- 作成日 : 2025年9月9日
ソフトウェアは圧縮記帳できる?要件や仕訳方法・注意点について解説
業務の効率化や生産性向上のツールにはさまざまなものがあります。機械や設備、車両のような有形のものではなく、ソフトウェアのような無形資産もそのひとつです。
補助金や保険金を使ってソフトウェアを導入した際、税負担を緩和できる圧縮記帳は適用できるのでしょうか。この記事では、ソフトウェアの圧縮記帳や仕訳の仕方、注意点について解説します。
目次
圧縮記帳とは
圧縮記帳とは、補助金や保険金などを使って固定資産を取得した際に、その年度の税負担を緩和できる制度です。
通常、補助金や保険金などは「益金」として収益に算入されるため、その分だけ課税所得が増えて税負担が増加してしまいます。そこで、圧縮記帳では受け取った補助金などのうち、固定資産の取得に充てた金額を「圧縮損」として損金に計上します。そして、課税対象となる所得を減らし、税金の負担を将来に繰り延べるのです。
これにより、補助金などを受け取った年度の税負担が緩和されます。一時的な多額の課税を避けることで、企業の資金繰りにも好影響をもたらします。
圧縮記帳についてより詳しく知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
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ソフトウェアは圧縮記帳の対象になる
ソフトウェアは、圧縮記帳の対象になります。会計上、ソフトウェアが「無形固定資産」に該当するためです。ソフトウェアは建物や車両といった有形の固定資産と同じく固定資産とみなされるため、補助金や保険金などを使って取得したものであれば、圧縮記帳の対象となります。
会計ソフトや受発注ソフト、セキュリティ関連ツール、業務を自動化するRPAツールなどを補助金・保険金でなんらかのソフトウェアを導入した際は、圧縮記帳を活用して税負担の緩和を検討しましょう。
圧縮記帳の対象になるソフトウェア導入の補助金
ソフトウェアを導入する際に活用でき、圧縮記帳の対象にもなる補助金として、この記事では、対象となる2つの補助金を紹介します。
- IT導入補助金
- 人材確保等支援助成金
補助金自体について理解を深めたい人は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:助成金の種類とは?支給要件やおすすめの助成金を紹介
IT導入補助金
ソフトウェアを導入する際は、IT導入補助金の活用を検討しましょう。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者等の労働生産性向上を目的として、業務効率化やDX等に向けたITツール(ソフトウェア、サービス等)の導入を支援する補助金です。申請の際は、中小企業・小規模事業者などの補助金を申請する事業者が、IT導入補助金事務局に登録された「IT導入支援事業者」とパートナーシップを組む必要があります。
補助率は、導入するITツールの種類などにもよりますが、原則対象経費の1/2もしくは2/3以内です。
人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、魅力ある雇用環境を整備することで、人材の確保・定着を図る事業主を支援する制度です。助成金を利用して業務負担軽減につながる機器等を導入し、離職率の低下に取り組んだ場合に支給されます。
現在提供されている「雇用管理制度・雇用環境整備助成コース」では、雇用環境整備の一環としてソフトウェアを導入するのも補助の対象です。ソフトウェア導入の場合、補助率は対象経費の1/2(上限150万円)となります。さらに、賃金要件を満たした場合は、補助率が62.5%(上限187万5000円)に引き上げられます。
※賃金要件:整備計画期間中に、雇用管理制度や業務負担軽減機器等の導入とあわせて、導入前と導入後の3ヶ月分の賃金を比較して5%以上の賃金増加を実現している場合に要件を満たす
ソフトウェアの圧縮記帳が適用される要件
ソフトウェアの導入で圧縮記帳を適用するには、指定の経理処理や補助金による資産の取得が必要です。また、申告時には専用の明細を添付しなければなりません。
圧縮記帳で税負担を緩和する場合は、上記の要件をよく確認しておきましょう。
指定の経理処理をしている
圧縮記帳を行うには、補助金などで取得した固定資産の取得価額から、補助金額に相当する額を圧縮損として損金に計上する必要があります。
計上方法は直接減額方式と圧縮積立金方式の2つです。いずれかの方法で適切に会計処理を行わなければ、圧縮記帳は認められません。
補助金などで資産を取得している
圧縮記帳は、国庫補助金や保険金などで資産を取得した場合に適用される制度です。国の補助金、または国庫補助金を財源として運営されている地方公共団体の補助金などであれば、圧縮記帳が認められます。
一方、自己資金のみでソフトウェアを用意したものについては、圧縮記帳の対象外です。通常どおり記帳や減価償却をしましょう。
確定申告書で圧縮記帳に関する明細書(別表)を添付している
圧縮記帳は、適切な会計処理に加えて、確定申告でも要件を満たす必要があります。申告時には、圧縮記帳の内容を記載した明細書を添付しなければなりません。
必要な書類は確定申告書の「別表13」で、受領した補助金や取得した資産、圧縮した額などを記載します。補助金や保険金など、受け取ったお金の種類によって記載する書類が異なるため、正しい様式を使うようにしましょう。
この書類が添付されていないと圧縮記帳が認められず、補助金などがそのまま課税対象となってしまいます。申告書類の提出時は別表の添付漏れがないようにしましょう。
別表についてさらに深く知りたい人は、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:法人税申告書の別表13とは?見方や書き方、注意点まで解説
圧縮記帳できない・しなくてもよいソフトウェア
ソフトウェアのなかには、圧縮記帳ができないものや、あまりする必要のないものが存在します。圧縮記帳の対象外となるソフトウェアについて解説します。
クラウド型ソフトウェア
月額や年額で利用料を支払うクラウド型のソフトウェアは、基本的に圧縮記帳の対象外です。利用料が支払手数料や通信費といった経費にあたり、資産の取得には該当しないためです。
パッケージを買い切りで購入し、PCにインストールするタイプのソフトウェアであれば資産として計上できます。しかし、オンライン上でサービスを利用するものは資産に該当しないため、補助金を使って導入しても圧縮記帳はできません。
消耗品として計上したソフトウェア
取得価額が10万円未満のソフトウェアは消耗品費として計上できます。もし消耗品費として計上した場合、そのソフトウェアは資産ではなく消耗品になります。
補助金などを受け取って資産を取得していれば圧縮記帳自体は可能ですが、そもそも資産として計上する必要がないため、消耗品費として処理したほうがスムーズに手続きを進められるでしょう。
ソフトウェアの圧縮記帳の仕訳例
圧縮記帳の処理方法は直接減額方式と圧縮積立金方式の2つです。それぞれの方法で、補助金を使ってソフトウェアを取得した場合の仕訳例を解説します。
直接減額方式の場合
直接減額方式では、資産の取得価額から圧縮損を直接差し引いて処理します。たとえば、IT導入補助金50万円を活用し、100万円のソフトウェアを取得した場合、以下のように仕訳します。
【補助金入金時】
(借方) 現金預金 500,000円 | (貸方) 補助金収入 500,000円 |
【圧縮損計上時】
(借方) 圧縮損 500,000円 | (貸方) ソフトウェア 500,000円 |
この処理により、ソフトウェアの帳簿価額は当初の100万円から50万円を差し引いた50万円となります。
圧縮積立金方式の場合
圧縮積立金方式は、補助金に相当する金額を圧縮積立金として純資産の部に計上する方法です。たとえば、IT導入補助金50万円を活用し、100万円のソフトウェアを取得した場合、以下のように仕訳します。
【補助金入金時】
(借方) 現金預金 500,000円 | (貸方) 補助金収入 500,000円 |
【圧縮積立金計上時】
(借方) 繰越利益剰余金 500,000円 | (貸方) 圧縮積立金 500,000円 |
この方法では、ソフトウェアの帳簿価額は100万円のままです。ただし、このままでは課税所得が減らないため、別途、法人税の申告書で50万円を損金算入する「申告調整」が必要になります。
ソフトウェアの圧縮記帳で注意したいポイント
ソフトウェアの圧縮記帳を行ううえでは、圧縮記帳が節税でない点や、補助金を使わずに導入したソフトウェアは圧縮記帳の対象とならないことをおさえておきましょう。また、書類漏れや備忘価額の記載についても注意が必要です。
圧縮記帳の性質を十分に理解し、適用するかどうかを判断しましょう。
圧縮記帳は節税にはならない
圧縮記帳はあくまで「課税の繰り延べ」であり、節税対策にはなりません。補助金を受け取った初年度の税負担を将来に繰り延べて緩和することはできますが、将来にわたって支払う税金の総額は、圧縮記帳をしなくても変わらないのです。
圧縮記帳の適用は任意です。資金繰りに余裕がある場合は、無理に適用しなくてもよいかもしれません。
通常購入したソフトウェアは圧縮記帳できない
圧縮記帳を行うには、補助金や保険金といった外部からの資金を使って資産を取得する必要があります。自社の経費を支出してソフトウェアを導入した場合は圧縮記帳の対象とはならず、通常の減価償却処理を行います。
ソフトウェアを導入するなら、IT導入補助金のような制度を活用して、支出をできる限り少なくしましょう。
書類の漏れがあると圧縮記帳が認められない
圧縮記帳を適用するには、確定申告で「別表13」を添付して申告しなければなりません。この書類を添付し忘れると、圧縮記帳が認められない可能性が高いため、提出前には忘れずに確認してください。
税理士と連携しながら必要な内容を記載し、書類を確実に添付したことを確認したうえで、申告を完了するようにしましょう。
圧縮後は最低でも備忘価額1円を残しておく
資産の価額を圧縮する際は、全額を圧縮して取得価額を0円にすることはできません。これは、法人税法施行令第93条で定められています。
法第四十二条、第四十四条から第四十七条まで、第四十九条又は第五十条(圧縮記帳)の規定の適用を受ける資産については、これらの規定の適用によりその帳簿価額が一円未満となるべき場合においても、その帳簿価額として一円以上の金額を付するものとする。
そのため、圧縮後の帳簿価額は、少なくとも備忘価額として、1円を必ず帳簿に残しておかなければなりません。備忘価額として処理したことを明記しておけば、後から帳簿を見返したときも、その資産が存在することを明確に把握できます。
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