• 更新日 : 2025年9月9日

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は圧縮記帳の対象!対象条件や仕訳例を解説

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は、EV(電気自動車)やFCV(燃料電池自動車)などの導入を支援するために交付される補助金制度です。

この補助金を活用して車両を購入した場合、会計処理においては「圧縮記帳」の適用が可能なケースがあります。

圧縮記帳は、上記のような補助金を収益とせず、一定額まで損金算入できる制度であり、課税の繰延効果として期待できます。

しかし、すべての補助金が対象となるわけではなく、用途や交付元によっては対象外となる点に注意が必要です。

本記事では、クリーンエネルギー自動車補助金が圧縮記帳の対象となる要件や、直接減額方式・圧縮積立金方式の仕訳例を、税務・会計の観点からわかりやすく解説します。

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は圧縮記帳の対象

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金では、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)などの環境対応型車両を取得した際、その取得価額の一部を補助金で賄う形となります。

この補助金は資産取得に充てられた金額とみなされ、取得原価を補填したものとして、直接減額方式または積立金方式のいずれかで圧縮記帳が可能です。

関連記事:圧縮記帳の仕組みとは?要件や仕訳、限度額を学ぶ

法人税法第42条の「国庫補助金等」に該当

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は、環境省や経済産業省などの国、または地方公共団体・外郭団体からの交付であり、法人税法第42条に定義される「国庫補助金等」に含まれます。

第四十二条 内国法人(清算中のものを除く。以下この条において同じ。)が、各事業年度において固定資産の取得又は改良に充てるための国又は地方公共団体の補助金又は給付金その他政令で定めるこれらに準ずるもの(以下第四十四条までにおいて「国庫補助金等」という。)の交付を受けた場合(その国庫補助金等の返還を要しないことが当該事業年度終了の時までに確定した場合に限る。)において、当該事業年度終了の時までに取得又は改良をしたその交付の目的に適合した固定資産につき、当該事業年度においてその交付を受けた国庫補助金等の額に相当する金額(その固定資産が当該事業年度前の各事業年度において取得又は改良をした減価償却資産である場合には、当該国庫補助金等の額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額。以下この項において「圧縮限度額」という。)の範囲内でその帳簿価額を損金経理により減額し、又はその圧縮限度額以下の金額を当該事業年度の確定した決算において積立金として積み立てる方法(政令で定める方法を含む。)により経理したときは、その減額し又は経理した金額に相当する金額は、当該事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。

引用:法人税法 | e-Gov 法令検索

この条文にもとづき、資産の取得に充てられた補助金は課税所得から控除できる圧縮記帳の対象となります。

具体的には、補助金で車両を取得した場合、その車両の取得価額から補助金額相当分を控除する仕訳を行うことが求められます。

経費を補填するための補助金については対象外

一方で、補助金の使途が車両購入ではなく、人件費・燃料費・保守費用などの経費補填である場合は圧縮記帳の対象外です。

このような補助金は法人税法第42条の「固定資産の取得又は改良」には該当しないため、益金となり、課税対象として処理します。

執行団体からの交付でも条件を満たせば対象になる

補助金の交付元が環境省や経済産業省などの国そのものでなく、SII(一般社団法人 環境共創イニシアチブ)のような執行団体であっても、原資が国庫であり資産取得に充当されている場合は圧縮記帳の対象となります。

参考:SII:一般社団法人 環境共創イニシアチブ

法人税法第42条では、交付主体ではなく「資金の出所」と「使途」を重視しているためです。

そのため、執行団体経由であっても、国庫資金で車両取得を支援する趣旨であれば対象に含まれます。

申請者は交付決定通知や補助事業の要綱、契約書などを確認し、取得原資に該当するかどうかを事前に判断することが望まれます。

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金とはEV導入で申請可能な補助金

「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金(CEV補助金)」は、EV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)など、環境負荷の少ない車両の普及を促進するために国が交付する補助制度です。

事業者・個人を問わず、一定の条件を満たす購入者に対して補助金が支給され、車両の購入費用の一部を軽減できます。

対象車種

対象となるのは、国が定める「クリーンエネルギー自動車」で、主に以下の車種が該当します。

  • 電気自動車(EV)
  • 軽電気自動車(軽EV)
  • プラグインハイブリッド車(PHEV)
  • 燃料電池自動車(FCV)
  • クリーンディーゼル車(一部)

参考:どんなクルマがあるの? | クリーンエネルギー自動車AtoZ

なお、型式・事業用・個人用など、車種や用途によって要件が異なる場合があるため、申請前に必ず公募要領や対象車リストを確認することが重要です。

交付条件

補助対象は新車購入が原則であり、中古車は対象外です。

補助金申請には、所有権保有、登録から一定期間(原則4年)の保有義務、転売・譲渡の禁止などが条件として設定されています。

区分内容
条件①

新車であること

新規登録・届出された新車のEV等が対象。

【期間別適用ルール】

  • 令和6年12月17日~令和7年3月31日 → 令和5年度補正予算分のルール適用
  • 令和7年4月1日~ → 令和6年度補正予算分のルール適用
条件②

保有義務

補助金を利用して購入したEV等は4年または3年間保有する義務あり
申請期限新規登録・届出日から原則1ヶ月以内(翌月前日までの消印有効)

※例外で新規登録・届出日で翌々月末

参考:
令和6年度補正予算「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」|経済産業省
CEVの補助金交付_一般社団法人次世代自動車振興センター

自治体の独自補助金と併用できる場合もありますが、国の補助金との重複条件や上限額に注意が必要です。

補助額の目安と申請方法

補助額は車種や仕様、EVの航続距離、搭載電池容量などによって異なります。

車種区分基本補助額(上限)加算措置(上限)合計補助額(最大)
EV(普通車)85万円最大5万円90万円
小型・軽EV55万円最大3万円58万円

参考:令和7年度におけるクリーンエネルギー⾃動⾞導⼊促進補助⾦(CEV補助⾦)の取扱い|経済産業省

FCVや商用EVではより高額の補助を受けられるケースもあり、金額基準は年度ごとに更新されます。

申請はSIIの補助金専用ポータルからオンラインで行い、申請書や車両見積書・契約書・登録証などの提出が必要です。

関連記事:補助金とは?助成金との違いや種類・給付までの流れをわかりやすく解説

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の圧縮記帳仕訳例

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金を受け取った場合の圧縮記帳は、直接減額方式と圧縮積立金方式の2通りがあり、補助金の入金時期によっても仕訳が異なります。

以下に具体例を示します。

直接減額方式の仕訳例

資産取得価額から補助金額を直接控除し、帳簿価額を圧縮する方法です。

【直接減額方式の仕訳例】

前提条件
  • 車両取得価額:5,000,000円
  • 補助金受領額:1,000,000円

■ 資産取得時の勘定科目

借方金額貸方金額
車両運搬具5,000,000現預金5,000,000

■ 補助金入金時の勘定科目

借方金額貸方金額
現預金1,000,000補助金収入1,000,000

■ 減額仕訳(取得原価から直接控除)

借方金額貸方金額
圧縮損1,000,000車両運搬具1,000,000

圧縮積立金方式の仕訳例

補助金相当額を一旦「圧縮積立金」として繰り入れ、後に取り崩す方法です。

【圧縮積立金方式の仕訳例】

前提条件
  • 車両取得価額:5,000,000円
  • 補助金受領額:1,000,000円

■ 資産取得時の勘定科目

借方金額貸方金額
車両運搬具5,000,000現預金5,000,000

■ 補助金入金時の勘定科目

借方金額貸方金額
現預金1,000,000補助金収入1,000,000

■ 圧縮積立金の繰入仕訳(当期末)

借方金額貸方金額
繰越利益剰余金1,000,000圧縮積立金1,000,000

関連記事:圧縮記帳と少額減価償却資産の特例は併用できる?取得価額や仕訳方法も解説

補助金の入金が翌期になった場合

交付決定が当期中でも、入金が翌期となるケースです。先に未収計上し、翌期に入金処理を行います。

前提条件
  • 車両取得価額:5,000,000円
  • 補助金交付決定:当期
  • 補助金入金:翌期

■ 資産取得時の勘定科目

借方金額貸方金額
車両運搬具5,000,000現預金5,000,000

■ 補助金収入見越仕訳(当期末)

借方金額貸方金額
未収入金1,000,000車両運搬具1,000,000

■ 翌期入金時の仕訳

借方金額貸方金額
現預金1,000,000未収入金1,000,000

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金を圧縮記帳する際の注意点

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は圧縮記帳の対象となります。しかし、適用にあたっては年度ごとの制度変更・日付管理・仕訳方法など、いくつかの重要な注意点があります。

補助金の内容は毎年見直される可能性がある

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は、環境政策や予算編成の状況に応じて毎年度見直される制度です。

そのため、対象となる車種や補助額、申請条件などが年度ごとに細かく変わることがあります。

たとえば、ある年度には加算措置が設定されていても翌年度には廃止される、あるいは対象車種が追加・削除されるといった変更が生じるケースも少なくありません。

こうした改定は、圧縮記帳の可否や計算方法に直接影響する可能性があります。とくに注意すべきは「交付目的」や「資産の性質」に関する条件変更です。

法人税法第42条の適用判断に直結するため、前年の情報だけで処理を行うと誤りが発生し、税務調査で否認されるリスクもあります。

実務担当者は、最新の交付要綱・公募要領を必ず確認し、適用年度のルールを把握したうえで会計処理を行うことが重要です。

補助金の交付決定日と入金日に注意する

圧縮記帳の適用年度や仕訳方法は、交付決定日・入金日・資産取得日のタイミングによって異なります。

管理すべき日付主な影響
資産取得日圧縮記帳を行う年度の基準
交付決定日圧縮記帳適用可否の判断基準
入金日未収計上や翌期仕訳の要否を判断

たとえば、交付決定が当期でも入金が翌期になる場合、当期末には未収金処理を行い、翌期に入金仕訳を計上する必要があります。

このように日付の組み合わせ次第で処理方法が変わるため、すべての関連日付を正確に記録・保管しておくことが不可欠です。

税理士・会計ソフトを活用してミスを防ぐ

圧縮記帳は、固定資産の取得価額調整と税務申告の両面に関わる高度な会計処理であり、通常の仕訳以上に専門的な判断を要します。

複数の補助金を同時に受けている場合や、圧縮記帳と税額控除制度を併用する場合は、計算ルールや適用順序の誤りが起きやすく、税務上のリスクが高まります。

そのため、可能な限り税理士などの専門家に相談し、処理の正確性を担保することがおすすめです。

加えて、近年の会計ソフトには圧縮記帳対応機能が備わっており、条件を設定すれば自動で仕訳や別表の作成を行えるものもあります。

こうしたツールを活用すれば、処理の一部を自動化でき、人的ミスの削減と作業効率の向上が可能です。

年度ごとの条件変更や複数制度の併用が絡む場合は、「人の判断+ソフトの自動化」という二重チェック体制が、もっとも安全で効率的な方法です。

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の圧縮記帳に関するよくある疑問

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金を活用して車両を取得した場合、会計や税務処理の場面で「どう処理すべきか?」という疑問を抱く方もいるでしょう。

とくに、確定申告への反映や消費税の取り扱いなどは、誤解やミスが発生しやすいポイントです。

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は確定申告が必要?

基本的には、法人税の確定申告の際に補助金の受領と圧縮記帳処理を適切に反映する必要があります。

補助金の受領は、単なる収益計上か、圧縮記帳による圧縮損の計上となるため、確定申告書(法人税申告書)や別表の記載内容に影響します。

そのため、補助金に関連する仕訳や圧縮額は帳簿に正確に反映し、税務申告書に必ず記載しましょう。

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金の圧縮記帳のタイミングは?

圧縮記帳の仕訳は、原則として「資産取得年度」または「補助金交付決定年度」に行う必要があります。

もし入金が翌期になった場合は、当期に「未収金」として計上し、取得年度に圧縮記帳するのが一般的です。

適正な処理のためには、「資産取得日」「補助金交付決定日」「入金日」を正確に把握し、それぞれの関係を整理しておくことが重要です。

クリーンエネルギー自動車導入促進補助金は消費税が課税されますか?

この補助金は「対価性のない支給金」にあたり、原則として消費税の課税対象外です。

したがって、受け取った補助金額に対して消費税を納付する必要はありません。

ただし、車両購入時に支払った消費税は別途処理するため、補助金と消費税の会計処理を混同しないように注意する必要があります。


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