- 作成日 : 2025年5月7日
再振替仕訳とは?期末の決算整理と翌期のやり方、仕訳例をわかりやすく解説
会計期間の終わりに行う決算整理仕訳は、その期間の財政状態を正確に示すために様々な調整が行われます。この調整の一環として行われるのが決算整理仕訳です。そして、この決算整理仕訳の一部は、翌期の会計処理を円滑に進めるために、期首に特別な処理を必要とします。それが再振替仕訳です。
本記事では、再振替仕訳とは何か、なぜそれが必要なのか、具体的な仕訳例を交えながら、わかりやすく解説します。再振替仕訳を理解することで、会計業務はよりスムーズになり、財務諸表の正確性も向上するでしょう。
目次
再振替仕訳とは?
再振替仕訳とは、決算整理仕訳を貸借反対にして行う仕訳のことです。
会計期間は通常、1年間と定められており、その期間中の企業の財政状態や経営成績を明らかにするために、期末に様々な手続きが行われます。その中でも大切なのが「決算整理仕訳」です。
決算整理仕訳とは、日々の取引を記録した仕訳帳の数値を、決算時点の正確な情報に合わせて修正する手続きのことです。 これは、現金の収支があった時期と、収益や費用が実際に発生した時期がずれている場合に、そのずれを調整するために行われます。
例えば、当期に貸付金の利息が発生しているにもかかわらず、当該利息が翌期に支払われる場合や、翌期分の保険料などの翌期の費用を当期に前払いした場合などが該当します。
このような決算整理仕訳によって、未払費用、未収収益、前払費用、前受収益といった、会計期間をまたぐ取引に関する収益や費用の繰り延べや見越し計上の処理が行われます。
そして、「再振替仕訳」とは、この決算整理仕訳によって調整された収益や費用を、翌期の期首に元の状態に戻すための仕訳のことです。
具体的には、決算整理仕訳で行った借方と貸方の科目を逆にして、同じ金額で仕訳を行います。 この処理によって、一時的に調整された勘定科目の残高がリセットされ、翌期の通常の取引処理がスムーズに行えるようになります。
再振替仕訳は、なぜ必要なのでしょうか。その理由を次に解説します。
なぜ再振替仕訳は必要なのか?
再振替仕訳を行う主な理由は、翌期における収益や費用の計上を適切に行うためです。 決算整理仕訳によって当期の損益を正しく計算した後、その影響を翌期に持ち越さないようにするために、期首に一旦元に戻す必要があるのです。
例えば、貸付金の利息に関して、期中は受け取ったタイミング受取利息で計上し、期末に未収利息を計上した場合を考えてみましょう。この仕訳によって、当期の収益は正しく把握されますが、翌期に実際に利息を受け取る際に、再振替仕訳が行われていないと、収益が二重に計上されてしまう可能性があります。
再振替仕訳を行うことで、翌期の会計処理は、あたかも期末の調整が行われなかったかのような状態で開始され、その後の取引が適切に記録できるようになるのです。
同様に、前払費用(例えば、翌期分の保険料を当期に支払った場合)を期末に繰り延べた場合、再振替仕訳を行わないと、翌期に保険料が費用として計上されなくなってしまいます。 再振替仕訳によって、前払費用を費用勘定に振り替えることで、翌期の保険料負担分を翌期の費用として計上する処理が可能になります。
再振替仕訳は、翌期の会計期間における正確な期間損益計算を行う上で欠かせない手続きなのです。
再振替仕訳を行う主なケース
再振替仕訳は、すべての決算整理仕訳に対して行われるわけではありません。主に、以下の4つの経過勘定科目に関連する決算整理仕訳に対して行われます。
- 未払費用:当期の費用ではあるものの、まだ支払いが完了していない費用(例:未払給与、未払利息)
- 未収収益:当期の収益ではあるものの、まだ代金を受け取っていない収益(例:未収利息、未収地代)
- 前払費用:翌期以降の費用を当期に支払ったもので、当期の費用から繰り延べるもの(例:前払保険料、前払家賃)
- 前受収益:翌期以降の収益を当期に受け取ったもので、当期の収益から繰り延べるもの(例:前受地代家賃、前受手数料)
また、これらの経過勘定科目を用いた仕訳以外にも、期中に費用として処理した切手や収入印紙などの未使用分を期末に貯蔵品へ振り替えた場合などにも、翌期首に再振替仕訳が行われることがあります。
再振替仕訳はいつ行う?タイミングと注意点
再振替仕訳を行うタイミングは、原則として翌会計期間の開始日、つまり「翌期首」です。 例えば、会計期間が4月1日から3月31日までであれば、決算整理仕訳は3月31日に行われ、再振替仕訳は翌日の4月1日に行われます。
このタイミングで行うことで、決算整理仕訳によって一時的に発生した勘定科目の残高を速やかに解消し、翌期の会計処理をスムーズに開始することができます。 翌期首に再振替仕訳を行うことで、あたかも前期末の調整がなかったかのような状態で、日々の取引を記録していくことが可能になります。
なお、会計ソフトによっては、決算整理仕訳と再振替仕訳を関連付けて処理できる機能が備わっている場合もあります。これにより、手作業による転記ミスなどを防ぎ、効率的に処理を行うことができます。
再振替仕訳の手順
再振替仕訳を行う手順は以下の通りです。
- 対象となる決算整理仕訳の特定: 前期の決算整理仕訳の中から、再振替仕訳が必要な仕訳を特定します。これには、主に未払費用、未収収益、前払費用、前受収益といった経過勘定科目を用いた仕訳や、貯蔵品に関する仕訳が含まれます。
- 期首日付での仕訳: 新しい会計期間の最初の日付(通常は4月1日や1月1日など)で、再振替仕訳の仕訳伝票を作成します。
- 借方と貸方の反転: 特定した決算整理仕訳の借方と貸方の勘定科目を入れ替えます。決算整理仕訳で借方にあった科目を再振替仕訳では貸方に、貸方にあった科目を借方に記入します。金額は元の決算整理仕訳と同じ金額を使用します。
- 摘要欄への記載: 再振替仕訳を行ったことがわかるように、摘要欄に「前期〇月〇日付決算整理仕訳の再振替」といった内容を記載しておくと、後で確認する際に便利です。
未払い利息の再振替仕訳例
未払い利息とは、会計期間の末日までに発生しているものの、まだ支払われていない利息のことです。例えば、3月31日を決算日とする会社が、借入金に対して10,000円の未払い利息がある場合、決算整理仕訳として以下のように計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
支払利息 | 10,000 | 未払利息 | 10,000 |
この仕訳により、当期の費用として支払利息が計上され、同時に未払利息という負債が認識されます。そして、翌期の期首である4月1日には、この決算整理仕訳を逆仕訳する再振替仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未払利息 | 10,000 | 支払利息 | 10,000 |
この再振替仕訳を行うことで、未払利息の残高はゼロになり、支払利息勘定は一時的に貸方残となります。その後、実際に利息が支払われた際には、通常の支払利息の仕訳(借方:支払利息、貸方:預金など)を行うだけで済みます。もし再振替仕訳を行わないと、翌期に利息を支払った際に、その全額が翌期の費用として計上されてしまい、前期の費用が過少に、翌期の費用が過大に計上されることになります。
未収収益の再振替仕訳例
未収収益とは、すでに提供した商品やサービスに対する対価のうち、会計期間の末日までにまだ受け取っていない収益のことです。例えば、3月31日を決算日とする会社が、5,000円の未収利息がある場合、決算整理仕訳として以下のように計上します。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
未収利息 | 5,000 | 受取利息 | 5,000 |
この仕訳により、当期に帰属する受取利息が計上され、同時に未収利息という資産が認識されます。そして、翌期の期首である4月1日には、この決算整理仕訳を逆仕訳する再振替仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
受取利息 | 5,000 | 未収利息 | 5,000 |
この再振替仕訳を行うことで、未収利息の残高はゼロになり、受取利息勘定は一時的に借方残となります。その後、実際に代金が回収された際には、通常の現預金の仕訳(借方:現金など、貸方:受取サービス料)を行うだけで済みます。もし再振替仕訳を行わないと、翌期に代金を受け取った際に、その全額が翌期の収益として計上されてしまい、前期の収益が過小に、翌期の収益が過大に計上されることになります。
前払費用の再振替仕訳例
前払費用とは、すでに支払った費用の中で、翌期以降の期間に対応する部分のことです。例えば、12月31日に翌年1月1日から12月31日までの1年分の保険料12,000円を支払って保険料として費用計上した場合、3月31日の決算日には、翌期に対応する9ヶ月分の保険料9,000円(12,000円 × 9ヶ月 ÷ 12ヶ月)を前払費用として繰り延べる決算整理仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
前払費用 | 9,000 | 保険料 | 9,000 |
この仕訳により、当期の費用となるのは3ヶ月分の保険料3,000円のみとなり、残りの9,000円は資産として計上されます。翌期の期首である4月1日には、この決算整理仕訳を逆仕訳する再振替仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
保険料 | 9,000 | 前払費用 | 9,000 |
この再振替仕訳によって、保険料勘定には翌期に対応する9,000円が計上された状態となり、翌期において保険料の費用を認識する準備が整います。もし再振替仕訳を行わないと、翌期首に前払費用の残高が残ったままとなり、翌期分の保険料が費用として認識されなくなってしまいます。
前受収益の再振替仕訳例
前受収益とは、すでに受け取った収益の中で、翌期以降の期間に対応する部分のことです。例えば、自社ビルの一部をテナントに貸していて、賃料を受け取ったタイミングで受取家賃で計上している会社において、3月1日に翌期4月分の家賃120,000円を現金で受け取った場合、3月31日の決算日には、翌期に対応する全額120,000円を前受収益として繰り延べる決算整理仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
現金 | 120,000 | 受取家賃 | 120,000 |
(3/1の仕訳) | |||
受取家賃 | 120,000 | 前受収益 | 120,000 |
(決算整理仕訳) |
この仕訳により、当期の収益となるのは0円となり、受け取った120,000円は負債として計上されます。翌期の期首である4月1日には、この決算整理仕訳を逆仕訳する再振替仕訳を行います。
借方 | 貸方 | ||
---|---|---|---|
前受収益 | 120,000 | 受取家賃 | 120,000 |
この再振替仕訳によって、受取家賃勘定には翌期に対応する 120,000円が計上された状態となり、翌期分の家賃が翌期の収益として計上されました。もし再振替仕訳を行わないと、翌期首に前受収益の残高が残ったままとなり、受取家賃の計上額を誤ってしまいます。
再振替仕訳を行う上での注意点
再振替仕訳を行う際には、いくつかの注意点があります。
まず最も大切なのは、元の決算整理仕訳の内容をしっかりと理解しておくことです。 なぜその決算整理仕訳が行われたのか、どの勘定科目がどのように影響を受けたのかを理解していなければ、再振替仕訳を正しく行うことはできません。 単に借方と貸方を逆にするだけでなく、その背景にある会計処理の考え方を理解することが大切です。
次に、勘定科目の選択です。再振替仕訳では、元の決算整理仕訳で使用した勘定科目をそのまま使用し、借方と貸方を入れ替えます。 例えば、決算整理仕訳で「費用 / 未払費用」という仕訳を行った場合、再振替仕訳では「未払費用 / 費用」となります。
また、金額についても、元の決算整理仕訳と同じ金額を使用します。 金額を間違えてしまうと、翌期の会計処理に影響が出てしまうため、慎重に確認する必要があります。
再振替仕訳は、反対仕訳の一種ではありますが、反対仕訳は必ずしも再振替仕訳だけを指すわけではありません.例えば、誤った仕訳を訂正するために行う仕訳も反対仕訳と呼ばれます。再振替仕訳は、あくまで決算整理仕訳のうち、特定の勘定科目に対して翌期首に行うもの、と理解しておきましょう。
近年では、多くの企業で会計ソフトを利用しており、再振替仕訳の処理も比較的容易に行えるようになっています。 会計ソフトによっては、決算整理仕訳の情報を引き継いで、自動的に再振替仕訳を作成してくれる機能もあります。このような機能を活用することで、人的ミスを減らし、効率的な会計処理が可能になります。
再振替仕訳を理解して、スムーズな会計業務をしよう
再振替仕訳は、決算整理仕訳によって調整された勘定科目を、翌期首に元の状態に戻すための大切な手続きです。これにより、翌期の会計処理を適切に行い、正確な財務諸表を作成することができます。未払費用、未収収益、前払費用、前受収益といった主要な項目について、再振替仕訳の仕組みと具体的な仕訳例を理解することで、日々の会計業務はよりスムーズに進むでしょう。再振替仕訳を正しく理解し、日々の会計業務をよりスムーズに進めていきましょう!
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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