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  3. 金利スワップの仕訳とは?勘定科目や会計処理を具体例でわかりやすく解説
  • 作成日 : 2025年5月7日

金利スワップの仕訳とは?勘定科目や会計処理を具体例でわかりやすく解説

企業が銀行から融資を受けるとき、将来の金利変動に備える手段として「金利スワップ」という仕組みが使われることがあります。金利スワップとは、固定金利と変動金利を交換(スワップ)することで、金利変動のリスクを軽減する金融取引の一種です。取引自体は難しく感じられるかもしれませんが、会計処理はパターンを理解すれば対応できます。

この記事では、金利スワップの基本的な仕組みから、原則的な処理における仕訳の考え方、具体的な勘定科目、実務でよく使われる仕訳例までをわかりやすく整理して解説します。

目次

  • 金利スワップとは?
    • 金利スワップの特例処理
  • 金利スワップ取引の流れ
    • ステップ1:借入契約の締結(変動金利)
    • ステップ2:金利スワップ契約の締結
    • ステップ3:金利差額の支払い(決済日ごと)
    • 実際に発生するお金の動きは?
  • 金利スワップの原則的処理における勘定科目と表示区分
    • 金利スワップに使われる主な勘定科目
    • 貸借対照表での扱い
    • 損益計算書での扱い
  • 金利スワップの仕訳の考え方
    • 1. 金利スワップは「実質的な金利調整」
    • 2. 時価評価損益は貸借対照表上「金利スワップ資産・負債」で表す
    • 3. 時価評価が必要
    • 仕訳で押さえるべき3つのタイミング
  • 5. 金利スワップの仕訳の具体例
    • 仕訳例①:変動金利を固定金利に切り替えるためにスワップ契約を締結したとき(仕訳なし)
    • 仕訳例②:変動金利より固定金利のほうが高く、差額分の支払をしたとき(スワップ差額支払)
    • 仕訳例③:固定金利より変動金利のほうが高く、差額分の受け取り(スワップ差額受取)
    • 仕訳例④:決算時に時価評価(ヘッジ会計を適用していない場合)
    • 仕訳例⑤:決算時に時価評価(ヘッジ会計を適用している場合)
  • 金利スワップ時の会計処理や仕訳のポイント
    • 1. 契約時には仕訳なしでOK
    • 2. 支払利息と受取利息の差額を正しく処理する
    • 3. 勘定科目を社内で統一しておく
    • 4. 決算前に時価評価の有無を確認する
    • 5. スワップ契約と借入金の管理をリンクさせる
  • 金利スワップの処理を迷わず進められるようにしよう

金利スワップとは?

金利スワップとは、異なる種類の金利(固定金利や変動金利)を一定期間交換する金融取引のことです。企業は、融資を受ける際に将来の金利上昇による支払利息の増加を避けるために、金利スワップ契約を使って固定金利に切り替えることがあります。

実際には、金利スワップは「元本そのもののやり取り」は行わず、「利息差額のやり取り」だけが発生するのが特徴です。

金利スワップの特例処理

企業が金利スワップをリスク回避のために使っている場合、一定の要件を満たせば特例処理を採用することができます。

この特例処理を使うことで、金利スワップ時価評価して評価差額を損益計算書に計上せず、その金銭の受払の純額等を当該資産または負債に係る利息に加減して処理することができ、将来のキャッシュ・フローと対応させて会計処理をすることが可能になります。

たとえば以下のようなケースが対象になります:

  • スワップ対象となっている借入金と、スワップ契約の想定元本が一致している
  • スワップ対象となっている借入金と、スワップ契約の利息の受払条件(利子率、利息の受払日等)及び契約期間がほぼ同一である

特例処理を使うかどうかは、会社の会計方針や、リスク管理の考え方によって異なります。なお、本記事では特例処理ではなく、原則的な処理について説明します。

金利スワップ取引の流れ

金利スワップは、企業が金融機関との間で行うデリバティブ取引の一種です。
取引の目的は、変動金利による将来の金利変動リスクを固定化することです。実際にはお金の貸し借りではなく、「利息の差額だけをやり取り」するという点が特徴です。

金利スワップがどのような仕組みで進行するのか、取引の基本的な流れを3つのステップで見ていきます。

ステップ1:借入契約の締結(変動金利)

まず、企業は銀行などの金融機関と変動金利での借入契約を結びます。変動金利とは、金利の水準が市場の動きに応じて定期的に変わる仕組みです。

たとえば、以下のような契約があるとします。

  • 借入額:1億円
  • 金利:6ヶ月ごとに見直される変動金利(例:TIBOR+0.5%)
  • 返済期間:5年間

このままでは、市場金利が上昇すれば支払利息も増えてしまうため、将来の資金負担に不安が残ります。

ステップ2:金利スワップ契約の締結

この不安を解消するために、企業は別途金利スワップ契約を結びます。

この契約では、「自分は固定金利を支払う」「相手から変動金利を受け取る」という条件を取り決めます。こうすることで、実質的に固定金利での借入を行ったのと同じような状態を作ることができます。

金利スワップ契約

企業 ─────────▶ 金融機関A(スワップ契約先)

固定金利を支払う

企業 ◀────────

変動金利を受け取る

(実際の借入は別の金融機関Bと継続)

このように、スワップ契約によって、支払利息の金額が固定化され、金利変動のリスクを回避することができます。

ステップ3:金利差額の支払い(決済日ごと)

半年ごとや年1回など、あらかじめ決められたスケジュールで、企業とスワップ先金融機関の間で金利差額のやり取りが行われます。

例を挙げてみましょう。

  • 借入の変動金利:2.0%
  • スワップ契約の固定金利:1.5%

このとき、企業は実際の借入先に対して変動金利2.0%を支払い、スワップ先から変動金利分(2.0%)を受け取りつつ、1.5%を支払うという取引を行います。

結果として、純粋に1.5%の利息を支払う構造になります。

このようにして、スワップを使うことで実質的な金利負担を固定化できます。

実際に発生するお金の動きは?

金利スワップ契約は元本のやり取りは行わず、利息の差額だけを支払うという点が大きな特徴です。

そのため、帳簿上での記録も、実際の差額支払い時や決算での時価評価など、限られたタイミングで行われます。

金利スワップの原則的処理における勘定科目と表示区分

金利スワップは、実際の元本を動かさずに金利だけを交換する取引です。しかし、会計上はきちんと帳簿に記録し、決算書にも反映する必要があります。

金利スワップは他の取引と異なり、「発生時」「決済時」「評価時」でそれぞれ使う勘定科目や処理の場所が異なります。

ここでは、金利スワップの会計処理で使われる主な勘定科目と、貸借対照表・損益計算書での表示方法を整理して見ていきましょう。

金利スワップに使われる主な勘定科目

スワップの仕訳には以下のような勘定科目がよく使われます。

  • 支払利息:変動金利の支払やスワップ差額のうち費用になる部分
  • 受取利息:スワップ契約によって受け取る金利相当分
  • デリバティブ評価益・評価損:決算時などにスワップの時価評価を行い損益に計上するときに使用
  • 金利スワップ資産/金利スワップ負債:時価評価の結果として貸借対照表に表示される科目
  • 繰延ヘッジ損益:ヘッジ会計を採用している場合、評価損益を将来に繰り延べるときに使う

会社の処理方針や契約内容により、勘定科目の名称や細かい区分は異なる場合があります。社内の勘定科目一覧や会計ソフトの科目設定と照らし合わせて確認するのがおすすめです。

貸借対照表での扱い

金利スワップ契約はデリバティブ取引であり、期末に時価評価を行う必要があります。その評価の結果が、資産または負債として貸借対照表に表示されます。

  • 時価がプラス(評価益)の場合 → 金利スワップ資産
  • 時価がマイナス(評価損)の場合 → 金利スワップ負債

また、ヘッジ会計の要件を満たしており繰延ヘッジ処理を行っている場合は、評価損益をすぐに損益計算書に反映せず、「繰延ヘッジ損益」という科目を使って、純資産の部に計上します。

損益計算書での扱い

金利スワップに関連する損益のうち、当期に確定した受払金利の差額は、損益計算書に計上します。

  • 支払利息:スワップによって実質的に支払った金利分
  • 受取利息:スワップによって実質的に受け取った金利分

また、決算時の時価評価による差損益については、次のように扱われます。

  • 通常の処理:営業外損益の区分に「デリバティブ評価益」や「デリバティブ評価損」を表示
  • ヘッジ会計適用している場合:当期の損益計算書には表示されず、「繰延ヘッジ損益」として貸借対照表の純資産の部に計上

金利スワップの仕訳の考え方

ここでは、実際の記帳に入る前に知っておきたい金利スワップの仕訳の基本の考え方を3つに分けて説明します。

1. 金利スワップは「実質的な金利調整」

スワップ契約では、固定金利と変動金利を交換するだけで、借入の元本自体が動くわけではありません。

このため、借入金の元本には影響を与えず、利息の支払い額を調整する仕訳を行います。

たとえば、以下のようなケースを考えてみましょう。

  • 実際の借入は変動金利2.5%
  • 金利スワップ契約で固定金利1.8%に切り替え
  • 半年ごとに差額を精算する

この場合、企業は銀行に対して変動金利(2.5%)を支払い、スワップ相手に対しては変動金利(2.5%)を受け取って固定金利(1.8%)を支払う構造になり、あたかも当初から1.8%の固定金利で借入をしたというような形になります。

2. 時価評価損益は貸借対照表上「金利スワップ資産・負債」で表す

金利スワップでは、利息の受け払い以外は実際のキャッシュの動きがないため契約時点では仕訳は不要です。時価評価をする際は「金利スワップ資産」「金利スワップ負債」という勘定科目を使って時価評価損益を計上します。

また、ヘッジ会計(繰延ヘッジ処理)を適用している場合は、「繰延ヘッジ損益」という科目を使い、損益を将来に繰り延べる処理をします。

3. 時価評価が必要

スワップ契約はデリバティブ契約であるため、期末になると時価評価が求められることがあります。

  • 通常の処理:評価差額を「デリバティブ評価損益」として当期の損益に計上
  • ヘッジ会計を適用する場合:評価差額は「繰延ヘッジ損益」として貸借対照表の純資産の部に計上

どちらの処理を使うかは、ヘッジ会計の要件を満たしているかどうかや会社の会計方針によって異なります。したがって、会計処理に一貫性を持たせるためには、社内で運用ルールを決めておくことが必要です。

仕訳で押さえるべき3つのタイミング

金利スワップの仕訳は、次の3つのタイミングで考えます。

タイミング会計処理の概要
契約時元本の移動はない。通常は仕訳なし
利息支払い時差額の受払に応じて「支払利息」「受取利息」を計上
決算時時価評価をし、評価損益は損益計算書に計上するか、ヘッジ会計を適用している場合は貸借対照表の純資産の部に繰延ヘッジ損益を計上

5. 金利スワップの仕訳の具体例

金利スワップの仕訳は「契約」「支払」「評価」のタイミングで異なり、ヘッジ会計の採用有無でも処理が変わってきます。ここでは、次の5つの場面での仕訳の処理方法をご紹介します。

  1. 変動金利を固定金利に切り替えるためにスワップ契約を締結したとき
  2. 変動金利より固定金利のほうが高く、差額分の支払をしたとき
  3. 固定金利より変動金利のほうが高く、差額分の受け取りが発生したとき
  4. 決算時に時価評価(ヘッジ会計を適用していない場合)
  5. 決算時に時価評価(ヘッジ会計を適用している場合)

仕訳例①:変動金利を固定金利に切り替えるためにスワップ契約を締結したとき(仕訳なし)

契約金額:1億円、期間:5年、変動金利を受け取り固定金利を支払う金利スワップ契約を締結

仕訳なし
スワップ契約自体ではお金の移動がないため、原則として仕訳は行いません。

仕訳例②:変動金利より固定金利のほうが高く、差額分の支払をしたとき(スワップ差額支払)

金利スワップ契約により、実際の変動金利より固定金利のほうが高く、差額を支払ったケース(半年分、差額100,000円)

借方(費用・資産)貸方(負債・資本)
支払利息100,000円普通預金100,000円

固定金利のほうが高いため、その差額を支払利息として費用計上します。スワップの効果で実質的に金利を固定化している状況です。

仕訳例③:固定金利より変動金利のほうが高く、差額分の受け取り(スワップ差額受取)

変動金利が固定金利を上回り、差額を受け取った場合(差額80,000円)

借方(費用・資産)貸方(負債・資本)
普通預金80,000円受取利息80,000円

企業が受け取った変動金利と支払った固定金利の差額を、営業外収益として計上します。差額がプラスであれば金利スワップ契約を締結して支払利息が減ったということとなり、このように収益が発生します。

仕訳例④:決算時に時価評価(ヘッジ会計を適用していない場合)

スワップの時価が下がり、評価損150,000円が発生した場合

借方(費用・資産)貸方(負債・資本)
デリバティブ評価損150,000円金利スワップ負債150,000円

決算時点での時価に基づいて評価損を計上します。この処理はヘッジ会計を使っていない場合に適用されます。

仕訳例⑤:決算時に時価評価(ヘッジ会計を適用している場合)

決算時、評価損150,000円を繰延ヘッジ損益で処理するケース(税効果会計は無視します)

借方(費用・資産)貸方(負債・資本)
繰延ヘッジ損益150,000円金利スワップ負債150,000円

ヘッジ会計を適用している場合、時価評価損益をその期の損益に入れず、貸借対照表の純資産の部に計上します。将来の利息支払いと対応させて損益処理するための方法です。

金利スワップ時の会計処理や仕訳のポイント

金利スワップは、契約時、支払時、決算時のそれぞれで処理が分かれるため、間違いやすいポイントや注意点を事前に押さえておくことが大切です。

1. 契約時には仕訳なしでOK

金利スワップ契約を結んだ段階では、元本の移動も利息の支払いもないため、基本的には仕訳を行いません。

2. 支払利息と受取利息の差額を正しく処理する

スワップの差額支払は、支払利息や受取利息として記帳されますが、金額の正確な把握が難しいことがあります。

契約書や明細を見ながら、変動金利・固定金利の差額を計算し、実際の支払と一致しているかを確認してから記帳しましょう。

3. 勘定科目を社内で統一しておく

「支払利息」と「スワップ支払額」など、似たような意味の勘定科目が複数存在すると、入力ミスや二重計上の原因になります。
たとえば、以下のように区分を統一しておくと実務がスムーズです:

  • スワップ差額(費用)→ 支払利息
  • スワップ差額(収益)→ 受取利息
  • 時価評価の差損益 → デリバティブ評価損益
  • ヘッジ会計を適用する場合 → 繰延ヘッジ損益

4. 決算前に時価評価の有無を確認する

スワップ契約は、会計基準上、時価評価の対象となります。

通常は決算日の市場金利に基づいて再評価し、損益または貸借対照表に反映させる必要があります。

ただし、ヘッジ会計を適用している場合には、評価損益は当期の損益に入れず、貸借対照表の純資産の部に計上します。

ヘッジ会計を採用するかどうかで、仕訳の処理も大きく変わるため、事前に会社の方針を確認しておくことが大切です。

5. スワップ契約と借入金の管理をリンクさせる

金利スワップは、もともとの借入契約とセットで管理されるべきものです。

経理担当者は、借入金の返済予定表や利息支払スケジュールとあわせて、スワップ契約の内容も一緒に管理するようにしましょう。

契約内容がズレているとヘッジ会計の要件を満たさないなど、会計処理も見直す必要が出てきます。

金利スワップの処理を迷わず進められるようにしよう

金利スワップの仕訳は、契約時・利息支払時・決算時で処理が変わるため、最初は戸惑うかもしれません。ですが、取引の流れをつかみ、使う勘定科目を社内で統一しておけば、仕訳のパターンは限られています。ヘッジ会計を使うかどうか、時価評価が必要かどうかを事前に整理し、社内でルール化しておくことで、決算処理もスムーズになります。取引の意図をしっかり理解しながら、迷わず記帳できる体制を整えていきましょう。

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