• 作成日 : 2025年8月19日

ファームバンキングとは?インターネットバンキングとの違いや代替サービスを解説

ファームバンキングは、企業のパソコンと銀行を専用回線で接続し、振込や入出金確認などの取引を完結させる仕組みです。インターネットバンキングとは異なり、業務ソフトとの連携や安定した通信環境に適しており、かつて多くの企業に利用されてきました。しかし現在では、通信回線の終了やサービス見直しにより、代替手段への移行が進んでいます。本記事では、ファームバンキングの仕組み、特徴、導入方法、そして代替サービスについてわかりやすく解説します。

ファームバンキングとは

ファームバンキングは、企業が自社のパソコンや業務システムから銀行の口座情報にアクセスし、振込や入出金の確認を行えるサービスです。通信には専用回線(ISDN回線など)を使用し、セキュリティを確保しながら業務処理を効率化できます。英語表記で「FB」と略されることもあります。

1990年代以降、多くの企業が銀行窓口での手続きを減らすために導入しました。近年はインターネットバンキングに移行する企業も増えましたが、業務ソフトとの親和性や安定した通信環境を重視して、現在でも一定数の企業がファームバンキングを使っています。

ファームバンキングでできること

ファームバンキングでは、次のような銀行取引を会社のパソコンから直接行えます。

  • 振込・振替処理
    企業の経理ソフトから連携し、給与や支払代金を一括で振込できます。個別入力の手間が省けます。
  • 残高照会・入出金明細の取得
    日々の残高や過去の入出金記録をオンラインで確認できます。資金繰りや月次処理に役立ちます。
  • データ連携
    財務会計ソフト給与計算ソフトと直接連携し、仕訳データの自動取り込みが可能です。

ファームバンキングを利用するメリット

ファームバンキングの導入により、銀行とのやりとりがシステム上で完結するようになります。特に以下の3つの点で、業務の効率化に寄与します。

銀行窓口に行く手間が不要になる

振込や照会をオフィス内で完了でき、外出の時間が削減されます。社員の負担を軽減できます。

ミスの少ない一括処理ができる

複数の取引を一括で処理できるため、手入力による誤りのリスクを減らせます。特に給与振込や仕入れ支払いなど定期的な処理に向いています。

業務ソフトと連携しやすい

多くの会計・給与ソフトと連携するよう設計されており、仕訳や帳簿への反映がスムーズに行えます。

このような点から、手作業の多い中小企業にとって、ファームバンキングは作業時間の短縮や人為的ミスの防止に役立つ手段となります。

料金や手数料について

ファームバンキングの利用には、以下のようなコストがかかる場合があります。

初期費用

契約時に専用ソフトの購入費用や設定費用がかかることがあります。費用は数万円〜十数万円と銀行や仕様により異なります。

月額料金

月々の基本利用料が必要になることが多く、相場は1,000円〜3,000円程度です。

通信費用

ISDN回線などの専用回線を利用する場合、通信回線の月額費用が発生します。これも回線契約内容により異なります。

振込手数料

ファームバンキング経由でも、振込には通常の手数料がかかります。ただし、インターネットバンキングに比べてやや高めに設定されている場合もあります。

ファームバンキングとインターネットバンキングとの違い

ファームバンキングとインターネットバンキングは、どちらも銀行取引をパソコンで行える仕組みですが、通信方法や使い勝手、コスト面に違いがあります。

ファームバンキングは、ISDNなどの専用回線を使用し、セキュリティが高く安定した接続が特徴です。業務ソフトと連携しやすく、大量の取引を一括処理する中小企業に向いています。一方で、導入には専用ソフトが必要で、月額料金や回線費用がかかるため、初期費用やランニングコストは高めです。

インターネットバンキングは、Webブラウザからアクセスできるため、スマートフォンやタブレットにも対応しており、柔軟に使えます。初期費用が安く、手数料も比較的低いですが、インターネット回線を利用するため、セキュリティ対策の徹底が欠かせません。

選ぶ基準は、業務量、セキュリティの重視度、コスト意識によって変わります。安定した業務連携を求める場合はファームバンキング、利便性とコスト重視ならインターネットバンキングが適しています。

ファームバンキングの導入はどう進める?

ファームバンキングを導入するには、銀行との契約、専用ソフトの用意、通信環境の整備が必要です。

銀行に相談し契約する

まずは取引のある銀行に相談し、利用したいサービス内容(振込、残高照会など)や取引量を伝えます。そのうえで、料金やサポート内容を確認し、ファームバンキングの利用契約を結びます。手数料やサポート期間もこの段階でしっかり確認しましょう。

専用ソフトと通信環境の設定

契約後、銀行から提供される専用ソフトをパソコンにインストールします。初期設定には、口座情報の登録やアクセス権限の設定が必要です。ISDN回線など専用の通信機器が必要な場合もあります。業務ソフトとの連携がある場合は、データのやり取り設定も行います。

テスト運用で動作確認

設定が完了したら、少額の振込や照会でテストを実施します。問題がなければ本番運用を開始します。会計ソフトと連携する場合は、仕訳データの取り込みが正しく行えるか確認しておきましょう。導入後も定期的なメンテナンスやバージョン確認が必要です。

ファームバンキングの取扱終了をしている銀行もある

近年、ファームバンキングを取り扱う金融機関が減少しています。特に、ISDN回線を利用する従来のファームバンキングサービスは、通信インフラの老朽化や利用者の減少に伴い、新規受付を終了したり、既存のサービス自体を終了したりする動きが見られます。例えば、NTTのISDNサービス「フレッツISDN」が2026年1月に終了するように、これに依存するファームバンキングシステムも影響を受けています。

従来のファームバンキングは専用の回線や機器が必要で導入や維持にコストがかかるため、インターネットバンキングの普及とともに敬遠されるようになりました。

そのため、新たにファームバンキングの導入を検討している企業は、利用を希望する金融機関が現在もサービスを提供しているか、また将来的にサービスが継続されるかを確認することが重要です。サービス終了の予定がある場合は、代替サービスへの移行計画も合わせて検討する必要があります。

ファームバンキングに代わるサービス

ファームバンキングに代わる方法として、銀行と直接連携できるサービスがあります。代表的なのが、法人向けインターネットバンキングとAPI連携サービスです。加えて、会計ソフトやERPとの連携、エレクトロニックバンキング(EB)も有効な選択肢です。

法人向けインターネットバンキング

「法人向けインターネットバンキング」は、ブラウザから利用できる企業専用のネットバンキングで、複数口座の一括管理、承認フロー、大量データ一括振込など、業務向けの機能が充実しています。セキュリティ面でも、ICカードやワンタイムパスワード、多要素認証などが導入されており、多くの金融機関で対応が進んでいます。

会計ソフトと連携する銀行API連携サービス

主流になりつつあるのが、クラウド会計ソフトと銀行の口座をAPIで直接接続する方法です。これにより、入出金明細をリアルタイムで取得し、仕訳データに自動反映できます。

  • 明細の自動取り込みで入力作業が不要
  • 金融機関ごとに認可を受けたAPIを利用(高いセキュリティ)
  • 税理士や経理担当者の確認作業を効率化

ERP(統合基幹業務システム)とのダイレクト連携

SAPやOracleなどのERPでは、銀行と直接データをやり取りするモジュールや仕組みが組み込まれている場合があります。特に海外送金やグループ会社間の資金移動を行う企業では、このような連携が活用されています。

  • 業務全体の一元管理が可能
  • 大企業向けに構築された高機能な連携
  • 専門的な設定と開発が必要

EB(エレクトロニックバンキング)サービス

ファームバンキングの上位概念とも言えるサービスで、銀行の専用ツールやプラットフォームを通じて企業と銀行が直接データ連携する方法です。EBサービスは、ファームバンキングより柔軟で、APIやファイル送受信(FTP等)を組み合わせた運用が可能です。

  • 独自フォーマットやカスタマイズ性が高い
  • 取引量の多い企業に適している
  • 専門知識や運用体制が必要

進化する銀行連携サービス

ファームバンキングは、企業と銀行を専用回線で結び、経理業務を効率化する手段として今も一部の企業で活用されています。

近年は、法人向けインターネットバンキングやAPI連携、EBなど、銀行と直接つながる新しいサービスも増えており、自社の業務に合った仕組みを選ぶことが、経理の効率化と正確な資金管理につながります。


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