- 更新日 : 2025年2月19日
対照勘定法とは?仕訳から解説
対照勘定法は、実施された取引の内容を忘れないようにするための備忘記録として、特殊な仕訳を用いて帳簿に記録する方法です。この記事では、具体的にどのような仕訳を行うのか、対照勘定法の概要や対照勘定法の仕訳例について、わかりやすく解説します。
対照勘定法とは
対照勘定法は、帳簿上において行う備忘記録のための仕訳の方法です。借方と貸方とで対照的で、一対となる勘定科目を用いて行うことからこのように呼ばれています。
手元から商品や手形はなくなっているが、まだ決済は行われていないことなどを帳簿上で判別できる状態を目的としています。
あくまで備忘記録であるため、商品の回収時や手形の決済時などには、反対仕訳を切って取り消しを行わなければなりません。なお、対照勘定法はあくまで備忘記録のための仕訳であるため、その勘定科目は貸借対照表上には表示されないことになっています。
対照勘定法の仕訳例
対照勘定法と一口にいっても、さまざまなものがあります。ここでは、具体的に対照勘定法の仕訳例を見ていきましょう。
割賦販売
割賦販売は、売買代金を分割して支払うことを条件とする販売方法です。割賦販売による売上の計上には回収基準(代金の回収時に売上を計上します)と、回収期限到来基準(回収期限の到来時に売上を計上します)の2つがあります。回収基準と回収期限到来基準とでは、取消仕訳を行うタイミングが違うことに注意しましょう。
回収基準
(仕訳例)
商品10万円を割賦にて販売した。
代金10万円を現金で受け取った。
回収期限到来基準
(仕訳例)
商品10万円を割賦にて販売した。
回収期限が到来した。代金10万円はまだ回収していない。
※回収期限到来時に回収していれば現金預金、未回収であれば売掛金とします。
試用販売
試用販売は、あらかじめ商品を得意先に送付し、試用した得意先から買取の意思表示があった時に売買が成立する販売方法です。
(仕訳例)
商品10万円を得意先に試送した。
得意先から買い取る旨の意思表示を受けた。代金10万円はまだ回収していない。
※買取の意思表示を受けた時に回収していれば現金預金、未回収であれば売掛金とします。
債務の保証
債務の保証とは、ある人が債務を履行しない場合に他の人が代わりにその債務を負うと約束することをいいます。保証人になった段階では、帳簿上に債務の金額を表すことはできないため、備忘記録を行います。
(仕訳例)
Aの債務1,000万円の保証人となった。
Aが債務を返済したため保証人が解除になった。
Aが債務を返済しなかったため代わりに当座預金から返済した。
手形の裏書譲渡
手形の裏書譲渡とは、受け取った手形の決済前に仕入や買掛金などの代金の支払として仕入先に譲渡することをいいます。
(仕訳例)
買掛金10万円の支払として得意先から受け取った受取手形10万円を譲渡した。
受取手形10万円の決済が行われた。
受取手形10万円が不渡りとなり、現金で買い戻した。
手形の裏書に伴う保証債務の時価がある場合
手形の裏書に伴う保証債務の時価がある場合にも、対照勘定法により備忘記録を行います。上記の仕訳に以下の仕訳を追加しましょう。
(仕訳例)
上記の例で保証債務の時価は1%と評価した。
※手形売却損でも可
決済又は不渡りとなった。
手形の割引
手形の割引とは、受け取った手形を決済前に金融機関で割り引き、手数料を支払って現金化することをいいます。
(仕訳例)
得意先から受け取った受取手形10万円について金融機関で割引を行い、割引料は3,000円であった。
手形売却損 | 3,000円 | ||
受取手形10万円の決済が行われた。
受取手形10万円が不渡りとなり、現金で買い戻した。
手形の割引に伴う保証債務の時価がある場合
手形の割引に伴う保証債務の時価がある場合にも、対照勘定法により備忘記録を行います。上記の仕訳に以下の仕訳を追加しましょう。
(仕訳例)
上記の例で保証債務の時価は1%と評価した。
※手形売却損でも可
決済又は不渡りとなった。
有価証券の貸付
有価証券を貸し付けた場合、手元から有価証券はなくなりますが、所有権は移転していないため、備忘記録として対照勘定法による仕訳を行います。
(仕訳例)
有価証券1,000万円を貸し付けた。
貸し付けていた有価証券1,000万円が返還された。
有価証券の借入
有価証券を借り受けた場合、所有権は移転していないものの、有価証券を手元に保有しているため、備忘記録として対照勘定法による仕訳を行います。
(仕訳例)
有価証券1,000万円を借り受けた。
借り受けていた有価証券1,000万円を返還した。
対照勘定法でミスを防ぐ
「対照勘定法」という言葉は、なんとなく理解しづらいように聞こえますが、会計処理自体はそれほど難しいものではありません。対照勘定法による備忘記録を行い帳簿上に取引の存在を残しておくことで、「うっかり忘れていた」というようなミスを防げます。対照勘定法にはいくつかの会計処理パターンがありますが、発生の記録とその取り消しといった仕訳方法は共通しています。対照勘定法をしっかり理解し、実際の取引において活用していきましょう。
よくある質問
対照勘定法とは?
対照勘定法は、備忘録のために帳簿上において行う特殊な仕訳の方法です。詳しくはこちらをご覧ください。
対照勘定法の仕訳のポイントは?
取引の発生時において発生した金額で仕訳を行うことと、売上計上時や決済時や返還時などに、忘れずに反対仕訳を行って取消すことです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
会計の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
洗車代の仕訳に使う勘定科目まとめ
社用車に汚れや傷がついていると、取引先や顧客からの信用を失いかねないため、こまめな洗車が必要です。事業に使用している車両であれば、洗車代を経費に計上できます。洗車代の勘定科目として可能性があるものは、洗車代・修繕費・雑費の3つ。それぞれ適し…
詳しくみる勘定科目「採用教育費」とは?仕訳まで解説
「採用教育費」とは、従業員を採用する際に発生する費用や、従業員の教育費用などを仕訳する際に用いる勘定科目です。従業員の教育費用は別途「研修採用費」として仕訳をすることもありますが、「採用教育費」に含めることも少なくありません。具体的にはどの…
詳しくみる時価ヘッジとは?繰延ヘッジとの違いや仕訳方法、税効果会計についてわかりやすく解説
資金調達や投資方法が多様化するなか、様々な金融商品の取引を行う企業も多くなりました。金融商品にはリスクが付きものですが、このリスクを可能な限り回避させるために、先物取引やオプション取引、スワップ取引などのデリバティブ取引を利用するケースも増…
詳しくみる年会費や入会費を払った時の勘定科目と仕訳の解説
年会費や入会費を払った時によく使う勘定科目として「諸会費」があります。しかし、諸会費と同じような意味合いのほかの勘定科目もあり、どの勘定科目を使えば良いか、迷うこともあります。そこで、ここでは諸会費とそれ以外の勘定科目や消費税の処理などを詳…
詳しくみる前受収益とは負債の勘定科目!仕訳方法や前受金との違いをわかりやすく解説
前受収益、前受金、仮受金など貸借対照表に似たような勘定科目名を見ることがありますが、これらの勘定科目はどれも負債に分類されます。 この記事では、前受収益の意義や仕訳方法、また前受金などとの違いについて解説します。 前受収益とは? 前受収益と…
詳しくみる勘定科目とは?仕訳に役立つ科目一覧をわかりやすく解説
勘定科目(かんじょうかもく)とは、企業や個人が取引を記録する際に使用する分類のことです。財務会計において、取引内容を適切に記録するために、勘定科目を用いて収益や費用、資産や負債などの項目を整理・分類します。これにより、会計帳簿が整理され、財…
詳しくみる