• 作成日 : 2025年11月12日

リース取引の判定基準は?フローチャート付きでわかりやすく解説

リース契約は、設備投資やIT機器導入など、多くの企業活動で活用される重要な手段です。「このリース契約は資産計上すべきか」「ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いがわからない」といった悩みは、経理担当者にとって避けて通れない問題でしょう。

本記事では、リース取引の分類を判定するための具体的なフローチャート、主な判定基準、そして判定後の会計処理の違いについて分かりやすく解説します。

リース判定のフローチャート

まず、リース取引の代表的な判定フローチャートを紹介します。

  1. リース期間中に中途解約は可能か?
    YES(解約可能)→ オペレーティング・リースに分類
    NO(解約不能)→ 次の質問へ
  2. フルペイアウトの要件を満たすか?
    YES(満たす)→ ファイナンス・リースに分類(次の質問へ)
    NO (満たさない→ オペレーティング・リースに分類
  3. 所有権が移転する条項はあるか?
    YES(ある)→ 所有権移転ファイナンス・リースに分類
    NO(ない)→ 所有権移転外ファイナンス・リースに分類

​​※従来の日本基準に基づく代表的なフローチャートです。2027年4月1日以後に開始する事業年度から強制適用される新リース会計基準では、アプローチが変わる点にご注意ください。

ファイナンス・リース取引の判定基準

ファイナンス・リース取引とは、「解約不能(ノンキャンセラブル)」と「フルペイアウト」の2要件をともに満たすリース取引です。これらを満たす場合、実質的には分割払いで資産を購入したのと近い経済実態を持つと判断されます。

要件1. 解約不能(ノンキャンセラブル)

解約不能とは、リース契約期間の途中で、借手側の一方的な都合で契約を解除できないリース取引を指します。

具体的には、以下のいずれかに該当する場合を指します。

  • 契約書に中途解約が禁止されている条項がある
  • 中途解約が可能であっても、解約時に多額の違約金(未経過リース料の概ね全額など)を支払う義務がある

実務では中途解約禁止の条項を含む契約が少なくありませんが、すべての契約に当てはまるわけではないため、個別の契約条項を確認してください。

要件2. フルペイアウト

フルペイアウトとは、借手がリース物件の購入代金と付随費用の大部分をリース料で負担することを意味します。従来の日本基準の実務解説では、次の目安が参照されてきました。

  1. 現在価値基準(90%基準)
    借手が支払うリース料総額の現在価値が、物件の見積現金購入価額の概ね90%以上である。
  2. 経済的耐用年数基準(75%基準)
    解約不能のリース期間が、その資産の経済的耐用年数の概ね75%以上に相当する。

いずれも目安であり、契約の実態を踏まえた総合判断が必要です。

所有権移転と所有権移転外の判定基準

ファイナンス・リース取引に該当すると判定された契約は、次に「所有権移転」か「所有権移転外」かに分類します。この判断は、リース期間の終了後、物件の所有権が借手に移転すると認められる条項が契約に含まれているかどうかで行います。

所有権移転ファイナンス・リース取引

以下のいずれか1つにでも該当する場合、所有権移転ファイナンス・リース取引として扱われます。

  1. 所有権移転条項がある
    リース期間満了後などに、リース物件の所有権が無償または名目的な対価で借手に移転することが契約書に明記されているケースです。
  2. 割安購入選択権がある
    借手がリース期間満了後に、著しく有利な価格で物件を購入できる権利があり、その権利行使が確実と見込まれるケースです。
  3. 特別仕様物件
    借手の特定の用途に合わせて特別に製作された物件で、返還されても第三者が再利用することが困難なケースです。

所有権移転外ファイナンス・リース取引とは

所有権移転外ファイナンス・リース取引とは、ファイナンス・リースの要件(解約不能+フルペイアウト)を満たしつつも、上記の所有権移転と判定される3つのケースのいずれにも該当しない取引を指します。この場合、リース期間終了後に物件は貸手に返還されるか、再リース契約を締結することになります。

リース判定後の会計処理の違い

リース判定の結果によって、会計処理は「売買処理」か「賃貸借処理」に大きく分かれます。ファイナンス・リースは資産と負債を計上する売買処理、オペレーティング・リースは費用のみを計上する賃貸借処理を行います。

項目ファイナンス・リースオペレーティング・リース
所有権移転ファイナンス・リース所有権移転外ファイナンス・リース
会計処理売買処理に準ずる売買処理に準ずる賃貸借処理
B/S計上リース資産/リース債務を計上リース資産/リース債務を計上計上なし
P/L計上減価償却費支払利息減価償却費、支払利息支払リース料
減価償却期間経済的耐用年数リース期間減価償却なし

ファイナンス・リース取引の会計処理

ファイナンス・リースは、実質的に資産を購入したと見なされるため、資産と負債の両方を貸借対照表に計上する「オンバランス処理」を行います。

  • リース開始時
    リース物件を「リース資産」、リース料の支払義務を「リース債務」として同額で貸借対照表に計上します。
  • 決算時
    • 減価償却
      計上したリース資産は、以下のように減価償却を行います。

      • 所有権移転の場合:経済的耐用年数にわたり、自己所有の固定資産と同様の方法で償却します。
      • 所有権移転外の場合:リース期間にわたり、定額法で償却します。
    • 利息計上
      リース料の支払額を、元本返済部分(リース債務の減少)と支払利息(費用)に分けて処理します。

オペレーティング・リース取引の会計処理

オペレーティング・リースは、単純な賃貸借契約と見なされるため、支払ったリース料の全額を、「支払リース料」や「賃借料」などの費用科目で損益計算書に計上します。貸借対照表への資産・負債の計上は行いません。

中小企業のリース判定に関する特例

中小企業では、会計処理の負担軽減を目的に、所有権移転外ファイナンス・リースについて賃貸借処理(オペレーティング・リース同様)を選択できます。

これは「中小企業の会計に関する指針」や関連する実務の枠組みで認められる簡便的な取扱いで、すべての企業・契約に適用されるものではありません。

中小企業の会計に関する指針とは

「中小企業の会計に関する指針」は、日本税理士会連合会や日本公認会計士協会などが共同で作成した、中小企業の実務に即した会計処理のガイドラインです。法的拘束力はありませんが、金融機関や税務当局は企業の会計処理の妥当性・透明性を重視する傾向があり、この指針に沿った決算書が評価対象となる場合も多いため、実務上の重要な参考資料となっています。

参考:中小企業の会計に関する指針

この特例を適用することで、中小企業は複雑な資産計上や減価償却計算を省略し、経理業務の効率化を図ることができます。

リース判定における税務上の注意点

税務上のリース取引の判定は、基本的には会計上の考え方と類似していますが、最終的には法人税法に基づいて行われます。そのため、国税庁の公表する指針を確認することが重要です。

法人税法上、リース取引は「売買があったものとされるリース取引」と「賃貸借取引」に区分されます。ファイナンス・リースは税務上も売買として扱われ、固定資産として計上されます。所有権移転ファイナンス・リースは、自己所有の固定資産と同様の方法で減価償却を行います。一方、所有権移転外ファイナンス・リースについては、税法独自の「リース期間定額法」で償却することとされております。

適用にあたっては残価保証や取得価額の算定方法など細かな条件も関わるため、詳細は国税庁のウェブサイトで確認することをおすすめします。

参考:タックスアンサー(よくある税の質問)|国税庁

リース判定についてよくある質問(FAQ)

最後に、リース判定についてよくある質問とその回答をまとめました。

中古資産をリースする場合、経済的耐用年数はどう考えますか?

中古資産のリースで「経済的耐用年数基準」を適用する場合、その資産を事業の用に供した時以降の使用可能な期間を見積もって判断します。新品の法定耐用年数とは異なるため、実態に即した合理的な見積もりが必要です。

少額リース資産の扱いはどうなりますか?

リース料総額が300万円以下のリース取引は「少額リース」に該当し、ファイナンス・リースに該当しても賃貸借処理が可能です。

新リース会計基準で判定方法は変わりましたか?

国際的な会計基準である IFRS 第16号では、原則としてすべてのリースを資産計上する「使用権モデル」が適用されています。

一方、日本では2025年9月現在、従来のリース会計基準に基づく判定基準が適用されており、オペレーティング・リースについてはオフバランス処理が認められています。ただし、新リース会計基準(企業会計基準第34号)が2027年4月以降開始する事業年度から強制適用される予定であるため、今後の基準変更動向に注意する必要があります。

正しいリース判定は適切な企業会計への第一歩

本記事では、リース判定のフローチャートから具体的な判定基準、会計処理、そして中小企業の特例までを網羅的に解説しました。

リース取引の判定は、まず「解約不能」と「フルペイアウト」の2要件からファイナンス・リースかどうかを見極めることが基本です。この判定を正確に行うことで、初めて適切な会計処理が可能となり、信頼性の高い財務諸表を作成できます。この機会に、本記事のフローチャートを参考に自社のリース契約がどの分類に該当するのかを一度確認してみてはいかがでしょうか。


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