• 作成日 : 2025年9月9日

工事負担金は圧縮記帳できる?対象となる資産や適用ケース、仕訳例を解説

電気やガス・上下水道などのインフラ整備において、工事費用の一部を顧客が負担する「工事負担金」という制度があります。

税務上、工事負担金は原則として益金(収益)に計上されるため、そのままでは課税対象となり、企業にとって大きな税負担となる場合もあります。

しかし、圧縮記帳を活用すると、資産の取得価額を減額処理でき、課税所得の調整が可能です。

本記事では、工事負担金に圧縮記帳が適用できる理由や、対象資産の種類、代表的な具体例、仕訳処理方法を解説します。

工事負担金は圧縮記帳の対象要因になる

企業が受け取る工事負担金は、圧縮記帳の適用対象として認められている代表的な収入のひとつです。

税務上「益金」として処理されるものの、実質的には企業の利益とは言い難く、課税上の不公平が生じかねないためです。

たとえば、電力会社が新たな送電線の敷設に伴って顧客から工事費の一部を負担してもらった場合、受け取った金額は「収益」となります。

しかし、工事負担金を原資として企業が固定資産を取得しているため、課税所得の調整が必要です。

このケースにおいては、工事負担金で取得した資産の取得価額を減額処理する「圧縮記帳」が認められており、国税庁の通達でも明確に扱いが示されています。

参考:第3節 工事負担金で取得した資産の圧縮記帳|国税庁

工事負担金とは

工事負担金とは、電気やガス・通信などのインフラ設備を設置する際に、顧客側が設備設置費用の一部を負担する金銭のことです。

工事負担金の主な利用事例としては、以下のような場面が挙げられます。

  • 新興住宅地の分譲に伴い、電柱や送電線を敷設するケース
  • 工場の建設時に、敷地内への上下水道や通信回線を整備するケース
  • 店舗出店に際して、新たに都市ガスの引込工事が必要となるケース

電力会社やガス会社などのインフラ事業者が、特定の地域や建物に設備を敷設する際に必要な費用の一部を、利用者側に請求する形で発生します。

圧縮記帳とは

圧縮記帳とは、補助金や保険金・工事負担金などの特定の資金により固定資産を取得した場合に、その取得価額を減額して処理する会計・税務手続きです。

通常、これらの収入は法人税上の「益金」として課税対象になりますが、その資金が直接資産の取得に充てられている場合には、実態に即して課税の調整が可能となります。

圧縮記帳により、以下のような税務上の効果が得られます。

  • 益金と資産取得費の対応を図ることで、実質的な利益への課税を回避できる
  • 将来にわたって償却費が少なくなることで、課税の繰延効果が生じる
  • 補助金・負担金等の収入が一時的に大きくなっても、税負担を平準化できる

なお、圧縮記帳の方法としては後述する「直接減額方式」と「積立金方式」のいずれかを選択できます。

圧縮記帳の仕組みについては下記記事でも解説していますので、より理解を深めたい方は参考にしてください。

関連記事:圧縮記帳の仕組みとは?要件や仕訳、限度額を学ぶ

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工事負担金に圧縮記帳がなぜ必要なのか

工事負担金は、益金として課税すると、実態に反した過大な課税が行われる可能性があるため、圧縮記帳が認められています。ここからは、なぜ工事負担金に圧縮記帳が必要なのかについて解説していきます。

工事負担金は税務上は原則として収益(益金)扱いになる

企業がインフラ整備等に関して顧客から受け取る工事負担金は、法人税法上「益金」として取り扱われます。

つまり、受け取った金額は原則として法人税の課税対象です。

たとえば、電力会社やガス会社が送電線・配管の敷設に際して顧客から工事負担金を受け取った場合、その金額は会計上収益となり、法人税の計算上、益金に算入されます。

しかし、工事負担金は実際には企業の利益ではなく、設備投資の補填として受け取った資金である点が重要です。

この実態と税務処理の乖離が課題となるため、圧縮記帳を行います。

実態は自社資産の取得原資になる

工事負担金の大半は、電柱や配線・給排水設備などのインフラ資産の取得や設置工事のために使用されます。

そして、インフラ設備は事業者側(電力会社やガス会社など)の所有・管理資産として計上されるのが一般的です。

つまり、顧客から受け取った工事負担金は、企業が自己の固定資産を取得・整備するための原資にすぎないというのが実態です。

このような収入を通常の「収益」と同一に扱って課税すると、収益に合わない課税が行われてしまいます。

圧縮記帳で税務上の不公平を防ぐ

企業が受け取る補助金や工事負担金などは、実態として利益ではなく、設備投資などの特定の支出に充てられる性質のものです。

そのまま益金として計上してしまうと、実際には利益が生じていないのに、課税対象となって、企業にとって税負担が発生してしまいます。

圧縮記帳を活用すると、補助金や工事負担金の金額分を固定資産の取得価額から減額し、課税所得の圧縮が可能です。

その結果、実態に即した課税が実現され、企業の税負担を平準化できます。

圧縮記帳は、単なる節税手法ではなく、会計と税務の公平性を保つための重要な制度であるといえます。

工事負担金の圧縮記帳で対象となる資産

工事負担金の圧縮記帳は、受け取った資金で取得した固定資産が実質的に自社所有となる場合に適用されます。

圧縮記帳の対象となる資産の範囲が定められており、具体的には構築物・建物付属設備・土地に付帯する工作物・電気通信設備などが含まれます。

いずれもインフラ整備に関わるもので、顧客の費用負担で取得した場合でも、企業の資産として計上される以上は課税調整が必要とされているのです。

構築物

構築物とは、土地に恒久的に設置される外構構造物であり、主にインフラ整備の一環として設置されます。

電力・ガス・通信会社などが設置主体となり、顧客や自治体の費用負担で整備されるケースが多く見られます。

代表的な構築物の例は以下の通りです。

  • 電柱
  • 引込柱
  • 共同溝(共同溝内配管)
  • 擁壁
  • 敷地外構(舗装・排水施設など)

設置後は企業の所有物として資産計上されるため、圧縮記帳の対象です。

構造物を第三者の費用負担で取得した場合でも、企業が所有するなら圧縮記帳により課税所得を適正に調整できます。

建物付属設備

建物付属設備は、建物の機能を補完する設備であり、新築・改修時に顧客負担で設置された場合、その費用に対応する部分を圧縮記帳で処理することが可能です。

企業は設備を資産計上する一方で、工事負担金相当額を帳簿上から減額する形で調整します。

よくある建物付属設備は以下の通りです。

設備分類具体例
照明設備室内・外部照明、看板照明など
空調設備エアコン、換気扇、ダクト類など
給排水設備給水タンク、排水管、ポンプなど
昇降機等エレベーター、リフト、階段昇降装置など

設備は、償却資産として扱われるため、圧縮記帳の対象となる場合があります。

土地に付帯する工作物

土地自体は非償却資産であるため圧縮記帳の対象外ですが、その土地に恒久的に設置された構造物は償却資産となり、圧縮記帳の対象となります。

顧客負担で整備された場合、工事負担金を圧縮対象として帳簿価額を減額することが可能です。

土地に付帯する構造物の例は以下になります。

  • アスファルト舗装
  • フェンス・外周柵
  • 排水溝・雨水桝
  • 車止め・車寄せ
  • 植栽スペースを囲う石垣

構造物は「構築物」や「工作物」として資産計上され、圧縮記帳により適切な減額処理を通じて税務調整が図られます。

関連記事:土地活用の法人化とは?節税効果やデメリット、年収の基準、法人設立の手順

電気・通信設備

電気・通信設備は、企業の供給網整備や顧客サービス提供のために設置されるインフラ資産です。

主に電力・通信会社が設置主体となり、設置費用の一部または全額を第三者(顧客や自治体)が負担する場合でも、企業が設備を所有すれば圧縮記帳が必要となります。

電気・通信設備の具体例は以下の通りです。

設備種類具体例
電気設備配電盤、ブレーカー、電力メーターなど
通信設備通信回線設備、制御装置など
引込設備引込線、分電盤など

設備にかかる工事負担金は、会計上の取得原価に含まれる一方、圧縮記帳により税務調整を行い、課税上の不公平を防ぐ処理が求められます。

工事負担金に圧縮記帳が必要になる具体的なケース

工事負担金は、税務上は収益(益金)として取り扱われます。しかし、企業が自社資産を取得するための原資であることがあり、課税上の不公平を避けるために「圧縮記帳」が必要となるケースがあります。

電力会社が顧客負担で配線工事を行う場合

新築住宅や工場の建設に伴い、顧客が電力会社に対して引込線や電柱の設置費用を支払うケースがあります。

この費用は電力会社にとって「工事負担金」となり、法人税法上は収益(益金)として計上されます。

しかし、設置された電柱や引込設備は電力会社が保有・管理する固定資産であり、工事負担金はその取得費用の一部にすぎません。

よって、通常の収益課税では実態と乖離し、税負担が増加する恐れがあります。

このようなケースでは、工事負担金に相当する金額を資産の取得価額から減額する「圧縮記帳」を行うことで、課税所得を調整できます。

ガス会社が顧客負担でガス管を設置する場合

住宅地の新規開発や分譲地整備において、顧客がガス導管の敷設費用をガス会社に支払うことがあります。

この場合も、受け取った金額は収益として益金に算入されますが、ガス管などの設備はガス会社が所有する固定資産です。

つまり、企業が自らの資産を整備するために顧客から受け取った資金であるのに、その資金が「収益」として課税されてしまいます。

圧縮記帳を適用すれば、受け取った工事負担金分を取得原価から控除でき、結果的に法人税上の課税を繰延べることが可能です。

地方自治体が道路工事で上下水道管の移設を行う場合

地方自治体が都市整備や道路拡張工事を行う際、上下水道管などのインフラ設備を移設する必要がある場合があります。

このとき、上下水道事業者が移設工事を行い、費用を自治体が負担するケースがあります。

上下水道会社は、自治体から受け取った費用を収益として計上する必要がありますが、移設された設備は引き続き同社の所有資産です。

したがって、このケースでは、自社資産の取得にかかる補填を受けた形であり、そのまま収益課税するのは適切ではありません。

圧縮記帳により、設備取得価額から工事負担金分を控除し、法人税法上の課税所得を調整することで、実態に即した処理が可能となります。

関連記事:公共工事とは?民間工事との違いや対象となる工事の具体例、受注するメリット・デメリットを解説

工事負担金の圧縮記帳の計算・仕訳方法

工事負担金に関する圧縮記帳を適切に行うためには、2つの方式から選択する必要があります。「直接減額方式」と「積立金方式」です。選択した方式によって会計処理や税務処理が大きく異なるため、正確な理解が必要です。

直接減額方式

直接減額方式は、受け取った工事負担金の金額を、資産の取得価額から直接控除するシンプルな方法です。

控除後の金額が減価償却の基礎となるため、会計処理が一度で完結しやすいのが特徴です。

ただし、法人税の申告にあたっては「圧縮額等の損金算入に関する明細書(別表13)」を税務署に提出する必要があり、手続き上の整備が求められます。

【直接減額方式の仕訳例】

前提条件
  • 工事負担金の受取額:500万円
  • 建物附属設備の取得価額:1,200万円

◼︎ 工事負担金の受領の勘定科目

借方金額貸方金額
現預金5,000,000雑収入5,000,000

◼︎ 固定資産の取得の勘定科目

借方金額貸方金額
建物附属設備12,000,000現預金12,000,000

◼︎ 圧縮仕訳(取得価額からの減額処理)の勘定科目

借方金額貸方金額
圧縮損5,000,000建物附属設備5,000,000

上記処理により、工事負担金の受取額500万円は、圧縮損により相殺され、設備の帳簿価額は1,200万円から700万円に圧縮されます。その結果、減価償却費も減少します。

積立金方式

積立金方式では、受け取った工事負担金を直接控除せず、「圧縮積立金」として別勘定に振り替えたうえで、一定期間内に計画的に取崩しを行います。取崩しはその資産の耐用年数に応じて行います。

この方式は、会計上の取得価額を変えずに、税務上の調整を積立金で対応できるため、企業会計税務会計を分離したい場合に適しているのです。

【積立金方式の仕訳例】

前提条件
  • 工事負担金の受取額:500万円
  • 建物附属設備の取得価額:1,200万円

◼︎ 工事負担金の受領の勘定科目

借方金額貸方金額
現預金5,000,000雑収入5,000,000

◼︎ 固定資産の取得の勘定科目

借方金額貸方金額
建物附属設備12,000,000現預金12,000,000

◼︎ 積立金の設定(当期末)の勘定科目

借方金額貸方金額
繰越利益剰余金5,000,000圧縮積立金5,000,000

◼︎ 積立金の戻入(毎期100万円ずつ耐用年数5年で取崩す場合)の勘定科目

借方金額貸方金額
圧縮積立金1,000,000繰越利益剰余金1,000,000

この方式では、帳簿上の価額は1,200万円のままで、税務申告上のみ課税所得を調整するという特徴があります。

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