- 作成日 : 2024年10月4日
会計期間とは?決めるポイントや事業年度との違い
会計期間とは、事業の会計処理を区切るための期間のことです。会計期間は、累計期間や事業年度と何が違うのでしょうか。この記事では、会計期間の概要や似た用語との違い、会計期間を定めるポイントについて解説します。
目次
会計期間とは
会計期間とは、貸借対照表に表示される財産の計算や損益計算書に表示される損益の計算のために設定される期間のことです。会社計算規則の第59条2項において、貸借対照表や損益計算書を含む計算書類の期間には、以下の定めがあります。
各事業年度に係る計算書類及びその附属明細書の作成に係る期間は、当該事業年度の前事業年度の末日の翌日(当該事業年度の前事業年度がない場合にあっては、成立の日)から当該事業年度の末日までの期間とする。この場合において、当該期間は、一年(事業年度の末日を変更する場合における変更後の最初の事業年度については、一年六箇月)を超えることができない。
引用:会社計算規則|e-GOV
つまり、会計期間は法人の事業年度が終了した翌日から新たな事業年度の末日までの、1年未満の期間であることがわかります。法人の場合、4月から翌年3月末まで、1月から12月末までのように、1年を会計期間とするのが一般的です。
会計期間の期首・期中・期末
会計期間に関連して、「期首」「期中」「期末」といった用語がよく使われます。
期首とは一会計期間が開始する日、期末とは一会計期間が終了する日のことです。例えば、4月から翌3月を会計期間としている会社では、毎年4月1日が期首、毎年3月31日が期末となります。
期中とは、期首と期末のいずれにも該当しない一会計期間に属する日のことです。例えば、3月末決算の会社では、4月1日と翌年3月31日を除いた期間を指します。
会計期間と累計期間の違い
会計期間とは、法人の財産や損益を計算するための期間のことです。3月末決算で四半期ごとに決算を行っている場合、第1期の会計期間は4月1日~6月30日、第2期の会計期間は7月1日~9月30日になります。
累計期間とは、期首からある時点までの累計の期間のことです。3月末決算で四半期ごとに決算を行っている場合、第1期の累計期間は4月1日~6月30日、第2期の累計期間は4月1日~9月30日になります。
会計期間と事業年度の違い
事業年度とは、税務申告に必要な法人の財産や損益を計算する単位となる期間のことです。法人税法では、法令や定款などで定められた会計期間、定款などに定めがないときは法人が届け出た期間などを事業年度とすることになっています。
つまり、会計期間は会計上の概念、事業年度は法人税法上の概念であって、基本的に会計期間と事業年度は一致します。
会計期間を決める上でのポイント
会計期間は、基本的に企業が決めることができます。会計期間はどのように定めたらよいのでしょうか。会計期間を決める際のポイントを紹介します。
繁忙期を考慮する
会社の決算前後には、決算書の作成、株主総会での議案の決定、株主総会の招集、税務申告書の作成など、さまざまな作業や手続きが発生します。
会社の繁忙期と決算期が重なると、通常業務や決算業務に支障が出る可能性があります。また、さまざまな業務が重なることで、通常よりもミスが重なる可能性も高まるでしょう。会計期間を定める際には、繁忙期や閑散期などを洗い出し、決算前後と繁忙期が重ならないようにすることをおすすめします。
売上が多くなる月を期首にする
売上の多い月を期首にして会計期間を定める方法もあります。売上の多い月を期首にするのは、その後の税務申告などに向けた対策が立てやすくなるためです。売上が多くなりやすい月が期末付近で予想以上に売上があると、思うように対策ができなくなります。
免税期間を活用する
新たに設立した法人には消費税の基準期間(その事業年度の前々事業年度)が存在しないため、基本的に設立第1期と第2期は消費税が免税されます。ただし、以下に該当する場合は設立第1期でも消費税が課税されます。
- 資本金または出資金の額が1,000万円を超える法人
- 1以外で事業年度開始の日から6か月までの期間の課税売上が1,000万円を超える法人
- 特定新設法人(基準期間の課税売上高が5億円を超える法人などに株式等の50%超を保有されている法人)に該当する法人
上記のいずれにも該当しない創業したばかりの企業は、消費税が免税されます。第1期の設立から決算までの期間が短いと消費税の免税期間が短くなるため、免税期間を考慮して、設立日から遠い月を決算月として会計期間を定めることもあります。
ただし、新規設立法人であってもインボイス発行事業者になった場合においては、納税義務は免除されません。
経営上の目標に合わせる
開業に向けて売上や利益の目標設定をする際には、半年後や1年後のように期間を決めて目標を設定します。そのため、設定する目標に対応するように会計期間を決める方法もあります。
なるべく標準的な期間に設定する
上場企業では、3月末決算で、会計期間を4月から翌年の3月に設定している企業が多く存在します。3月を決算とする上場企業が多いのは、税制改正の内容が4月に適用されるケースが多く、それに対応しやすいためです。3月決算に次いで、12月決算(会計期間は1月から12月)の上場企業も多く存在します。
法律で定められている場合を除き、基本的に、会計期間は企業側で自由に決められます。売上が基本的に一定で繁忙期が特に存在しない業種などは、一般的に採用されることの多い会計期間に合わせるのも方法の一つです。
決算期は後で変えられる
株主総会で承認を得るなど一定の手続きを踏めば、会計期間を変更することができます。開業までに会計期間を決められないときは、繁忙期を避けて標準的な会計期間にしておき、業務上支障が発生する場合などは、後で変更することもできます。
法人が開業する際には会計期間の設定が必要
個人事業主の場合、会計期間は1月1日から12月31日までと定められています。一方、法人については個人事業主のように会計期間の指定がないため、基本的に法人側で自由に会計期間を設定できます。そのため、開業の際には会計期間の設定が必要です。標準的な会計期間を参考にする方法など、会計期間の決め方のポイントは複数あります。この記事で紹介したポイントも参考にして、事業の状況なども考慮して会計期間を設定しましょう。
なお、会計期間の変更とあわせて、法人税でも事業年度を変更が必要となります。その場合には所轄の税務署に届け出をしましょう。異動届出書には事業年度を変更した場合の欄も設けられていますので、速やかに届け出てください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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