- 更新日 : 2024年8月8日
連結決算で親子会社間に決算期のずれがある場合は?わかりやすく解説
連結決算において親・子会社間で決算期がずれている場合、一定の期日を境に対応が異なることをご存知ない企業の方も多いのではないでしょうか。原則として決算日は統一することが推奨されますが、ずれている期間によっては調整しなくても良いケースもあります。
本記事では、親会社と子・グループ会社において決算期が違う場合の対応をわかりやすく回答します。連結決算の流れや決算期のずれを修正する際の注意点についても紹介していますので、決算業務の円滑化を図りたい企業の方はぜひご一読ください。
目次
親子会社間の決算期のずれが3ヶ月以内の場合の対応
連結決算において親子会社間の決算期のずれがある場合、3ヶ月以内であれば必ずしも子会社の決算日を親会社に合わせなくても問題ありません(参考:企業会計基準第22号 連結財務諸表に関する会計基準|企業会計基準委員会)。ただし、親子間の重要な不一致については調整が必要です。
決算期の差異が認められている理由は、子会社が親会社と同様の範囲・スピードで決算業務を進めるのは実務上のリソースが足りず負担が大きすぎるからです。特に海外に拠点を置く子会社の場合、日本で一般的な3月決算ではなく年末に当たる12月決算を締めとするケースもめずらしくなく、3ヶ月程度のズレが生じやすくなっていることから当該特例が定められました。
ただし、「国際財務報告基準(IFRS)」では原則として決算日を統一することが推奨されています。また、決算期のずれが原因で利害関係者の判断を誤らせるおそれがあるほど重大な会計上の食い違いが生じる場合は、個別財務諸表の該当項目を修正しなければなりません。
近年の傾向として、3ヶ月以内の差異であっても修正したり親・子のいずれかの決算日を一方に合わせたりする会社も増加しています。
親子会社間の決算期のずれが3ヶ月を超える場合の対応
親子会社間の決算期のずれが3ヶ月を超えている場合は、重要性の原則が適用されるため以下2つの方法で対処する必要があります。
- 仮決算を行う
- 決算日と連結決算日を統一する
それぞれの対応の手続きとメリット・デメリットを見ていきましょう。
仮決算を行う
1つ目の対応策は、子会社における「仮決算」の実施です。仮決算とは、本決算とは別に親会社による連結決算に合わせて年度途中で決算処理を行うことを指します。
原則として、実際の決算期に3ヶ月超のずれがある場合に仮決算を行う際は子会社が親会社の連結決算日に合わせなければなりません。
ただし、合理的な理由があるケースにおいては3ヶ月以内の範囲であれば親会社と異なる期日で仮決算を行えます。(参考:「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について|金融庁)
仮決算を行うメリットは以下のとおりです。
- 本決算の業務負担が軽減する
- 税金の中間納付にかかる資金繰りの改善につながることもある
年度末に先がけて決算の途中経過を取りまとめるため、本決算がスムーズに進められるようになるでしょう。
さらに、前年比で業績が悪化した企業にとっては中間期で仮決算を実施すれば法人税などの中間納付を軽減でき、前年の実績を元にした金額で中間納付する場合よりも納税額が少なくなり、結果、資金繰りが改善することがあります。
一方、仮決算には次のようなデメリットもある点に注意してください。
- 作業が煩雑
仮決算といっても本決算と同様の手順を踏んで決算書を作成しなければならないため、非常に複雑かつ煩雑で業務負担が大きいといえます。
決算日と連結決算日を統一する
2つ目の対応策は、親・子会社間で決算日を統一することです。統一方法としては、親会社の連結決算日に子会社の決算日を合わせる、もしくはその逆の策をとることが考えられます。
決算日と連結決算日を統一するメリットは、以下のとおりです。
- 連結決算の精度が上がる
- 業績がリアルタイムで決算に反映できる
- 企業の信頼性が向上する
決算期のズレをなくせば、決算書の内容がより正確になります。親子とも同じタイミングで決算を行うため、リアルタイムの経営・財政状態を計上することが可能です。また、正確な財務諸表を作成することで利害関係者は判断がしやすくなり、投資を促す効果も期待できます。
ただし、親・子会社間の決算日を統一する際の注意点は以下のとおりです。
- 決算日を合わせる方の負担が大きい
- コストがかかる
- 人的リソースを増やす必要がある
実務上、本来異なる決算期の統一には合わせる方の迅速な対応が求められるため、負担が大きいといえます。親会社の連結決算に子会社の決算期を合わせる場合、人的・物的にリソース不足になりやすく、カバーするためにはコストがかかる点もデメリットです。
とはいえ、コストパフォーマンスの高いバックオフィスツールを導入してリソース不足に充てれば、長い目で見てかかったコストを上回るほどの効率化や利益向上が図れるでしょう。
連結決算の流れ
連結決算業務は、以下の流れで行います。
- 個別財務諸表の作成
事前準備として、親会社および連結決算の対象となるすべての子・グループ会社が各自で個別の財務諸表を作成しなければなりません。個別財務諸表作成の際、必要に応じて決算期を調整したうえで作業を進めます。作成した財務諸表は親会社に集約されます。 - 連結パッケージの作成・提出
本ステップからが連結決算業務です。
子会社は財務諸表を含む連結パッケージを作成して親会社に提出します。
連結パッケージとは、グループ企業間の取引実績など、次のステップの資料となるデータです。 - 財務諸表の合算
次に、親会社は子会社・グループ会社が作成・提出した個別財務諸表を元に金額・通知を集計します。 - 連結修正
続いて、決算書の正確性を高めるため親・子会社間取引の相殺や未実現利益の消去を行います。子会社から提出された損益計算書と連結パッケージをもとに、作業を進めましょう。 - 連結財務諸表の作成
連結修正して計上した金額・数値を連結財務諸表に記載します。 - 個別注記表の集計
経営・決算に関わる内容の補足を注記します。注記上は、親子各社において個別に集計して作成しなければなりません。
連結決算の一連の流れにおける重要ポイントは、会計方針を統一することです。親・子会社間で会計方針が異なると、正確な連結決算が行えません。加えて、徹底した親・子会社間取引の管理が不可欠なため、日常的な連結パッケージに関する情報の共有や子会社への指導が求められます。
連結決算の詳細や具体的な作成書類などに関してはこちらの記事を参考にしてください。
親子会社間の決算期のずれを修正する際の注意点
子会社と連結外部との取引については、重要性にかかわらず決算期の整理は認められていません。決算期のズレが調整できるのは、あくまで同一グループ会社内の取引のみです。
なお、連結決算において親子会社間の決算期のずれを修正する重要な取引には以下の項目があります。
- 有価証券の配当
- 売上・仕入取引
- 未認識項目のオンバランス
連結した親・子会社間で決算期のずれがある場合、本来であれば配当金は実際より遅れて収益計上されるため相殺しなければなりません。
また、売上・仕入などの経常取引はずれている期間を調整する必要があります。オンバランスとは貸借対照表に資産や負債を計上する処理を指し、重要な会計処理の一つです。
まとめ
連結決算で親子会社間に決算期のずれがある場合、財務諸表の精度を上げるため適切に処理しなければなりません。ずれの修正は3ヶ月を基準として対応が異なります。3ヶ月以内であれば業務負担軽減のためそのまま決算処理を行うことが可能です。
しかし、決算期が3ヶ月を超えて異なる場合は仮決算もしくは決算日の統一を行ってずれを調整する必要があります。決算期のずれは連結決算の流れの中で行いますが、会計方針がバラバラだと業務負担が甚大になってしまうでしょう。修正や調整には物的・人的にコストがかかる点も問題です。
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よくある質問
決算日と連結決算日が異なる場合にはどうする?
親会社の連結決算日と子会社の個別決算日がずれている場合、3ヶ月を基準として対応が異なります。
- ずれが3ヶ月超:決算日を調整する必要はありません。
- ずれが3ヶ月以内:決算日を調整しなければなりません。子会社による仮決算もしくは親・子会社いずれか一方が決算日を合わせる方法でずれを調整します。
連結決算日とは?
連結決算日とは、親会社が子・グループ会社の個別決算を取りまとめる締日のことです。連結財務諸表を作成の基準日となり、原則として親会社が年1回行う本決算の日が連結決算日に該当します。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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