- 更新日 : 2024年8月8日
中小企業の定義は法律によって異なる
中小企業は大企業に比べて経営基盤が安定していないことから、優遇措置や補助金の支給など、さまざまな支援が受けられます。
しかし、これらの支援を受けるには、それぞれに定められた「中小企業」の定義に該当するかを確認する必要があります。
この記事では、中小企業基本法での「中小企業」の定義をはじめ、会社法、法人税法などの定義もご紹介します。
それぞれの法律で定義されている「中小企業」の定義を整理することで、今まで受けられないと思っていた特例や支援を受けられるようになるかもしれません。
中小企業基本法での定義
中小企業基本法は、中小企業の経営基盤の強化や経営の安定を図るために政府が行う施策について定めた法律です。
中小企業基本法では、中小企業の定義を次の表のとおり定めています。特に規模が小さい事業者は「小規模企業者」として定義されています。
中小企業者や小規模企業者は、株式会社など会社法上の会社に限らず、個人事業主や士業法人(弁護士法人、税理士法人など)も含まれます。
中小企業基本法での中小企業の定義
(下記のいずれかを満たすこと) | |||
---|---|---|---|
その他の業種(②~④を除く) | |||
(出典:中小企業基本法の中小企業の定義と小規模企業の定義を教えてください。|中小企業庁)
中小企業基本法での中小企業の定義は、業種によって異なっているのが特徴です。自社がどの業種にあたるかは、日本標準産業分類を参考にして判断します。複数の事業がある場合は、主な業種で判断します。
「常時使用する従業員の数」とは、雇用形態にかかわらず、継続して雇用している従業員を対象にします。役員や個人事業主は含みません。
なお、大企業の子会社であっても、上記の条件を満たしていれば、中小企業基本法の上では中小企業者または小規模企業者と認められます。
中小企業基本法の規定は、あくまでも原則であって、それぞれの支援制度によって定義が異なる場合があります。中小企業を対象にした支援を受ける場合には、要件にあてはまるかどうかを確認することをおすすめします。
会社法・法人税法などでの定義
中小企業基本法に基づく施策のほかにも、中小企業に対するさまざまな優遇措置があります。それらの優遇措置が受けられる中小企業の定義は、会社法や法人税法・租税特別措置法で定められています。
会社法での定義
会社法には、中小企業の定義に関する規定はありません。しかし、大会社の定義については規定があり、それに当てはまらない会社を中小企業とみなすことができます。
会社法では、大会社を「資本金5億円以上または負債総額200億円以上の株式会社」と定めています。
つまり、「資本金5億円未満かつ負債総額200億円未満」であれば、会社法の上では中小企業であると考えられます。
大会社には、会計監査人による監査を受ける義務や、貸借対照表に加えて損益計算書を公告する義務などがありますが、大会社に該当しない中小企業にはこれらの義務はありません。
法人税法での定義
法人税法では、「中小企業」は、「中小法人等」と規定され、資本金(出資金)が1億円以下であれば中小法人等となります。ただし、資本金が5億円以上の大法人の100%子会社である場合などは除きます。
大企業との支配関係によって中小法人として認められない点は、他の法律による定義と異なるところです。
中小法人は法人税率が軽減されるほか、税務上の赤字の繰り越しについて制限が緩和されたり、一定の範囲内で交際費を経費にできるといったメリットがあります。
租税特別措置法での定義
中小企業投資促進税制や少額減価償却資産の特例など、租税特別措置法での優遇を受けられる「中小企業者]の定義は、法人税による定義と異なる点があります。
最大の違いは個人事業主が含まれる点ですが、大企業による支配関係や持株割合に関する規定も異なっています。
租税特別措置法での「中小企業者」の定義は次のとおりです。
・ただし、同一の大規模法人(資本金1億円超など)から2分の1以上を出資されている法人、2社以上の大規模法人からあわせて3分の2以上を出資されている法人は除く
・資本または出資を有しない法人のうち、従業員数が1,000人以下の法人あるいは個人事業主
自社が中小企業にあてはまるかどうか判断に迷う場合は、税理士など企業税制に詳しい専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。
まとめ
中小企業を対象にした支援策は、それぞれ目的が異なるため、対象となる「中小企業」の範囲も異なります。支援策の根拠となる法律によって中小企業の定義が異なるのは、こうした事情によるものと考えられます。
中小企業を対象にした支援を受けたい場合には、中小企業の定義について注意深く確認する必要があります。
関連記事
・中小企業が受けられる補助金一覧
・中小企業経営者必見!補助金・助成金の基礎知識
・中小企業の事業継承における問題とは
よくある質問
会社法での中小企業の定義は?
会社法には、中小企業の定義に関する規定はありません。しかし、大会社の定義については規定があり、それに当てはまらない会社を中小企業とみなすことができます。詳しくはこちらをご覧ください。
法人税法での中小企業の定義は?
法人税法では、「中小企業」は、「中小法人等」と規定され、資本金(出資金)が1億円以下であれば中小法人等となります。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
税制改正大綱とは?令和4年度の中小企業に関する改正ポイントを解説!
令和3年12月24日、令和4年度税制改正大綱が閣議決定されました。今後、国会での審議や本会議での可決で改正法が成立する見込みです。令和4年度税制改正大綱で柱とされたのが、成長と分配の好循環、経済社会の構造変化を踏まえた税制見直しの2つです。…
詳しくみる固定資産評価証明書はどのようなときに必要?
固定資産税の課税のために土地や家屋などの資産につけられる価格を、固定資産税評価額といいます。 固定資産税評価額は固定資産税の納税通知書に添付されている課税明細書で確認できますが、公的機関への届け出には固定資産評価証明書が必要になる場合があり…
詳しくみる支払調書と源泉徴収票の違いとは?わかりやすく解説
支払調書と源泉徴収票とはどう違うのでしょうか。いずれも所得金額とこれに対応する税額を示す法定調書の一種です。この記事では、支払調書と源泉徴収票の概要とその違いについてご紹介します。 そもそも法定調書とは 報酬や給与等を支払う事業者は、支払の…
詳しくみる会社解散における税務処理とは
業績が悪化し事業閉鎖に追い込まれてしまったり、会社を存続するメリットがなくなったり、事業の後継者がおらず、事業そのものが継続できなくなったなどの理由から、会社の業務を終了させること、すなわち、会社の解散を選択する場合があります。 一般的に会…
詳しくみる支払調書とは?書き方や提出義務、期限について解説
支払調書とは法定調書のひとつです。法定調書とは、税務署が納税者の正確な支払いを把握するための書類のことです。法定調書の種類は多く、全部で60種類あります。この記事では支払調書の概要、記載項目や計算方法についてご紹介します。支払調書の基礎を知…
詳しくみる映画、Suica、ジムは経費になる?税理士が答える「経費にできたかも委員会」
フリーランスや個人事業主の人を悩ませる「どこまでが経費になるのか」問題。2019年5月19日に東京で開催されたイベント「確定申告反省会」で、主催の税理士・高橋創さんと大河内薫さんが、経費の疑問に答える企画を行いました。 その企画の名は「経費…
詳しくみる