- 作成日 : 2025年2月5日
車の耐用年数を過ぎたら減価償却できない?デメリットや節税対策も解説
事業用車の耐用年数が過ぎたら、減価償却できません。そのため、修繕費・維持費がかさむだけでなく、税負担が増加するでしょう。
耐用年数経過後も車を使う際の節税対策として、維持費や修理費の計上があります。また、場合によっては除却や売却の検討も必要です。
本記事では、車の耐用年数を過ぎたらどうなるかについて詳しく解説します。
目次
耐用年数を過ぎた車は減価償却できない
耐用年数を過ぎた自動車は、減価償却費を計上できません。ただし、耐用年数の期間内に減価償却して残った価値(残存価値)を帳簿に記載することにより、耐用年数経過後も引き続き事業用の車として使用はできます。
耐用年数とは、税法で資産ごとに定められた年数のことです。製品を問題なく使用できる期間としてメーカーが定める「耐久年数」とは異なる概念である点に注意しましょう。
ここから、そもそも減価償却や減価償却費がどのようなものなのかを説明したうえで、車の具体的な耐用年数について解説します。
そもそも減価償却とは
減価償却とは自動車のように減価償却できる固定資産(減価償却資産)を取得する際に、かかった支出を一定の期間にかけて費用として計上する手続きのことです。また、各期減価償却時に計上する費用のことを減価償却費と呼びます。
減価償却の方法は、定額法と定率法の2種類です。定額法は毎年同じ額を減価償却する方法、定率法は毎年同じ率で減価償却する方法を指します。
定額法を用いる場合も定率法を用いる場合も、償却率を確認しなければなりません(定率法は改定償却率や保証率も必要)。償却率は方法ごとに耐用年数に応じて決められています。
たとえば、自動車の耐用年数が4年の場合、定額法による償却率は「0.250」です(2007年4月1日以降に取得)。そのため、200万円の自動車を購入した場合、1年目に計上する減価償却費は50万円と計算できます(200万円 × 0.250)。
このケースでは定額法を使っているため、毎期定額の50万円を期首の帳簿価額から引いていくことがポイントです。
【参考】国税庁 減価償却資産の償却率等表
車の耐用年数
車の耐用年数は、車種や新車か中古車かによって異なります。新車の場合の耐用年数は、以下のとおりです。
| 一般用の自動車 (特殊自動車・運送事業用・貸自動車事業用・自動車教習所用除く) | |
|---|---|
| 小型車 (総排気量が0.66l以下) | 4年 |
| 貨物自動車(ダンプ式) | 4年 |
| 貨物自動車(その他) | 5年 |
| 報道通信用自動車 | 5年 |
| その他自動車 | 6年 |
| 2輪・3輪自動車 | 3年 |
一方、中古車の場合は法定耐用年数ではなく、事業用車にしてからの使用可能期間として見積られる年数が耐用年数として扱われます。ただし、見積もりが困難な場合は、国税庁で定めている簡便法に基づいて計算することとなります。
なお、減価償却資産の償却率や耐用年数、簡便法の計算方法については、国税庁のホームページから確認できます。
耐用年数を過ぎた車を使い続けるデメリット
耐用年数を過ぎた車を使い続けることのデメリットは、主に以下のとおりです。
- 車の維持費や修繕費の負担が増加する
- 故障リスクや価値の下落リスクが高まる
- 税金の負担が増加する
- 融資の審査に影響する
それぞれ解説します。
車の維持費や修繕費の負担が増加する
耐用年数を過ぎた車を使い続けると、車の維持費や修繕費の負担が増加する点がデメリットです。
たとえば、自動車を所有している間に課税される地方税の自動車税種別割は、初回新規登録後13年(ガソリン・LPG自動車)を超えると重加率が上乗せされます。また、車検を受けるときに課税される国税の自動車重量税も、保有年数が13年を超えるタイミング、18年を超えるタイミングで重加の対象となる点に注意が必要です。
また、エンジンオイル・ブレーキオイルやバッテリーなどの交換にも、都度費用がかかることを意識しなければなりません。
【参考】環境省 重課に係る論点について
故障リスクや価値の下落リスクが高まる
耐用年数を過ぎた車を使い続けていると、自動車の経年劣化に伴い故障リスクが高まる点がデメリットです。万が一故障が原因で事故を起こすと、想定外のコストや代償を払うことになりかねません。
また、自動車自体の価値下落リスクが高まる点にも注意が必要です。
一般的に、車の寿命の目安は「10年」「10万km」とされています。寿命を過ぎてからも乗っていると価値が急落し、売却を決めた頃にはすでに買い手が見つからないこともあるでしょう。
税金の負担が増加する
耐用年数を過ぎた車を使い続けると、税金の負担が増加する点もデメリットとして挙げられます。すでに紹介した自動車税・自動車重量税の重加に加え、減価償却できなくなることが主な理由です。
たとえば、200万円の自動車(耐用年数4年)を購入するケースを考えてみましょう。4年間は、毎年50万円を減価償却費として計上できます。しかし、5年目からは減価償却費を計上できないため、今までより控除できる経費が50万円分少なくなるでしょう。
融資の審査に影響する
減価償却を終えた資産は帳簿価額が低くなるため、事業性融資の審査に影響することがある点も耐用年数を過ぎた車を使い続けるデメリットとして挙げられます。資金繰りが悪化した際に売却しても現金化できないため、審査時に資産のひとつとして扱われない点が理由です。
また、営業などに使う車が古かったり故障しそうだったりすると、取引先からの信頼を失うこともありえます。
耐用年数を過ぎた車を使い続ける場合の節税対策
耐用年数を過ぎた車を使い続ける場合の節税対策は、以下のとおりです。
- 車の維持費や修繕費を経費に計上する
- 車の除却や売却も検討する
それぞれ解説します。
車の維持費や修繕費を経費に計上する
耐用年数が過ぎて減価償却による経費計上ができなくなっても、維持費や修繕費は費用として計上可能です。たとえば、経年劣化した車のエンジンが故障し、普通預金からA社に支払った修理費用50万円を経費計上する際は、以下のように仕訳します。
| 借方 | 貸方 | 摘要 | ||
|---|---|---|---|---|
| 修繕費 | 500,000円 | 普通預金 | 500,000円 | エンジン修理代、A社に支払い |
なお、ガソリン代や自動車税・自動車重量税、備品代なども、自動車の維持に伴い発生する費用で経費計上できる項目です。
車の除却や売却も検討する
節税に取り組む場合は、耐用年数を過ぎた車を使い続けるのではなく、除却も検討しましょう。
除却とは、有形固定資産を事業用として使用することをやめて、帳簿から除くことです。今まで使用していた車を廃車にしたりリサイクル処理にまわしたりして除去すれば、今までかかっていた自動車税や自動車重量税などを抑えられます。
また、資金を得られるため、買取価格がつくのであれば売却した方がよいです。ただし、売却益が発生する場合には税金がかかるため、税務処理を失念しないようにしましょう。
車の耐用年数を過ぎたら減価償却できず税負担が増加する
事業に使っている車は、毎期減価償却できます。しかし、車種ごとに定められている耐用年数を過ぎたら、減価償却できなくなる点に注意が必要です。
減価償却できなくなると、今までより計上可能な経費の額が減るため、税負担が増加する可能性があります。税金面だけでなく、維持費・修繕費がかかること、故障リスク・価格下落リスクが増加することも、耐用年数を過ぎてからも長く乗り続けることのデメリットです。
そのため、現在耐用年数を過ぎた車を事業に使っている場合は、除去や売却も検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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