- 作成日 : 2025年3月19日
【はじめての経理担当者必見】経理・会計・財務の違いを比較して解説!
経理と会計、財務は会社のお金に携わるポジションという共通の業務ではありますが、具体的にどうちがうのかが分かりにくいという人も多いでしょう。
本記事では、経理・会計・財務のそれぞれの違いを目的、役割、主な業務内容まで解説します。
さらに、よくある疑問も併せて解決するので、はじめて経理を担当する人はぜひチェックしてみてください。
目次
経理・会計・財務の違いとは?
経理・会計・財務それぞれの概要と主な業務内容や役割は以下の通りです。
概要 | 主な業務内容 | 役割 | |
---|---|---|---|
経理 | 過去のお金の動きを記録する |
など | 会社のお金の流れを管理・把握しておくことで、会社がこれからどう未来へ投資するかという将来の指標を決める基盤を管理する |
会計 | 資産の出入りを全面的に管理する | 目的や用途、報告先によって「管理会計」と「財務会計」に2別される | 「管理会計」では会社内のお金を管理し、経営状況を把握する。 「財務会計」では企業活動の成果報告に必要なデータを管理・集計する。 |
財務 | 未来のお金を計画する |
| 事業計画にもとづいて融資・出資に向けて段取りを組む。 |
経理は過去のお金、会計は全体的なお金の流れ、財務は未来のお金と、それぞれ管理する範囲や役割に違いがあることがわかります。
それぞれが密接に関連している業務になりますが、業務の目的が異なるため、企業や組織によっては、部門ごとにわかれているケースもあります。
経理の業務内容
経理の主な業務内容は、会社で発生した日々のお金の動きを記録し、管理することです。会社のお金の管理や、仕訳の入力、請求書や決算書などの書類作成も業務に含まれます。
それぞれ具体的な業務に焦点を当てると、3つに分けて考えられます。
現金・預金の管理
業務上の取引で、会社のお金に動きがあれば領収書などをもとに、随時現金出納帳その他の帳簿に記録します。記録したら、会社の口座残高と出入りしたお金の記録に齟齬がないかを確認します。
仕訳の入力と管理
お金の動きを仕訳帳や会計ソフトに仕訳として記録し、管理します。仕訳には、勘定科目や摘要、金額、取引日などを記載します。
集計と書類作成
請求書や決算書などの書類の作成も重要な業務のひとつです。
決算書は、毎月の取引をまとめた「月次決算書」と、年間を通した決算のまとめを作成する「年次決算書」の2種類あります。「年次決算書」は次年度の会社の経営指針を決める重要な資料となります。
経理の基本情報と特性
経理業務の特性は会社のお金を非常に細かく記録・管理・把握していることです。経理は「経営管理」の略称で、会社が経営を継続していくためになくてはならない重要な管轄です。
経理は、会社のお金の出し入れを認可する部署でもあり、お金の流れのすべては経理を通して管理されます。組織として会社のお金の管理部門を一つにまとめることで円滑で合理的な管理体制を整えているといえるでしょう。
また、経理業務は非常に細かく正確な計算が必須です。経理担当者は、計算が得意で、細かい作業が苦にならないタイプの人が向いています。
また、イレギュラーな対応が必要となった場合に、過去の事例や法令を照合し、ベストな対処を考えるために論理的な思考力が求められます。さらに、他部署の社員にも経費申請の依頼をするなど対人コミュニケーション能力も備わっているとさらに適任といえるでしょう。
経理の目的
経理業務を行う目的は会社の売上や課題など、進捗現状や事業実績を経営層に数値データとして提示することです。そのために各部門の会計情報および、会社全体の会計情報を集計・管理しなければなりません。
経理の役割
経理業務の役割は、会社のお金を正確に管理・把握することです。日々の細かい作業の積み重ねが、会社の事業記録となり、将来の事業計画の指針の基盤を作ります。
そのため、少しでも相違・齟齬があれば企業活動全体に影響が出る可能性も高いです。慎重に、かつ正確な記録が求められます。
経理の具体的な業務内容
経理の業務は、日次・月次・年次の3つに分けられます。
それぞれの具体的な業務は、以下の表のとおりです。
日次業務 | 毎日の会社のすべての取引を記録する 請求書の作成・発行・管理、支払業務、帳簿への記録、伝票作成など仕訳作業など | |
---|---|---|
| ||
月次業務 | 毎月、日次経理の集計および齟齬がないかの確認のほか請求書への支払い対応などを行う 月末に帳簿を締めて収入や支出のまとめ作業、給与や保険、経費の支払い業務など | |
年次業務 | 年に一度、日次・月次経理を集計し、年次決算報告書を作成する その他、株主総会の開催や税務署の調査対応なども含む | |
|
日々行う経理業務で差異が起きてしまうと、月次業務や年次業務に大きな影響が出ます。
経理では日々の細かく正確な作業が求められます。
経理は月末・月初と12~1月が繁忙期
経理業務は、月末と月初、また多くの企業で12~1月にかけて多忙を極めます。
月次業務において、月末に請求書の発行や経費精算、月ごとの売上の集計作業などが集中し、月初では締め処理や帳簿作成をする必要があります。
さらに年末にさしかかると、日次・月次の通常業務に加えて年末調整や法定調書の作成および提出や償却資産税の申告などが集中します。膨大な業務量をこなさなければいけない12~1月は経理にとって繁忙期となります。
月末・月初・12~1月の繁忙期を乗り越えるためには日頃から計画的に業務を遂行し、業務効率化をしておくことが必要です。併せて適切なスケジュール管理も徹底するといいでしょう。
会計の業務内容
会計の主な業務内容は、会社のお金や備品などの資産の出入りを全般的にまとめ、管理することです。
具体的には「管理会計」と「財務会計」の2種類に分類され、それぞれに役割や目的が異なります。
また、財務会計の中に「経理」が存在し、全体の会計と財務が連動した体制となっているので組織の中の位置関係に注意しましょう。
会計の基本情報と特性
会計業務は売上・経費の支出などの記帳など「経理」と重複する点も見られますが、基本は会社のお金や備品などの資産となるものすべての出入りを記録し、管理することにあります。
会計業務は「管理会計」と「財務会計」のふたつから構成されます。それぞれ役割や担当するお金の種類が異なるため、整理しましょう。
管理会計は、自社の経営を管理・把握するために行う社内向けの会計業務を指します。数値化した資金の動きをもとに現時点の経営状況を把握し、経営陣にデータを提示するために作成されることが目的です。
当初の事業計画と実績を照合し、目標値までの乖離が大きくあれば、軌道修正を適宜行う必要性を考えます。
財務会計は、社外の企業活動の成果報告を指します。
企業活動の結果は、以下の項目で「財務三表」にまとめられます。
- 貸借対照表(B/S)
- 損益計算書(P/L)
- キャッシュフロー計算書
「財務三表」は会社の業績や資金状況を社外の利害関係者に報告する目的で作成されます。
この場合の社外の利害関係者とは、税務署・金融機関・株主などです。
また、財務会計は提出の義務が法律で定められています。社外の利害関係者にとっては、開示された情報が税金額の算出、融資の可否、投資の是非などの判断材料になります。
会計の目的
会計業務の目的は、会社の経営状況を把握することです。
管理会計で会社の経営状況をデータで算出・整理し、経営陣に提示します。現状を把握したうえで、今後の事業指針を決定するための元データの管理が必要です。
また、財務会計で社外の利害関係者向けに実績のデータを提出する義務を全うする業務も担います。
会計の役割
会計の役割とは、経理で記録・集計した情報を目的別にまとめることです。目的別とは具体的に、日次業務、月次業務、年次業務のほか、各部署やチームとの連携も含みます。
各部署の会計管理によって、細分化された現状を把握し、課題を発見し、解決への施策を練る流れを作り出す重責な役割を担っています。
会計の具体的な業務内容
会計の具体的な業務は以下にまとめられます。
- 管理会計で経営状況を把握
- 財務会計で事業活動の成果報告書を社外の利害関係者に提出
- 日々の会社資産の記録と管理、および各部署とやりとりしたうえで細分化した数値データを算出
会計業務は以上の3つで構成され、会社のお金全体を把握・管理する重要な役割を担います。
財務の業務内容
財務の主な業務内容は、会社の未来のお金を管理することです。
大きく「財務計画書の作成」「資金調達」「予算管理」の3種類に分けられます。
経理によって作成された財務諸表をもとに、財務計画を立案し、実際に資金を調達、次年度の予算を決定するのが財務の業務です。
経理・会計が過去と現在の資産や損益を集計・管理するのに対し、財務は経理・会計からの数値データをもとに現状を把握し、会社の未来にどういう事業を進めるかの具体的アクションを担っているポジションといえます。
以下の記事では、決算書と財務諸表の違いについて解説しています。是非参考にしてみてください。
財務の基本情報と特性
財務の特徴は経理・会計と異なり、明確な月次・年次業務がないことです。経理・会計が過去のお金を集計・管理するのに対し、未来のお金を具体的にどれくらい、どう使うかなどの具体的な行動指針を決定するのが財務の基本です。
また、財務のおもな業務内容のうち、資金調達や予算管理は会社規模や事業の状況によって、重要度が変動します。どの業務がどれほど必要かが左右される場合があるということです。
会社を存続させるには一定以上の資金を常に確保しておかなくてはいけません。資金不足が生じないように、キャッシュフローを徹底管理するのが重要な任務です。そのためにもリスク管理や予算管理も財務の役割となっています。
財務の目的
財務の目的は、会社の資金を計画・管理・運用という流れを統括し、会社の存続や事業継続を支えることです。経理・会計が算出した実績となる数値データを分析し、次年度の事業指針・事業計画を経営陣と考え、財務が算出した予算計画書をもとに経営陣が会社の将来を最終的に判断します。
財務の役割
財務の役割は、会社が継続的に成長し続けるために資金の調達と運用を適切に行うことです。将来の事業計画を遂行するためには、市場環境の変化や想定リスクなどを調査し、適宜対応する必要があります。具体的に会社の資金をどのように活用するかを戦略的に判断する部署が財務の重要な役割といえます。
財務の具体的な業務内容
財務の具体的な3つの業務について解説します。
以下の表では財務のおもな3つの業務をまとめました。
業務項目 | 概要 | 業務の目的 |
---|---|---|
財務計画書の作成 | 事業計画を数値化し、貸借対照表(B/S)・損益計算書(P/L)・キャッシュフロー計算書に落とし込んだシミュレーションのこと |
|
資金調達 | 財務計画と必要予算をもとに金融機関と融資について交渉し、必要額を集めること | 新規事業や既存事業への大規模投資、老朽化した施設の改修や設備投資などを計画的に取り組む必要があるため |
予算管理 | 確保した資金の活用方法を検討・管理すること | 必要に応じて予算削減などの調整も行うため |
財務には会社の将来的なお金の使い方において目的別に重要な業務が任されています。
会社規模によっては財務専門部署がある
会社の規模の大きさによっては、会社のお金の管理を経理に一任するのではなく、財務の専門部署を立ち上げている企業も少なくありません。
広大な事業規模や、企業そのものが大きい組織の場合、資金管理が複雑化し、法規制や税務対応が加わります。経理の通常業務と合わせると膨大な業務量になってしまうため、「財務部」として独立した編成をしている場合があります。
専門部署があることで、集中して財務戦略が立案でき、コスト管理や内部統制、監査への対応などにも随時応対できるメリットが生まれます。
そのほか、金融機関や投資家との交渉が発生するため、財務や税務に関する知識を持った専門的な人材を配置するといいでしょう。
経理・会計・財務担当になったら資格は取るべき?
会社のお金を管理することが共通の経理・会計・財務業務ですが、それぞれ必要な知識が多少異なります。
経理・会計・財務の担当者となった場合には、最低限の知識は必要です。
ここでは、各専門の資格を取得するべきなのか、また、資格の取得が必要であればどんな資格を取るべきなのかについて解説します。
資格は必須ではないが、勉強は必要
経理・会計・財務の担当者となっても、業務を進めながら専門知識を学ぶ程度で問題ないでしょう。
資格取得を推進している企業はあっても、多くの企業では資格取得を必須としていません。
しかし、資格を取得すると、転職や昇給、昇進に有利に働いたり、仕事を早く覚えられるなどメリットも多いので、資格の勉強をするのはおすすめです。
資格を取得するかしないかとは別に、お金に関する専門的な知識は業務上必要なので、常に勉強を怠らないように努める必要があります。
おすすめは日商簿記検定
資格の取得を目指すなら、日商簿記検定がおすすめです。日商簿記検定2級以上を持っていると経理・会計・財務、どの担当になっても役に立つでしょう。
そのほか、FASS(Finance Accounting Skill Standard)検定やビジネス会計検定なども十分に役立つ資格です。
経理・会計・財務は目的や役割によって業務内容がちがう
経理・会計・財務は目的や役割によって業務内容が異なります。過去のお金の動きを管理・記録する経理、全体を把握する会計、未来のお金を管理・計画する財務はそれぞれ重要な役割を持ち、それぞれが企業の目標達成のためになくてはならない重要な業務です。
また、経理・会計・財務部署では、繰り返しの細かい作業と業務の正確性、さらに他部署や外部業者との連絡、調整など対人コミュニケーションも必要とされます。特段、資格は不要ですが、日々の勉強やスキルが求められる業務といえます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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