• 更新日 : 2024年4月15日

債権管理とは?管理方法やリスクなど基礎知識を解説

債権管理とは?管理方法やリスクなど基礎知識を解説

適切な債権管理によるキャッシュフロー最適化や流動性の確保は、企業経営を安定させるために不可欠なポイントです。しかし、債権管理の複雑性から、効率的な運用方法の確立やリスクへの対応が常に課題となっています。
この記事では、債権管理の基礎知識をはじめ、具体的な管理方法や管理に伴うリスクとその対策まで幅広く解説します。さらに、管理の効率化を図るためのシステムやツールについてもご紹介いたします。

債権管理の基礎知識

債権とは

債権とは、金銭の貸し付けやサービスの提供を行なった際に、返済や債務の履行を受ける権利のことです。
債権は、取引内容や条件に応じてその形態が変わり、企業の財務状況やキャッシュフローに大きな影響を与えるため、適切な管理が不可欠です。
これらの債権を管理することを債権管理と呼び、与信管理や債権リストの管理、未払い債権への対応などが含まれます。

債権の種類

債権の種類は多岐にわたります。主には、期間によって短期債権と長期債権に分けられ、取引の性質によっては特定物債権、金銭債権、利息債権などへと細分化されます。
これらの債権は種類に応じて適切な管理を行うことが求められますが、考慮すべきリスクや管理方法は企業によって異なりますので、自社に応じた管理を行うことが重要となります。

債権管理の必要性

債権管理は、企業の財務健全性と直結しています。
適切な債権管理を行うことで、企業は売掛金の回収を迅速に行い、キャッシュフローを改善することが可能です。
また、債権の適切な評価と管理は、状況を把握した上で資金を有効に活用することにも寄与します。さらに、債権情報の正確な把握は、企業の信用評価や融資条件にも影響し、長期的な企業経営の成功において不可欠な要素です。
このように、債権管理は企業の財務健全性やキャッシュフローなどの適切性を保つ上で、極めて重要な要素となります。

債権の時効消滅の管理

債権の消滅時効は「民法166条1項」により、権利を行使できることを知った時から5年、または権利を行使できる時から10年とされています。
(出典:民法 | e-Gov法令検索 – 民法166条1項

これを過ぎると、債務者が時効を主張することで債権は回収できなくなります。
そのため、弁済期とともに消滅時効の完成時期もしっかりと管理することが必要です。

具体的な管理手法として、債権管理システムやクラウド型ERPを導入し、その管理業務を効率的かつ確実に行うことが求められます。

例えば、内容証明郵便の送付や訴訟の提起など、時効完成を阻止する措置を行った際に、その情報をシステムに記録します。
これにより、時効の完成が猶予される期間や、その満了日などを一覧で確認でき、管理が容易となるでしょう。

債権管理の方法

債権管理における基本的な対応事項・手法に関して解説していきます。

コーポレートチェック

債権管理を行う上でまず必要となるのは、取引先の信用調査、いわゆるコーポレートチェックです。
この段階では、取引先の経営状況、信用情報、さらには反社会的勢力との関連性の有無、法人が実在しているかなどを徹底的に調査し、取引先を評価します。
このプロセスを通じて、債権回収におけるリスクを事前に把握し、取引の可否を判断することが重要です。
また実在性については、企業のホームページや登記情報検索サービスなどを利用して調査できます。

与信チェック

与信チェックは、企業が取引先との信用関係を評価するための重要なプロセスであり、この段階で誤った判断をすると、回収不能リスクが大きくなります。

具体的には、信用調査会社が提供する調査シートを参考に、財務情報や企業の内部状況を評価することが必要です。

そして、直接顧客や関係取先へヒアリングを行い、定量情報と定性情報を集め、社内の与信基準と照らし合わせて取引可否や与信額を決定します。

前のステップで実施したコーポレートチェックと併せて、与信チェックを実施するケースもあります。

契約内容や前提条件の整理

取引を実施する前段階では、契約内容や前提条件の確認と整理が不可欠です。
契約書は、債権回収の際の法的根拠となるため、細部にわたる確認が必要となります。
受注、発注、請求に関するルールやフォーマットなど、取引におけるすべての条件を明確にすることが、後のトラブルを防ぐ鍵となります。

売上・請求書情報の管理

債権管理の情報元となるのが、売上計上や請求書発行処理のデータです。

契約書の条件どおりに役務を提供した証拠を残すために、取引の請求書、発注書納品書、契約書などの証憑をセットで保管し、管理情報の正確性を確保します。

会計監査や税務調査が入った際、不備が指摘されるリスクを避けるためにも、証憑の適切な保管が必要です。
これにより、企業の信頼性を保つとともに、正確な債権管理を実現できます。

債権管理入金消込・仕訳処理

債権を管理していくためには、取引先を一覧化したリストの作成と定期的なステータス更新が必須となります。
債権ステータスを把握し、帳簿への反映や入金消込・仕訳処理をタイムリーに行うことが求められます。
マニュアルでの管理は非常に煩雑かつミスのリスクが高まるため、管理を行う際は適切なシステムを活用することがおすすめです。
これにより、業務効率化・高品質化を図ることができます。

顧客ごとの債権管理

売上計上と入金消込の仕訳が会計システムに記録されたあと、顧客別の債権残高が正しいか内容を検証します。

顧客別に、最新の情報を正確に把握することが債権管理の重要なポイントです。
特に与信を超えていた場合、関係部署へ注意喚起を行い、与信額の再検討を実施しましょう。

回収遅延や不明残高があった場合は、社内の関係部署へ即時共有し、貸倒リスクを事前に防ぐための行動を取らなければなりません。

未払い債権への対応

未払いが発生した場合、まずは債務者への通知により支払いを促します。場合によっては支払い遅延の原因を確認し、柔軟な支払い条件の再設定や分割払いの提案を行うことでの解決も可能です。
もし債権回収が難しくなった場合は、貸倒処理を行った上で、損金として計上を行うこともできますが、本処置は取引先の資産や支払能力などから明確に回収が不可能とわかる場合に限られるため、実施の際は注意が必要です。

債権管理におけるリスクと対策

以下では、債権管理において想定される主なリスクと、それらを未然に防ぐための対策を解説していきます。

信用情報や財務状況の把握不足

債権者が債務者の信用情報や財務状況を十分に把握していない場合、回収不能な債権を抱えるリスクが高まります。そのため、債務者の信用度を事前に十分に調査・把握・評価した上で、適宜モニタリングを行いつつ、定期的な再評価を行うことが求められます。
また、取引先を複数持っておくことで、いずれかとの取引ができなくなった場合のリスクを分散させておくことも重要です。

債権管理における誤入力

手作業による債権管理を行っている場合や、自社にとって適切でない管理システムを利用している場合は、債権ステータスや数値の誤入力が発生するリスクが高まります。
債権管理における誤入力は、法律面や企業のガバナンス面で致命的な事象となり得る可能性もあるため、事前の対策が必須です。
具体的には、システム導入による手作業の廃止や適切なシステムへの移行、業務フローの改善などがあげられます。

管理負荷の増大

一般的に、企業が成長すると共に取引量も増加するため、債権管理の負荷や複雑性は増していきます。
多くの顧客との取引を追跡し、各債権の状態を正確に記録することは、時間とリソースを大量に消費します。
過負荷はエラーや誤入力を引き起こし、最終的には回収漏れや財務上の不正確さにつながる可能性があるため、企業の成長に対応可能で柔軟性の高い管理システムを活用することが重要となります。

債権管理の課題

債権管理の主な課題は以下のとおりです。

管理業務が煩雑

債権管理では、売掛金と入金の照合や消込み作業などの煩雑な業務が多く、経理部門にとって大きな負荷となるおそれがあります。

債権管理の知識・経験が必要

債権・債務管理を適切に行うためには、一定以上のスキルや経験をもつ人材が必要です。
人材不足やスキル不足が課題となるケースも多く見られます。

手作業によるヒューマンエラー

複雑な上に件数も多い債権管理は、手作業で行うと記入漏れやミスが生じるおそれがあります。
特に、企業の規模が大きくなるほど、ヒューマンエラーが起こりやすくなるため注意が必要です。

また、複数の事業拠点をもつ企業では、一元管理が難しいという問題もあります。

債権管理のためのシステムやツール

債権管理の効率化と正確性向上のため、多くの企業が適切なシステムやツールを導入しています。
これらのツールは、債権状態の明確化や、債務者とのコミュニケーション、そして支払い状況のモニタリングなどを自動化し、手作業によるエラーを減少させます。
サービスによっては、リアルタイムでの財務分析やレポート生成機能も提供し、企業の迅速な意思決定を支援します。

専用システムの導入は、先ほど挙げた債権管理の課題解決にも寄与します。
機械的に処理できる部分を可能な限り増やすことで、債権管理の効率化とヒューマンエラーのリスク低減を図れます。

また、高いスキルをもつ人材が不足していても、専用システムがあれば適切な債権管理を行うことが可能です。
特に複数拠点をもつ企業の場合、クラウド型システムの導入により、共通のデータベースを設けて全拠点の債権管理の状況を随時確認・更新できるようになります。

導入する際の重要なポイントは、企業の規模や業務の特性に合ったシステムを選ぶことです。
小規模な企業にはシンプルな管理ツールが適している場合もありますが、大企業や取引量が多い企業では、より複雑な対応が可能なシステムが必要になることもあります。
今後の企業成長を見据えて拡張性の高いシステムを選定することも考慮すべきでしょう。適切なシステムの選定と導入により、債権管理の効率が大きく向上すれば、企業の財務状況の安定にも寄与します。

以下では、債権管理を効率化するシステムをご紹介します。

債権管理システム

債権管理システムは、債権(売掛金など)の管理を効率化するために役立つツールです。

債権管理システムのメリット

手作業での入金消込は負荷が大きく、人的にも時間的にも大きなリソースが必要です。
債権管理システムで消込作業を自動化すれば、業務負荷を軽減しながらミスを減らせます。
売掛金管理台帳の突き合わせも不要になるため、1拠点での業務集約が可能となり、人員や時間を削減できます。

また、営業担当者が自分で取引先の入金状況を確認できることも債権管理システムを導入するメリットです。
経理担当者への問い合わせを減らせるため、債権回収を迅速に行えるようになるでしょう。

さらに、債権管理システムを使用することで、債権・入金の管理体制が強化され、経営リスクが軽減されます。
取引単位ごとの管理や、リアルタイムでの請求・回収・支払情報の可視化が可能です。

選定時のポイント

債権管理システムは、効率化した業務範囲に対応した製品を選ぶことが重要です。
請求書の作成・発行の業務も同時に効率化したい場合は、請求書発行システムに債権管理機能が付帯されているものがおすすめです。

また、債権管理システムと外部システム(ネットバンキングや財務会計システムなど)との連携がスムーズに行えるかどうかも選定時の重要なポイントとなります。
複数の請求データと入金手段を同時に自動消込できるシステムを選ぶことが重要です。
加えて、クレジットカードの期限切れや入金額の間違いなど、イレギュラーな入金への対応能力も確認しておきましょう。

クラウド型ERP

システム・ツールの一例として、債権管理だけでなく、その他の経理業務・バックオフィス業務の効率化にもつながるクラウド型ERPをご紹介します。

クラウド型ERPのメリット

クラウド型ERPは債権管理だけでなく、経費精算、請求書処理、給与計算などのバックオフィス業務の自動化をサポートします。
手間と時間を削減し、業務効率を大幅に向上させます。

また、会計データを他の業務データと統合し、一元管理することが可能です。
これにより、情報の二重入力や誤入力を防ぎ、データの一貫性を保てます。
さらに、情報が一元化されることで、必要な情報を即座に引き出せるようになるため、業務の迅速化を実現できるでしょう。

クラウド型ERPは、財務状況、業績予測、販売動向、在庫状況など、各種のデータをリアルタイムで分析し、ダッシュボードなどで視覚的に表示可能です。
リアルタイムな経営状況が可視化されることで、迅速な意思決定につながります。

選定時のポイント

自社の業務範囲に合わせて、必要な業務モジュールや機能が提供されているかを確認しましょう。
自社が必要とする機能のみを選択することで、無駄なコストを抑えられます。

ERP導入には多くの時間やコストがかかるため、大規模なプロジェクトとなるケースが多いものの、クラウド型ERPであればスモールスタートが可能です。
必要最低限の機能から始め、業務の拡大や成熟に合わせて必要な機能を追加していけます。

クラウド型ERPについては以下で詳しく解説していますので、併せてご覧ください。

まとめ

債権管理は、企業の財務健全性を保つために不可欠なプロセスです。
本記事では、債権とその種類、管理の必要性や管理方法、そして管理に伴うリスクと対策について詳しく解説しました。
コーポレートチェックから契約内容精査、債権リストの管理、未払い債権への対応といったポイントをおさえることで、企業はリスクを最小限に抑えつつ、健全なキャッシュフローを維持できます。
また、最適なシステムやツールの導入は、債権管理の効率化と正確性を高める上で重要な要素です。効果的な債権管理を行うことで、企業は安定した経営基盤を築くことが可能となります。


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