- 更新日 : 2025年2月20日
上代・下代とは?意味や読み方、定価や希望小売価格との違い、消費税などを解説
上代・下代は、商品の販売価格と仕入価格を表す用語であり、特にアパレルなどの流通業界で用いられます。上代や下代の設定により、小売業者の利益は大きく左右されるため、慎重な対応が必要です。本記事では、上代や下代の意味や定価・希望小売価格などの用語との違い、下代の計算方法、下代を引き下げるポイントなどについて詳しく解説します。
目次
上代とは?
上代とは、流通業界における商品の「販売価格」を指します。具体的には、小売店が消費者に販売する際の価格のことを意味し、アパレル業界などにおいて使用されるケースの多い用語です。
定価や希望小売価格などの似たような用語もいくつかありますが、それぞれ異なる役割や意味を持っているため、それぞれの違いを正しく理解しましょう。
上代の読み方
上代は「じょうだい」と読みます。特定の業界内で使用される機会の多い用語であるため、仕入先との交渉や契約に向けて、正確な読み方を覚えておくことが重要です。
上代とは商品の販売価格のこと
上代とは、小売店が商品を消費者に販売する際の価格を指し、商品を製造するメーカーや卸売業者によって設定されます。たとえばメーカーが小売業者に「この商品は上代10,000円です」と提示した場合、小売業者は消費者に対して10,000円で販売する必要があります。
上代は小売業者にとって売上高の基盤となるため、自社の利益計画を策定するうえで重要な要素となります。
上代と定価の違い
上代と定価の違いは「値引きができるかどうか」です。
定価とは、メーカーによってあらかじめ決められた販売価格を表し、拘束力のある価格であるため、小売店による値上げや値下げは認められません。なお、定価の設定については本来独占禁止法で禁止されていますが、タバコや新聞、書籍、雑誌、音楽ソフトのみ、独占禁止法の例外として定価の設定が認められます。
一方で、上代もメーカー側が設定しますが、定価ほどの拘束力はないため、条件によっては小売店が値上げや値下げを行うことも可能です。
上代と参考上代の違い
参考上代とは、メーカーや卸売業者が小売店に対して「この価格で販売してほしい」という販売価格の目安として提示する価格です。
上代が消費者に対する実際の販売価格であるのに対し、参考上代はあくまでメーカー側の希望価格として位置づけられるため、上代に比べると価格としての拘束力はありません。したがって、小売店の判断によっては、参考上代とは異なる販売価格を設定することも可能です。
なお、メーカーによっては上代を参考上代の意味合いで使用するケースもあるため、取引を行ううえでは、メーカーから提示された価格の拘束力についてもきちんと確認しましょう。
上代とオープン価格の違い
オープン価格とは、メーカーが販売価格を設定することなく、小売店が自由に価格を決めることのできる形式のことです。
上代がメーカーや卸売業者によって提示される販売価格であるのに対し、オープン価格では完全に小売店の裁量で売価を設定することが可能です。
ただし、オープン価格は自由度が高いことから、家電製品などの競争の激しい市場で採用される場合には、価格競争が激化しやすいという側面もあります。
上代とメーカー希望小売価格の違い
メーカー希望小売価格とは、「消費者に販売してほしい価格」としてメーカーから小売店に提示される価格です。メーカー希望小売価格については、先述した参考上代と同義で用いられるケースが多いです。
したがって、小売業者は実際の市場環境や他店との競合状況に応じて、メーカー希望小売価格とは異なる販売価格も設定できます。
文学史の時代区分における上代との違い
「上代」という言葉には、販売価格とは異なる意味もいくつか存在します。たとえば、はるか昔や太古を表す場合や、文学史における時代区分として用いられることがあります。時代区分における上代は、主に奈良時代や平安時代初期を指します。
商品の価格を指す上代とは全く異なる文脈で使われるため、混同しないように注意しましょう。
上代に消費税は含まれる?
上代は、一般的に消費税を含まない金額として設定されます。つまり、上代は税抜価格を指すことが多く、実際に消費者が支払う金額は、この上代に消費税が加算された額です。
たとえば、ある商品の上代が10,000円と設定されている場合、消費者が支払う総額は消費税10%を加算した11,000円となります。このように、一般的に上代は消費税を除いた価格として扱われるため、消費税を考慮した総額表示を行う際には、別途計算が必要です。
なお、取引先や業界によっては「税込価格」で上代を提示する場合もあるため、メーカーや卸売業者に具体的な契約内容や表示形式を確認しておくことが重要です。
下代とは?
下代とは、商品の仕入価格を指します。具体的には、小売業者や販売者がメーカーや卸売業者から商品を購入する際の取引価格のことです。
上代が販売価格を表すのに対して、下代は仕入れにかかるコストを表しており、利益計算や売価設定を行ううえでの原価として位置づけられます。
下代の読み方
下代は「げだい」と読みます。アパレルなどの特定の業界においては、上代とともに仕入先との契約や取引交渉などに用いられる機会もあるため、用語の意味だけでなく、読み方についても正しく覚えましょう。
下代とは商品の仕入価格のこと
下代とは、小売業者が商品を仕入れる際にメーカーや卸売業者へ支払う金額を指します。卸値や仕入価格などと同義であり、基本的には消費者に公開されることはありません。
下代については、販売価格である上代とともに利益率を計算するための大切な要素となり、仕入れや販売計画を立てる際に欠かせない情報です。特に小売店にとっては、下代を抑えることによって利益率が向上するため、自社の経営状況の改善を図る重要なポイントといえるでしょう。
下代の計算方法
下代を算出する際には、小売店の販売価格である「上代」に「掛け率」を乗じて計算します。
メーカーや卸売業者から商品を仕入れる際には、販売価格である「上代」だけでなく、仕入価格を計算するための「掛け率」についても提示され、それらに基づいて「下代」を計算することが可能です。
上代と掛け率に基づいて下代が計算され、小売業者にとっては、上代と下代の差額が自社にとっての粗利となります。
下代の計算に必要な掛け率とは?
下代の計算において重要な要素となるのが「掛け率」です。掛け率とは、上代(販売価格)に基づいて、下代(仕入価格)を算出するための割合を指します。
掛け率は百分率や小数で表され、具体的な割合は取引先との契約条件や業界の慣習によって異なりますが、一般的には40〜70%程度で設定されるケースが多いです。
具体的な下代の計算式については、以下のとおりです。
たとえば、ある商品の上代が10,000円で掛け率を70%(0.7)とした場合、下代は以下のように計算されます。
下代 = 10,000円 × 0.7 = 7,000円
したがって、小売業者がその商品を販売した場合には、「上代10,000円」と「下代7,000円」の差額3,000円が自らの利益となります。
小売店にとっては、掛け率が低いほど下代が安くなり、仕入コストを抑えることが可能ですが、掛け率が下がることでメーカー側の売上高は減少するため、掛け率の引下げ交渉が難航するケースも少なくありません。
下代を安く抑えるポイントは?
小売業者が利益率を向上させるためには、下代(仕入価格)を可能な限り低く抑えることが重要です。下代を効果的に抑えるためには、取引先との交渉や仕入方法の工夫が鍵となります。
ただし、仕入先であるメーカーや卸売業者にとっては、掛け率を維持して自社の利益を確保することが重要であるため、単に下代の引下げを要求してもなかなか交渉が進展しないケースも多いでしょう。
掛け率を下げ、下代を抑えるためには、以下のような方法によってアプローチすることが効果的です。
複数の仕入先と見積もりを比較する
同じ商品でも、仕入先によって価格や条件が異なる場合も多いです。したがって、下代を安く抑える基本的な方法として、複数の仕入先から相見積もりを取得し、比較検討する方法が挙げられます。
見積もりを比較する際は、単に価格だけでなく、以下の点も考慮するとよいでしょう。
- 支払い条件(掛け払いの期間や割引の有無など)
- 配送コストや納期
- 取引に関連するサービスや保証(返品ポリシーやサポート体制)
契約の前に詳細な取引条件を確認することで、単に仕入価格を引き下げるだけでなく、全体的なコストパフォーマンスの最適化につながる仕入先を選定しやすくなります。
大量発注などによる掛け率の交渉を行う
下代を抑える有効な手段として、大量発注や特定の条件を提示して掛け率を下げる交渉を行う方法もあります。
たとえば、仕入数量を増やしたり、複数回の発注をまとめて一括契約したりすることで、メーカーや卸売業者にとっても有益な取引の提案が可能となり、Win-Winの関係を構築できます。その結果、掛け率の引下げに加え、仕入先との関係性強化にもつながるでしょう。
仕入先と長期的な関係を構築する
安定した取引を継続することは、仕入先にとっても大きなメリットです。そのため、長期的な取引関係を維持してメーカーや卸売業者との信頼関係を築くことで、特別価格の提供や柔軟な取引条件の交渉を行いやすくなります。
また、仕入先の販売促進に貢献できれば、他の取引先にはない有利な条件で取引を行える場合もあります。
このようにメーカーなどと長期的な信頼関係を築くことで、安定的な仕入ルートを整備できるだけでなく、下代の抑制につながるケースも増加します。
アパレル業界などで上代・下代が使われる理由は?
上代・下代という価格設定のルールについては、アパレル業界をはじめとする特定の業界で現在も用いられています。これらの取引形態が採用されている背景には、業界固有の商習慣や市場特性が関係している場合が多いです。
昔からの商習慣のため
上代・下代という専門用語については、特にアパレルのように長い歴史を持つ業界において、今でも商習慣の一部として利用され続けています。
かつての流通業界では、メーカーや卸売業者、小売業者が明確な役割分担のもとで取引を行っており、上代と下代に基づいて売買を行うことで、取引先間での価格設定の方法が統一され、効率的な商取引の実現に貢献していました。
現在でも、アパレル業界のようにシーズンごとに大量の商品が流通する業界などでは、明確な価格設定のルールが存在することにより、業者間における取引の透明性を確保しやすいというメリットがあります。
さらに、消費者には馴染みのない専門用語を用いることで、業者間の取引価格や利益などの情報が公になりにくいという利点もあるでしょう。
価格競争を抑制するため
価格設定において上代や下代を提示することは、過度な価格競争を抑制することにも効果的です。
販売価格である上代を業界内で統一することで、販売価格が無秩序に高騰・下落するリスクを回避できます。これにより、ブランド価値を守りながら、小売業者とメーカーが共存できる市場環境を維持しやすくなるでしょう。
また、上代に基づいて下代を設定することによって、卸売業者や小売業者が適切な利益を確保することが可能です。これにより、販売ネットワーク全体の健全性が保たれ、長期的なビジネス関係を築きやすくなります。
特に、高価なブランド品やアパレル商品を取り扱う業界では、このような価格管理の重要性もより一層高まるため、上代や下代に基づく価格設定が広く採用されています。
上代・下代を理解して価格設定を最適化しよう
上代と下代は、それぞれ商品の販売価格と仕入価格を指し、特にアパレルなどの流通業界では、価格設定におけるルールとして、現在も引き続き使用されています。
これらの価格設定は、メーカーや小売業者の利益率に直結するため、掛け率などの仕入条件を考慮した慎重な対応が求められます。
小売業者にとっては、複数の仕入先の比較検討や長期的な取引関係構築などを通して、下代を抑えるように努力することが重要です。これにより、利益率の向上やコスト削減を実現でき、自社の競争力を高めることにもつながります。
また、上代と下代の活用は、単なる価格設定だけでなく、価格競争の抑制やブランド価値を守る効果もあり、特定の業界内における商習慣や市場環境にも大きな影響を与えています。
上代と下代の正しい理解と活用を通じて、取引先や顧客との信頼関係を築き、長期的なビジネスの成功に役立てましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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