低い資産のレンタルの検討、人員配置の適正化などがあります。
資本効率の高い経営を目指そう
資本効率が高いと、投下された資本を効率良く活用していると評価されます。ただし、資本効率を測定する指標は複数あるため、それぞれの指標の特徴を理解して活用することが重要です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
中小企業事業再編投資損失準備金とは?対象や手続き、拡充枠についてわかりやすく解説
中小企業事業再編投資損失準備金とは、中小企業のM&Aを後押しする制度です。事業拡大や後継者不足などが理由でM&Aを選択する企業が多くなる現在、この制度にはどのようなメリットがあるのでしょうか。 中小企業事業再編投資損失準備金…
詳しくみる収受日付印は令和7年から廃止!税務署に紙で申告した際の確認方法は?
収受日付印は、申告書の控えなどに押印される日付印です。これまでは、紙で申告書を提出する際の控えに押されていましたが、令和7年1月以降の申告から廃止となりました。収受日付印廃止以後の対応や申告書提出の確認方法について紹介します。 収受日付印は…
詳しくみる消費税は費用になる?勘定科目や仕訳方法、税率変更時のコストまで解説
日々の取引で発生する消費税について、「最終的に納める消費税は、会社の費用や経費として計上できるのだろうか」と疑問に思ったことはないでしょうか。結論からいうと、消費税は原則として費用にはなりませんが、会計処理の方法によっては一部が費用科目に振…
詳しくみる取得原価とは?概要や計算方法、活用ポイントを簡単に・わかりやすく解説
会計や経理、簿記などで出てくる「取得原価」とは、新しく資産を取得する際に、かかった費用の総額を指します。取得原価には、資産そのものだけの金額ではなく、その他にも含まれるもの、含まれないものがあります。また、取得原価の計算方法もあるのです。 …
詳しくみる賃上げ促進税制とは?概要や対象、活用のメリットを解説
賃上げ促進税制は、従業員の給与引き上げを促進するための制度です。令和4年度税制改正で創設された賃上げ促進税制ですが、令和6年度税制改正によってさらに3年延長し、かつ拡充しました。 本記事では、賃上げ促進税制の概要、従来の賃上げ促進税制との違…
詳しくみる【これは軽減税率?】新幹線の車内ワゴン販売は軽減税率の対象になる?
2019年10月1日からスタートした消費税の軽減税率制度。主に「飲食料品」は消費税軽減税率8%の対象になりますが、飲食のシチュエーションなどによっては適用対象になりません。 本シリーズ『これは軽減税率?』では、事業者のみなさんが軽減税率につ…
詳しくみる