- 更新日 : 2025年4月23日
見舞金の勘定科目は?従業員、法人に支払う場合の仕訳や経費にできるか解説
従業員や取引先への慶弔見舞金、災害見舞金は経費計上ができます。基本的に従業員への見舞金は福利厚生費、取引先への見舞金に使う勘定科目は接待交際費です。第三者に損害を与えた際の見舞金は、雑損失の勘定科目を使います。
本記事では見舞金の勘定科目についてケースごとに説明し、見舞金が消費税の課税対象になるかについても解説します。
目次
見舞金の勘定科目
見舞金について仕訳をする場面は、法人が入院給付金を受け取った場合と、従業員や取引先・第三者に支払う場合に大きく分けられます。
それぞれ、どのような勘定科目で仕訳するのか見ていきましょう。
法人が入院給付金を受け取った場合
法人は従業員のために医療保険に加入している場合があります。従業員が病気や怪我で入院した際、受取人を法人にしていれば、会社は保険会社から入院給付金を受け取ることになります。受け取った入院給付金は本業の収益ではないため、一般的に勘定科目に使うのは「雑収入」です。
一方、受取人を従業員本人やその家族にすることもできます。その場合、従業員が入院した際は入院給付金が従業員本人の口座に振り込まれます。ここでの金銭のやり取りは保険会社と従業員の間で行われており、従業員が所属する法人は関与していません。そのため、法人としての会計処理は不要です。
従業員に見舞金を支払う場合
従業員が怪我や病気で入院したとき、あるいは災害の被害を受けた場合に、会社から従業員に見舞金を支払うこともあります。その際の支出は経費計上が可能です。
見舞金は労働の対価として支払われる賃金とは異なり、社内規定などに定めがない場合は法的な支払い義務はありません。しかし、多くの企業では従業員の福利厚生の一環として慶弔見舞金を支給しており、見舞金支給規定を設けているのが一般的です。
そのため、入院や災害などで支払った見舞金は、基本的に「福利厚生費」の勘定科目で処理します。ただし、見舞金の金額が福利厚生の常識的な枠を超えて多額になる場合、給与とみなされることもあります。給与であっても会社の経費になりますが、その場合は所得税の課税対象です。
福利厚生費については、こちらの記事が参考になります。
取引先に見舞金を支払う場合
取引先の会社や従業員等に見舞金を支払った場合は、「接待交際費」の勘定科目で処理します。支払いが取引先の従業員など個人ではなく企業の場合でも、基本的な処理は同じです。
交際費については、下記の記事で詳しく説明しています。
しかし災害見舞金の場合、地震など大規模な災害で取引先の社屋や工場が全壊するなどの被害が出ることもあります。その復旧を支援するために支払う見舞金は、多額になるケースも多いでしょう。
重要な取引先が被災した場合、間接的に自社に大きな損失が生じる可能性があります。取引先との被災前の取引関係を維持・回復することを目的とした見舞金は、接待交際費の枠を超え、支援を通じて自社が被る損失を回避するための費用とみなすこともできるでしょう。
そのため、災害見舞金の支出では、取引先の被災の程度・取引先との取引の状況等を勘案し相応の災害見舞金であれば、金額の多寡は問わないとされています。
このような場合の勘定科目は「販売促進費」や「雑費」などで、多額になるときは「雑損失」として処理することも可能です。
第三者に交通事故などの見舞金を支払う場合
従業員が業務中に交通事故を起こし、会社が相手方に損害賠償金を支払う場合もあるでしょう。損害賠償金も経費に計上できますが、業務に関して第三者に損害を与えたときに限ります。
経費にできる場合は「雑損失」の勘定科目で処理し、保険で補填された金額がある場合は差し引いた金額を計上します。
見舞金を支払う際の仕訳例
法人が支出した見舞金は経費に計上できますが、使用する勘定科目は事例ごとに異なります。ここでは、ケース別の仕訳例を紹介します。
従業員に見舞金を支払う場合
従業員に対して見舞金を支出した場合は、福利厚生費の勘定科目を使います。
従業員が怪我で入院し、2万円の見舞金を現金で交付した場合の仕訳例は、以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
福利厚生費 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 | 見舞金の支払い |
取引先に見舞金を支払う場合
取引先に見舞金を送る場合、基本的には接待交際費で仕訳します。ただし、金額が多い場合は「販売促進費」や「雑費」、「雑損失」で計上しても問題ありません。
例えば、取引先の事務所が台風で一部損壊したため、見舞金10万円を支出した場合の仕訳は以下のようになります。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
接待交際費 | 100,000円 | 現金 | 100,000円 | 〇〇社への見舞金 |
工場が地震で全壊し、操業がストップした取引先企業に対し200万円の見舞金を現金で交付した場合、取引関係を維持するための支出と考えることもできます。「販売促進費」の勘定科目で処理する際は、以下のように仕訳します。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
販売促進費 | 2,000,000円 | 現金 | 2,000,000円 | 〇〇社への見舞金 |
交通事故の見舞金を支払う場合
従業員が業務遂行に際し、第三者に対して損害を与えた場合の損害賠償金は、「雑損失」で仕訳します。
従業員が外回りの営業中に車の接触事故を起こし、損害賠償として見舞金20万円を支払った場合の仕訳は以下のとおりです。
借方 | 貸方 | 摘要 | ||
---|---|---|---|---|
雑損失 | 200,000円 | 現金 | 200,000円 | 損害賠償金(見舞金)の支払い |
従業員への見舞金が給与とみなされる基準
従業員への見舞金は基本的に福利厚生費となりますが、多額になる場合は給与とみなされるケースもあります。給与とみなされるのは、社会通念上相当とされる金額を超えた場合です。平成14年6月13日の判例では、入院1回あたり5万円を超える部分につき給料に該当するとされています。
見舞金は基本的に慶弔規定を設け、規定に従って支給するとよいでしょう。見舞金規定は特に決められた形式がなく、以下のような内容を記載します。
- 支給対象となる従業員(原則としてすべての従業員)
- 慶弔見舞金の種類・支給対象となる事由
- 慶弔見舞金の金額・計算方法
- 支給手続・添付する書類
ただし、見舞金規定で見舞金の金額が定められている場合でも、その金額が社会通念上相当とされる金額を超えていれば見舞金が給与とみなされます。
過去の判例はあくまでひとつの事例における判断で、絶対的な条件ではありません。状況により異なる判断になる可能性もあります。これから見舞金規定で金額を定める際は、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
見舞金は消費税の課税対象ではない?
従業員や取引先に対して金銭により支出する災害見舞金は、消費税の課税対象になりません。消費税は、国内において事業者が事業として行った資産の譲渡や貸付け・役務の提供に対して課税されるものです。見舞金などを金銭で支払った場合は資産の譲渡等の対価に該当しないため、課税取引に該当しないため消費税は発生しません。
一方、慶弔見舞金のうち、結婚、出産等のお祝い金は給与に該当するため、源泉徴収の対象とするのが原則です。しかし、社会通念上相当と認められる場合には、給与として課税しないとされています。そのため、お祝い金についても社会通念上相当な範囲であれば消費税も非課税となります。
見舞金は支出の状況に合わせて仕訳しよう
会社が支出した見舞金は経費に計上できますが、勘定科目は支出の状況により異なります。従業員への見舞金は一般的に福利厚生費、取引先への見舞金は接待交際費で計上します。
ただし、従業員への見舞金は社会的相当性の範囲内で支出しなければなりません。見舞金の支出をスムーズに行うためには見舞金規定が必要であり、設ける際は金額の設定にも注意しましょう。
よくある質問
従業員に見舞金を支払う時の勘定科目は何ですか?
「福利厚生費」を使います。詳しくはこちらをご覧ください。
取引先に見舞金を支払う時の勘定科目は何ですか?
「接待交際費」を使います。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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