• 更新日 : 2026年2月24日

IFRS16号のリース期間は自動更新を含む?会計処理と判断基準とは

PointIFRS16号のリース期間と自動更新の判断基準とは?

IFRS16号のリース期間は、契約上の期間に加え「合理的に確実」な自動更新期間も含めて決定します。

  • 解約不能期間+行使確実な延長期間で判定
  • 高額な内部造作や移転コストが判断要素
  • 状況変化時は期中でも再評価・修正が必須

自動更新を含めると財務への影響は、契約2年を実質4年とみなした場合、負債計上額が約2倍に膨らむ試算もあり、ROA等の指標が悪化します。

「契約書上は2年契約だが、実際は自動更新で長期間使用する予定。この場合、リース期間は何年で計算すべきか?」 IFRS第16号(新リース基準)の適用や、それに追随する日本の「新リース会計基準」の導入において、「リース期間の判定」は悩みどころではないでしょうか。

結論から言えば、IFRS第16号におけるリース期間は、契約書上の期間だけでなく、実質的な使用期間(自動更新や延長オプション)を含めて判断する必要があります。

本記事では、自動更新の判断基準や具体的な会計処理、業務への影響について、実務的な観点から解説します。

IFRS第16号のリース期間とは?

IFRS第16号とは「原則すべてのリースを資産・負債計上する」基準であり、その計算基礎となるのがリース期間です。

そもそもIFRS第16号(International Financial Reporting Standard 16)とは、国際会計基準審議会(IASB)が公表したリースの新基準です。 従来の基準(IAS第17号)との最大の違いは、「借手のリースは、原則としてすべてオンバランス(貸借対照表に計上)しなければならない」という点です。

これまで「オペレーティング・リース」として、賃借料処理(オフバランス)が認められていた不動産賃貸や機器リースも、IFRS第16号では「使用権資産」と「リース負債」として計上する必要があります。このとき、「資産と負債をいくら積むか?」を決める最大の要素が「リース期間」なのです。

リース期間に含まれる3つの要素

IFRS第16号では、解約不能期間に加え、「合理的に確実」な延長期間や解約しない期間を合算します。

IFRS第16号において、リース期間が自動更新であるかどうかは、契約書に記載された期間だけでなく、延長オプションや解約オプションといった権利関係も考慮して決定されます。

以下の3つの期間を合算して決定します。

  1. 解約不能期間(Non-cancellable period)
    借手がリース契約を解約できない期間。
  2. 延長オプションの対象期間
    借手がリースを延長するオプションを行使することが「合理的に確実」である場合、その期間を含めます。
  3. 解約オプションの対象期間
    借手がリースを解約するオプションを行使「しない」ことが「合理的に確実」である場合、その期間を含めます。

つまり、契約書に「2年」と書いてあっても、実態として「10年使うことが確実」であれば、会計上は10年として計算しなければなりません。

リース期間の延長オプションとは

契約終了後も継続して使用できる権利であり、行使が確実ならリース期間に含めます。

延長オプションとは、リース契約終了時に借手の意思で契約を継続できる権利のことです。 例えば、5年間のリース契約に対して、更に2年間延長できるというオプションが付与されているケースを想定してみましょう。

  • 行使が「合理的に確実」な場合: 5年+2年=7年をリース期間とします。
  • 行使が不確実な場合: 当初の5年のみをリース期間とします。

リース期間の解約オプションとは

中途解約できる権利ですが、解約しないことが確実ならその期間もリース期間とします。

解約オプションとは、契約期間の途中で解約できる権利のことです。 IFRS第16号では、「解約オプションを行使しないこと」が合理的に確実である場合、その期間(解約可能期間)もリース期間に含めます。

  • 例: 10年契約だが、5年経過後はいつでも解約可能。
  • 判断: 5年後に解約するつもりがない(継続が確実)なら、リース期間は10年となります。
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IFRS第16号のリース期間に自動更新が含まれるケース

経済的なメリットや事業計画に基づき、「使い続けることが合理的」な場合は期間に含めます。

日本の不動産賃貸借契約でよく見られる「自動更新条項」について、IFRS第16号では以下のようなケースで「リース期間に含める(=長期契約として扱う)」と判断します。

自動更新を含めるべき判断要素

以下のいずれかに該当する場合、契約上の期間を超えて、自動更新後もリース期間としてカウントする可能性が高くなります。

  1. 重要な独自造作(内部造作)がある
    賃借物件に多額の費用をかけて内装工事や設備設置を行っており、短期間で退去するとその投資が無駄になる場合。
  2. 解約・移転のコストが莫大である
    工場の生産ラインや精密機器など、移設に莫大なコストや業務停止リスクが伴う場合。
  3. 立地の重要性が極めて高い
    その場所で営業することがブランド維持や集客に不可欠であり、代替物件が見つからない場合。
  4. 市場価格より有利な条件である
    更新後の賃料が市場相場よりも著しく安く設定されており、更新しないと経済的に損をする場合。
  5. 過去の実績
    過去に何度も自動更新を繰り返しており、今回だけ更新しないという特段の事情がない場合。

具体例)製造業の工場リース

契約内容: 期間2年(特段の申し出がない限り2年ごとの自動更新)

実態: 工場内に大型プレス機を設置しており、移設には数億円かかる。また、今後10年間の生産計画がこの工場を前提に組まれている。

判定: 2年ごとの更新だが、実質的には10年以上使用することが「合理的に確実」であるため、リース期間は10年(または設備の耐用年数)として見積もる。

IFRS第16号のリース期間に自動更新が含まれないケース

技術の陳腐化が早い、または代替が容易な資産の場合、更新期間は含めません。

契約書に自動更新条項があっても、「借手が自動更新を行わない(更新を止める)ことが合理的に確実」あるいは「更新するかどうかが不透明」な場合は、更新期間を含めません。

自動更新を含めない(短期間とする)判断要素

以下のような状況では、自動更新を見込まず、解約可能時点までの期間をリース期間とします。

  1. 技術的陳腐化が激しい
    PC、サーバー、スマホなど、数年で性能が古くなり、新しいモデルへの入れ替えが前提となっている場合。
  2. 代替資産が容易に手に入る
    社用車や標準的なオフィス機器など、他社製品への乗り換えコストが低く、いつでも契約を切り替えられる場合。
  3. 事業の一時的な利用である
    期間限定のプロジェクトチーム用オフィスや、仮設倉庫など、使用期限が決まっている場合。
  4. 貸手に強力な解約権がある
    貸手(オーナー)の都合でいつでも契約を終了させられる条項があり、借手が継続使用をコントロールできない場合。

具体例)IT企業の社用PCリース

契約内容: 期間3年(その後は1年ごとの自動更新)

実態: 会社のITセキュリティポリシーにより、PCは4年ごとに最新機種へ入れ替える規定がある。

判定: 契約上の自動更新はあるが、会社の規定により更新せずに返却・新規契約を行うことが確実であるため、リース期間は3年(または最大4年)として見積もる。

IFRS第16号の自動更新に関する判断フロー

実務上は、すべての契約を一つひとつ詳細に検討するのは困難な場合があります。以下のようなフローを用いて、重要性に応じた判断を行うことが推奨されます。

判断ステップ検討内容結果
STEP 1契約書に自動更新条項があるか確認ない場合は基本期間のみ
STEP 2更新しない場合に「多額のコスト」や「事業支障」が出るか出るなら「含める」
STEP 3過去の更新実績や事業計画と整合するか整合するなら「含める」
STEP 4経営陣による更新の意思決定があるか意思があれば「含める」

IFRS16号のリース期間の自動更新に関する会計処理とは?

リース期間が決定すると、それに基づいて使用権資産とリース負債を計算します。期間が長くなるほど、負債計上額は大きくなります。

会計処理のシミュレーション

IFRS第16号においては、リース期間を「2年」と見るか「5年(自動更新込み)」と見るかで、使用権資産・リース負債の計上額や、毎期の費用計上額が変わります。

ここでは、同一の契約で判断が分かれた場合の2つのパターンを比較します。

【前提条件】
  • 契約: 期間2年(自動更新条項あり)
  • 年間リース料: 1,000万円(後払い)
  • 割引率: 2%

【比較結果:資産・負債計上額の違い】

以下の通り、リース期間の判定によって、B/Sに計上される金額に約2倍の開きが生じます。

判定パターンリース期間リース負債・資産の計上額影響度
判定A2年(更新なし)19,415,600円小さい
判定B4年(更新あり)38,077,300円大きい(約2倍)

自動更新を含めない場合(2年)

更新の可能性が低いと判断し、契約期間通りの「2年」で計算するケースです。

1. リース開始時の仕訳(判定A)

2年分のリース料の現在価値(約1,942万円)を計上します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
使用権資産19,415,600リース負債19,415,600

2. 支払時(1年目)の仕訳(判定A)

支払額1,000万円のうち、利息負担は少なくなります。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
リース負債9,611,688現金預金10,000,000
支払利息388,312

※補足:

リース負債残高(1,941万)× 2% = 利息(約38.8万円)

自動更新を含める場合(4年)

更新が確実と判断し、長期の「4年」で計算するケースです。

1. リース開始時の仕訳(判定B)

4年分のリース料の現在価値(約3,808万円)を計上します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
使用権資産38,077,300リース負債38,077,300

2. 支払時(1年目)の仕訳(判定B)

支払額は同じ1,000万円ですが、負債残高が大きいため、利息部分が増加します。

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
リース負債9,238,454現金預金10,000,000
支払利息761,546

※補足:

リース負債残高(3,807万)× 2% = 利息(約76.1万円)

3. 決算時(減価償却)の仕訳(判定B)

借方科目借方金額貸方科目貸方金額
減価償却費9,519,325使用権資産累計額9,519,325

※補足:

取得価額(3,807万円)÷ 4年

このように、「判定B(長期)」を採用すると、負債と資産が大きく膨らむため、自己資本比率やROA(総資産利益率)を押し下げる要因となります。

実務担当者は、安易に「更新あり」と判断せず、本当にその期間が必要かどうかを慎重に見極める必要があります。

IFRS第16号のリース期間の自動更新に関する注意点

「合理的に確実」の根拠となる客観的な証拠(エビデンス)を残すことが必須です。

IFRS第16号のリース期間における自動更新の判断は、借り手側が将来の契約延長の可能性を「合理的に確実であると判断するかどうか」が重要となります。 監査対応においては、「なぜこの期間にしたのか?」という問いに対し、担当者の感覚ではなく客観的な根拠を示す必要があります。

  • 事業計画書・稟議書: その拠点を長期的に使用する計画が記載されているか。
  • 過去の実績データ: 類似資産の平均使用年数は何年か。
  • 違約金の規定: 契約書上の解約ペナルティ条項。

また、判断時点での状況が変化した場合には、リース期間を再評価し、使用権資産やリース負債の残額を修正しなければなりません。

IFRS第16号のリース期間の変更(再評価)とは

状況変化により期間の見積もりが変われば、期中であっても再計算(リメジャーメント)が必要です。

リース期間の変更(再評価)とは、契約条件や借り手側の判断が変化した場合に、リース期間やリース料を再度見積もりするプロセスです。

  • 当初は更新しない予定だったが、事業好調により延長オプションを行使することにした。
  • 逆に、撤退が決まり、解約オプションを行使することにした。

このような状況変化が生じた時点で、残存リース期間を見直し、リース負債と使用権資産を再計算(修正仕訳)する必要があります。

IFRS16号のリース期間判定や会計処理に向けた実務の課題

IFRS16号や新リース会計基準では、自動更新を含めたリース期間の判定や複雑な会計処理が求められ、実務への影響が懸念されます。株式会社マネーフォワードは、企業のバックオフィス担当者を対象に新リース会計基準に関する調査を実施しました。

契約の洗い出しとシステム対応の必要性

調査によると、新リース会計基準への対応に負担を感じている割合は合わせて約8割でした。その中で負担を感じる業務として特に多かったのはリース契約の洗い出し・分類・整理であり、多くの企業が対応初期段階の実務に課題があります。

自動更新の有無やリース期間を正しく判定するには契約内容の正確な把握が不可欠ですが、リース契約情報の管理における主な課題は紙での管理でした。また、今後のリース負債の計算や残高管理について、新たにシステムを導入・入れ替えすると回答した割合は約4割でした。複雑な判定や会計処理を適切に行うためには、紙や手作業に頼った管理から脱却し、早期の契約整理とシステムの活用を進めることが重要です。

出典:マネーフォワード クラウド、新リース会計基準への対応負担や課題【新リース会計基準に関する調査】(回答者:現在の勤務先で「経理部門」「情報システム部門」「総務部門」「法務部門」「経営企画部門」のいずれかに所属する方(個人事業主を除く)660名、集計期間:2025年3月11日(火)~3月17日(月))

IFRS第16号ではリース期間を正しく把握することが重要

リース期間を正確に判定することは、コンプライアンスだけでなく、適切な経営管理につながります。

リース契約に自動更新や延長オプションが含まれている場合、IFRS第16号ではそれらをリース期間に含めるかどうか慎重に判断し、会計処理に反映する必要があります。 自動更新を見落とすと、使用権資産やリース負債を過少計上してしまい、財務諸表の信頼性を損なうおそれがあるためです。

また、定期的に社内外の状況を見直すことで、実態に合ったリース期間へ修正でき、適切な財務報告と経営管理が行いやすくなります。リース契約の更新時や事業方針の変化に伴い、早めの段階でリース期間の再評価を行うことが重要です。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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