• 作成日 : 2025年6月13日

みなし解散とは?対象となる会社や通知が届いた際の対処法を解説

みなし解散とは、会社または法人が解散したものとみなされることです。休眠状態にあると認められる会社については、みなし解散の登記が行われることがあります。みなし解散の通知を受けたときは、会社の継続または清算の手続きが必要です。今回は、みなし解散となったときの対処法を解説します。

みなし解散とは

みなし解散とは、公告を経て、会社(法人)が解散したものとみなす手続きのことです。解散とは、事業を廃業して会社または法人を消滅させるための状態にすることです。解散後に清算手続きを行うことで、会社(法人)は消滅します。

解散にあたり、株主総会での解散決議などが通常は必要です。裁判所より会社または法人の解散を命じられ、強制的に解散することもあります。

みなし解散は、解散決議や解散命令などの解散の手続きを経ずに、いわゆる休眠状態になっている会社(法人)を解散させることです。会社法第472条において、休眠会社のみなし解散の取り扱いが定められています。

みなし解散制度の対象となる会社

会社法第472条において、みなし解散の対象は休眠会社とされています。休眠会社とは、12年以上登記をしていない株式会社などのことです。

会社の登記事項に変更が生じた際には、変更の登記が必要です。例えば、株式会社では役員の任期が定められています。役員の任期は原則的に2年、公開会社でない場合は最長で10年の任期の延長が認められます。任期が到来した際には、役員が再任する場合であっても登記が必要です。したがって、少なくとも10年に1回は登記の機会が訪れることになります。

12年以上登記をしていないということは、登記義務を履行していない会社であるということです。みなし解散は、登記の信頼が失われる可能性があること、犯罪の手段となりかねないことから制度が設けられています。なお、会社以外の一般社団法人や一般財団法人については、5年以上登記をしていない場合にみなし解散制度が適用されます。

みなし解散制度の対象となった場合は通知が届く

対象となる休眠会社は、毎年10月頃に法務大臣の官報公告の対象となります。事業の廃止を届け出すべき旨が公告に掲載されます。その後、登記所から休眠会社に対して、官報公告が行われた旨が通知される流れです。対象会社への通知書の送付により行われます。

みなし解散の通知は届いたが会社を続けたい場合

休眠会社について、法務大臣の官報公告が行われた時点や登記所からの通知があった時点では、みなし解散となりません。みなし解散を回避して会社を存続したい場合にはどのような手続きが必要か、公告から2ヶ月以内のケース、公告から2ヶ月を経過したケースに分けて紹介します。

公告から2ヶ月以内のケース

休眠会社については、官報公告から2ヶ月を経過すると解散したものとみなされます。公告の日から2ヶ月以内であれば、以下のいずれかを実行することで、みなし解散の回避が可能です。

  • 登記事項に変更があったものについて必要な登記を行う(役員変更など)
  • 管轄登記所で「まだ事業を廃止していない」旨の届け出を行う

公告から2ヶ月を経過したケース

官報公告から2ヶ月を経過しても登記の申請などが実行されなかったときは、登記官の職権により解散登記が行われます。これにより、休眠会社は登記の時点で解散したものとみなされます。

ただし、みなし解散の登記が行われた場合であっても、登記から3年以内であれば、株主総会の開催をもって会社の継続が可能です。公告から2ヶ月を経過してしまった後に会社の継続を希望する場合は、以下の手続きを行います。

  1. 清算人の選任と登記を行う
  2. 株主総会の特別決議により会社継続を決定する
  3. 取締役の再選任と登記を行う

みなし解散となった会社は清算中であるため、まず清算人を選任して登記する必要があります。その後、株主総会の決議を経て、取締役などの再選任と登記が必要です。なお、みなし解散からの復活にあたり、継続の登記申請を株主総会の決議から2週間以内に行う必要があります。

みなし解散の通知が届いたので会社を清算したい場合

みなし解散の通知を受けた後に法人格を消滅させたい場合は、おおむね以下の流れで会社の清算手続きを行います。

  1. 清算人の選任
  2. 財産目録と貸借対照表の作成
  3. 現務の結了
  4. 債権債務の清算
  5. 残余財産の処分
  6. 清算確定申告書の作成
  7. 清算結了

清算人の選任

会社の清算手続きを実行する者を清算人といいます。清算手続きを開始するには、清算人の選任と登記が必要です。清算人には、会社の代表取締役やその他の取締役が就任するのが一般的です。弁護士などを清算人に選定することもあります。

財産目録と貸借対照表の作成

選任された清算人は、会社の有する財産を調査し、財産目録を作成します。また、会社の財政状態を示す貸借対照表を作成します。財産目録と貸借対照表は、株主総会での承認が必要です。

現務の結了

現務の結了とは、清算段階で未了となっている会社の業務を整理して終了させることです。取引先との契約の解消、従業員の解雇、在庫の売却などがあります。なお、会社の清算の段階では、新たに契約を締結することには制限があります。

債権債務の清算

売掛金などの債権が残っているときは、清算人が取り立てを行い回収します。借入金などの債務がある場合は、弁済の手続きが必要です。会社が債権者を認識しているときは、個別の催告により債権の申し出をしてもらう旨を公告します。公告後の債権者が確定した段階で弁済を行います。固定資産などの現金以外の資産を有する場合は、資産の売却などによる換金が必要です。

残余財産の処分

残余財産とは、債権債務の清算を行ってもなお会社に残っている資産のことです。清算人は残余財産の割り当てを行い、株主に対して分配します。

清算確定申告書の作成

解散日(みなし解散日)以降は、清算事業年度ごとに確定申告が必要です。事業年度終了の翌日から2ヶ月以内に申告書を提出します。また、残余財産の確定後は、残余財産確定事業年度での確定申告が必要です。清算会社が最後に行う残余財産確定後の申告は、その確定の日から1ヶ月以内に行わなければなりません。

清算結了

清算人は、清算事務の終了を報告するために、決算報告書を会社に提出します。株主総会で報告書の承認が行われることで、法人格が消滅します。法人格の消滅(株主総会での承認)から2週間以内に、清算結了の登記申請が必要です。会社の清算後も10年間の帳簿書類の保存が求められます。

みなし解散後は会社の継続または清算の手続きが必要

休眠状態にある会社を、登記官の職権により解散させることを「みなし解散」といいます。みなし解散となった場合、清算会社となることから、本来会社に認められていた取引が制限されることになります。会社の継続または清算の手続きが必要です。みなし解散の公告の通知を受けたときは、必要な手続きを行うようにしましょう。


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