- 更新日 : 2026年9月16日
電子記録債権(でんさい)を利用するメリットをわかりやすく解説
電子記録債権(でんさい)は、手形の事務負担・コスト・紛失リスクを大幅に削減できる電子決済手段です。
- 印紙税・郵送料が不要でコスト削減
- 支払期日に口座へ自動入金される
- 分割譲渡で柔軟な資金活用が可能
Q. でんさいと手形の最大の違いは何ですか?
A. でんさいは紙の証書が不要で、支払期日になると口座間で自動決済されるため、手形のような取立手続きや紙の証書の保管が不要です。
電子記録債権(でんさい)とは、金銭債権を電子化し、全国銀行協会の「でんさいネット」で管理できる債権のことです。手形に代わる決済方法として注目されています。交付や保管でかかるコストを軽減し、盗難・紛失のリスクを軽減できることがメリットです。
本記事では、電子記録債権のメリットや、でんさいネットを利用した取引方法を解説します。
そもそも電子記録債権(でんさい)とは?
電子記録債権とは、紙の証書ではなく、電子債権記録機関の記録原簿で管理される金銭債権です。代表的なサービスとして「でんさい」があり、紙の手形の利用縮小に伴い、企業間の後払いを支える決済手段として活用されています。
でんさいは全国で利用できる電子記録債権
でんさいは、株式会社全銀電子債権ネットワークが運営する「でんさいネット」で取り扱われる電子記録債権です。金融機関を通じて利用し、債権金額、支払期日、債権者、債務者などの情報が電子的に記録されます。
紙の証書は発行されず、利用者は金融機関のインターネットバンキングなどを通じて手続きや記録内容の確認を行います。
企業間の後払いと資金活用に利用される
でんさいは、商品やサービスの代金を将来の期日に支払う企業間取引で利用されます。支払期日には、原則として債務者の口座から債権者の口座へ自動的に資金が移動します。
また、保有するでんさいは第三者へ譲渡できるほか、必要に応じて一部を分割して譲渡したり、金融機関で期日前に資金化したりできます。ただし、利用には金融機関を通じた契約が必要であり、取引先側の対応状況も確認しなければなりません。
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電子記録債権(でんさい)の仕組みは?
でんさいは、紙の証書を発行せず、でんさいネットの記録原簿へ電子記録を行うことで債権を管理する仕組みです。債権の発生・譲渡・決済は、利用企業が取引金融機関を通じて手続きを行います。
発生記録によって電子記録債権が発生する
支払企業は、取引金融機関のインターネットバンキングなどを通じて、でんさいネットへ発生記録を請求します。債権金額、支払期日、債権者、債務者などが記録原簿に登録されると、電子記録債権が発生します。
紙の手形のように証書を作成して相手へ交付する必要はなく、受取企業は金融機関を通じて記録内容を確認します。
譲渡記録によって第三者へ債権を移転できる
でんさいを保有する企業は、譲渡記録を請求することで、取引先や金融機関へ債権を譲渡できます。また、債権の一部だけを分けて譲渡する「分割譲渡」も可能です。
なお、譲渡記録は原則として債権者側が請求します。支払企業が行う発生記録請求とは、手続きをする主体が異なる点に注意が必要です。
支払期日には口座間で自動決済される
支払期日になると、原則として支払企業の決済口座から受取企業の口座へ資金が自動送金されます。決済が完了すると、記録原簿に支払等記録が行われ、電子記録債権は消滅します。
ただし、支払企業の口座残高が不足している場合は支払不能となるため、期日までの資金準備が必要です。
電子記録債権(でんさい)と手形・売掛債権等との違いは?
でんさい、手形、売掛債権は、いずれも企業が将来代金を受け取る権利に関係します。ただし、債権が成立する方法、管理媒体、譲渡方法、決済手続きが異なります。
でんさいは電子記録によって発生・譲渡する債権
でんさいは、でんさいネットの記録原簿へ発生記録を行うことで成立する電子記録債権です。紙の証書を使わず、譲渡や分割譲渡、期日前の資金化も電子的に行えます。支払期日には原則として口座間で自動決済されるため、銀行へ取立を依頼する必要はありません。
手形は紙の証書の交付を前提とする債権
手形債権は、約束手形や為替手形を作成し、受取人へ交付することで発生します。裏書譲渡や手形割引が可能ですが、紙の保管、郵送、押印、取立手続きが必要です。紛失・盗難や不渡りのリスクもあり、紙の手形取引は利用縮小が進んでいます。
売掛債権は掛取引によって発生する代金債権
売掛債権は、商品やサービスを先に提供し、代金を後日受け取る掛取引によって発生します。請求書や契約書などで支払条件を確認しますが、手形やでんさいのように、証書の交付や記録原簿への登録が成立要件となるわけではありません。
電子記録債権(でんさい)の仕訳・勘定科目は?
電子記録債権の勘定科目は、「電子記録債権」と「電子記録債務」です。会計処理は、手形債権に準じた取り扱いをします。
たとえば、1万円の商品を掛取引で売却し、電子記録債権で受け取った場合の仕訳を債権者・債務者別にみてみましょう。
債権者の仕訳
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 売掛金 | 10,000円 | 売上 | 10,000円 | 商品Aを売上 |
| 電子記録債権 | 10,000円 | 売掛金 | 10,000円 | 電子記録債権の発生による振替 |
| 現金 | 10,000円 | 電子記録債権 | 10,000円 | 電子記録債権の支払いを受けて振替 |
売買により、まず「売掛金」を計上します。電子記録債権が発生したら、売掛金を「電子記録債権」に置き換える仕訳をします。
債務者の金融機関から支払いが行われたら、電子記録債権を現金に振り替えるという流れです。
債務者の仕訳
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 仕入 | 10,000円 | 買掛金 | 10,000円 | 商品Aを購入 |
| 買掛金 | 10,000円 | 電子記録債務 | 10,000円 | 電子記録債務の発生による振替 |
| 電子記録債務 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 | 電子記録債務の支払い |
債務者側の処理も、債権者と同じ流れで行います。買掛金を電子記録債務に振り替え、送金等による支払いを済ませたら電子記録債務を借方に仕訳します。
電子記録債権(でんさい)を利用するメリットは?
電子記録債権は、手形決済の多い会社にとって多くのメリットがあります。
ここでは、債権者・債務者それぞれのメリットをみていきましょう。
債権者にとってのメリット
手形は現物の管理や発行の手続きに多くの手間やコストが発生しますが、電子記録債権は債権を電子データとして扱うため、そのような面倒がありません。

また、データは電子債権記録機関の記録原簿で管理されるため、紛失や盗難のリスクも減らせることがメリットです。債権の発生・譲渡は電子データの送受信等で行えるため、交付時のコストも軽減できます。
手形取引では分割譲渡ができませんが、電子記録債権は分割譲渡が可能です。そのため、複数の取引先への支払いにあてるなど、柔軟な対応ができるというメリットがあります。
さらに、電子記録債権は期日になれば口座に自動入金されるため、手形のような取り立ての手続きも不要です。
債務者にとってのメリット
手形取引で債務者は、金額の記入・印紙の貼り付け・押印などに多くの手間と労力をかけなければなりません。しかし、電子記録債権であれば、Web上での入力と承認作業のみで済みます。事務負担が大幅に軽減される点がメリットです。
また、手形で支払いを行う場合は、印紙税や企業に発送する郵送料などのコストもかかります。
電子記録債権の場合はこれら印紙税や郵送料が不要になり、コスト削減できるのもメリットです。
電子記録債権(でんさい)を利用するデメリットは?
電子記録債権にはデメリットもあります。
主なデメリットは、次の6つです。
- 事前申し込みが必要
- 審査のハードルが高い
- 会計処理を変更する手間が発生する
- 双方が利用者でなければならない
- 手数料が発生する
- 保証記録・償還請求権・契約条件により譲渡人が責任を負う場合がある
電子記録債権を利用するためには事前の申し込みが必要であり、すぐに利用開始できるわけではありません。利用には審査をクリアしなければならず、利用者の財務状況や経営状態なども審査対象です。そのため、信用力が低下していると審査に通らない可能性があります。
また、電子記録債権に切り替えることで、勘定科目などの会計処理や作業フローに変更が発生します。担当者の研修やマニュアル作成などが必要になるでしょう。
電子記録債権は、債権者・債務者のどちらもでんさいネットに加盟した利用者でなければならないこともデメリットです。いずれか一方のみが利用登録している場合は取引できないため、取引先に説明し、登録してもらわなければなりません。
さらに、電子記録債権には発生記録や譲渡記録などの手続きに応じて手数料がかかります。手数料は金融機関や取引内容によって異なりますが、1件当たり数百円程度のケースが多いため、利用前に取引金融機関の料金体系を確認しましょう。取引の一部のみを電子記録債権にする場合、支払手段が複数化して管理コストが増える可能性もあるため注意が必要です。
でんさいネットを利用した電子債権取引の方法・流れは?
でんさいネットには、「手形的利用」「全銀行参加型」「間接アクセス方式」という3つの特長があります。ここでは、電子記録債権(以後、でんさいと表記)を利用する流れについて、間接アクセス方式(金融機関を窓口とする方式)を例にみていきましょう。
(1)でんさいが発生する
まず、でんさいネット内に掲載されている参加金融機関一覧を参考に、窓口となる金融機関を選びます。次に、選んだ窓口金融機関に利用を申し込みます。申し込みに必要な書類や手続きなどは、各金融機関に確認しましょう。
審査を経て、利用者と窓口金融機関、電子債権記録機関の3者間で利用契約を結びます。窓口金融機関から「利用者番号」が通知されると、でんさいネットの利用が可能です。
支払企業の発生記録請求を受け、でんさいネットの記録原簿に「発生記録」を行うことにより、でんさいが発生します。
発生記録には、債務者・債権者の情報や債権金額、支払期日、決済方法などが記録されています。
(2)でんさいを譲渡する
でんさいを譲渡するときは、窓口金融機関を通じ、でんさいネットの記録原簿に「譲渡記録」を行います。必要に応じて、債権の分割譲渡も可能です。その際は、記録原簿に「分割記録」を行います。
「譲渡記録」では譲渡人情報や譲受人情報等が記録され、「分割記録」は親債権と子債権に分かれ、それぞれに必要な情報が記録されます。
(3)でんさいの支払いをする
支払期日になったら、自動的に支払企業の口座から資金が引き落とされます。納入企業の口座へ払込みが行われ、でんさいネットにて支払が完了したことが「支払等記録」として記録されるという流れです。企業側では面倒な手続きが一切ありません。
手形では金融機関への取立依頼などの手続きが必要となるのに対し、でんさいでは支払期日に口座間で自動決済され、決済口座への入金後から資金を利用できます。
手形廃止に向けた動きにより電子記録債権(でんさい)はどうなる?
電子交換所における紙の手形・小切手の交換は、2027年3月31日に廃止されます。これに伴い、でんさいは紙の手形が担ってきた後払い・譲渡・期日前資金化の機能を引き継ぐ、主要な代替手段として利用が広がると考えられます。
紙の手形からでんさいへの切替えがさらに進む
金融庁や全国銀行協会は、紙の手形を利用している企業に対し、でんさいやインターネットバンキングによる振込への早期移行を促しています。でんさいは支払期日を設定でき、譲渡や分割譲渡、金融機関での期日前資金化にも対応するため、約束手形に近い機能を電子的に利用できます。
企業間決済の電子化と事務効率化が進む
でんさいへ移行すると、紙の手形の作成、押印、郵送、保管、銀行への取立持込みが不要になります。債権の金額や支払期日、譲渡状況も電子的に確認できるため、経理業務の効率化や紛失・盗難リスクの軽減が期待できます。
ただし、自動的に切り替わるわけではありません。企業は金融機関へ利用を申し込み、取引先と支払条件や切替日を協議する必要があります。
電子化後も支払不能や与信リスクは残る
でんさいへ移行しても、支払期日に債務者の口座残高が不足すれば支払不能になります。そのため、紙の手形に伴う事務負担は減っても、代金回収が必ず保証されるわけではありません。
企業は取引先の信用状況を確認し、支払側では期日までの資金準備を徹底する必要があります。また、会計処理では「受取手形・支払手形」ではなく、原則として「電子記録債権・電子記録債務」を使用するなど、社内ルールの見直しも必要です。
電子記録債権(でんさい)の手数料はいくらかかる?
でんさいの手数料は金融機関や取引内容によって異なります。一般に、発生記録や譲渡記録は1件当たり数百円程度ですが、相手の口座が同行か他行かによって金額が変わります。利用前に取引銀行の料金表を確認しましょう。
発生記録は1件440~1,100円程度
三菱UFJ銀行の発生記録手数料は、債務者請求方式で同行宛440円、他行宛880円です。債権者請求方式では同行宛660円、他行宛1,100円となります。みずほ銀行は、債務者請求方式・債権者請求方式ともに同行宛440円、他行宛880円です。
譲渡記録は1件220~880円程度
三菱UFJ銀行の譲渡記録手数料は同行宛220円、他行宛660円です。三井住友銀行では同行宛330円、他行宛550円、みずほ銀行では同行宛440円、他行宛880円です。分割譲渡も同程度の手数料がかかります。
入金・変更・証明書にも手数料がかかる
受取時には、三井住友銀行とみずほ銀行で1件220円の決済・入金手数料がかかります。変更記録はオンラインで440~1,100円程度、残高証明書は定例発行で1,650~2,200円程度です。なお、でんさい割引を利用する場合は、記録手数料とは別に割引料がかかります。
電子記録債権(でんさい)が支払不能になった場合はどうなる?
でんさいは、支払期日に債務者の口座から資金を引き落とせないと支払不能になります。電子化されていても代金回収が保証されるわけではなく、債務者には信用上の影響が生じ、債権者は回収手続きを進める必要があります。
債務者には支払不能情報が登録される
支払期日に口座残高が不足するなどして決済できないと、支払不能情報がでんさいネットへ登録され、参加金融機関へ通知されます。同一の債務者が6か月以内に2回以上の支払不能を起こすと、原則として2年間、債務者としてのでんさいネットの利用と、参加金融機関との貸出取引が停止されます。
ただし、契約不履行など一定の理由がある場合は、異議申立てなどによって支払不能処分の対象外となることがあります。
債権者は債務者や保証人へ支払いを請求する
支払不能になった場合、債権者は債務者へ直接支払いを請求します。でんさいが譲渡されている場合は、原則として譲渡保証記録も付されるため、譲渡人である電子記録保証人へ請求できる可能性があります。
任意の支払いが得られない場合は、支払督促や訴訟などの法的手続きも検討します。会計上は、回収不能が確定するまで電子記録債権を直ちに貸倒損失へ振り替えず、回収可能性を確認しながら処理することが重要です。
電子記録債権は事務負担の軽減やコスト削減のメリットがある
電子記録債権は手形・売掛債権等の問題点を克服した金銭債権であり、債権者にとって、管理の手間やコストを削減できるのがメリットです。債務者にとっても、印紙貼付や押印などの事務負担やコストが大幅に軽減されます。
ただし、利用には審査があり、双方が利用者でなければならないなどのデメリットがあることも把握しておいてください。
手形や売掛債権の取引が多く、業務の効率化やリスクの軽減を図りたい方は、電子記録債権の導入について検討してみるとよいでしょう。
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