• 作成日 : 2025年9月9日

電子帳簿保存法の解像度要件を解説!改正後の最新ルールやスマホ対応の注意点

電子帳簿保存法は、紙の書類を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。特に「解像度要件」は、スキャナ保存を行う場合に満たすべき画質基準であり、税務調査での証拠力確保に直結します。改正により一部要件が緩和されましたが、200dpi・256階調などの基準は依然として重要です。

本記事では、電子帳簿保存法の解像度要件のルール、改正点、スキャナ保存における要件の注意点などを解説します。要件を満たさない場合、どれだけ丁寧に保存しても形式不備とされる可能性があるため、最新ルールや注意点を把握しておきましょう。

電子帳簿保存法の3つの区分

電子帳簿保存法は、以下の3つの保存方法に分類され、それぞれ適用される要件が異なります。

  • 電子帳簿等保存:会計ソフト等で作成した帳簿・決算書などを電子データのまま保存
  • スキャナ保存:紙で受け取った請求書領収書などをスキャンし、電子データで保存
  • 電子取引データ保存:メールやクラウドで受け取ったPDFやデータをそのまま保存

3つの中で「解像度要件」が関わるのはスキャナ保存です。紙の書類をデータ化する際、証拠としての判読性を担保するために、画質基準が設けられています。区分ごとの違いを理解しておくことで、保存方法や要件の混同によるミスを防げます。

電子帳簿保存法におけるスキャナ保存の解像度要件

スキャナ保存では、証憑の判読性を確保するために画質の基準が明確に定められています。解像度要件の基本ルールや対象書類を解説します。

電子帳簿保存法「解像度200dpi・256階調」の基本ルール

電子帳簿保存法により、スキャナ保存は「解像度200dpi相当以上」「RGB各256階調以上」と規定されています。

dpiは解像度を示す単位で、200dpiはA4書類を判読可能な精度で保存できる目安です。256階調は、色の濃淡を256段階で記録できることを意味し、証憑として必要な色や細部の再現に不可欠です。

要件を満たさないと、保存データが証拠性を欠くと判断され、税務調査で帳簿の要件を満たさず、否認される可能性があります。改正後も「解像度200dpi・256階調」の基本ルールは維持されているため、解像度・階調の確認は実務上必須です。

スキャナ保存の対象書類

スキャナ保存の対象は、紙で受け取った国税関係書類です。具体的には、請求書、領収書、見積書、契約書、納品書検収書などが該当します。

電子的に受け取ったデータ(PDFやメール添付など)ではなく、紙媒体で受領した場合に限られます。また、自社で作成し、紙で交付した書類等も対象です。

保存期間は原則7年間で、解像度や階調、入力期限などの要件を満たす必要があります。

近年はスマホ撮影での保存も認められていますが、画質不足や保存形式の誤りで要件を満たさないケースが増えています。対象書類を正確に把握し、電子取引データ保存と混同しないことが重要です。

書類の種類による要件の違い

スキャナ保存では、対象書類を「重要書類」と「一般書類」に分類します。重要書類は、契約書・請求書・領収書など取引の証拠性が高い文書で、カラーまたは256階調以上の保存が必要です。

一方、一般書類は、検収書・見積書・注文書などで、グレースケール(白黒)保存も認められます。分類によって、保存形式や入力期限が異なるため注意が必要です。

重要書類を誤って一般書類の条件で保存すると、証拠性が担保できず、税務上否認されるリスクがあります。社内での書類分類ルールを明確化し、保存形式を統一することが実務トラブル防止につながります。

電子帳簿保存法の改正によるスキャナ保存の解像度に関する緩和や変更点

改正によってスキャナ保存の運用は簡便化されましたが、解像度や階調の基準は維持されています。緩和内容と注意点を整理し、最新ルールを把握しましょう。

解像度、階調および大きさ情報に関する情報の保存要件廃止

改正前は、スキャナ保存データに「解像度」「階調」「サイズ」などの情報を付加し、保存することが義務付けられていました。

改正により、付加情報の保存は不要となっています。ただし、あくまで情報保存義務の廃止であり、実際の画像が200dpi・256階調以上を満たす必要は変わりません。

むしろ、付加情報が残らない分、撮影やスキャンの段階での設定ミスに気付きにくくなるため、保存前の確認がより重要になります。特にスマホやスキャナの設定を変更した場合は、必ずdpiや階調をチェックしましょう。

入力者情報等に対する情報の保存要件廃止

入力者の情報を個別に残さなくてよくなりましたが、データの改ざんやミスを防ぐ社内ルールやチェック体制は依然として重要です。

改正前は、スキャナ保存を行った担当者の氏名や入力日など、入力者情報を個別に記録・保存することが求められていました。

改正により、この義務は撤廃され、データ入力者の情報をシステム上で保持する必要はなくなりました。ただし、改正後も改ざん防止の体制が不要になったわけではありません。

税務調査で不正が疑われた場合、入力者や作業日時の証跡がなければ説明が困難になります。社内規程や承認フローを活用し、入力時のチェックや二重確認を行うなど、データの改ざんやミスを防ぐための体制は依然として重要です。

帳簿との相互関連性要件の対象を重要書類に限定

重要書類には請求書や領収書、契約書など、取引の証拠性が高い書類が該当します。

改正前は、重要書類・一般書類のいずれも帳簿との関連性を示す索引情報を付与する必要がありましたが、改正後は重要書類に限定されました。

重要書類には、請求書、領収書、契約書、発注書など、取引の法的根拠となるものが含まれます。帳簿との相互関連性の保持は重要書類に限定され、一般書類(見積書や検収書など)は、事務負担が軽減されました。

ただし、重要書類の関連性を証明できない場合、税務署から保存要件を満たしていないと判断される恐れがあります。保存システム内で帳簿番号や取引日、金額などと紐づける仕組みを確保しておきましょう。

解像度要件を満たさないとスキャナ保存として認められない

電子帳簿保存法のスキャナ保存は、解像度200dpi・256階調の画質基準を満たすことが大前提です。仮に保存形式や入力期限を守っていても、画質が不足していれば形式不備とされ、税務調査で経費や仕入控除が否認される可能性があります。

特にスマホ撮影や低解像度スキャンでは、文字や印影が潰れて判読できない事例が多く報告されています。

一度スキャン・撮影してしまうと後から画質を上げることはできないため、保存前の設定確認が必須です。実務では「解像度チェックリスト」を運用し、毎回の保存時に基準を満たしているかを目視やシステムで確認する仕組みが有効です。

電子帳簿保存法の解像度要件が満たされないリスクがあるケース

スマホやスキャナの設定ミス、画素数不足などで要件を満たさない事例は多くあります。解像度要件が満たされないリスクがあるケースと回避のポイントを解説します。

スマホ撮影で自動圧縮されている

スマホ撮影では、デフォルトで「容量節約モード」や「高効率形式(HEIF)」が有効になっており、撮影後に画像が自動圧縮・リサイズされる場合があります。見た目は鮮明でも200dpi相当を下回ることがあり、法的要件を満たさない恐れがあります。

特にクラウドやチャットアプリ経由で送信するとさらに画質が落ちることが多いため、保存時は必ずオリジナルサイズの画像を利用し、圧縮機能をオフに設定しましょう。

解像度設定が初期値のままスキャンされている

スキャナを使用する際、初期設定では150dpiや白黒モードになっている場合があります。初期設定のままスキャンすると、重要書類でも解像度・階調要件を満たせず、保存データが無効となるリスクがあります。

運用開始前にスキャナの設定画面で200dpi以上、カラーまたは256階調グレースケール、圧縮方式(JPEG高画質推奨)を必ず確認しましょう。設定変更後は試し撮りし、実際の画像プロパティでdpiを確認することが重要です。

書類サイズに対して画素数が足りない

スマホやデジカメを使って書類を撮影する場合、画素数不足が原因で200dpiを満たせないケースがあります。A4サイズを基準にすると、必要な画素数はおよそ387万画素(2,338×1,654ピクセル)以上です。

最近のスマホカメラは1,200万画素以上が一般的ですが、ズームやトリミングで有効画素数が減ることがあります。撮影時は書類全体がしっかり写るように適切な距離を保ち、画質設定を「最大」にして保存しましょう。

電子帳簿保存法の解像度要件をスマホやスキャナで満たす方法

電子帳簿保存法の解像度要件を満たすためには、撮影やスキャン時の設定が重要です。スマホやスキャナで解像度要件を満たすための対応方法を解説します。

スマホ・デジカメの画素数を確認する

スマホやデジカメで撮影する場合、搭載カメラの画素数が200dpi相当以上であることを事前に確認しましょう。最新機種であれば問題ない場合が多いですが、設定や撮影条件によって有効画素数が低下することがあります。

特に暗所撮影やズーム撮影では画質が劣化しやすいため、明るい場所で手ブレを抑えて撮影することが重要です。撮影後はオリジナル画像のdpiやピクセル数を確認し、要件を満たしているかをチェックしましょう。

スキャナで200dpi設定する

スキャナを利用する場合は、必ず設定画面で「解像度(dpi)」「保存形式」「圧縮設定」を確認しましょう。解像度は200dpi以上に設定し、保存形式は重要書類の場合はカラーまたは256階調グレースケールを選択します。

圧縮率が高すぎると画質が劣化するため、JPEG高画質またはPDF高品質設定がおすすめです。社内で複数人がスキャナを使用する場合、設定を固定するか、使用前にチェックする運用ルールを整備するとミスを防げます。

電子帳簿保存法のスキャナ保存における解像度の確認方法

Windowsでは、画像ファイルを右クリックし「プロパティ」→「詳細」タブで「水平方向の解像度」「垂直方向の解像度」を確認できます。Macの場合、プレビューアプリで画像を開き「ツール」→「インスペクタ」→「詳細情報」からdpiやピクセルを確認可能です。

スマホ撮影の場合は、画像編集アプリやクラウドストレージの詳細情報から確認しますが、アップロード時の自動圧縮に注意が必要です。撮影・スキャン直後のオリジナルデータで確認することが、正しい解像度保持のための基本となります。

スキャナ保存における要件の注意点

電子帳簿保存法のスキャナ保存には、解像度以外にも形式や運用ルールがあります。特に保存形式や大判書類の扱いは、要件を外さないよう注意が必要です。

グレースケール(白黒)スキャンは一般書類のみ可能

グレースケール(白黒)保存は、一般書類に限り認められています。重要書類(契約書や請求書など)は、カラーまたは256階調の保存が求められます。白黒では印影や色付きの注記が判別できず、証拠性を欠く恐れがあるためです。

重要書類を誤って白黒保存すると要件不備になるため、保存前に書類種別とスキャン設定を確認しましょう。

一度にスキャンできない大きさの書類は複数回のスキャンが可能

A3サイズ以上の図面や契約書など、一度にスキャンできない場合は複数回に分けてスキャンしても構いません。ただし、複数画像が同一書類であることが明確にわかるよう、ファイル名やページ順を管理する必要があります。

複数画像が同一書類であることをシステム上で確認できれば、要件を満たす保存が可能です。作業時には、欠けや歪みがないかもあわせてチェックすることが大切です。


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