- 更新日 : 2024年8月8日
インボイス制度で控除対象外になった消費税の勘定科目は?
インボイス制度においては、取引先から適格請求書を受け取れば仕入税額控除の適用を受けられます。しかし、取引先の中にはインボイス登録を行っておらず適格請求書が発行できない事業者がいることも予想されます。
適格請求書がなく仕入税額控除対象外となる場合、消費税はどのように処理したらいいのか、確認しておきましょう。
目次
インボイス制度で控除対象外となった消費税の処理方法
インボイス制度開始以降、適格請求書がない場合、消費税の仕入税額控除が適用できなくなりました。そのため、適格請求書がある分の消費税と適格請求書がない分の消費税を分けて処理する必要があります。
なお、2029年9月30日までは、適格請求書がない消費税処理のため、一定の割合を控除できる経過措置があります。こちらもチェックしてください。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 2026年10月1日~2029年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
インボイス制度についての詳細は以下を参考にしてください。
また、仕入金額や売上金額の処理については「税抜経理」「税込経理」いずれかを選択できます。
税抜経理の場合
仕入金額や売上金額を処理する際、消費税を別にする方法です。帳簿を付ける際、少々手間はかかりますが、常時、損益や消費税納税額が把握しやすいというメリットがあります。
税込経理の場合
仕入金額や売上金額を税込価格で処理する方法です。帳簿を付けるときの手間が少ないというメリットがあります。ただし、納税する消費税金額は決算時期にならないと判明しないという注意点があります。
資産に係る控除対象外消費税額等の勘定科目
資産にかかる控除対象外消費税等の「資産」には、「固定資産」「棚卸資産」「繰延資産」がありますが、次のいずれかの方法によって、損金の額または必要経費に算入します。
1.その資産の取得価額に算入し、それ以後の事業年度または年分において償却費などとして損金の額に算入する。
2.次のいずれかに該当する場合には、法人税法上は、損金経理を要件としてその事業年度の損金の額に算入し、また、所得税法上は、全額をその年分の必要経費に算入する
イ その事業年度または年分の課税売上割合が80パーセント以上であること。
ロ 棚卸資産に係る控除対象外消費税額等であること。
ハ 一の資産に係る控除対象外消費税額等が20万円未満であること。
3.上記に該当しない場合には、「繰延消費税額等」として資産計上し、次に掲げる方法によって損金の額または必要経費に算入する。
例えば、インボイス制度開始後に110万円(税込・軽減税率ではないもの)の資産を現金で取得した場合の仕訳例は以下のとおりとなります。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 資産 | 1,000,000円 | 現金 | 1,100,000円 |
| 仮払消費税等 | 100,000円 | ||
資産に係るもの以外の控除対象外消費税額等の勘定科目
控除対象外消費税額等が資産に係るもの以外だった場合、損金の額または必要経費に算入してください。
例えば、インボイス制度開始後に5,500円(税込・軽減税率ではないもの)の消耗品を現金で取得した場合の仕訳例は以下のとおりとなります。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 消耗品費 | 5,000円 | 現金 | 5,500円 |
| 仮払消費税等 | 500円 | ||
交際費に係る控除対象外消費税額等の勘定科目
インボイス制度導入後、免税事業者に支払った交際費は控除対象外となっていますが、2029年9月30日までは、一定の割合を控除できる経過措置があります。
| 期間 | 控除できる割合 |
|---|---|
| 2023年10月1日~2026年9月30日 | 仕入税額相当額の80% |
| 2026年10月1日~2029年9月30日 | 仕入税額相当額の50% |
例として、経過措置で80%までは控除ができる期間に免税業者に飲食費(交際費)を4,400円/1人支払った場合の仕訳を見てみましょう。
対価の額)
仮払消費税:4,400円×10/110×80%=320円
接待交際費:4,400円-320円=4,080円
仕訳は以下のとおりです。
| 借方 | 貸方 | ||
|---|---|---|---|
| 接待交際費 | 4,080円 | 現金預金 | 4,400円 |
| 仮払消費税 | 320円 | ||
控除対象外消費税の処理方法を把握しておこう
取引先に免税事業者やインボイス未登録事業者が多い場合、仕入税額控除ができない消費税も多く発生することが予想されます。2029年9月30日までは経過措置がありますが、それ以降のことを考えて、控除対象外消費税の処理方法についても理解しておきましょう。
なお、控除対象外消費税が増えると、納税額が増えるというデメリットがあります。控除対象外消費税を増やさないためにも、免税事業者やインボイス未登録事業者と今後について話し合うことも検討してはいかがでしょうか。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
勘定科目 税務の関連記事
インボイスの関連記事
新着記事
購入選択権付リースとは?仕組みやメリット・デメリット、会計処理まで徹底解説
購入選択権付リース(購入オプション付リース)は、リース期間満了後に設備や車両などの資産を、あらかじめ定められた価格で購入できる権利が付いたリース契約です。多額の初期投資を抑えながら最新の設備を利用し、将来的に自社の資産として所有できる可能性…
詳しくみる会計基準とは?種類一覧や調べ方、選ぶポイント、近年の改正内容をわかりやすく解説
企業が財務諸表(決算書)を作成するには、会計基準という統一されたルールが不可欠です。この記事では、会計基準の必要性や種類の一覧、そして自社がどの基準を選ぶべきかまでわかりやすく解説します。 会計基準とは? 会計基準とは、企業が財務諸表を作成…
詳しくみる2027年に適用開始の新リース会計基準とは?改正内容や影響をわかりやすく解説
2027年4月1日以後開始する事業年度から、日本のリース会計に関するルールが大きく変わります。今回のリース会計基準改正における最大のポイントは、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースが、原則として資産・負債として貸借対…
詳しくみるリース取引の判定基準は?フローチャート付きでわかりやすく解説
リース契約は、設備投資やIT機器導入など、多くの企業活動で活用される重要な手段です。「このリース契約は資産計上すべきか」「ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの違いがわからない」といった悩みは、経理担当者にとって避けて通れない問題…
詳しくみるリース契約と賃貸借契約の違いは?メリット・デメリットも徹底比較
リースと賃貸借は、どちらもモノを借りるという点で似ていますが、契約内容は大きく異なります。この二つの違いを理解しないまま契約すると、会計処理、コスト、法的な責任範囲で思わぬトラブルにつながる可能性があります。 この記事では、リースと賃貸借の…
詳しくみるリース取引の消費税の取り扱いは?種類別の会計処理や仕訳、インボイス制度対応まで解説
リース取引における消費税の扱いは、経理処理の中でも特に間違いやすく、複雑なポイントの一つです。契約の種類によって消費税を控除するタイミングが異なり、インボイス制度の導入によって新たな対応も求められています。 この記事では、リース料にかかる消…
詳しくみる会計の注目テーマ
- 勘定科目 消耗品費
- 国際会計基準(IFRS)
- 会計帳簿
- キャッシュフロー計算書
- 予実管理
- 損益計算書
- 減価償却
- 総勘定元帳
- 資金繰り表
- 連結決算
- 支払調書
- 経理
- 会計ソフト
- 貸借対照表
- 外注費
- 法人の節税
- 手形
- 損金
- 決算書
- 勘定科目 福利厚生
- 法人税申告書
- 財務諸表
- 勘定科目 修繕費
- 一括償却資産
- 勘定科目 地代家賃
- 原価計算
- 税理士
- 簡易課税
- 税務調査
- 売掛金
- 電子帳簿保存法
- 勘定科目
- 勘定科目 固定資産
- 勘定科目 交際費
- 勘定科目 税務
- 勘定科目 流動資産
- 勘定科目 業種別
- 勘定科目 収益
- 勘定科目 車両費
- 簿記
- 勘定科目 水道光熱費
- 資産除去債務
- 圧縮記帳
- 利益
- 前受金
- 固定資産
- 勘定科目 営業外収益
- 月次決算
- 勘定科目 広告宣伝費
- 益金
- 資産
- 勘定科目 人件費
- 予算管理
- 小口現金
- 資金繰り
- 会計システム
- 決算
- 未払金
- 労働分配率
- 飲食店
- 売上台帳
- 勘定科目 前払い
- 収支報告書
- 勘定科目 荷造運賃
- 勘定科目 支払手数料
- 消費税
- 借地権
- 中小企業
- 勘定科目 被服費
- 仕訳
- 会計の基本
- 勘定科目 仕入れ
- 経費精算
- 交通費
- 勘定科目 旅費交通費
- 電子取引
- 勘定科目 通信費
- 法人税
- 請求管理
- 勘定科目 諸会費
- 入金
- 消込
- 債権管理
- スキャナ保存
- 電子記録債権
- 入出金管理
- 与信管理
- 請求代行
- 財務会計
- オペレーティングリース
- 新リース会計
- 購買申請
- ファクタリング
- 償却資産
- リース取引