• 作成日 : 2025年3月28日

IFRS第16号のリース期間に自動更新は含まれる?延長オプションもわかりやすく解説

IFRS第16号においては、リース契約の契約期間終了後に自動で更新が行われるかどうかが重要な争点となります。この記事では、延長オプションや解約オプションがある場合のリース期間の定義、会計処理、注意点についてわかりやすく解説します。

IFRS第16号のリース期間とは

IFRS第16号において、リース期間が自動更新であるかどうかは、単に契約書に記載された期間だけでなく、延長オプションや解約オプションといった権利関係も考慮して決定されます。リース期間を正しく把握することは、リース負債や使用権資産の計上額に大きく影響します。

リース期間の定義

IFRS第16号におけるリース期間には、以下の期間を含むとされています。

  • リース契約の解約ができない期間
  • リースの延長オプションや解約オプションを行使することもしくはしないことが合理的に確実であると借り手側の企業が判断している期間

つまり、借り手側の企業が延長オプションを行使する可能性が高い、または解約オプションを行使しない可能性が高いと合理的に判断される場合、その期間までリース期間として計上しなければなりません。実際の使用期間に即した会計処理が求められるのです。

リース期間の延長オプションとは

リース期間の延長オプションとは、リース契約終了時に契約を継続できる権利のことです。

例えば、5年間のリース契約に対して、更に2年間延長できるというオプションが付与されているケースを想定してみましょう。IFRS第16号では、借り手側がこの延長オプションを行使すると合理的に確実であると判断している場合、その追加期間もリース期間に含める必要があります。一方で、継続の可能性が低い場合は含めません。

リース期間の解約オプションとは

リース期間の解約オプションとは、リース契約の期間途中で契約を解約できる権利のことです。

IFRS第16号では、借り手側が解約オプションを行使する可能性が高いかどうかを検討し、行使すると確信する場合、その期間までをリース期間として考慮します。

解約時に大きなペナルティが発生するなど、実際には解約しにくい場合は、解約オプションがあってもリース期間に含める可能性が高い点に留意が必要です。

IFRS第16号のリース期間に自動更新が含まれるケース

リース契約によっては、期間満了時に合意をしなくても、そのまま契約が継続される「自動更新」の条項が組み込まれていることがあります。

IFRS第16号では、この自動更新条項が契約上有効で、借り手がその自動更新による継続を行うことが合理的に確実であると判断される場合は、その自動更新期間をリース期間に含める必要があります。

例えば、契約書に「更に3年間自動的に契約が延長される」などの記述がある場合が該当します。ただし、過去の類似契約では常に途中解約しているなど、借り手が自動更新を避けるための手続きを確実に行う見込みがある場合は、延長期間を含めないこともあります。借り手は契約の実態や過去の実績、経済的インセンティブを生じさせる要因などを考慮して、自動更新の有無を判断します。

IFRS第16号のリース期間に自動更新が含まれないケース

自動更新条項が契約上存在していても、「借り手側が自動更新を行わないことが合理的に確実である」場合は、その更新期間をリース期間に含めないことがあります。

例えば、リース物件の老朽化や技術的な陳腐化が進み、契約満了後に使い続けるメリットが低い場合や、契約が終了する時点で代替手段を確保することがすでに決まっている場合などが該当します。

また、自動更新自体が法的に無効、もしくは実際には適用されていないと判断される場合も、リース期間に延長分を含めません。自動更新が行われる可能性がどの程度あるのかを企業が合理的に判断することが重要です。合理的判断には、過去の契約更新実績やコスト比較など多角的な分析が含まれます。

IFRS第16号のリース期間の自動更新に関する会計処理

IFRS第16号においてはリース期間に自動更新が含まれる場合と含まれない場合で、使用権資産、リース負債の計上額や償却・利息費用の計上タイミングが変わります。以下では、それぞれの具体的な会計処理を解説します。

リース期間に自動更新が含まれる場合の会計処理

自動更新が含まれる場合、企業はリース期間を延長オプションの行使期間まで含めて計算します。具体的には、延長後の期間を含むリース料の合計を現在価値に割り引き、リース負債として計上するとともに、同額を使用権資産として認識します。その後、リース負債は金利による増加(利息費用)と支払いによる減少を通じて償却され、使用権資産は定額法などで減価償却されます。

リース期間に自動更新が含まれない場合の会計処理

自動更新が含まれないと判断した場合、リース期間は基本契約の期間あるいは解約不可となっている期間に限定されます。そのため、計上するリース負債と使用権資産の金額は契約書に明示された期間分に基づいて算定されます。

もし後日、延長オプションを実際に行使することになった場合や自動更新が実質的に生じる状況になった場合には、IFRS第16号の規定に従ってリース期間を再評価し、会計処理を修正することが必要です。

IFRS第16号のリース期間の自動更新に関する注意点

IFRS第16号のリース期間における自動更新の判断は、借り手側が将来の契約延長の可能性を「合理的に確実であると判断するかどうか」が重要となります。これを裏付ける要素として、過去の実績、物件の使用状況、契約違約金やペナルティの有無などが挙げられます。

また、判断時点での状況が変化した場合には、リース期間を再評価し、使用権資産やリース負債の残額を修正しなければなりません。誤った期間設定は財務諸表に大きな影響を与えるため、定期的な検証と社内承認フローの整備が求められます。

IFRS第16号のリース期間の変更(再評価)とは

リース期間の変更(再評価)とは、契約条件や借り手側の判断が変化した場合に、リース期間やリース料を再度見積もりするプロセスです。延長オプションを行使すること、または解約オプションを行使しないことが合理的に確実になったといった状況であれば、リース負債と使用権資産を再度計算し直す必要があります。

IFRS第16号ではリース期間を正しく把握することが重要

リース契約に自動更新や延長オプションが含まれている場合、IFRS第16号ではそれらをリース期間に含めるかどうか慎重に判断し、会計処理に反映する必要があります。自動更新を見落とすと、使用権資産やリース負債を過少計上してしまい、財務諸表の信頼性を損なうおそれがあるためです。

また、定期的に社内外の状況を見直すことで、実態に合ったリース期間へ修正でき、適切な財務報告と経営管理が行いやすくなります。リース契約の更新時や事業方針の変化に伴い、早めの段階でリース期間の再評価を行うことが重要です。


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