• 更新日 : 2025年2月28日

オペレーティング・リースの税務上の取扱い・税務調査のポイントについて解説!

リース取引を行う際には、税務上の手続きにも注意が必要です。特に、オペレーティング・リースの場合には、新リース会計基準導入によって、会計と税務では取扱いに差異が生じるため、税務申告の複雑化が予想されます。

ここでは、オペレーティング・リースの税務上の取扱いや税務調査の注意点、新基準での申告調整について解説します。

オペレーティング・リースの税務上の取扱いについて

オペレーティング・リースとは、リース契約の対象となる物件について、借手に所有権を移転することなく、シンプルな賃貸借取引でレンタルを行う取引形態のことです。

ここでは、オペレーティング・リースの場合の会計処理に加え、消費税法人税などの税務上の取扱いについて確認しましょう。

会計上の取扱い

現行のリース会計基準では、「所有権の移転」ではなく「資産の賃貸借」というオペレーティング・リースの特徴を踏まえ、借手側はリース物件を資産計上したり、未払いのリース料を負債として計上したりする必要はありません。

オペレーティング・リースでは、会計上は賃貸借取引に準じた処理が採用されるため、借手は支払ったリース料について、単純に「支払リース料」などの勘定科目で費用処理するだけで仕訳処理を完結できます。

消費税の取扱い

国内において、「事業として対価を得て行われる資産の譲渡や貸付け、役務の提供」については、消費税の課税取引に該当します。

オペレーティング・リースの場合、対価の授受に基づく資産の貸付けに該当するため、借手が負担すべきリース料には、原則として消費税が上乗せされます。

したがって、借手がリース料支払時に消費税を含めて支払った場合には、仕入税額控除によって、消費税の計算上、納税額から控除することが可能です。

それに対し、貸手側は消費税を含めてリース料収入を受け取るため、課税事業者に該当する場合には、借手から支払いを受けた消費税に基づいて、消費税の納税額を計算する必要があります。

法人税の取扱い

リース取引に関する法人税法上の取扱いについては、原則として現行のリース会計基準に基づく会計処理と一致していることから、基本的に会計と税務のズレによる「申告調整」は必要ありません。

現行のリース会計基準では、「解約不能要件」と「フルペイアウト要件」という2つの判定基準に基づいて、リース取引を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の2つに分類し、それぞれ異なる会計処理を行う必要があります。

具体的には、オペレーティング・リースでは賃貸借処理が採用されるのに対し、ファイナンス・リースでは、その取引実態がリース物件の売買に相当することから、売買取引に準じた会計処理が原則的な会計処理とされています。

法人税におけるリース取引の取扱いについても、これらの会計処理と足並みを揃える形で運用されており、オペレーティング・リースの場合には、税務上は通常の賃貸借取引とみなされるため、支払リース料の損金算入が可能です。

また、ファイナンス・リースの場合も同様に、法人税では売買取引として認識するため、基本的には会計処理と一致することとなります。

ただし、所有権移転外ファイナンス・リースについて、会計上で賃貸借処理を行う場合には、税務上の償却限度額と会計上の支払リース料が一致しないケースもあるため、その場合には法人税申告書で申告調整が必要です。

オペレーティング・リース関連における税務調査の注意点

オペレーティング・リースをはじめとするリース取引を活用している企業や投資家については、税務調査の際にいくつかのポイントに注意することが大切です。

リース取引に関する会計や税務処理を誤ると、追徴税額などのペナルティが課されるリスクがあるため、慎重な対応を心掛けましょう。

リース区分の判断誤りのリスク

リース取引における「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」の区分によって、会計処理や税務上の取扱いも異なります。

これらの区分を誤ると、財務諸表の作成や税務申告手続きが適切に行われず、税務調査で否認されるリスクも高まるため、正確な判断が必要不可欠です。

これらの区分については、「解約不能要件」や「フルペイアウト要件」に基づいて判定を行います。また、ファイナンス・リースに該当する場合には、さらに「所有権移転ファイナンス・リース」と「所有権移転外ファイナンス・リース」に分類しなければなりません。

具体的には、リース契約における譲渡条件や割安購入選択権の有無、特別仕様のリース物件かどうかによって判断する必要があります。

これらのリース取引の分類を誤ると、複数年度にわたる申告ミスにつながる可能性もあるため、契約内容を十分に検証して、適切な経理処理を徹底しましょう。

節税目的のオペレーティング・リースの注意点

オペレーティング・リース取引については、長年にわたって節税商品として活用されてきました。

具体的な節税スキームとしては、まず企業などの投資家が匿名組合に出資し、その匿名組合が航空機や船舶などのリース物件を取得・運用することで、それによる収支を投資家に対する分配金として反映します。

リース物件を定率法によって減価償却することで、リース期間の序盤は、リース料収入よりも減価償却費のほうが大きくなり、匿名組合からの損失分配によって、投資家は自社の課税所得を圧縮することが可能となります。

なお、当該リース物件については、リース期間満了後に売却されることとなり、その際の売却価額を含めて当初の投資額を回収することが想定されています。

このような節税商品を総称し、航空機リースなどのリース取引については、「日本型オペレーティング・リース」と呼ばれています。

これらの日本型オペレーティング・リースでは、最終的にはリース物件の売却益が課税所得に加算されます。そのため、正確には「節税」ではなく、単なる「課税の繰延べ」と言えるでしょう。

しかしながら、このような租税回避スキームの乱用を防止するため、平成17年度の税制改正では、出資額を超える組合損失の損金算入が不可とされました。

したがって、税制改正後に日本型オペレーティング・リースによる投資を行う場合、出資金を超える金額の組合損失が誤って損金算入されていれば、税務調査によって否認されることとなるため、法人税申告書を作成する際には注意が必要です。

新リース会計基準による変更点

2027年4月1日以降に開始する連結会計年度や事業年度から「新リース会計基準」の導入が予定されています。

この新基準は上場企業や大企業を中心に強制適用されるため、適用対象となる企業では、導入時期に向けて計画的な準備が欠かせません。

ここでは、新リース会計基準の概要とオンバランス化に関する考え方、税務上の取扱いにおける注意点について解説します。

新リース会計基準とは?

新リース会計基準は、リース取引に関する会計処理のルールを定めたものであり、IFRS第16号をはじめとする国際会計基準との整合性を図ることを目的として、日本国内での導入が予定されています。

新基準では、リースを「特定資産に関する使用権の移転」と位置づけ、借手側が経済的利益のほぼすべてを享受し、対象資産に対する指図権を有する場合には、契約の名称にかかわらず、リースとして認識する必要があります。

会計上はオンバランス化が原則に

現行のリース会計基準では、リース取引を「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、借手側の会計処理としては、前者の場合はオンバランス処理、後者の場合にはオフバランス処理が原則です。

それに対し、新リース会計基準では、借手は原則としてすべてのリース取引をオンバランス処理に転換しなければなりません。

したがって、新リース会計基準が定義するリースに該当するのであれば、これまでオペレーティング・リースとして賃貸借処理していた取引についても、借手は「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に計上する必要があります。

このようにリースが「オンバランス化」に移行することで、オペレーティング・リースの場合でも、従来の支払リース料として費用処理する方法ではなく、「使用権資産の減価償却」や「利息相当額の期間配分」によって費用計上することとなります。

ただし、リース期間が12ヶ月以内の短期リースや、一定の要件を満たす少額リースなどについては、新基準導入後も簡便的な方法としてオフバランス処理が認められます。

税務上における取扱いとの差異

新リース会計基準の導入によって、会計上のオンバランス化が進む一方で、法人税や消費税の取扱いにも注意しなければなりません。

2025年度税制改正大綱では、オペレーティング・リースについて、法人税法では「債務の確定した金額のみを損金算入できる」旨が記されており、これまでどおりの賃貸借処理が継続されることが明らかとなりました。

したがって、新基準の下でオンバランス化(売買処理)され、使用権資産の減価償却や、利息相当額の配分による費用計上が原則とされる会計上の取扱いとは、不一致が生じることとなります。

また、2025年度の税制改正大綱では、新リース会計基準の導入後における消費税の取扱いは明記されていないことから、消費税についても、リース料を支払うたびに仕入税額控除を行うという、現行の計算方法が継続されるものと考えられます。

このように、新リース会計基準の導入により、オペレーティング・リースを中心に、会計と税務における取扱いに差異が生じることが予想されます。したがって、新基準の適用対象となる企業については、煩雑な会計処理への適応に加え、複雑化する税務申告手続きにも的確に対応しなければなりません。

申告調整の具体例

オペレーティング・リースについて、新リース会計基準によって、会計と税務で損金算入すべき金額が異なる場合には、法人税申告書において申告調整が必要です。

具体的には、以下のように申告調整を行いましょう。

■ 前提条件

  • リース料総額:6,000千円
  • リース料総額の割引現在価値:5,600千円
  • リース期間:5年
  • 各年に支払うリース料:1,200千円
  • 1年目の支払リース料のうち、利息相当額:200千円
  • 法人税法上、賃貸借処理となるリース取引に該当する

リース契約時

  • 会計上の仕訳
    新リース会計基準では、オペレーティング・リースであっても、会計上はオンバランス化が原則です。したがって、以下のように、リース料総額を現在価値に割り引いて、「使用権資産」や「リース負債」を計上します。
借方貸方
使用権資産5,600千円リース負債5,600千円
  • 法人税法上の仕訳
    法人税法では、オペレーティング・リースの場合には、現行のリース会計基準と同様に、賃貸借処理が適用されます。そのため、リース契約時における仕訳処理は不要です。
借方貸方
仕訳なし

リース料支払時(1年目)

  • 会計上の仕訳
    新リース会計基準の場合、リース料を支払った際には、以下のように「リース負債」と「利息相当額(支払利息)」に分けて仕訳計上しなければなりません。
借方貸方
リース負債

支払利息

1,000千円

200千円

現金預金1,200千円
  • 法人税法上の仕訳
    法人税法では、現行のリース会計基準と同様に、賃貸借処理に基づいて損金を認識します。したがって、リース料支払時には、以下のように実際の支払額をそのまま「支払リース料」として損金処理します。
借方貸方
支払リース料1,200千円現金預金1,200千円

減価償却費の計算(1年目)

  • 会計上の仕訳
    新リース会計基準では、リースの対象資産は「使用権資産」として計上され、自社保有の固定資産と同様に、減価償却によって費用化します。
借方貸方
減価償却費1,120千円(※)使用権資産1,120千円

(※)5,600千円(使用権資産)÷5年(リース期間)=1,120千円

  • 法人税法上の仕訳
    賃貸借処理を行う法人税法では、リースの対象資産は資産として計上しないため、減価償却計算は不要です。
借方貸方
仕訳なし

申告調整

リース契約1年目における、「会計上の費用計上額」と「税務上の損金算入限度額」については、それぞれ以下のとおりです。

  • 会計上の費用計上額
    200千円(支払利息)+1,120千円(減価償却費)=1,320千円
  • 税務上の損金算入限度額
    1,200千円(支払リース料)

したがって、これらの差額である「1,320千円-1,200千円=120千円」については、法人税法上の損金算入限度額を超過しているため、別表四において申告調整(加算・留保)しなければなりません。

なお、リース期間の経過とともに、これらの申告調整額は徐々に認容(減算・留保)されることとなります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

関連記事

会計の注目テーマ