- 更新日 : 2025年2月20日
工事完成基準とは?メリット・デメリットまとめ
工事完成基準とは、建設業などで用いられる工事にかかる収益や費用の認識に関する基準のことです。工事完成基準には、どのような特徴があるのでしょうか。この記事では、工事完成基準のメリット・デメリットについて解説します。
目次
工事完成基準とは
工事完成基準とは、工事が完成し、引き渡しが完了した時点で工事収益と工事原価を認識する基準のことです。完成物の引き渡しが収益および原価の認識時点となるため、完成までに工事に関して受け取った金銭がある場合は未成工事受入金に計上して、最終的に工事原価に振り替えます。
「工事」とありますが、建設工事の他、大型の製品の製造やソフトウェアの開発でも工事完成基準が用いられることがあります。
工事完成基準のメリット
工事完成基準の主なメリットを紹介します。
収益の計上を繰り延べられる
工事完成基準のメリットは、目的物の引渡時に工事収益と工事原価が計上されるため、引き渡しまで利益・所得を繰り延べられることです。ただし、複数の工事の引渡時期が重なると、その時期に集中して工事収益が計上されることもあります。
なお、法人税法上は、長期大規模工事(請負金額10億円以上で一定の要件を満たす工事)に該当する工事については工事進行基準が強制適用されるため、工事完成基準を適用することができません。また、工事途中で一部引き渡しがあった場合など、部分完成基準の適用により、法人税法上は工事完成基準を適用できないこともあります。
会計処理がシンプル
工事完成基準は引渡時に工事収益と工事原価を計上すればよいため、会計処理がシンプルです。会計処理が簡単であることから、小規模の工事や重要度の低い工事などの会計処理に向いています。
工事完成基準のデメリット
工事完成基準の主なデメリットを紹介します。
工事の赤字に気づきにくい
工事完成基準では、工事進行基準などのように工事の進行度合いに応じて工事収益や工事原価を計上しません。引渡時点で一度に収益と原価を認識するため、工事の途中で赤字になっていても気づきにくいというデメリットがあります。完成後に判明した赤字については、請負金額の交渉などが難しくなる可能性があります。
収益の計上を分散できない
工事完成基準では工事収益が一度に計上されるため、工事進行基準のように収益を各会計期間に配分できません。前述の通り、他の工事の進捗次第では一会計期間に集中して工事収益が計上されることがあります。
工事完成基準の特徴を把握して会計処理をしよう
建設業などの工事の会計処理には、工事完成基準と工事進行基準が用いられます。工事完成基準は、目的物の引渡時点で売上高と売上原価を認識する方法です。会計処理がシンプルでわかりやすい反面、一度に収益と費用が計上されるというデメリットがあります。工事の内容などに応じて、工事完成基準と工事進行基準を使い分けましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
土地や建物にかかる固定資産税の計算方法
固定資産税とは、土地・建物などの所有者に課される税金で、市町村(東京23区だけは東京都)から送られてくる納税通知書に書かれた金額を4回に分けて支払います。ここでは、固定資産の概要や価格の決め方、計算方法を紹介します。 固定資産税とは 固定資…
詳しくみる事前確定届出給与とは?役員賞与を損金算入して節税できる?期限や記載方法は?
経営者など役員に対する報酬や賞与は、一般社員の給与とは異なり、税務上の規定に従って支給されなければ損金算入できません。役員報酬は金額が大きくなりがちなため、損金算入として扱わなかった場合、納税負担額や資金繰りにも悪影響を及ぼします。 このよ…
詳しくみる資産とは何か?個人や会社、会計学上の資産について簡単に解説
資産とは会計学上、会社の経済主体に帰属する用益潜在力と定義されています。わかりやすく言うと、会社が持っている財産のことです。財産にはお金や商品の他、使用している機械や建物も含まれます。また、売掛金といった、これから受け取るお金の権利も資産に…
詳しくみる国保計算を基本から理解するための3つのポイント
職場で社会保険に加入していない人や生活保護を受給していない人であれば加入が義務付けられている国民健康保険(以下、国保)。 ここではこの国保の保険料計算(以下、国保計算)の基本と、保険料がどんなもので構成されていて、どうして支払わなくてはなら…
詳しくみる保守主義の原則とは?具体例から解説
保守主義の原則は、企業会計原則の7つの一般原則のうち6つ目の原則で、一定の状況下において保守的な会計を行うことを要請するものです。今回は、保守主義の原則の意味や必要性、具体例や行き過ぎた保守主義のデメリットについて解説していきます。 保守主…
詳しくみる税理士がすすめる「究極の会計本」 経理マンはこの3冊を読め!
「経理」とネットで検索すると、「つまらない」という関連キーワードが候補にあがります。経理といえば、どこか裏方と思われがちで、一日中デスクに張り付いて作業に追われる、ちょっと退屈な仕事というイメージがあるのかもしれません。とはいえ、経理担当…
詳しくみる