• 作成日 : 2023年3月10日

電子取引とは?保存要件や電子帳簿保存法の解説

電子取引とは?保存要件や電子帳簿保存法の解説

2022年1月1日から施行された電子帳簿保存法の改正によって電子取引に関して電子データの保存が義務化されました。2023年12月までの宥恕(ゆうじょ)措置がありますが、それまでに事業規模を問わず、電子取引を行っている全ての事業者は必要な対策を講じなければなりません。この記事では、あらためて電子取引の概要、保存要件、改正電子帳簿保存法について解説していきます。

電子取引とは

電子取引とは、電子メールで送信した注文書、契約書、送り状、領収書見積書などの取引情報の授受を電磁的方式(電子データ)により行う取引をいいます。

電子取引とは

具体的には、EDI取引(電子データ交換)、インターネットなどによる取引、電子メールにより取引情報を授受する取引(添付ファイルによる場合を含む)のほか、インターネット上にサイトを設けて、サイトを通じて取引情報を授受する取引が該当します。

電子取引に該当する取引

改正電子帳簿保存法では、電子取引に該当する取引として請求書・領収書・契約書・見積書などに関する電子データを送付・受領した場合には、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが必要とされています。

電子取引の保存要件

保存要件としては、「真実性の確保」と「可視性の確保」の2つがあります。それぞれ詳細は、次項で述べますが、ポイントとしては3つ挙げられています。

  1. 改ざん防止のための措置を取ること
    電子化された文書が原本であることを証明する技術としてタイムスタンプというものがあります。電子文書にタイムスタンプが付与されることによって、付与された時刻に書類が存在していたこと及び付与時刻以降は書類が変更されていないことが証明されます。改ざん防止の方法として非常に有効ですが、これ以外には「履歴が残るシステムでの授受・保存」でもよいとしています。また、「改ざん防止のための事務処理規程を定めて守る」ということでも構いません。いずれにしても改ざんを防ぐための措置を取ることが必要とされています。これらは「真実性の確保」という要件になります。
  2. 「日付・金額・取引先」で検索できるようにすること
    「可視性の確保」という要件に該当します。ただし、保存法としては、専用システムを導入していなくても、索引簿を作成する方法や、規則的なファイル名を設定する方法など簡易的な方法で対応してもよいことになっています。また、2年(期)前の売上が1,000万円以下であって、税務調査の際にデータのダウンロードが求められたとき、税務職員への提示に対応できる場合には、検索機能の確保は不要とされています。
  3. ディスプレイ・プリンターなどを備え付けること
    これも「可視性の確保」から求められています。電子データは、その特性として肉眼で見るためにはディスプレイなどに出力する必要があります。しかし税務調査の際には、保存義務者が日常業務に使用しているものを使用することになること、そして、日常業務用である限り一応の性能及び事業の規模に応じた設置台数等が確保されていると考えられることなどから、ディスプレイやプリンターの性能や設置台数は要件とされていません。

真実性の確保

真実性の確保の要件の詳細を列挙すると、次のようになります。

  1. タイムスタンプが付された後、取引情報の授受を行うこと
  2. 取引情報の授受後、速やかに(又はその業務の処理に係る通常の期間を経過した後、速やかに)タイムスタンプを付すとともに、保存を行う者又は監督者に関する情報を確認できるようにしておくこと
  3. 記録事項の訂正・削除を行った場合、これらの事実又は内容を確認できるシステム又は記録事項の訂正・削除を行うことができないシステムで取引情報の授受及び保存を行うこと
  4. 正当な理由がない訂正・削除の防止に関する事務処理規程を定め、その規程に沿った運用を行うこと

可視性の確保

可視性の確保の要件については、次の3つが挙げられています。

  1. 保存場所にパソコンなどの電子計算機、プログラム、ディスプレイ、プリンター及び操作マニュアルを備え付け、画面・書面に整然とした形式及び明瞭な状態で速やかに出力できるようにしておくこと
  2. 電子計算機処理システムの概要書を備え付けること
  3. 検索機能を確保すること

なお、前述のように小規模事業者が税務調査の際、ダウンロードの求めに応じることができるようにしている場合は、検索機能の確保は不要とされています。

電子帳簿保存法とは

法人税法所得税法など各税法では、原則として国税関係帳簿書類は紙(書面)での保存が義務付けられています。

この特例として帳簿書類を電磁記録で保存することを認めたのが、1998年7月に施行された電子帳簿保存法(「電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律」)です。

電子帳簿保存法は、これまで6回改正されていますが、2021年に直近の改正が行われ、2022年1月から施行されています。

※電子帳簿保存法についての詳細は、こちらの記事をご覧ください。

電子帳簿保存法第10条はどう変わったのか

改正電子帳簿保存法で注目された改正点は、電子取引に関するデータ保存の義務化が盛り込まれたことです。従来、電子取引における電子データ保存については、電子帳簿保存法では、第10条の「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」で次のように定められていました。

「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」

第10条
「所得税(源泉徴収に係る所得税を除く。)及び法人税に係る保存義務者は、電子取引を行った場合には、財務省令で定めるところにより、当該電子取引の取引情報に係る電磁的記録を保存しなければならない」

しかし、この条文の次には但し書きがありました。

「ただし、財務省令で定めるところにより、その電磁的記録を出力することにより作成した書面は、この限りではない」

つまり、書面(紙)による出力・保存が認められていたことになります。ところが改正では、「電子取引の取引情報に係る電磁的記録の保存」を法第7条とした上で、この但し書きが削除されたのです。これによって、全ての電子取引において電子データによる保存が義務付けられ、プリントアウトして保存することができなくなりました。

しかし、対応が困難な事業者の実情に配意して宥恕措置が講じられ、2023年12月31日までは執行が猶予され、紙の保存が認められることになりました。とはいえ、2024年以降は改正法の通り「電子データ保存のみ」となるため、企業はそれまでに法令にのっとった保存環境の整備をする必要があります。

※改正電子帳簿保存法第10条についての詳細はこちらの記事をご覧ください。

電子取引と保存要件について知っておこう!

電子取引の概要、保存要件、改正電子帳簿保存法について解説してきました。

改正電子帳簿保存法への対応は待ったなしの状況にあります。特に、電子帳簿保存法第10条については、対応がまだということであれば、早急に保存環境の整備を進めましょう。

よくある質問

電子取引とは?

電子メールで送信した注文書、契約書、送り状、領収書、見積書などの取引情報の授受を電磁的方式(電子データ)により行う取引をいいます。詳しくはこちらをご覧ください。

電子取引の保存要件は?

真実性の確保、可視性の確保の2つの要件があります。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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