- 作成日 : 2024年12月5日
インターネットバンキングも電子帳簿保存法の対象|要件や保存方法を解説
「インターネットバンキングは電子帳簿保存法の対象なのかわからない」と悩んでいませんか。取引先への支払いなどでインターネットバンキングを利用して、明細を放置していることもあるでしょう。
インターネットバンキングは電子取引の対象で、電子帳簿保存法にしたがって正しく保存する必要があります。本記事では、電子帳簿保存法においてインターネットバンキングの取引とは何を指すのか解説し、あわせて明細を保存する方法もまとめます。
記事を最後まで読めば、インターネットバンキングの対象となる取引や、電子データの保存方法を理解できるでしょう。
目次
インターネットバンキングは電子帳簿保存法の電子取引に該当
国税庁の「電子帳簿保存法一問一答」によると、インターネットバンキングは電子取引に該当します。以下で、回答の引用文を確認してみましょう。
インターネットバンキングを利用した振込等も、電子取引に該当します。 電子帳簿保存法上、保存しなければならないその電子取引の取引情報に係る電磁的記録については、金融機関の窓口で振込等を行ったとした場合に受領する書面の記載事項(振込等を実施した取引年月日・金額・振込先名等)が記載されたデータ(電磁的記録)です。
インターネットバンキングを利用した際の取引に関係する電子記録は、電子帳簿保存法にしたがった形で保存する必要があります。
なお、電子データで受け取った明細は電子データのまま保存する必要があり、原則紙で保存できません。電子データを保存する際のルールを設けていなかった方は、電子帳簿保存法にしたがってルールを新設する必要があると理解しておきましょう。
インターネットバンキングで保存すべきデータ
インターネットバンキングで保存すべきデータは、振込などを実施した以下がわかるデータです。
- 取引年月日
- 金額
- 振込先名
実際に利用した際に「銀行振込明細」「入出金明細」のような形で記され、保存すべきデータがまとめられています。
大手金融機関など、インターネットバンキングの取り扱いがある銀行なら、WebサイトのマイページからCSVやPDFで明細をダウンロードできます。金融機関によって明細を確認できる項目の名称が異なるので、あらかじめ理解しておきましょう。
関連記事:2024年1月の電子帳簿保存法改正で電子取引データの紙保存が廃止に!対応方法を解説
インターネットバンキングの取引を保存する際の要件
インターネットバンキングの取引データを保存する際は、以下2点の要件を満たす必要があります。それぞれの要件について、詳しく解説します。
- 要件①:真実性の確保
- 要件②:可視性の確保
要件①:真実性の確保
インターネットバンキングの取引を保存する際は、真実性の確保が求められます。具体的な条件を以下にまとめました。
要件 | |
---|---|
真実性の確保 (①〜④のいずれか1つ) | ①タイムスタンプが付されたあと、取引情報を受け取る |
②取引情報を受け取ったあと、速やかにタイムスタンプを付すとともに、情報を確認できるようにする | |
③記録事項の訂正・削除を行ったとき、その事実や内容を確認できるシステム、または訂正・削除ができないシステムで取引情報を受け取る | |
④正当な理由がない訂正・削除の防止に関するマニュアルを定め、規程通りに運用する |
真実性の確保では、表に記載している①から④のいずれかを満たす必要があります。ひとつでも満たせば、真実性が確保できていると判断されます。
たとえばシステムを導入して、電子データの訂正・削除の履歴がわかる形にするなどの対応が考えられるでしょう。真実性の確保を満たせていない場合は、取り組みやすい項目で対策してみてください。
要件②:可視性の確保
2つめの要件として、可視性の確保も求められています。具体的な要件を以下で確認してみましょう。
要件 | |
---|---|
可視性の確保 | ①保存場所にパソコン・プログラム・ディスプレイ・プリンタおよび操作マニュアルを備えつける |
②電子計算処理システムの概要書を備えつける(自社開発のプログラムを使用する場合) | |
③検索機能を確保する |
可視性の確保では、①から③すべての要件を満たす必要があります。たとえばパソコンを備えつけて、インターネットバンキングの取引データをすぐ確認できる形にするなどの対策が考えられるでしょう。
インターネットバンキングを利用する際は、パソコンなどですぐにデータを確認できる体制を整えてください。
インターネットバンキングの取引データを保存する手順
インターネットバンキングを利用する場合、取引データを逐一保存するのではなく、オンライン上の通帳や入出金明細を保存することでも対応できます。また、オンライン上の通帳が普段から閲覧できる状態なら、通帳明細をダウンロードしなくても問題ありません。
ただし、「取引データをファイルで保存したい」という方もいらっしゃるでしょう。以下では、上記の認識を押さえたうえで、あえてデータを保存する場合の手順をまとめます。
- 手順①:対象のデータをダウンロードする
- 手順②:ファイル名を作成する
- 手順③:システムなどにデータを保存する
手順①:対象のデータをダウンロードする
まずは、対象のデータをダウンロードしましょう。基本的にインターネットバンキングを取り扱っている銀行なら、CSVやPDFでのダウンロードが可能です。
取引している銀行のマイページから入金・出金の履歴がわかるページを表示して、対象となるデータをダウンロードしましょう。たとえば下記のように、各金融機関で入出金明細と対象となるデータをダウンロードできるページが用意されています。
引用:住信SBIネット銀行
手順②:ファイル名を作成する
次に、ダウンロードしたデータにファイル名をつけましょう。ダウンロードしたままのファイル名だと、どのような取引明細なのかわからないためです。
実際にダウンロードすると「meisai_20241025141618134」のような形式でCSVやPDFが発行されるので、自社で統一しているファイル名を作成してください。
現段階でファイル名を統一していないのであれば、「20241011_〇〇社_××(金額)_振込明細」のような形式がおすすめです。ファイル名に記載する取引年月日や金額など、表記揺れがないように注意してください。
関連記事:電子帳簿保存法|PDFデータ取扱のポイント タイムスタンプは必須?
手順③:システムなどにデータを保存する
ここまでの手順が完了したら、自社で導入しているシステムや年度別にまとめているフォルダに保存しましょう。保存したファイルが検索できる形になっているか確認し、問題なければ完了です。
インターネットバンキングも電子帳簿保存法の対象|正しく明細を保存しよう
インターネットバンキングを利用している場合は、電子帳簿保存法の対象となります。実際に保存すべきデータは、振込などを実施した取引年月日・金額・振込先名がわかるデータです。
なお、オンライン上の通帳が普段から閲覧できる状態なら、通帳データをダウンロードしなくても問題ありません。あえて保存する場合は、要件に則った保存が必要になるため、真実性と可視性を確保している形式で保存してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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