- 更新日 : 2024年8月8日
真実性の原則とは?意義や目的、相対的真実についても解説!
真実性の原則は、企業会計において真実な報告を求めるものであり、企業会計原則の一般原則に記された会計の根本的なルールです。本記事では、会計・経理の担当者に向けて真実性の原則を分かりやすく解説しています。具体例も交えて説明していきますので、ぜひ最後まで読んで理解を深めてください。
目次
真実性の原則とは
真実性の原則は企業会計原則に次のように規定されています。
一 企業会計は、企業の財政状態及び経営成績に関して、真実な報告を提供するものでなければならない。
引用:新版 会計法規集 第10版(中央出版社)
真実性の原則にはどのような内容が記されているかすぐに説明できる人はそれほど多くないでしょう。しかし、真実性の原則という名前から「嘘をついてはいけない」という内容は何となくイメージできるかもしれません。
真実性の原則には、企業の財政や経営に関する情報について虚偽の報告をしてはならないということが記載されています。
ここではまず、真実性の原則とは具体的にどんな内容なのかを簡単かつ分かりやすく説明していきます。定義を確認し、真実性の原則の理解を深めていきましょう。
真実性の原則の意義・目的
真実性の原則とは、不正や利益操作のない真実にもとづいた財務諸表の作成を求めるという原則です。企業の財政状態と経営成績を真実のままに伝えることを規定することが目的で、真実性の原則によって虚偽の記載は厳しく禁止されています。
企業経営には株主、投資家、金融機関、税務署など立場の異なる利害関係者が多数関わっており、財務諸表の数値がステークホルダーへ与える影響の大きさははかり知れません。
企業の心理としては株主や投資家に対して利益を大きく見せたいと考え、税務署に対しては利益を少なく見せたいと思うものです。真実性の原則の存在意義は、こうした心理から事実を粉飾し、虚偽の決算書や報告書類を作成することを厳しく禁じることにあります。
虚偽の報告をしないことは、コンプライアンスの観点からすると当たり前のことです。健全な企業経営を行うためには、守ることが当たり前のルールといえるでしょう。そのため、経理や会計担当者としては企業会計原則の冒頭に「真実性の原則」として明記されているということもぜひ意識しておきたいものです。
相対的真実について
会計においては、「真実」という言葉にも「絶対的真実」と「相対的真実」の2通りのとらえかたがあります。真実性の原則で求められているのは、これらのうち「相対的真実」のほうになります。
企業会計においては、会社の実情に応じて複数の会計処理が認められているケースがあります。例えば、減価償却における定額法と定率法を想像すると分かりやすいでしょう。どちらの減価償却方法を選択するかによって計算結果は異なりますが、これは真実性の原則に矛盾するものではありません。認められている会計処理により導かれた結果であり、相対的に真実だといえます。
時代に応じて会計処理の目的は変化していくことや、複数の会計処理が認められていることから、すべての財務諸表が絶対的に一致していることは、そもそも求められていないのです。
真実性の原則の役割
真実性の原則が果たす役割について見てみましょう。
財務諸表の真実性が担保されないと、会社の利害関係者(株主、投資家、銀行、税務署など)は正しい経営成績や財務状況が分からず困ることになります。正しいかどうか分からない財務諸表では、どのような判断も下せないからです。
しかし、真実性の原則が遵守されることで、財務諸表の信頼性は上がります。株主や投資家は安心して投資の判断ができ、税務署は財務諸表が適法であるという前提で税徴収が可能になるのです。
真実性の原則の事例
真実性の原則に違反するとは具体的にどのようなものなのか、またどのような影響を及ぼすのか具体例を見ながらイメージしてみましょう。
真実性の原則に違反した事例として分かりやすいのが、粉飾決算です。例えば東芝の粉飾決算は、まだ記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。パソコン事業などの不調を投資家に隠したかったのが原因といわれており、水増しした利益の金額は2,306億円と非常に巨額でした。粉飾決算が発覚した東芝にバッシングが集中したことはいうまでもありません。
このように、真実を述べない財務諸表はコンプライアンスとしても問題視されるものです。東芝のように株主に虚偽の決算報告を行った場合は金融商品取引法違反となります。この場合、刑事罰や行政処分が課されるので注意が必要です。
真実性の原則の位置づけ
真実性の原則とは、会計の概念においてどのような位置づけのルールなのか確認してみましょう。
真実性の原則は、企業会計の大原則とも言われる「企業会計原則」の一般原則と呼ばれる部分の冒頭に記載されています。
冒頭に記されていることからも、真実性の原則が7項目の中で最も重要視されている原則であることが分かります。ここからは、企業会計原則の一般原則とは何かについて簡単に説明していきます。
企業会計原則の一般原則
企業会計原則とは、1949年に旧大蔵省(現金融庁)によって発表された企業会計の原則のことです。それまで会計において慣習的に守られてきたルールが、改めて明文化される形で規定されたのがこの原則です。一般原則に記されている内容は、今日のコンプライアンス遵守で求められる内容とも近しいものです。そのため、あえて言及される機会が少なく「企業会計原則というものを初めて知った」という人も多いかもしれません。真実性の原則は、企業会計原則の一般原則という部分に記載されている内容です。
企業会計原則を守らないと、ただちに法律違反になるわけではありません。ただし、企業会計においては、遵守することが当たり前のルールです。金融関係の法令は基本的に企業会計原則をベースに作られており、企業会計原則を守らないと間接的に法令違反につながる恐れもあるのでご注意ください。
企業会計原則について詳しく知りたい人は以下の記事を参考にしてください。
真実性の原則と正規の簿記の原則の関係
正規の簿記の原則では、正確な会計処理を行い、正確な帳簿を作成することが求められています。つまり、手続き上の間違いやルール違反がなく、すべての取引について正確な会計処理をしなければならないという内容です。
しかし、どれだけ注意しても誤った会計処理をしてしまうこともあります。そのような場合に後から検証できるようにするため、証憑や取引記録などの客観的証拠を残さなければならないことも、正規の簿記の原則に含まれています。虚偽の報告を禁止する真実性の原則とは、性質が異なることが分かるのではないでしょうか。
真実性の原則は虚偽の会計書類を作らないことを求めているのに対し、正規の簿記の原則は手続き方法に誤りがないことを求めていることに違いがあるのです。
真実性の原則と保守主義の原則の関係
保守主義の原則とは、収益は少なめ(遅め)に、費用は多め(早め)に見積もるように求める原則のことです。これも企業会計原則の一般原則の一部となっています。
保守主義の原則で難しいのは、極端に保守主義を採用してもいけないということです。行き過ぎた保守主義は事実を押し曲げることになり、真実性の原則と矛盾が生まれます。
過度な保守主義は利益操作にもつながるため、保守主義を採用するのは企業の財政に悪影響がでる場合のみと考えられています。保守主義の原則はいつでも認められるわけではないことを覚えておきましょう。
「真実性の原則」は企業会計において真実な報告を求めるもの
この記事では、企業会計原則の一般原則に記載されている「真実性の原則」について具体的に解説しました。他の原則との関係まで踏み込んで解説したので、どのような原則なのかイメージが湧いたのではないでしょうか。企業会計の一般原則は、真実性の原則以外も重要な原則ばかりです。これを機に、他の原則についての理解も深めてみてはいかがでしょうか。
よくある質問
真実性の原則とは?
真実性の原則とは、不正や利益操作のない真実にもとづいた財務諸表の作成を求める原則。企業会計原則の一般原則冒頭に定められている。詳しくはこちらをご覧ください。
真実性の原則の意義とは?
企業には株主、投資家、金融機関、税務署など立場の異なる利害関係者が関わっており、真実性の原則には、ステークホルダーの利害に応じて矛盾した財務諸表が作られないようにする意義がある。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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