- 作成日 : 2025年9月9日
モバイル決済とは?種類・方法・キャッシュレス決済との違いについて解説
キャッシュレス化が進む現在、「モバイル決済の仕組みや、キャッシュレス決済との違いがわからない」と悩む方は多いのではないでしょうか。
本記事では、主要な4種類の決済方法や利用シーン別の最適な選択肢、導入準備から安全性までを詳しく解説します。
メリット・デメリットやトラブル時の対処法も網羅しているため、自社に適した決済サービスを選び、利用者拡大と業務効率化を同時に実現するための参考にしてください。
目次
モバイル決済とは
モバイル決済とは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を使って支払いをおこなう方法の総称です。現金やカードを持ち歩かなくても、端末をかざす・QRコードを読み取るだけでスムーズに決済でき、日常の買い物や公共料金の支払いにも広く活用されています。
利用者はアプリや電子ウォレットにカードや口座を登録し、店舗はQRコードや専用端末を用いて決済を受け付けます。通信はインターネットやNFC技術を通じてリアルタイムに処理され、現金受け渡しが不要で業務効率化にもつながるでしょう。
普及の背景には、新型コロナウイルスによる非接触ニーズの高まりやスマートフォンの普及やアプリ技術の進化、初期費用の低さなどがあります。
経済産業省もキャッシュレス化を推進しており、利用者には利便性を、事業者には生産性向上をもたらす施策として期待されています。
モバイル決済とキャッシュレス決済の違いとは
キャッシュレス決済とは、現金を使わずにおこなうすべての支払い方法の総称で、クレジットカード・デビットカード・プリペイドカード・交通系ICカード・電子マネー・QRコード決済などが含まれます。
スマートフォンやタブレットがなくても利用できるのが特徴であるといえるでしょう。現金に依存せず、多様なシーンで使える利便性の高さが魅力です。
一方、モバイル決済はキャッシュレス決済の一種で、スマートフォンやタブレットといった端末を用いておこなう支払いを指します。代表的なものとしては、QRコード決済・NFCによるタッチ決済・アプリ内電子マネー・通信キャリア決済などが挙げられます。
利用には専用アプリやウォレットのインストール、カード情報の登録が必要になるケースが多く、端末は必須です。携帯性やスピード、非接触性に優れる点から、利用が拡大しています。
モバイル決済の4つの種類
モバイル決済にはいくつかの方式があり、それぞれに特徴があります。ここでは、以下の4種類について解説します。
①QRコード決済
QRコード決済は、スマートフォンに表示されたコード、または店舗側のコードを利用者が読み取ると支払いが完了する仕組みです。専用端末を必要とせず、初期費用が低い点が大きな特徴で、個人商店やイベント出店でも取り入れやすい方法といえます。
銀行口座かクレジットカードをアプリに登録すると、利用可能です。通信環境に依存するため電波の弱い場所では不便なケースもあります。ただし、ポイント還元などの施策と相性がよく、導入企業は低コストでキャッシュレス化を実現できるでしょう。
②タッチ決済(NFC決済)
タッチ決済は、Apple PayやGoogle Payなどのウォレットアプリを介し、スマートフォンを端末にかざすことで非接触で支払いが完了する仕組みです。
数秒で処理できるため、レジ待ち時間を短縮できるのが強みです。導入には専用端末が必要ではあるものの、コンビニやファストフードなど回転率を重視する業態では高い効果を発揮します。
利用者は財布を取り出す必要がなく、日常的な少額決済をスムーズにおこなえるのが魅力です。高額取引にも対応可能な点から、スピードと利便性を兼ね備えた決済方法として普及が進んでいます。
③電子マネー
電子マネーは、事前にチャージした金額を利用して支払う方式で、ICカード型電子マネーとスマートフォンアプリ型電子マネーがあります。
クレジットカードを持たない学生や未成年でも利用可能で、コンビニや自販機など少額取引の多い利用シーンで特に活用されています。
導入には読み取り端末が必要ですが、一度導入すれば継続利用率が高くリピーターが多い店舗に適しています。残高の範囲内で使うため利用者は支出管理がしやすく、店舗側も現金管理の手間を減らせる点がメリットです。
④通信キャリア決済
通信キャリア決済は、携帯電話会社の料金と一括で請求される仕組みです。クレジットカードが不要で、若年層やカード登録に抵抗のある利用者にも対応可能という利点があります。ワンタップで完了する簡便さから、コンバージョン率が高い点も特徴です。
一方で、高額取引には利用上限が設けられており、物販や大口決済には不向きです。キャリアごとに契約や審査が必要となり、法人が導入する際には一定のハードルがあります。
こうした特性から、特に継続課金型サービスやデジタルコンテンツ事業者に適した決済手段といえます。
モバイル決済の利用シーン別|最適な決済手段とは?
モバイル決済といっても、利用シーンによって最適な方法は異なります。屋台やイベント出店など、初期費用を抑えたい場合はQRコード決済が有効であり、回転率を重視するコンビニや飲食チェーンにはタッチ決済が適しているでしょう。
学生や未成年による少額取引が中心となる利用シーンでは電子マネーが便利であり、アプリ課金や動画配信などのデジタルサービスには通信キャリア決済が適しています。業態や利用者層に応じた選択が重要です。
観光地や地域イベントでは、現金を持ち歩かない観光客にとってQRコード決済は利便性が高いため、喜ばれます。
学校やオフィス内の売店や自動販売機では電子マネーが使いやすく、ゲームやエンターテインメント分野では通信キャリア決済との相性が非常によく、継続課金に適しています。
モバイル決済の導入方法
モバイル決済を導入するには、事前の準備から導入完了までの流れがあります。ここでは、準備のポイントと導入までの流れについて順を追って解説していきます。
モバイル決済を導入するための準備
導入にあたっては、まず決済端末(据え置き型・モバイル型)を準備する必要があります。あわせて、Wi-Fiや4G/LTEなどの安定した通信環境を整え、スマートフォンやタブレットといった操作用端末の用意が必要です。
レシートプリンターなどの周辺機器との連携も事前に確認しておくと、QRコード決済やタッチ決済・電子マネー・通信キャリア決済といった各方式をスムーズに活用できます。
導入までの流れ
導入の流れは、まず決済方式と決済事業者を選定し、加盟申し込みをおこないます。加盟店審査に通過後、端末が配送・設置され、通信接続と初期設定をおこないます。その後、スタッフへの操作説明やテスト決済を経て、本格的な運用開始に備えましょう。
最終的には営業開始に合わせて運用をスタートさせるのが一般的な手順です。サービスによっては、追加機能の設定やレシートプリンターなどの周辺機器との連携確認が必要となるため、導入スケジュールには十分な余裕を持っての対応が望まれます。
モバイル決済のセキュリティ対策
モバイル決済のセキュリティは、複数の仕組みによって高められています。タッチ決済ではカード番号などの機密情報を直接送信せず、QRコードやNFCを通じてトークン化された情報を用いるため、安全性に優れています。
ただし、QRコードの偽造やすり替えといった詐欺リスクもあるため、店舗側では掲示物の適切な管理が不可欠です。アプリや端末には、生体認証・二段階認証・リモートロックなどの最新セキュリティ対策の導入が推奨されます。
不正利用を防止するには、店舗側のセキュリティ意識を高めることに加え、導入する決済サービスがどのような安全対策をしているかを確認することが大切です。
不正ログインを防ぐ仕組みやデータを暗号化して守る仕組みなど、事業者ごとに対策内容は異なります。導入時にこうした点を比較検討することで、利用者からの信頼を高めることにつながります。
モバイル決済の4つのメリット
ここまででモバイル決済の仕組みや安全性についてご理解いただけたかと思います。では次に、導入や利用によって得られるメリットについて見ていきましょう。
① 初期コストを抑えてスピーディーに導入できる
QRコード決済や一部のモバイル決済は専用端末を必要とせず、初期費用や月額固定費がかからないケースも多いため、導入のハードルが非常に低いのが特徴です。
飲食店や小売業のほかにもイベント出店など小規模事業者や新規オープンの店舗でも、申し込みから短期間で利用開始できるため、キャッシュレス対応を急ぎたい利用シーンにも適しています。
導入後も複雑なメンテナンスが不要で、利用状況に応じて柔軟にプランを変更できるため、コストを抑えつつ効率的に決済環境を構築できます。
②利用者層の拡大につながる(誰でも使える決済環境)
スマートフォンがあれば、クレジットカード・デビットカード・プリペイドカード・通信キャリア決済などさまざまな支払い方法に対応できるため、利用者の選択肢が大きく広がります。
クレジットカードを持たない学生や高齢者、さらには訪日観光客など、従来の決済方法では取りこぼしていた層を取り込める点が強みです。
結果として、新規利用者の獲得やリピーター増加につながり、集客力を底上げできます。「現金しか使えないから諦める」という機会損失を防げるため、売上向上の可能性も広がります。
③利用者満足度の向上と業務効率化が両立できる
非接触かつスピーディーな決済により、レジ待ち時間を短縮し、利用者にとって快適な購買体験を提供できます。現金の受け渡しを減らせるため、感染症対策など衛生面でも安心感を与えることが可能です。これにより利用者満足度やリピート意向が高まりやすくなります。
店舗側も現金管理や釣銭準備、レジ締め作業といった煩雑な業務を削減でき、スタッフの負担軽減や業務効率化を実現できます。限られた人員で運営している小規模店舗にとっても、時間とコストを大幅に節約できるのが大きなメリットです。
④継続課金やアプリ連携で、収益の自動化・拡張性が高い
通信キャリア決済やアプリ内決済を導入すると、ワンタップでの単発課金や定期的な継続課金など、柔軟な支払いモデルに対応できます。特にサブスクリプション型サービスやオンラインコンテンツ配信との相性がよく、安定した収益基盤を構築できます。
自社アプリと連携することでポイント付与や購入履歴の管理、プッシュ通知を活用した販促活動、CRMシステムとの一体運用まで実現可能です。これにより利用者ロイヤルティを高め、リピーターの育成を図りつつ、中長期的な売上拡大につなげられます。
モバイル決済を利用した際の3つのデメリット
モバイル決済には多くのメリットがある一方で、課題も存在します。導入を検討する際には、利点だけでなくリスクも理解しておくことが重要です。ここからは、代表的なデメリットを順に見ていきましょう。
①電波・スマートフォントラブルで決済できないリスクがある
モバイル決済は通信環境や端末の状態に大きく依存しているため、電波障害やスマートフォンの故障やアプリの不具合が発生すると、その場での決済ができなくなるリスクがあります。
特に飲食店やイベント会場、現場作業など即時対応が求められる業種では、利用者満足度や売上に直接影響するため注意が必要です。
高齢者やデジタルに不慣れな利用者、スタッフが操作に戸惑うケースもあり、利用ハードルが上がる点にも注意が必要です。バックアップとして現金やカードの併用ルートを確保するなど、リスクヘッジが欠かせません。
②管理・統一が煩雑になる可能性がある
モバイル決済には、QRコード決済・NFC・電子マネー・通信キャリア決済など多様な方式があり、各社のサービスも乱立しています。
そのため、複数サービスを導入すると会計処理や精算業務、POSシステム連携が複雑化し、管理の負担が急増する可能性があるでしょう。
特に複数店舗を展開する企業では、サービスごとの入金サイクルや手数料の違いを把握し、台帳を正確に管理する手間が発生します。
スタッフ教育も含め、統一ルールを本部主導で整備し、クラウド会計や連携ツールを活用して管理負担を軽減する体制の構築が求められます。
③高額決済や法人間取引には不向きなケースがある
モバイル決済は利便性が高い一方で、決済額に上限が設けられているケースが多く、数十万円から数百万円規模の大口取引には不向きです。
特に通信キャリア決済やQRコード決済には単回または月間の利用上限が設けられており、法人間の高額取引や不動産・製造・卸売業など、一度の決済金額が大きい業種では実用性が低下します。
そのため、大規模な決済には銀行振込やカード決済など、他の決済手段との併用が欠かせません。小口取引中心の業種には適していても、高額決済前提の業界は注意が求められます。
モバイル決済ができないときの主な原因と対処法
多くのデメリットは、事前の準備や適切な運用によって十分に対策可能です。実際に決済ができない利用シーンではどのような要因があるのか、そしてどう対処すればよいのかを見ていきます。
利用者側の原因
利用者側でモバイル決済ができないのは、通信や端末の問題が原因です。
電波状況の悪さや機内モード設定の有効化、不安定なWi-Fi環境でオフラインになっている場合など、通信が遮断されると決済処理ができなくなります。スマートフォンの電池切れや故障、NFC設定オフにより読み取り不可になるケースもあります。
アプリの未更新や長期間未使用による自動ログアウト、再認証の必要性、クレジットカードの利用限度額超過やチャージ残高不足などによるものです。特にイベント会場や移動中など通信環境が変動しやすい利用シーンでは注意が必要です。
サービス・システム側の原因
店舗や事業者側に起因するトラブルも少なくありません。代表的なのは、店舗端末が対応していない方式で決済しようとした場合です。たとえば「楽天ペイ対応」でも「d払い」には非対応というケースがあります。
POSレジや決済端末がオフラインになっている場合や、スタッフの操作ミスによる金額入力エラー、サービス側のシステム障害・メンテナンスにより決済が利用できないケースもあります。
不正検知により利用が一時的に制限される場合もあり、本人確認が求められる場合もあるようです。
基本的な対処法
まずはスマートフォンを再起動し、通信環境の改善(Wi-Fiからモバイルデータへの切り替えなど)をおこなうのが基本です。
次に決済アプリに再ログインし、最新版に更新、残高やカード限度額を確認することが重要です。タッチ決済では設定をオンにするのも忘れてはなりません。
店舗側に原因がある場合は、スタッフに状況を確認したうえで、現金・クレジットカード・交通系ICカードなどの代替手段に切り替えるのが現実的な対処法です。復旧までの期間は、サービス提供元の公式サイトやSNSで障害情報を確認することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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